ストライク・ザ・ブラッド ~紅蓮の熾天使~   作:舞翼

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れ、連投やで……。作者ビックリだ(; ・`ω・´)
凪沙ちゃんの登場は、最後の方になるかも……。まあ過去編だし、許してくだせぇ(-_-;)

では、投稿です。
本編をどうぞ。


焔光の夜伯Ⅷ

悠斗は古城にアヴローラを任せ、彩海学園高等部、職員室棟校舎最上階に赴いていた。 部屋の内部に入ると、そこには分厚い絨毯とカーテン。 年代物のアンティーク家具に天蓋つきのベット。 どれも、高価そうな代物ばかりである。

部屋の奥に備え付けられている、アンティークチェアに凭れているのは、悠斗がこの世で信用している人物。――南宮那月だ。

 

「久しぶりだな、那月」

 

「ほう。 珍しい客だな」

 

黒いフリルつきのドレスを着た那月は、黒いレースの扇子を畳んだ。

悠斗は、隣接する壁に背を預けた。

 

「それで、学園生活を考えてくれたのか?」

 

那月の話によると、既に手続きは終えているので、後は悠斗の一声だけらしい。 住居と食費も、手配するとも言っているのだ。

だが、悠斗は頭を振った。

 

「那月には悪いが、その話はまだ保留だ」

 

「……そうか」

 

那月は顔を俯けた。

そう、那月から見ると――――悠斗は、いつも孤独に包まれている。 だからこそ、那月は如何にかしてあげたいと思っているのだ。

那月は、気持ちを切り替えた。

 

「で、わたしに用でもあったのか?」

 

「――十二番目の焔光の夜伯(カレイドブラッド)、アヴローラ・フロレスティーナは、俺たちの保護下にあるって言う報告だ。 那月には直接言っときたくてな。 てか、皆知ってると思うけど」

 

「あれだけ派手に街中で眷獣を召喚して、魔力まで放出したんだ。 吸血鬼(コウモリ)どもは気づいてるだろうな」

 

そう言って、那月はテーブルに置いてあった、紅茶が入ったカップを一口飲んだ。

それから、ふぅ。と一息吐いた。

 

「俺の警告でもあるしな。 ま、それでもアヴローラを狙って来るんだったら、消えてもらうけど」

 

那月は、愉快そうに悠斗を見る。

 

「十二番目に情でも沸いたのか?」

 

「どうだろうな。 まあでも、放って置けないもの確かだ」

 

「だが目覚めさせたのは、戦王領域貴族、ヴィルディアナ・カルアナなんだろ?」

 

「でも、ヴィルディアナは、ほぼ利用されたに近いな。 暁牙城あたりが、何かの餌でも吊るしたんだろ。 おそらくだが、全て暁凪沙の為だな。――それに、ヴィルディアナ単体でMARを襲撃できたのは余りにも変だ。 ザハリアスの野郎も、簡単に手を引いたのも引っ掛かる。 だからこそ、MARを挟んで何かデカイ者も動いてる、と思う。――獅子王機関とかな。……まあ、全部仮の話だけど」

 

悠斗が古城から聞いた話だと、暁凪沙の第四真祖をアヴローラに戻せば、容態が安定するかもしれないと言う事らしい。

ならばこう予想できるのだ。 獅子王機関とMARが手を組み、ヴィルディアナを利用したのでは、と。 アヴローラを封印が解け、暁牙城たちは、暁凪沙の第四真祖をアヴローラの中に戻して、獅子王機関は、魔族特区に第四真祖を隔離する事が可能だ。 絃神島に隔離できれば、被害は此処だけで済むのだ。

 

「……それでも、お前の観察眼と洞察力には呆れるよ」

 

「まあな。 もしかしたら、俺は宴に参加するかもしれん。……無断でだけど」

 

悠斗は、焔光の宴には興味がないのだ。 参加しても、やりたいようにやらせて貰うだけだ。

 

「その時は、わたしたちも目を瞑る。 その前に、わたしたちじゃどうする事もできないがな」

 

「ま、その時はそうしてくれ。 俺は暁と、アヴローラの買い物に行って来る」

 

「……悠斗。 お前って実は、面倒見がいいのかもしれんな」

 

悠斗は、腕を組みながら苦笑した。

 

「どうだろうな。 じゃ、またな」

 

そう言って、悠斗は那月の執務室を後にした。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

悠斗が向かう先は、彩海学園の校門前だ。 この場で、古城と合流。言う事になっているのだ。 そこには、古城以外にも生徒が居た。 華やかな髪形と、制服を校則ぎりぎりまで飾り立てた女子生徒と、短髪をツンツンに逆立て、ヘッドフォンを首に掛けた男子生徒だ。

