ストライク・ザ・ブラッド ~紅蓮の熾天使~   作:舞翼

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連日投稿やで。
この章は、長くなる予感がする。

それでは、本編をどうぞ。


戦王の使者Ⅲ

夕陽に照らされた海沿いの歩道を、悠斗、古城、雪菜は歩いていた。

三人は少し寄り道して、自宅近くにあるスーパーマーケットへと向かう。

部活で遅くなる凪沙の代わりに、夕食の材料を買って帰るのだ。

 

「差し出し人は、アルデアル公ディミトリエ・ヴァトラー…………誰だ?」

 

古城は式神が残していった手紙を眺め、困惑したように呟いた。

絃神港の停泊中のクルーズ船で、大々的な催しが行われるらしい。

その招待状だったのだ。

 

「アルデアル公国は、戦王領域を構成する自治領の一つです」

 

雪菜が重々しい口調で説明し、

 

「ちなみに、ディミトリエ・ヴァトラーは、俺に喧嘩を吹っかけてきた野郎でもある。 その後えらく気に入られてね。 はあ……」

 

悠斗は深々と溜息を吐いた。

 

「「は?」」

 

古城と雪菜は同時に声を上げた。

 

「か、神代先輩は、戦王領域の貴族と何をやってるんですか!?」

 

「死闘だ」

 

悠斗は、平然とそう答えた。

 

「その後は色々あって荒れてな。 誰構わず、強い奴に喧嘩を売ってたんだよ。 でだ、古城は戦王領域を知ってるよな?」

 

「……ああ、東欧にある夜の帝国(ドミニオン)……第一真祖の支配地だろ。 七十二体の眷獣を従える覇王……だっけ。 ま、まさかお前」

 

「おう、コイツには喧嘩を売ったぞ。 まあ、買ってくれなかったけどな。 俺宛にも手紙が届いてんだろうな」

 

「……お、お前は、過去になにやってたんだ」

 

古城は悠斗の言葉を聞き呆れて、雪菜も隣でげんなりしていた。

真祖が操る眷獣といえば、都市や一つや二つを簡単に壊滅させる正真正銘の化け物だ。

悠斗は、そんな奴に喧嘩を売ったと言っているのだ。

 

「……まあ、お前の過去は置いといて。 で、このヴァトラーってのは、その第一真祖の臣下ってわけか」

 

「そのはずです。 自治領の君主というのは貴族、つまり第一真祖直系の血族から生まれた、純血の吸血鬼ということになりますから」

 

「なるほどな」

 

凪沙に渡されたメモを見ながら、古城は買い物カゴに野菜や果実を入れていく。

食材の量は四人前。 悠斗、古城、雪菜、凪沙だ。

これは、凪沙が『みんなで食べた方が美味しいし、うちで夕食を食べようよ』と強引に誘った結果だ。

雪菜は、古城と悠斗の監視が目的なわけで、悠斗は夕食を作らなくて済むという魅力的な誘いだったのだ。

そんなわけで、悠斗と雪菜が暁家で夕食を摂る事が当たり前になっていたのだ。

 

「そんな大物が、なんで絃神島なんかに来てるんだ?……ちょ、タマネギ多すぎるだろ、これ」

 

「野菜の好き嫌いはダメですよ」

 

「そうだぞ、古城。 ピーマンじゃないんだから安心しろ」

 

そんなことを言っていたら、雪菜は野菜コーナーからピーマンもカートの中へ入れた。

 

「ちょ、ピーマンも多すぎだ」

 

「神代先輩も好き嫌いはダメです。 凪沙ちゃんにいつも言われてるじゃないですか」

 

「うぐっ……」

 

悠斗は言葉に詰まってしまった。

悠斗は溜息一つ吐き、

 

「はあ、わかった。 ちゃんと食べるから」

 

「そうしてください。 好き嫌いはダメです」

 

古城はピーマンを売り場に戻しながら、

 

「で、なんでヨーロッパの吸血鬼がオレの名前知ってるんだ……?」

 

「先日のロタリンギア殲教師の一件で、暁先輩の存在に気付いたんだと思います。 神代先輩も例外ではありません。……先輩、こっそりピーマンを売り場に戻さないでください。 子供じゃないんですから、もう」

 

古城は溜息を吐きながら、ピーマンをカートに戻す。

傍から見ていると、雪菜は二人の弟の面倒を見る姉のようだった。

招待状を広げた古城は、一箇所の文面を見て、困惑の表情を浮かべた。

 

「先輩、どうしましたか?」

 

「あ、ああ……なんか、ここにパートナーを連れて来いって書いてあるんだが」

 

「パートナー?」

 

雪菜と悠斗は、ああ、納得した。

 

