今回は、結構長いですね。
では、投稿です。
本編をどうぞ。
元々解体が予定されていた廃墟エリアと言う事もあって、人工島管理公社による情報操作は容易だった。 予定されていた解体工事を、ただ早めに実行したと説明したのだ。
新型感染症の拡大を防ぐ為と言う大義名分もある為、
また、
――誰かと共有できれば、だ。
この世でアヴローラを覚えているのは、悠斗だけになる。 アヴローラは、悠斗の最初の友であり、思い出を一緒に共有した少女。
アヴローラの事を忘れてしまうと言う事は、古城も、悠斗と共に過ごした時間も忘れたと言う事だ。
悠斗は、再び心を閉ざしてしまった。 護ると誓った少女を護れず、死なせてしまったからだ。
絶叫し力を振るったが、そこまでの力が出る事はなかった。 あの時、アヴローラが力を吸い取っていたのが幸運と言えよう。
事件から一週間後、悠斗はアヴローラとの約束を守る為、那月に進言し、彩海学園高等部一年B組に編入した。
編入しても、悠斗は授業をサボり、屋上のベンチの上で横になっていた。
『……授業に行かなくていいのか。 主』
「知らん。 俺は約束を守る為、ここに居るだけだ」
朱雀が心配そうに声をかけるが、悠斗はぶっきら棒に答えるだけだ。 悠斗の心は、冷たく、氷の塊のようだ。
悠斗は昔のように戻ってしまったのだ。
数分横になってると、予鈴がなり授業が終了したらしい。
悠斗が目を閉じたら、屋上のドアが勢いよく開いた。
「やっぱりここにいたんだ。 悠君、授業はどうしたの? もしかして、またサボりなんだ。 もうダメだよ。 先生たち困ってるんだから」
そう言って、悠斗の顔を上から覗き込んだのは、古城と悠斗、アヴローラが救った少女――――
凪沙は、悠斗に何度も断られても、悠斗の事を気にかけてくれているのだ。
凪沙の目から見ると、悠斗は孤独に包まれていた。
そう。 悠斗は、学園に編入しても、クラスメイトにも心を開かず、友達を作らず、ずっと一人なのだ。
だからこそ、凪沙は悠斗を一人にしたくなかった。 放って置けなかったのだ。 それが、お節介と解っていてもだ。
そして、凪沙が悠斗の所に訪れるのは、既に三週間が経過していた。
最初、悠斗は追い払っていたが、次第に面倒になってきてるのだ。 なので、時間まで無視に決め込んでいたのだが――。
「……知らんし帰れ。 俺の安眠を邪魔するな。 つか、悠君言うのやめろ」
何故か知らないが、言葉に反応してしまっているのだ。
まあ、警戒心を醸し出すのは変わらないが。
「良い渾名だと思うんだけどなぁ。……うん、やっぱり悠君がしっくりくるよ」
呼び方は変わらないと悟った悠斗は、この件は諦めたのだった。
それから悠斗は、溜息を吐く。
「……で、何の用だ」
「今からお昼休みでしょ。 お昼一緒にどうかなって? お弁当、悠君のもあるよ。 あと、警戒しなくても、凪沙は何もしないよ。 いつも何もしてないでしょ」
まあそうだな。と言い、悠斗は警戒心を収めた。
そして、悠斗は僅かに揺らいだ。 あの時の、凪沙の料理の味を思い出したのだ。
「…………やっぱ帰れ」
「今のワンクッションは、凪沙の料理に揺らいだんでしょ。 で、どうかな?」
「……暁。 何で俺気にかける、俺とお前は他人だ」
凪沙は頬を膨らませた。
「凪沙でいいって言ってるでしょ。 それより、お弁当食べよう」
「勝手に決めんな。 俺は承諾してねぇぞ。 てか、俺の質問を無視すんな」
凪沙はちょっぴり強引に、悠斗に弁当を渡した。 今の悠斗は、多少強引ではないと効かないと思ったからだ。
悠斗は、上体を起こしベンチに座った。 そして、空いた隣に凪沙が座る。 悠斗が弁当箱を開けると、ミートボールに唐揚げ、ポテトサラダにソーセージに白い飯と、とても美味そうだった。
悠斗は弁当箱から箸を取り出し、唐揚げを一口。
「ッ!?」
かなり美味かったが、悠斗は顔に出す事はなかった。
凪沙は緊張の面持ちで、悠斗の横顔を見ていた。
「ど、どうかな?」
「……まあまあじゃないか」
当然嘘だが。
「そっかー。……もっとお料理頑張らないとね! うん、明日も頑張るよ!」
「はあ!? お前、明日も持ってくる気かよ!?」
凪沙は上目遣いで、若干目許に涙を溜め悠斗を覗き込むように見る。
それは、アヴローラにそっくりだった。 この表情をしたアヴローラに、悠斗は一度も勝てた事がないのだ。
「ダメかな……」