 

「誰だ?」

 

悠斗は、古城にそう聞いた。

 

「オレの友達(ダチ)、藍羽浅葱と矢瀬基樹だ」

 

古城が男子生徒と女子生徒を紹介し、彼女たちは、悠斗に右手を上げた。

 

「わたしは藍羽浅葱よ」

 

「オレは、矢瀬基樹だ」

 

彼女たちは一般人だ。 悠斗は裏世界の住人なので、表舞台の人たちとは関わりを持ちたくないのだ。 まあでも、買い物にはアヴローラの下着等も含める。と言う事は、女子が居ないと、厳しいものがあるのも確かなのだ。

そう結論に至り、悠斗は、仕方ないか。と納得せざる得なかった。

 

「神代悠斗だ。 今日はよろしく頼む」

 

自己紹介を済ませ、悠斗たちは買い物へ向かうのだった。

これから、アヴローラ・フロレスティーナの血の従者と、紅蓮の織天使の束の間の時間が始まる――。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

買い物も大抵終わった所で、古城は買い物袋を両手に、アヴローラたちと絃神市内にオープンされたばかりの魔族喫茶――獄魔館へ入って行った。

だが悠斗は、ふと目に入った店舗を見つけ、古城に一言かけてからそこへ向かった。――ネックレス店だ。

悠斗は、俺がこんな事するなんてな。と言い苦笑した。 悠斗はそこで、細い銀色チェーンに、紫色の小さなダイヤモンドが嵌められてる物を見つけた。

 

「……あれにするか。……安物だけど」

 

『ほう、永遠の絆か』

 

「……え、マジで。 うん、やっぱ止めよう……」

 

黄龍そう言われ、悠斗は即時に購入を止め店を出ようとする。

だが――、

 

『友達って言う意味でいいんじゃないか? 悠斗は、アヴローラと友達なんだろ?』

 

「……俺が友達ねぇ……。 あいつ裏表ないし、裏切ったりしないと思うけどさ」

 

『アヴローラ。 悠斗にかなり懐いてるしな』

 

悠斗はかなり悩み、購入する事に決めたのだった。

悠斗は、ネックレスを購入してから店を出て、古城たちが食事をしてる獄魔館へ向かった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

悠斗が店内に入ると、奥の窓際のテーブル席で右手を上げてる古城の姿が映った。

どうやら、あの席で昼食を摂ってるらしい。 悠斗はそこまで歩み寄り、空いてる椅子に腰を下ろした。

 

「神代。 何処に行ってたんだ?」

 

「まあ野暮用だ。 気にするな」

 

悠斗と古城を、浅葱は交互に見た。

 

「……あんたら、いつ仲良くなったの?」

 

浅葱に質問されるが、事情が事情なのだ。

世界に混沌を齎そうとする紅蓮の織天使と、アヴローラ・フロレスティーナの血の従者だったからです。と言う訳にはいかないのだ。

 

「暁には道案内を頼んだんだ。 この島の地理は解らんしな」

 

「そ、そう。 神代は絃神島に始めて来たらしんだ」

 

悠斗は、前以って回答を用意してたように平静に答え、古城もそれに乗るようにしたのだった。

浅葱も納得したように頷いた。

 

「あー、なるほど。 此処には沢山地区が在るし、覚える事も多いしね」

 

「まあ、暁と出会った経緯はそれだな」

 

その時、古城と悠斗の真ん中に座っていたアヴローラが、コップに注いできたホットコーヒーを啜った。 その瞬間、妖精めいた美貌が情けなく歪んだ。 かなり苦かったらしい。

 

「お……おおお……黒き復讐(メディア)の魔女の呪いが……」

 

唇からコーヒーを零しつつ、アヴローラはコーヒーの苦さにのた打ち回る。 古城と同じものを飲むと言い張り、このような現状になったらしい。

 

「お前がコーヒーを飲める訳がないだろう」

 

悠斗はそう言い、アヴローラの額を小突いた。

 

「……うぅ。 我も、下僕と同等な黒き混沌を……」

 

そこまで同じが良かったのか。と思いながら悠斗は溜息を吐く。

古城は唇を歪め、

 

「って、オレは下僕じゃねぇから!」

 

「……ひぃ!」

 

アヴローラは、古城の声を聞き委縮してしまった。

 

「アホ暁。 アヴローラが怯えたろうが」

 

「わ、悪い。 ついな」

 

「んじゃ、メロンソーダに変えてこい。 それならアヴローラも飲めるだろ」

 

「お、おう。 了解だ」

 

