ストライク・ザ・ブラッド ~紅蓮の熾天使~   作:舞翼

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更新が遅れて申し訳ないです……(-_-;)
でも、頑張って書きあげました。久しぶりの投稿なので、矛盾が生じてないか不安です。
で、では、どうぞ。


冥き神王の花嫁Ⅴ

 テーブルの椅子に座り、セレスタの前に並べられたのは、雪菜が先程作ったカレーだ。 カレー特有な匂いが、セレスタの鼻腔を刺激する。 夏音たちも昼食は摂って入なかった為、雪菜は、夏音たちの前にカレーをよそった皿を置く。

 セレスタはスプーンでカレーを掬い一口食べた。 ちなみに、古城たちは輪を作るようにテーブルの椅子に座っている。

 

「これって、地味女が作ったの?」

 

 どうやら雪菜は、“地味女”という渾名がセレスタの中では定着してしまったらしい。

 

「そうですね。 口にありませんでしたか?」

 

「……美味しいけど。 地味女が作ったとか以外でね。 あんた、ドジで料理ができない部類だと思ったから」

 

 セレスタの言う通り、雪菜は料理にあまり手をつけてなかったので、最初の方はダークマターと呼ばれるものを作り、古城が顔を顰めながら胃に流し込んだらしい。

 

「いや、セレスタ。 姫柊は料理ができない部類だったぞ」

 

「ああ。 オレは最初の頃、物体Xを食ってたしな」

 

 雪菜は、何で言うんですか。と思いながらキッと睨むが、古城と悠斗は涼しい顔でそれを受け流す。

 すると、セレスタが、

 

「へぇ、やっぱり地味女はできない部類だったのね」

 

 セレスタの追撃を受け、雪菜は肩を落としたのだった。

 ともあれ、夏音とセレスタの食事が摂り終わり、今後の事を話し合う事になった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「……悠斗の事はわかったけど。 変態はホントの所どうなの? ヴァトラー様の家来じゃないの?」

 

「……何でオレが、あいつの家来になんねぇといけないんだよ。 冗談でもやめろ」

 

 古城は、心外だ。と言いながら、唇を曲げた。

 セレスタは、不快そうに唇を尖らせる。

 

「じゃあ、何で私は、あんたたちの所に送られてきたのよ……」

 

 それはこっちが聞きたい。そう思いながら、悠斗と古城は内心で頭を抱える。

 セレスタが目覚めたのはいいが、彼女は記憶を失っていて、肝心なヴァトラーとコンタクトも取る事もできず、那月と連絡を取る事もできない。 正に、八方塞りというやつである。

 ニーナは腕を組みながら、

 

「蛇遣いは、古城と悠斗の手元にセレスタを置くのが安全と判断したんだろうな」

 

 古城は第四真祖であり、悠斗は紅蓮の織天使だ。 最強と呼ばれる者たちの手元に置くのが安全。 ニーナの言う通り、ヴァトラーはそう判断したのだろう。

 ニーナの発言に、雪菜はある仮設を立てた。

 

「二ーナさんの言う通りかもしれません。 第一真祖“忘却の戦王(ロストウォーロード)”を除けば、アルデアル公が御自分と同格以上の戦闘能力の持ち主だと認めているのは、おそらく先輩方だけ――ですよね?」

 

「まあ、そうかもな……」

 

「だろうな」

 

 ヴァトラーが認めるもの。それは“絶対的な力”だ。

 敵や味方という概念すら曖昧なヴァトラーが、多少なりとも敬意を払うのは、戦う価値があると認めた相手だけだ。

 正確にいえば、古城は第四真祖から受け継いだ血であり、悠斗に限っては、唯一負けた相手で、再戦を楽しみにしてからである。

 

「なのでアルデアル公は、先輩方にセレスタさんを任せたんだと思います。 先輩方以外には、セレスタさんを護れないと考えたから――」

 

 “力こそが絶対”。 シンプルだが、その分説得力もある仮説だった。

 そして、雪菜の主張は、同時にもう一つの可能性も示している。

 

「……なるほどな。 セレスタは何処かの組織に狙われてる可能性があるって事だろ?」

 

「はい、あくまでも仮説ですけど」

 

 悠斗の問いに、雪菜は表情を硬くして頷き、これを聞いたセレスタは目に見えて怯えてるようだった。

 

「――心配は不要。 第四真祖、紅蓮の織天使があなたを護る」

 

 怯えるセレスタを励ますように、アスタルテが無感動な声を発した。 アスタルテがこのように発言するのは珍しい事であった。

 

