ストライク・ザ・ブラッド ~紅蓮の熾天使~   作:舞翼

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ここからは、ご都合主義満載でいきます!!

では、投稿です。
本編をどうぞ。


焔光の夜伯Ⅸ

九番目(エナトス)と接触して数日。 今日は古城がアヴローラの世話と言う事もあり、悠斗は書店で英字新聞を購入し、今後の為の情報収集に当たっていた。

悠斗は、近場の長椅子に腰を下ろし、新聞を捲っていく。そこで、紙面の片隅に小さく掲載された記事を見て眉を寄せた。

 

「……ネラプシ自治区で……大規模感染(アウトブレイク)の兆候?」

 

記事に掲載されている写真には、異国の街に溢れ出した暴徒の群れが、無差別に人を襲っている様子が映し出されていた。

それは――第一、二、三の、いずれの真祖の型にも該当しない――新種の吸血鬼感染病。 吸血鬼に噛まれて吸血鬼になると言うのは迷信とされており、世界保健機関でも原因は特定できておらず、感染源は未だに特定されてない。 故に、人間にも魔族にも無関係に感染し、発症した患者は理性を失って周囲の者を無差別に襲い始める。 そして、感染者を増やしていく。

症状はG種(グール)と呼ばれる吸血鬼に近く、感染者の多くに見られるのは、筋力や嗅覚などの身体能力の向上。 一方、時間が経過するつれ、感染者は記憶の欠落が顕著になり、やがては完全に知性を失い、生命活動の維持を困難とする。 単なる伝染病なのか、それとも未確認の新たな魔族の出現なのかも不明。 原因が特定できてない為、治療法も確立してないとある。 所謂、謎の感染症なのだ。 このままでは、世界流行の恐れもあった。 それが起こっているのは、ネラプシ自治区。――――旧カルアナ伯爵領だ。

 

「……もしかして逆……なのか?」

 

悠斗は、割れた声を上げた。

宴の選帝者は、一定規模の領地を収めてる事。 引いては、十分な数の領民を所有してる事だ。 選帝者の領地は、第四真祖が覚醒すれば新たな夜の帝国(ドミニオン)になる――。 悠斗はそう思い込んでいたが、違うのだ。――逆なのだ。

――第四真祖が覚醒する事で、選帝者の領地が夜の帝国(ドミニオン)に変わるのではないのだ。 選帝者とは、第四真祖の儀式を覚醒させる為の魔術儀式も実行者だ。――そう、自身の領地に住んでいる人々、数十万人の生け贄が必要なのだ。

そして現在、ネプロシ自治区と呼ばれているのは、嘗てカルアナ家が治めていた土地だった。 先祖代々、ヴィルディアナの生家に従ってきた忠実な領民である。 もちろんその中には、ヴィルディアナの顔見知りもいるはずだ。 そして彼らの命は、新型感染症によって危機に晒されている。

――この状況を仕組んだのはザハリアスだ。 この状況を作り出す為、ザハリアスはヴィルディアナの父親を殺し、領地を奪ったのだ。 もしだ。 もし、ヴィルディアナがこの詳細を何処かで知ったら、アヴローラを連れ宴に参加し、ザハリアスに復讐をしようとするだろう。

ヴィルディアナは、――アヴローラが匿われている船を知っているのだ。 古城が傍についてるが、ヴィルディアナは旧き世代の吸血鬼だ。

 

「……無事でいてくれよ!」

 

悠斗は立ち上がり走り出した。 アヴローラは、争いなど望んでいないのだ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

悠斗が“りあな号”へ到着した時には、戦闘の痕跡と、古城が甲板の上で横になっていた。 右肩から左脇にかけて、眷獣に切り裂かれた傷は、今は塞がっている。――そう、血の従者の力だ。 古城は、夕陽の眩しさに魘されて目を覚ました。

 

「……よう、古城」

 

「ああ、悠斗か」

 

古城は周囲を見渡し、ハッとした。

 

「アヴローラは!?」

 