「欧米のパーティでは夫婦や恋人を同伴させるのが基本なんですよね」

 

「いない場合は、代役を立てるしかないな。 俺はいないから、代役を立てるしかないけど」

 

「代役……と言われてもな」

 

古城は困ったように唇を歪める。

 

「吸血鬼がらみのパーティなんかに凪沙を連れて行くわけにはいかないし。 そんなことしたら悠斗に殺されるし。 浅葱は怒ってたみたいだし、あんまヤバいことに巻き込むわけにもいかないしな……」

 

雪菜が、コホン、と咳払いをして可愛らしく古城を見た。

 

「先輩の正体を知ってて、危険な状況にも対処できる人材というと、選択の余地はあまりないと思いますけど」

 

「そだな。 巻き込むのは気が引けるけど……頼んでみるか、那月ちゃんに」

 

「「は?」」

 

悠斗と雪菜は同時に声を上げた。

 

「いや、だってあの人ならオレの正体知ってるし、攻魔師の資格も持ってるし、危険な状況にも対応できる。 適任だろ」

 

「古城のアホ。 いるじゃんかよ、お前のすぐ傍に」

 

古城は雪菜を見た。

 

「姫柊に頼んでもいいのか?」

 

「はい、先輩の監視が私の任務ですから」

 

「ま、とりあえず、会計して帰ろうぜ」

 

「「おう(はい)」」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

それぞれの部屋へ戻ると、悠斗の部屋のドアに一通の手紙が挟んであった。

その手紙は、夕方に見た手紙と同じものだった。

 

「……案の定きてたな」

 

差し出し人はアルデアル公ディミトリエ・ヴァトラー。

宛先は、神代悠斗様と書かれていた。

 

「やっぱりバレてたか。 まあ、朱雀を大っぴらに解放したからな。 はあ、行きたくねー。 行くとしても、女性同伴ってどうすんだよ……」

 

その時、一本の電話が鳴った。

 

「どうやって俺のスマホの番号まで調べたんだか……。 予備の奴だから別にいいけど」

 

悠斗は通話ボタンをタップし、通話口を耳に当てた。

 

『もしもし、アルデアル公の代理の者ですが。 本日のパーティの代理を務めさせて頂きますがよろしいでしょうか?』

 

「ああ、よろしく頼む」

 

『承りました。 それでは、お時間になりましたら迎えに参りますので、よろしくお願い致します』

 

悠斗は通話を切り、スマートフォンをテーブルの上に置いてから、クローゼットの引き出しからスーツを取り出し着替え始めた。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

指定された時間に外に出ると、そこには黒張りのベンツが止められていた。

その後部座席からは、チャイナ服を身に纏った女性が降りてきた。

 

「神代様、初めまして。 アルデアル公の監視役である、獅子王機関の舞威媛、煌坂紗矢華と申します」

 

「今日はよろしく頼む。 神代悠斗だ。 その喋り方はやめてくんないか、年齢が近い相手にそんな扱いされるのはムズかゆい」

 

「そ、そう。 じゃあ、いつも通りにさせてもらうわ」

 

「おう、その方が絡みやすくて助かる」

 

悠斗は紗矢華に促され後部座席に乗り込み、紗矢華も乗り込むと、ベンツは目的地へ向けて走り出した。

 

「ったく。 どうやって俺の家まで特定したんだか。 ヴァトラーの監視は疲れるだろ」

 

「ええ、本当に……。 わかってくれる人がいるなんてね。 そんなことより、アルデアル公を知ってるの?」

 

「知ってるも何も、殺し合いをした仲だ」

 

紗矢華は眼を見開き、

 

「あんたは何やってんの!? てか、何者よ」

 

「あー、それは内緒だ。 まあ、あの戦闘狂にバラさせると思うが」

 

そんな事を話しながら目的地へ到着した。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

アルデアル公ディミトリエ・ヴァトラーの船は、南湾地区の大桟橋に停泊していた。

遠目からでも異様に目立つ豪華客船だ。

 

「……洋上の墓場(オシアナス・グレイヴ)。 なんつー名前をつけてんだ。 つか、一緒に沈んでくんねぇかな」

 

「いえ、ここ(絃神島)で死なれると外交問題に発展するからまずいわ」

 

「ここじゃなかったらいいのかよ……」

 

こう言うということは、紗矢華も監視で相当まいっているのだろう。

 

「で、あの蛇遣いは何処にいるんだ」

 

「たぶん、アッパーデッキね。 案内するからついてきて」

 

この船に乗り込んでいく人々は、ニュースなどで見かける顔が多い。

大物政治家や経済界の重鎮、政府や絃神市の要人たちだ。

その時、ちょうど古城と雪菜の姿が映った。

二人は人混みの中、手を握ろうとしていた所だった。

殺気を伴った銀色の光が、古城に向かって振り下ろされたのは、その直後だった。

 