「大丈夫です。 お兄さんと悠斗さんは、私のことも助けてくれました」

 

 夏音も怯えるセレスタに微笑みながらそう言った。

 セレスタは照れたように顔を背け、ごにょごにょと歯切れ悪く言い返す。

 

「べ、別に心配してないし。 護ってもらわなくても平気だし」

 

 セレスタは話の矛先を変える為、咳払いをしてから姿勢を正す。

 

「夏音だっけ? あんたは、その男のことどう思ってるの?」

 

 セレスタが言うその男とは、古城の事を指している。

 夏音は首を傾げつつ、簡潔に答えた。

 

「お兄さんのことは、ずっと好きでした」

 

 ごふ、と古城が咳き込み、雪菜は硬直している。

 

「そ、そうなの?」

 

 毒気を抜かれたような態度で、セレスタが聞き返した。

 

「はい。 お兄さんに雪菜ちゃん、凪沙ちゃんに悠斗さん、アスタルテさんも大好きです」

 

「あ……そ、そういうこと……」

 

 紛らわしい事いわないでよ。と言って、へなへなに脱力するセレスタ。

 アスタルテはいつも通りだが、古城と雪菜はぐったりと顔を伏せていた。 悠斗は言わずとも、ある少女(凪沙)の事を想っているので別段気にしてる様子は無い。

 名前を呼んでもらえなかったニーナだけが「妾は?」と不満げに腕を組んでいた。

 そして、マンションのベランダでは、ガタンッ、と誰かが蹴躓いたような気配があった。 通常ならば聞き逃してしまう音だが、雪菜は即座に反応した。

 立ち上がり、壁際に立てかけてあったケースから雪霞狼を取り出し、滑らかな動きで構え、折り畳まれていた三枚の刃が展開し全金属製の柄がスライドする。 流し込まれた呪力に反応し、刃が発光する。

 

「――雪霞狼!」

 

 だが、悠斗がベランダ付近に紅い結界を展開。 雪菜が放つ攻撃は、結界に阻まれたが、それと同時に紅い結界も消滅した。

 

「――姫柊、ストップだ!」

 

 悠斗がそう言うと、純白のローブに全身を包んだ若い女が姿を現す。

 銀色の装飾を施した長剣を背負って、ノースリーブに改造したミニスカートの軍服だ。 彼女の第一印象を表現すると、間違った忍者のコスプレをした外国人である。 彼女は、夏音の護衛についているアルディギア聖環騎士団、ユスティナ・カタヤ要撃騎士である。

 

「コイツは夏音の護衛、アルディギアの騎士だから敵じゃない。 心配するな」

 

「――忍! 紅蓮の織天使殿の言う通りでございます。 私は、アルディギア聖環騎士団所属、ユスティナ・カタヤであります! 至急、伝えなければいけない事が――」

 

「ああ、用件は解ってるよ。 ここのマンション、包囲されてるんだろ?」

 

 悠斗の眷獣、玄武は気配感知が可能だ。 だが、直前まで感知する事ができなかった。 この事から導き出せる答えは、認識阻害魔術が使用されていたが妥当だ。 悠斗の能力対策がされていたのである。

 

「(……マンションを包囲した時に、魔術を解いたってのが妥当の線だな。ったく、玄武の対策をしてるとか最悪だな……)」

 

 眷獣の能力に頼り過ぎたのが仇になったな。と思いながら、悠斗は溜息を吐く。 この組織相手に、玄武の気配感知能力は効果を持たない。 また敵の狙いは、セレスタの身柄確保だろう。

 敵の数は二人。 逃げるのは困難である為、おそらく、正面から戦闘になるだろう。 そして、爆音と共に玄関ドアが粉砕され、飛び込んで来たのは獣の姿をした巨大な影。 こうして、第四真祖、紅蓮の織天使の日常は終わりを告げるのだった――――。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 最初に動いたのは雪菜だった。

 玄関のドアを粉砕し、金属破片を撒き散らしながら現れた歪な人影。 その姿が完全に入る前に跳躍し、呪力を伴う強烈な踵蹴りを叩き込む。

 

「――鳴雷っ!」

 

 顎骨が砕ける鈍い音と共に、侵入者の大柄な体がぐらついた。

 侵入者の正体は、身長二メートルを超える獣人だ。 自分自身の四倍近い体重の魔族を、続けて放たれた雪菜の掌底が吹き飛ばす。

 悠斗と古城は、夏音、セレスタ、アスタルテを背にするように立った。

 

「――炎月(えんげつ)!」

 