悠斗はアヴローラの口許とテーブルに零したコーヒーを拭いて、古城は近くのドリンクバーへと向かった。

そして古城は、メロンソーダをコップに注いで戻って来る。

 

「ほら、お前はこっちにしとけ」

 

「……あ、暁古城。 褒めて遣わす」

 

「おう」

 

そう言ってから古城は、メロンソーダを注いできたグラスをアヴローラに手渡した。 アヴローラは、メロンソーダを暫く警戒するように眺めていたが、やがて怖ず怖ずとグラスを口につけ、目を見開いた。

 

「至高の美味! 甘露(アムリタ)の顕現!」

 

炭酸の刺激で目を潤ませつつ、一息でメロンソーダを飲み干すアヴローラ。 未練がまさしくストローをズルズルと鳴らしながら、けふっ、と可愛らしくげっぷをする。

更なるお代りを求める彼女は、古城と悠斗の追うように、ドリンクバーコーナーに向かった。

悠斗がアヴローラを見ながら、

 

「もう飲んだのかよ? あれ、結構な炭酸だったぞ」

 

「……わ、我にかかれば、仔細無し」

 

「ほう。 暁、あれをやるぞ」

 

「お、あれか」

 

古城と悠斗は、グラスの中に二種類以上の炭酸を注ぎ、混ぜ合わせていく。

メロンソーダやコーラが混じり合い、不思議な色が形成される。

 

「は、弾ける混沌の渦が……!」

 

アヴローラは不思議な色を眺め、幼稚園児ようにはしゃいだ。 そんな三人を遠目で眺めながら、浅葱は溜息を吐いた。

 

「古城と神代は、あの子の保護者見たいに見えるわ」

 

「いや、あれは最早、兄二人と妹の構図だぞ。 そういや古城の奴、あの子は第四真祖かも知れないって言ってたな」

 

「ああ……十二番目の焔光の夜伯(カレイドブラッド)だっけ」

 

浅葱が無関心な口調で言う。

確かに、アヴローラが一般的な吸血鬼とは少し違っているのは事実だが。

 

「そうは見えんな」

 

「……全然見えないわね」

 

浅葱と基樹が口々にそう呟く。

その頃、アヴローラは炭酸飲料を注ぎすぎて、溢れ出す泡に呆然としていた。

 

「こ、古城! ゆ、悠斗! 水泡(みなわ)の膨張が留まる所をしらぬ……」

 

「ちょ、いっぺんに入れ過ぎだ! 暁、如何にかしろ!」

 

「ど、如何にかって……。 てか、揺らすな! 振るな!」

 

グラスの縁から零れる泡に、泣き出しそうな顔でうろたえるアヴローラ。

此れが、古城と悠斗、アヴローラの買い物の一幕であった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

その日、絃神島には雨が降っていた。 細い糸のように柔らかな、四月の春雨(しゅんう)だ。

古城が学校の校門を出ると、少し歩いた所に傘を差して、アヴローラと悠斗が佇んでいた。 古城はそんな二人を見て走り出した。

――アヴローラと悠斗、古城が出会ってから半年近くが経過したのだ。 その間のアヴローラの世話は、古城と悠斗の当番制によって行われていた。

 

「ど、どうしたんだ。 悠斗、アヴローラ?」

 

「悪いな。 アヴローラが、古城も一緒にアイスを食いたいんだと」

 

「わ、我に、るる家の凍てつく醍醐(だいご)の滴を!」

 

アヴローラの性格は余り変わっていなかった。それ以外の部分では、絃神島の生活に随分適応したんだが。

 

「あ、ちなみに、古城の奢りな」

 

「マジかよ……。新学期が始まってから、オレの財布の中が寂しい事になってるだぞ……」

 

古城は高等部に進級した為、教材の用意や手続き等で、財布から金が消えていってるのだ。

古城は、そうだ。と何かを思い出した。

 

「矢瀬に聞かれたんだけど、アヴローラと悠斗、学校に通う気はあるか? 那月ちゃんに口添えするけど」

 

古城の話によると、アヴローラはDNAサンプルが認められそうで、登録魔族として学校に通う事が可能になるらしい。 まあでも、細かな手続きがまだあるらしいが。 当のアヴローラは、学校に通えると聞き心底嬉しそうだった。 だが、悠斗は顔を顰めた。

 

「……俺はどうだろうな。 古城は信用してるが、他はな――」

 

悠斗は、古城は信用したものの、他人には一定の壁を作って、心に踏み込ませないようにしてるのだ。

 

「ゆ、悠斗。 わ、我と同じ学び舎に――」

 