「ヴィルディアナに攫われた。 目的は、ザハリアスの復讐だ」

 

ヴィルディアナがザハリアスに復讐する為向かった場所は、絃神島(アイランド)旧南東地区(オールドサウスイースト)だ。 元々は実験的に構築された試作人工島(ギガフロート)であり、その後は主に、絃神島本島を造る為、建設基地(ベースキャンプ)として使われていた場所だ。

住民の多くは、絃神島建設に直接関わる、都市設計者やその家族。 嘗ては絃神島の中心だった旧南東地区(オールドサウスイースト)だが、東西南北の四基の人工島(ギガフロート)が完成した事で役目を終え、最近では人口も減り続けている。

絃神島本島に比べると小型で設備も劣っている事や、人工島(ギガフロート)本体の耐久年数が迫っている事から、現在は廃棄エリアに指定され、数年以内に解体される事が決まっている場所だ。

――老朽化が進む廃墟の人工島(ギガフロート)。 この場所こそが、ザハリアスが主催する宴の舞台になるのだ。 この時悠斗は、ザハリアスにも、獅子王機関にも不確定要素(イレギュラー)となる事に決めた。

 

「俺は宴に行くぞ。 古城、お前はどうする?」

 

悠斗の問いは愚門だった。 古城の瞳には、決意の眼差しが見て取れる。

 

「――オレも行く」

 

「……そうか、解った」

 

悠斗は古城の右手を握り、引っ張るように古城を起こした。 それから古城たちは、東地区(イースト)の外れにある連絡橋の方角へ歩き出す。

連絡橋の入口が見えてきた所で、古城たちは異変に気づいて足を止めた。 橋を塞ぐような形で、装甲車によるバリケードが築かれている。 更には、武装した機動隊員や、対細菌・化学兵器用の防護服を着た人々の姿もあるのだ。

 

『人工島管理公社より、絃神島住民の皆さんにお知らせします』

 

古城たちの疑問に答えるように近づいて来たのは、上空を旋回する特区警備隊(アイランド・ガード)の無人広報ヘリだ。 小型ラジコン機に埋め込まれたスピーカーが、無感情な人工音声を流し続けている。

 

『本日、人工島(アイランド)旧南東地区(オールドサウスイースト)において、新型感染症の疑いがある患者が発見されました。 感染拡大の恐れがありますので、予防措置として、安全が確保されるまで、旧南東地区(オールドサウスイースト)への従来を禁止。 連絡橋を封鎖いたします』

 

このタイミングでの新型感染症――ネラプシ自治区に発生した、同じものだと考えて間違いないだろう。 そして、このどちらにも、ザハリアスが絡んでいる。

 

『現在、旧南東地区(オールドサウスイースト)への一切の渡航を禁止しています。また、旧南東地区(オールドサウスイースト)に立ち寄った船舶は、寄港せずに沖合で待機。 検疫官の指示に従ってください。 違反者には、罰則が科せられます。繰り返します――』

 

古城は呆然と立ち尽くしていたが、悠斗は頷いた。

 

「強行突破しろって意味らしいぞ、古城」

 

「……強行突破?」

 

悠斗は左手を突き出す。

 

「――降臨せよ、朱雀!」

 

悠斗は傍らに、紅蓮の不死鳥を召喚させた。 それから、人間には害のない飛焔(ひえん)で、警備隊員たちを気絶させる。

困惑する古城を余所に、悠斗は朱雀に腰を落とすように指示を出す。

朱雀が腰を落とした所で、

 

「古城、行くぞ。アヴローラが待ってる」

 

「お、おう」

 

古城と悠斗は朱雀の背に乗り、飛翔を開始した。 目的地は旧南東地区(オールドサウスイースト)、宴の場だ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

クォーツゲートは、旧南東地区(オールドサウスイースト)の中央に位置する巨大な建造物だ。 建物の主要部分は六階建てで、嘗ては絃神市の市庁舎や、人工島管理公社の本社が此処に置かれていた。