 悠斗が紅い結界を、夏音たちと古城たちの間を遮るように展開し、その結界が四方に展開され、彼女たちを護る。 これで、結界の内部にいる彼女たちの無事は確保されたはずだ。 だが、念には念をだ。

 

「――ユスティナとアスタルテは、夏音とニーナ、セレスタを護れ。 俺たちの心配はしなくていい」

 

「――御意!」

 

「――命令受託(アクセプト)

 

 その時、雪菜が叫んだ。

 

「――先輩方、此方は囮です!」

 

「囮!? 陽動作戦って事か!?って事は――!」

 

 窓硝子を粉々に割り部屋内部に侵入して来た第二の獣人に、古城が右ストレートで迎撃するが、その一撃は手応えがなく虚しく空を切った。

 そう、古城が殴ったのは、呪力によって生み出された幻影だ。 幻影の背後に立っていた本体が、荒々しく牙を剥いて笑っている。 その獣人は、大きく体勢を崩した古城目掛けて、鉤爪を振り上げる。

 

「――牙刀(がとう)!」

 

 悠斗が、古城と獣人の間に割って入り、左手に召喚した神力を纏う刀(・・・・・・)が、魔力を纏った獣人の腕と衝突し火花を散らす。

 悠斗がその均衡に勝利し、左腕を弾き、そのまま胸元を抉る。 その傷口が青白い炎に包まれて、獣人が苦悶の声を上げた。

 

「凄ェ……。 その刀、神力も纏ってるだろ……」

 

「まあな。 最近になってできるようになった。 まだ、微弱しか使えないけど」

 

 だが、神がかった芸当ができる時点で、悠斗は人外とも言える存在かも知れないが……。

 ともあれ、

 

「二人とも、動かないで下さい!」

 

 雪霞狼を握った雪菜が、獣人たちに向かって鋭く叫んだ。 構えた槍の切っ先は、倒れた第一の獣人の喉元付近に突き付け、第二の獣人の喉元付近には、悠斗の刀の切っ先が向けられている。

 

「これ以上の戦闘は無益だと思いますが、まだやりますか?」

 

「…………」

 

 雪菜に顎を砕かれた獣人が、ぐふっ、と苦悶の息を吐いた。 聞き取りにくい声で、彼は口を開く。

 

「シアーテの娘を、返してもらおう」

 

「……っ!」

 

 怯えたように息を飲んだのはセレスタだった。

 記憶を持たない彼女にとって、獣人たちの襲撃は、見知らぬ過去から迫って来た恐怖そのものだ。 何故、自身が狙われているのかも解らないまま、ただ不安と苦悩に震えるしかない。

 

「その娘は、我らが育てたザザラマギウの依り代。 我らのものだ」

 

 なッ!? と声を上げたのは悠斗だ。 彼は神の一族であり、神に関する知識ならば持っているのだ。

 そして、ザザラマギウとは邪神の名前だ。 獣人は、セレスタはザザラマギウの依り代と言った。という事は、セレスタはただ巫女ではなく、邪神召喚に必要な――――取り換えが効かない生贄なのだ。

 おそらくこの獣人たちは、ザザラマギウ信者の末裔なのかもしれない。 なので彼らは、どんな手を使っても、セレスタを取り戻そうとするのだ。 ただ、ザザラマギウを召喚させ、何を望んでいるのかは解らないままだが。

 

「テメェらにセレスタを渡すわけがねぇだろうが、他を当たれ」

 

「……そうか。 慈悲を与えたのは間違いであったか」

 

 く、と低く笑う獣人。襲撃が失敗し追い詰められているはずの彼らが見せる余裕。 嫌な予感がした古城たちは、数歩後退した。

 直後、獣人の体が、さらに二回り以上も大きく膨れ上がり、そのまま姿を変えていく。 人型から完全な獣の形へ。 体長、四、五メートルにも達する禍々しい獣へと。

 

「っち、神獣化かよ」

 

 悠斗はそう言ってから舌打ちをした。

 神獣化とは、獣人種族の中でも、一握りの上位種だけが持つと言われている特殊能力だ。

 寿命すら縮める程凄まじい消耗と引き換えに、自らの肉体を神獣へと変える。 鳳凰や龍にも匹敵する神話級の存在へと。

 

「アスタルテ!」

 

 神獣化となれば、悠斗の結界だけでは心元ないので、悠斗はアスタルテに叫んだ。

 

命令受託(アクセプト)。―――防護モード。 自衛権を行使します。 執行せよ(エクスキュート)薔薇の指先(ロドダクテュロス)

 