どうやらアヴローラは、悠斗とも一緒に学校に通いたいらしい。

悠斗は頭を振る。

 

「つってもな、アヴローラ。 俺は他人を信用しないんだ。 学校に通っても、俺の場合は一匹狼になるぞ。 だからまあ、俺は保留だ」

 

「……うぅ。 一緒がいい――」

 

アヴローラはそう言って、顔を俯けてしまった。 瞳には、うっすらと涙も浮かんでいる。

悠斗は、うっ、と言葉に詰まってしまった。 そんな悠斗を見て、古城は、どうすんだよ。と言ってからニヤニヤした。 悠斗は、盛大に溜息を吐いた。

 

「……はあ、一緒に入学してやるよ」

 

悠斗は、那月に言わないとな。と静かに呟き、再び溜息を吐いた。

 

「う、うむ!」

 

アヴローラは太陽のように笑みを浮かべた。 そんなアヴローラの頭を、悠斗はわしゃわしゃと撫でる。 アヴローラが首から下げた悠斗からの贈り物は、雨の中でも綺麗に輝いていた。

 

「……こ、古城。 凪沙は?」

 

怖ず怖ずと気を遣う口調で、アヴローラが古城にそう言う。

古城が当番の時に、アヴローラと暁凪沙を会わせようとした事があるらしい。 もしかしたら、記憶が戻るかも知れないと思ったからだ。

だがまあ、その目論見は失敗に終わったらしいが。

 

「あいつは今日は病院だ。 いつもの検査入院だとさ」

 

アヴローラに気を遣わせないように、古城は素っ気なく言った。

暁凪沙の体調が回復しないのは、自身の記憶が戻らないせいだと、責任を感じてしまうらしいのだ。

 

「お前が気にする事はないって、行くか」

 

古城たちは歩き出し、るる家へ向かった。 看板が見えてきた所で、アヴローラが不意に立ち止まった。 アヴローラの見詰める先に、灰色の防具服を着た、九番目(エナトス)が映ったからだ。 いつも怯えてるアヴローラの瞳に、敵対心が浮かんでいる。

隣に立つ悠斗も、臨戦態勢を取った。

 

「お前……九番目(エナトス)……!?」

 

「我が名を記憶に留めていたか、暁古城。 褒めて遣わす」

 

古城はムッとした。 アヴローラと違い、おどおどした印象が無い分本気で偉そうだ。

だが、周囲にはザハリアスたちの姿は見当たらなかった。

 

「お前、一人か。 何で急に?」

 

「――契約の履行を要求する」

 

九番目(エナトス)が、古城を見据えてそう言った。 古城は怪訝顔をするので、警戒を解いた悠斗が解説する。

 

「アイスを食わせる約束をしたろ、それを実行しろだとさ」

 

「ああ、そういや約束したな」

 

九番目(エナトス)は、古城の答えを聞いて満足げに微笑んだ。

 

()く務めを果たすがいい」

 

るる家のショーケースを指差して、九番目(エナトス)は古城に傲然と命じ、古城たちは九番目(エナトス)を連れてショーケースの前まで移動した。

 

「……で、どれが食いたいんだ?」

 

「至高なものを我に捧げよ」

 

「オレ好みで決めていいのか。 じゃあ、無難にバニラにしとくぞ? アヴローラと悠斗は?」

 

「ス、ストロベリー、キャラメル、生チョコレートのトリプル!」

 

敵対心を剥き出しにして、アヴローラが店員に注文する。 流石に慣れたものである。

悠斗も、アヴローラに続いた。

 

「ポッピングシャワーに抹茶。 ラズベリーのトリプルだな」

 

そこで、待て。と意義を申し立てたのは九番目(エナトス)だ。

 

「暁古城。 何故(なにゆえ)十二番目(ドウデカトス)と紅蓮の織天使には、三度(みたび)の選択を許す?」

 

「そういうメニューなんだよ。 不満ならお前も三段重ねにするか。……はあ、金が消えていくぜ」

 

古城がうんざりしながら説明する。

 

「四段だ」

 

「は?」

 

十二番目(ドウデカトス)らが三段ならば、我は四段を要求する」

 

「ねぇよ、四段重ねとか。 メニューにあるのは、三段までだ」

 

この時悠斗が、あ。と声を上げる。

 

「……いや、確か隠しメニューであったような?」

 

悠斗の声に反応した店員が、

 

「お客様、よくご存じで。 そうです、最高七段までいけますよ」

 

悠斗は頷き、

 

「うし。 アヴローラ、七段にするぞ」

 

「うむ!」

 

「な、な、七段!?」

 