外壁には魔術的に強化された透明なアダマス硝子が採用されて、建物全体が巨大な宝石の宮殿に見える。 宮殿の中央に位置するのは、六角水晶に似た巨大な時計塔だ。

極東の魔族特区、絃神島の技術を世界中に知らしめた、歴史的な建造物である。 しかし、旧南東地区(オールドサウスイースト)の解体が決定した事で、クォーツゲートは一般の立ち入りが禁止された無人の廃墟だ。 ザハリアスが宴の舞台として選んだのは、そのクォーツゲートの中央広場だ。

硝子張りの天井に覆われた広場の中央に、十二の棺桶が扇状に並べてある。その半数にあたる六個の棺桶に、六人たちの少女が眠っていた。

十一番目(ヘンデカトス)九番目(エナトス)八番目(オグドオス)七番目(ヘブドモス)二番目(デウテラ)、そして一番目(ブローテ)だ。 ザハリアスが所有する、焔光の夜伯(カレイドブラッド)だ。

彼女たちの中央に置かれているのは、宝石の結晶に包まれた灰色髪の少女。 痩せさらばえた遺体を、ザハリアスは無言で眺めていた。

時計塔が、夜九時の鐘を打ち鳴らす。 それが合図になったように、静かな女の声が聞こえてきた。

 

「お待たせしました、ザハリアス卿」

 

ザハリアスがゆっくり振り返る。

 

「ご協力感謝します、ミス遠山。 暁凪沙譲もようこそ、我が焔光(えんこう)(うたげ)へ――」

 

ザハリアスが向けた視線の先には、MARの遠山美和と、制服を着た暁凪沙の姿があった。 協力的な表情とは言い難いが、凪沙は縛られている訳ではない。 おそらく遠山は、凪沙の家族の安全を盾に取って、彼女を連行してきたのだろう。 その証拠に、遠山を見上げる凪沙の目には、敵意が宿っていた。

 

「あなたは、誰?」

 

凪沙が、ザハリアスを見据えて攻撃的に聞いた。

ザハリアスは胸元に手を当てて、深々と礼をする。

 

「申し遅れました。 バルタザール・ザハリアス。 第四真祖の血の従者です」

 

「真祖の……従者……?」

 

凪沙の瞳が恐怖に震える。 凪沙が魔族恐怖症だという情報は、ザハリアスにも伝わっている。 青ざめる彼女を安心させるように微笑んで、ザハリアスはその場に片膝を突く。

 

「あなたに気害を加えるつもりはありません。 どうぞ怯えないでください、暁凪沙。 私はただ、あなたが行った奇跡を、もう一度再現して欲しいだけなのです」

 

「……奇……跡?」

 

「然様。 死者の蘇生です」

 

ザハリアスが深々と頷いて顔を上げる。凪沙は、何を言われているのか理解できない。と首を振るだけだ。

ふむ。と言い、ザハリアスは目を細めた。

 

「そうですね。 まずは私の故郷の話から始めましょう。 私の故郷は、今はもう存在しないバルカン半島の小さな街です。 かつて、戦王領域と滅びの王朝、そして西欧教会の三つ巴争いに巻き込まれて消滅しました。 今から、七十年ほど前の事です」

 

そう言って、ザハリアスは左端に置かれた棺桶を見た。

棺桶に眠っているのは、胸を抉られたような傷を持つ金髪の少女だ。

 

「……戦争を仕掛けてきた人々の目的は彼女でした。 私の故郷に封印されていた一番目(ブローテ)――一番目の焔光の夜伯(カレイドブラッド)です」

 

世界最強の吸血鬼。 焔光の夜伯(カレイドブラッド)の噂話は、当然、凪沙の耳にも入っているだろう。 彼女の幼い顔立ちが驚愕に引き攣った。

ザハリアスが次に指を差したのは、宝石の中に浮かぶ灰色の髪の少女だった。

 