 アスタルテは羽織っていた白衣を脱ぎ捨てて、背中に魔力の翼を広げた。 それは巨大な眷獣の腕へと変わって、夏音たちを護るように、神格振動破の防護結界を形成させる。

 

「姫柊も、雪霞狼で結界を展開させろ! お前の呪力なら、神格振動破だけで問題ないはずだ!」

 

 悠斗は古城と目配せをする。

 古城が頷き、悠斗たちは玄関側の神獣の足元に滑り込み、二体の神獣が一直線に並ぶ角度を見計らい両手を突き出す。

 

「――疾や在れ(きやがれ)双角の深緋(アルナスル・ミニウム)!」

 

「――雷球(らいほう)!」

 

 古城は眷獣の魔力だけを抽出して、高密度な衝撃波を弾丸として撃ち放つ。 理屈的には可能なはずなのだ。 その例が、悠斗が放つ眷獣攻撃だ。

 悠斗も、魔力を一点に集中させ、魔力の塊を形成させ、それを神獣に撃ち放つ。

 神獣化した二体の獣人を纏めて吹き飛ばし、マンションの外へと押し返す。

 

「くっそ……悠斗のように完全に制御するのはまだ無理か!」

 

 血管が破れて血塗れになった両腕を押さえて、古城が荒々しく息を吐いた。

 悠斗は意図も簡単に行使してるが、攻撃系統の眷獣攻撃となるとかなり制御が難しいのだ。

 

「古城、まだ終わって無いぞ。 奴らは生きてる」

 

 半壊したベランダに飛び出して古城が見たのは、隣のマンションの建物によじ登って古城たちを睨む、神獣の姿だった。

 

「……ま、マジかよ! さっきのに耐えたのか!? 仮にも、真祖以上の攻撃だぞ!?」

 

 二体の神獣は無事だった。 深手を負っているが、戦闘能力まで失っていない。 やはり、魔力を押さえた攻撃では倒し切るのは困難だったらしい。

 

「神獣化した状態の獣人は、吸血鬼の眷獣以上の力があるとされてるんだ。 そこに超速再生も加われば、この結果は必然なのかもな」

 

 悠斗は盛大に溜息を吐いた。 これは使用したくないが、状況が状況であり、素早く動く神獣にはこれしかなかった。

 悠斗は、それぞれの二体の神獣に片手ずつを向ける。

 

「――雷神槍(らいじんそう)!」

 

 悠斗の両手から召喚されるように無数槍が形成される。 魔力が無数の槍に凝縮した代物だ。 槍の移動速度も稲妻と同等であり、防ぐには並みの吸血鬼、獣人では不可能だろう。

 悠斗が放った槍は、神獣の体に突き刺さる。 彼らの苦悶の絶叫が、ビリビリと大気を震わせる。

 閃光の光が晴れた時、神獣の姿は既に消えていた。 深手を負い、戦闘不能と判断した神獣たちは、そのまま逃走したのだろう。

 

「逃がしたか……」

 

「ゆ、悠斗……。 お、お前、そんな技を隠し持っていたのかよ……」

 

「黄龍の技で、殺傷能力を高めた稲妻の槍だ。 並みの吸血鬼なら消滅するな」

 

 そう、槍を外し地面に着弾した場所は、鋭い小さな穴が穿たれているのだ。 悠斗の言ってる事は冗談ではないだろう。

 

「そ、そうか。……てか、もう使わないでくれよ……」

 

「まあ、状況によってくるな」

 

 それを聞いた古城は、最悪な状況だけにはならないでくれよ。と懇願しながら背後を振り返り、投げやりな口調で呟いた。

 

「で……どうするんだ……これ……」

 

 古城たちのマンションは、控え目にいっても、グチャグチャで人が暮らせる環境ではない有様だ。 これは、二体の獣人と、彼らを撃退した古城たちの攻撃が原因でもある。

 フローリングの床は捲れ上がり、窓枠とベランダの手摺は跡型も残っていない。 リビングの家具は全て破壊され、残骸となって床に散らばっていた。

 それを確認した雪菜は雪霞狼を畳みながら溜息を吐き、悠斗は腕を組んでリビングの惨状を眺めていた。

 

「――どうしましょう?」

 

「……いや、どうしようもないだろう」

 

 雪菜の頼りない声と、悠斗の声が破壊されたリビングに響いた。




ユスティナさんが空気になってしまった……。なんかゴメンナサイm(__)m

さて、次回も頑張ります!!
感想、評価、よろしくお願いします!!

追記。
凪沙ちゃんも、刀に神通力を宿る事ができちゃうんですよね(笑)
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