「――せいっ!」

 

「うおっ!?」

 

咄嗟に跳び退いた古城の眼前を、鋭く研ぎ澄まされたフォークの先端が掠めていく。

 

「失礼。つい、手が滑ってしまったわ」

 

「どう滑ったら、フォークを他人の腕に向かって振り下ろそうとするのか、ぜひ教えて欲しんだが……。てか、なんか今、掛け声っぽいものも叫んでたよな!?」

 

「あなたが、下劣な性欲を剥き出しにした手で、雪菜に触れようとするからよ、暁古城」

 

「さっきのはなかなか惜しかったぞ、煌坂」

 

古城は、悠斗を見て眼を見開いた。

 

「ゆ、悠斗。 お前も来てたのか!?」

 

「まあな。 夕飯の食材を買ってる時に言ったぞ」

 

「ああ。 そういえば、そうだったな」

 

雪菜が戻って来たのは、その直後だった。

 

「――紗矢華さん!?」

 

「雪菜! 久しぶりね、元気だった?」

 

紗矢華が雪菜に勢いよく抱き付いた。

まるで、――奇跡の再会を遂げた姉妹のように。

雪菜にむしゃぶりつく紗矢華の後頭部に、古城がチョップを叩き込む。

 

「はやく案内してくれ」

 

「わ、わかったわよ。 ついてきなさい。 てか、死になさい。 暁古城」

 

「死ぬかっ!」

 

古城は怒鳴り返しながら、紗矢華の後について階段を上る。

悠斗は溜息を吐いてから、古城の隣に並んだ。

四人は上甲板に出る。 漆黒の海と夜空を背景にして、広大なデッキに立っていたのは一人の青年。

純白のスーツを纏った青年だ。

刹那、彼の全身が純白の閃光に包まれた。

そう。 眷獣が放たれたのだ。

灼熱を纏った炎の蛇と、冷気を纏った氷の蛇だ。

 

「はあ。――飛焔(ひえん)!」

 

「ぐお……っ……!」

 

悠斗は右手を突き出し、掌から浄化の焔を放ち氷の蛇を浄化させ、古城は全身に雷光を纏い、放たれた稲妻で炎の蛇を迎え撃った。

 

「あ……ぶねぇ! なんだこれっ!?」

 

「まったく、戦闘狂はこれだから困る」

 

巨大な魔力同士の激突の余韻に、ようやく我に返った古城が呻き、悠斗は悪態をついた。

その時、純白のコートを身に纏った青年から拍手の音が鳴り響いた。

それを防がれたことを、喜んでいるようにも見える。

 

「いやいや、お見事。 やはりこの程度の眷獣では、傷付けることもできなかったねェ」

 

彼は古城の前で片膝を突き、恭しい貴族の礼をとった。

 

「御身の武威(ぶい)を検するがごとき非礼な振舞い、衷心(ちゅうしん)よりお詫び申し奉る。 我が名はディミトリエ・ヴァトラー、我らが真祖、“忘却の戦王(ロストウォーロード)”よりアルデアル公位を賜りし者。 今宵は御身の尊来(そんらい)をいただき恐悦(きょうえつ)の極み――」

 

あまりに見事な彼の口上に、古城がうろたえた。

 

「あんたが、ディミトリエ・ヴァトラー……? オレを呼び付けた張本人?」

 

「初めまして、と言っておこうか、暁古城。 いや、焔光の夜伯(カレイドブラッド)――我が愛しの第四真祖よ!」

 

そう言って、ヴァトラーは古城を愛しげに見つめた。

そして古城を迎え入れんとするかのように、大きく両腕を広げた。

 

「……はい?」

 

告げられた古城は言葉の意味が理解出来ずに、弱々しい呟きを洩らす。

 

「ヴァトラー、その辺にしとけ、古城が困ってるだろ」

 

「フフ、そうダネ」

 

ヴァトラーは悠斗の前で片膝を突き、

 

「先程の非礼をお詫び申し上げる。 再び御眼にかかれること光栄の極み――紅蓮の熾天使よ」

 

これを聞いた紗矢華は眼を見開き、面倒事に巻き込まれる予感がした悠斗は空を見上げた。




悠斗君は、力を封印する前は、激強だったんでしょうね。
真祖と獅子王機関の三聖に喧嘩を売ってますからな。
あと悠斗君は、朱雀を召喚しなくても、朱雀の技を使うことが出来ますな。
出力は弱いですが。

ではでは、エネルギーとなる感想、評価、よろしくお願いします!!
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