「彼女はヴラスタ。 私の妹です。 そして、一番目(ブローテ)を守護する巫女でした。――そして、吸血鬼どもに殺されました。 私はヴラスタを護ろうとして、同じ場所で殺された。 そして、私だけが生き返った。 ヴラスタが私を生き返らせたのです。 一番目(ブローテ)の血の従者として――あなたが、兄にしたように!」

 

「……兄? 古城君?」

 

凪沙は驚いたように聞き返した。古城の名前が出てきた事に、はっきりと動揺していた。

ザハリアスは苦笑した。

 

「やはり、覚えていらっしゃらないのですか。 あなたがやったことですよ。 あなたが兄を、真祖の血の従者に変えたのです。 不老不死の怪物に!」

 

「嘘だよ……そんなの……!」

 

凪沙が激しく首を振って叫んだ。 彼女にしてみれば当然の反応だ。 ザハリアスは、彼女の兄を怪物だと言ったのだ。 凪沙が恐れる、魔族の従者だと。

 

「わたしに、そんな力なんて……ない!」

 

「ええ、そうでしょうとも。 いかに優れた巫女であろうとも、死者を生き返らせる事はできない。 それが可能なのは、穢れた土地より蘇りし死者の王。 世界の理から外れた殺人兵器。 無限の負の生命力を操る人工の吸血鬼――第四真祖だけだ!」

 

ザハリアスが大きく両手を広げ、空を仰いだ。

 

「あなたの力で目覚めさせてください。 完全な第四真祖を。 幸いな事に、ここには既に六体の焔光の夜伯(カレイドブラッド)が――第四真祖の素体の半数が揃っています。 彼女たちには、ネラプシ自治区の生け贄から吸い上げた魔力が充填されてる。 覚醒の呼び水としては十分なはずだ!」

 

「……そんなこと……そんなことさせるか……! ザハリアス!」

 

ザハリアスの弁舌を遮って、広場に姿を現したのは、血塗れのメイド服に身を包んだ吸血鬼、ヴィルディアナだ。

彼女に引きずられるようにして、金髪の小柄な少女が立っていた。――アヴローラ・フロレスティーナだ。

 

「……アヴローラ……さん……」

 

怯えるアヴローラを見て、凪沙が呆然と呟いた。

 

「これはこれは、お待ちしておりましたよ」

 

ザハリアスには、ヴィルディアナの登場に口許を綻ばせる。 ヴィルディアナが自分を殺そうとしてる事を、ザハリアスは知っていた。

ザハリアスが動いても、アヴローラに手出しする事ができなかった。 なので、招待状をアヴローラに託したのだ。 あの招待状の存在を知れば、ヴィルディアナは、必ずアヴローラを連れて来る。――ヴィルディアナだからこそ、アヴローラを連れ出せたのだ。

そう、一番厄介な存在――紅蓮の織天使の隙を突けるからだ。

 

「我が焔光(えんこう)(うたげ)の会場へようこそ、ヴィルディアナ・カルアナ。 わざわざ七体目の素体を連れて来て頂けるとは、恐悦至極。 歓迎致しますよ」

 

「黙れ!」

 

ヴィルディアナの怒号と共に、二体の眷獣を召喚した。 炎を纏う魔犬(ケルベロス)と、凍えり息を吐く双頭犬(オルトロス)。 今のヴィルディナが扱える最大戦力だ。

 

「死になさい、ザハリアス! 父様に無念と領民たちの苦しみ、思い知れ――!」

 

勝ち誇った表情でヴィルディアナが叫ぶ。

だが、ザハリアスは如何なる動揺も無縁な表情だ。 棺桶の中に横たわる一番目(ブローテ)と手を取り合って、静かに命じる。

 

()()れ、神羊の金剛(メサルテイム・アダマス)――」

 

ザハリアスを守護するように、虚空から巨大な眷獣が出現した。

それは、金剛石(ダイヤモンド)の肉体を持つ大角羊(ビックホーン)だ。 眷獣の周囲には数千、数万もの宝石の結晶が浮かび、それが盾となってザハリアスを護っている。

 

「第四真祖の……眷獣!? そんな!?」

 