悠斗とアヴローラは、表情を引き攣らせた古城を押し退けて、七種類の注文をする。

九番目(エナトス)も、悠斗とアヴローラの前に割り込んだ。

 

「無論、我も七段だ」

 

「トッピングもつけるか。 えーと、ナッツとマカロンだな」

 

悠斗の問いにアヴローラは頷いたが、九番目(エナトス)は不満そうだ。

九番目(エナトス)は、ふむ。と頷いてから、

 

「我は全部だ。 全て載せよ!」

 

「お、そうくるか。 俺も全部だ!」

 

「わ、我も!」

 

しかし、古城は絶望するように、

 

「おおおおおおおおぉぉぉぉおおおお!? お前ら、悪魔か!?」

 

コーンに着々と積み重ねられてくアイスの代金を計算して、古城の顔から血の気が引く。 味の割りに、手頃な値段と評価のある“るる家”のアイスだが、先程の注文だと相応の価格になるのだ。

 

「悪魔、違う」

 

「我らも紅蓮の織天使も、吸血鬼に決まってるだろう?」

 

「で、古城は血の従者な」

 

「ああ、そうだな! 知ってたよ!」

 

自暴自棄になって、古城は叫んだ。

そんな古城たちのやり取りに噴き出しながら、店員ができあがったアイスを渡してくれる。 ほんの少し定価より安くしてくれたのは、古城に同情と気遣いなのだろう。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「……美味いな」

 

アイスを一口齧った九番目(エナトス)が、驚いたように呟いた。

 

「そうか。 そりゃよかった」

 

九番目(エナトス)の言葉に、古城はホッと息を吐いた。 あれだけ無茶な注文をしたのだ。 喜んで貰わないと、割りに合わない。

九番目(エナトス)は何を思ったのか、山盛りの特大アイスを古城の前に差し出した。

 

「汝も味わってみるか、暁古城」

 

「じゃあ、一口な」

 

古城は九番目(エナトス)のアイスを齧った。 これを見た悠斗は、ふむ。と頷いた。

 

「アヴローラ。 古城にあれをやってあげろ」

 

「う、うむ!」

 

古城は、アヴローラと悠斗はいつ意思疎通ができるようになったんだ。と思っていると、アヴローラが古城と九番目(エナトス)の間に割り込んで、アイスを突き出す。

 

「お、お前もの食えっていうのか!? ちょっと待て、一気にそんなもん食ったら……」

 

言い訳をする古城の口の中に、アヴローラが無理やりアイスをねじ込む。 一玉丸ごと口の中に放り込まれて、その冷たさに古城はぐぐもった悲鳴を洩らした。

そんな古城を見て、悠斗とアヴローラは大笑い。 古城は恨まがしい視線を送ろうとするが、こめかみの激痛で涙目だ。

 

「……礼を言うぞ、暁古城。 汝はたしかに契約を果たした」

 

古城がのた打ち回っている間に、九番目(エナトス)はアイスを食べ終わったらしい。 唇の端をぺろりと舐めて、満足そうに笑う。

彼女は、防護服の腰のポーチから一枚のカードを取り出した。 ハガキよりも一回り小さな、金属製のプレートだ。

 

「受け取れ、十二番目(ドウデカトス)

 

そう言って九番目(エナトス)は、アヴローラにカードを放る。 アヴローラは如何にか落とさずカードを受け止めた。 カードの表面には、短い文章が記されている。

 

「ザハリアスからの招待状だ」

 

九番目(エナトス)の真の目的は、ザハリアスの使いだ。 だがまあ、アイスの件も込みだったのだが。

すると、アイスを全て食べ終わった悠斗が口を開いた。

 

九番目(エナトス)、ザハリアスに伝えとけ。 紅蓮の織天使は、大人しくするつもりはない(・・・・・・・・・・・・)ってな」

 

「承知した。 では、次の満月の夜に、焔光(えんこう)(うたげ)で再びまみえようぞ」

 

九番目(エナトス)はそう言い残し歩き出す。 古城たちはその場で立ち止まり、九番目(エナトス)の背中を見送った。

再び降り出した春の雨が、三人を冷たく濡らしていく。

――――宴の始まり。 それは優しかった平穏な日々の終焉だ。 アヴローラの頬に零れた水滴が、静かに流れ落ちていく。 涙のように、音もない滴のように。

そんなアヴローラを見て、悠斗は右手掌をアヴローラの頭にポンと置いたのだった。 そう、彼女を安心させるように――。




悠斗君、古城君も信用しましたね。てか、古城君たちかなり仲が良いです(笑)
悠斗君がアヴローラに送ったネックレスは、最後ら辺で活躍する予定ですよ(^O^)

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