「……勝手にしろ」
そっぽを向いた悠斗を見て、凪沙は満足そうに笑った。
「うんうん、勝手にさせてもらいます。 それより悠君。 暁じゃなくて、凪沙って呼んでよ」
「……呼んで欲しかったら、俺に信用される事だな……」
「うん、りょうかい。 凪沙、頑張るね」
「は?」
悠斗は素っ頓狂な声を上げた。
諦めると思ったのに、凪沙の返しが意外だったからだ。
「……お前、俺に信用させる気か?」
「もちろん。 それに、悠君の根はとても優しいと思うんだ。 面倒見がいいって言えばいいのかな?」
悠斗の本質はとても優しいのだ。 そうでなければ、アヴローラと友になるなんて不可能だ。
食事を摂りながら、このように話していたら、あっと言う間に昼休みが終了しようとしていた。
「あ、時間だ。 凪沙、授業に行くね! またね、悠君」
悠斗から空になった弁当箱を受け取り、凪沙は慌ただしく屋上を後にした。
「……はあ、慌ただしい奴だな」
悠斗は嘆息した。
だが、この時から悠斗の心の中には、暁凪沙いう存在が徐々に入ってきていたのだった。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
悠斗はあれからも授業には参加せず、屋上で横になっていた。 最後の予鈴が鳴り、放課後になったらしい。
悠斗は、周囲に張った結界を解き、上体を起こしてから伸びをした。
「帰るか。 何か疲れたわ」
と言っても、悠斗はまともに授業を受けた事はない。 受けたとしても、体育くらいだけだ。
クラスでは、ほぼ幽霊扱いである。
鞄を肩にかけてから屋上を出て、下駄箱で靴に履き替えてから校舎を出ると、見知った人影が近づいてくる。
「悠君。 もう帰り?」
「……何でもいいだろ」
だが遠回しに、そうだ。と言ってるのだ。
「凪沙も今帰りなんだ。 一緒に帰ろう。 たしか、同じマンションだよね?」
凪沙は、可愛く首を傾げた。
そう。 悠斗が那月から与えられた住居は、アイランド・サウス七〇三号室。 暁家の隣なのだ。
この時悠斗は、何で隣のマンションなんだよ。と思っていた。
「……勝手にしろ」
「うん。 一緒に帰ろっか」
凪沙は元気よく返事をする。
悠斗は歩き出し、凪沙も悠斗の隣により歩き出した。 悠斗は無意識に道路側を歩き、歩幅も凪沙合わせ、信号付近になったら僅かに前に出て左右の確認も忘れなかった。
これは悠斗の癖だ。 悠斗は、アヴローラと一緒に歩く時このようにしていたのだ。 それが半年となれば、必然的に癖になるというものだ。
「……悠君、棘を取れば凄くモテそう」
「……何言ってんだ」
悠斗は両目を細めて凪沙を見て、凪沙はあたふたする。
「だ、だって、女の子が見るポイント満点だもん。 も、もしかして、無意識?」
「無意識も何も、普通に歩いてるだけだろ」
悠斗は嘆息した。
女の子が見るポイントと言われても、何の事かさっぱり解らないのだ。
「……感情の上下が激しい奴だな、お前」
「そ、そうかな」
悠斗と凪沙はモノレールの改札を通り、モノレールの中に乗り込む。車両の中は、案外混んでいた。
凪沙の小さな体が押し潰されそうだ。
悠斗は凪沙の手を握り、反対側の窓際に寄せてから乗客から守る壁になる。
「大丈夫か?」
「……う、うん。……――悠君、やっぱり優しいよ……」
後半の呟きは、悠斗の耳には届かなかった。
モノレールから下車する時も、悠斗が先頭になり、小さな道を作って凪沙に通ってもらう。
それから、凪沙と悠斗は、再び改札を潜りマンションへ足を向ける。
「悠君、さっきはありがとう」
「……気にすんな」
悠斗と凪沙はマンションのドアを潜り、ロビーに備え付けれられたエレベーターに乗り込む。悠斗が七階のボタンを押し、エレベーターがゆっくりと上に動き七階に到着した。
“開”ボタンを押し続け、凪沙が降りたのを確認してから、悠斗もエレベーターから降り、自身の部屋へ足を向けた。
凪沙が七〇四号室。 悠斗が七〇三号室のドア前に到着し、悠斗は、鍵を開けからドアを開き部屋に入ろうとするが――、
「あ、あの!」
何故か、凪沙は緊張気味だ。 若干頬も赤い。
「……なんだよ」
悠斗は、面倒くさそうに凪沙を見た。
「こ、これからも……い、一緒に帰ってくれるかな」
悠斗は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしたが、すぐにいつもの面持ちに戻った。