ヴィルディアナの表情が絶望に染められていく。 彼女の眷獣たちの攻撃は、空を漂う宝石の防護壁を傷つける事すらできない。 弾丸のように撃ち放たれた宝石の雨が、ヴィルディアナの眷獣を、跡形もなく消滅されていく。

ヴィルディアナの眷獣では、第四真祖の眷獣に対抗できる訳がなかった。

 

「アヴローラ! お願い、力を貸して欲しいの!」

 

追い詰められたヴィルディアナが、アヴローラを無理やり前へ引きずり出す。 アヴローラは委縮して動けない。 呆然と立ち竦んでるだけだ。

 

「あなたなら、あの眷獣にも対抗できる! あいつを殺して! ザハリアスを殺してよ!」

 

ヴィルディアナが絶叫した。 そんな彼女の胸元に、パッと大きな薔薇が咲く。

薔薇の正体は飛び散った鮮血だ。 血肉の花弁を撒き散らして、ヴィルディアナの体がぐらりと揺れる。

 

「……ひっ……」

 

返り血を全身に浴びて、アヴローラが頬を引き攣らせた。 ヴィルディアナが手を放したせいで、アヴローラの小柄の体は反動で地面に倒れ込む。

 

「ザハリアス……ッ!」

 

ヴィルディアナは吐血しながら、ザハリアスを睨んだ。

ザハリアスの右手に握られたのは拳銃だ。 あえて銃を使ったのは、神羊の金剛(メサルテイム・アダマス)の威力では、アヴローラまで傷つけてしまうという判断なのだろう。 護身用のリボルバーとはいえ、装填された銀イリジウム合金弾は、吸血鬼に致命傷を与えるだけの破壊力があるのだ。

立て続けに鳴り響いた、打ち放たれた五発の銃弾が、ヴィルディアナの胸元に吸い込まれる。 ヴィルディアナはその場で膝を突き、ゆっくり倒れていった。

 

「アヴ……ローラ…………どうして……」

 

虚ろな瞳でアヴローラを見上げたまま、ヴィルディアナが呟いた。

それきり、彼女は動かなくなる。 鮮血を浴びたアヴローラは、ただそれを呆然と見つめている。

 

「あ……ああ」

 

この声の主は、凪沙だ。

両手で頭を抱えた彼女が、人間の者とは思えない絶叫を放っている。

 

「ああああああああぁぁぁああああああっ!」

 

大気が振動し、クォーツゲートの建物が揺れた。

アヴローラはもちろん、ザハリアスまでもが唖然とし、その光景を眺めている。

 

「これは……全ての焔光の夜伯(カレイドブラッド)が共振してる……!?」

 

平静を残した遠山が、周囲を見渡して呟いた。

棺桶の中に横たわる六体の焔光の夜伯(カレイドブラッド)――アヴローラを除く全ての素体が、凪沙の感情に呼応するように目を開ける。

 

「目覚めるのですね、ついに真なる第四真祖が! 素晴らしい! 素晴ら……っ!?」

 

ザハリアスの声が、糸が切れたように唐突に消える。 彼の口から鮮血が零れ出し、ザハリアスの胴体は薙ぎ払ったように横一文字に裂けていた。 自分自身の血で染まった両腕を、ぽかんと見下ろしてザハリアスは首を振る。

 

「……な……!?」

 

なぜ、と口に出す事もできないまま、ザハリアスはその場に倒れた。 ザハリアスを攻撃したのは翼だった。

刃のように研ぎ澄まされた鉤爪を持ち、赤黒い血管を剥き出しにした――吸血鬼の翼。

その翼がザハリアスを襲って、彼の肉体を両断したのだ。

 

「凪沙……さん……」

 

遠山が掠れた声で凪沙の名前を呼んだ。 彼女の瞳にも、恐怖の色がある。

魔力で紡いだ黒い翼を、背中に広げていたのは暁凪沙だ。

結い上げていた長い髪を解いて、彼女は笑う。 その瞳は、炎のように青白く燃える焔光の輝きを放っていた――。




連投しますぜ!

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