「……考えとく」
「う、うん」
それからは、悠斗と凪沙は一緒に帰る事が多くなった。
最初は棘があった悠斗だが、次第にそれも取れてゆき、言葉遣いも柔らかくなったのだ。
悠斗と凪沙は、いつものように自宅のドア前で立ち止まった。 悠斗は鍵を開け、そして――、
「――
「い、今、凪沙って」
だが、悠斗は返答せず部屋に入って行く。 凪沙は、悠斗に信用してもらう事ができたのだ。
これが、神代悠斗と暁凪沙の始まりの物語だ――。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
そして現在。
悠斗が目を覚ました場所は、自身のベットの上だった。 監獄結界で気を失った悠斗を、那月が空間転移で送ってくれたのだろう。
悠斗は上体を起こした。
「……俺に姉がいたとはな。 それに、眷獣たちは、両親が託してくれたのか……」
そう言ってから、予想外だわ。と呟く。
だが、何故だろう。 凪沙と朱雀は、悠斗より相性がいいのだ。 まさか、朱音が関わっているのか。
……いや、肉親たちは、『異能狩り』に殺されたのだ。 魂が宿ってるなど有り得ない。
「……にしても、懐かしい夢を見たな」
その時、洗面器とタオルを持った凪沙が部屋に入って来た。 古城と凪沙、浅葱は、三時間足らずで目を覚ましたが、どうやら悠斗は、一日眠っていたらしい。
「おはよう。 悠君」
「ああ、おはよう。 懐かしい夢を見てたよ」
凪沙は、洗面器を隣に置き、ベットの隣に腰を下ろした。
「……うん、凪沙も全部見たよ。 アヴローラさんのことや自分のこと。 遺跡のことに、悠君のご両親のこと」
「……そうか」
凪沙は、古城と遺跡の事に関して話し合ったらしい。
――凪沙が、古城を第四真祖の血の従者、第四真祖にしてしまった事だ。 凪沙は暗い面持ちで古城に話したが、古城は感謝の気持ちで一杯だったらしい。
あの時凪沙が古城を生き返らせなければ、今の生活はなかったのだから。 そう、悠斗とも出会う事はなかったのだ。
古城と悠斗は、親友の間柄と言ってもいいのだ。
「凪沙が見たのが、俺の過去全てだ」
と言う事は、凪沙も、悠斗が持つ情報を全て知った。と言う事になるのだ。
凪沙には、聖殲の情報がほぼ正確にあるのだ。
「ま、暗いのは終わりだ。 明るくいこうぜ」
「そうだね。 それにしても、悠君が牙城君と知り合いだったなんてね。 凪沙、驚いちゃったよ」
悠斗は頬を掻いた。
「あー、まあ、成り行きでな。 俺、あの人には敵わねぇんだわ。 俺、殺されないよな。 大丈夫だよな……」
今の凪沙は、紅蓮の織天使の正式な血の従者だ。
これを知ったら、親バカの牙城はどういう反応をするのか? 悠斗は恐怖でしかない。
「きっと大丈夫。 凪沙と悠君なら」
そう言って、凪沙は両手で、悠斗の右手を優しく包み込んだ。
「それにしても、あの時の悠君、かなり棘があったね」
凪沙は唇を尖らせ、悠斗は喉を詰まらせた。
「あ、あの時は、色々あったからな」
「あの時、わたし頑張ったんだからね」
悠斗は、左手を凪沙の手の上に置き、悪かった。と言い、ベットから両足を下ろし、凪沙の額に口づけをした。
凪沙は、もうっ。と言い、若干頬を膨らませたが。 まあでも、嫌がってる素ぶりは無かった。
「俺の心の氷を溶かしてくれてありがとう。 大好きだよ、凪沙」
「ううん、凪沙もだよ。 助けてくれて、ホントにありがとう。 大好きだよ、悠君。――――愛してます」
悠斗の顔が赤面した。
「そ、それは不意打ちだぞ」
まったく。と言い、悠斗は苦笑した。
「――――俺も愛してるよ」
凪沙は、笑顔で頷いてくれた。それにつられて、悠斗にも笑みが零れる。
そんな二人を、カーテンの隙間から洩れる、太陽の光が照らしていた――。
さて、この章も完結しましたね。まあ、あの後も、アヴローラの事とか、思い出話をしました。
てか、作者燃え尽きたかも……。こんなに一気に投稿したの初めてですよ(-_-;)
まああれです。更新ペースは落ちるかも……。
次回は、日常編を挟んで、黒の剣巫ですかね。
ではでは、感想、評価、よろしくお願いします!!
追記。
悠斗君が、いつも授業をサボる場所は、高等部の屋上ですね。
だから、凪沙ちゃんも見つけられるんですよ。
後、悠斗くん編入して直後、凪沙ちゃんは悠斗君を見つけました。