ストライク・ザ・ブラッド ~紅蓮の熾天使~   作:舞翼

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れ、連投です。いやー、疲れました……。
では、本編をどうぞ。


咎神の騎士Ⅶ

 不死にして不滅。 一切の血族同胞を持たず、支配を望まず、災厄の化身たる十二の眷獣を従え、人の血を啜り、殺戮し、破壊する──世界の理から外れた吸血鬼。 第四真祖。

 ――世界を混沌に齎す事が可能と言われ、真祖を超える力量があると噂があり、孤独に生きる吸血鬼。――紅蓮の織天使。

 この伝説の吸血鬼たちは何所かの国に出現し、獅子王機関の誰かが、彼らを抹殺する為に派遣されるのではないか。全寮制の名門女子高にして、獅子王機関の養成所でもある“高神の社”の生徒の間では、そんな情報が瞬く間に広まって、彼女たちを恐怖に陥れていた。

 とはいえ、所詮根拠のない噂話だ。 急速に広がったと同じ勢いでその話題は風化して、忘却の彼方に追いやられるのは、そう長くはかからなかった。

 そんな中で、唯里は、思いがけない人物の口から第四真祖たちの話を聞かされる。

 獅子王機関三聖、閑古詠(しずか こよみ)である。

 第四真祖の正体が絃神島に住む高校生であり、唯里と同い年であること。 彼の監視役として派遣される剣巫の候補に、唯里の名前が挙がっていること。 もしかしたら、絃神島には紅蓮の織天使が姿を隠してるかもしれないということ。 そして、唯里の同年代であるということ。 唯里が、第四真祖、紅蓮の織天使は同世代と聞いた時はかなり驚いた。――だが、恐怖もした。

 もし、凶悪な力を振るう高校生だった場合、自身は監視役として任務を全うできるのか? 恐怖で足が竦んでしまうのではないか? 少年たちを前にして逃げ出してしまわないだろうか?

 一方で、微かな期待もあった。

 同い年の男子である第四真祖たちを監視している内に、彼らの隣を歩けるようになるのではないか。という甘い期待だ。 寮で同室の志緒以外は知らない事だが、唯里の愛読書は少女向けの恋愛マンガであった。

 

 ――閑話休題。

 

 唯里が監視役に選ばれることはなかった。

 理由は単純だ。 一つは唯里が七式突撃降魔機槍(シュネーヴァルツァー)を上手く扱えなかったこと。 獅子王機関の秘奥兵器である七式突撃降魔機槍(シュネーヴァルツァー)は、使用者に合わせた調整ができない。 その為使いこなせるかどうかは、使い手の能力や技量ではなく、武器との相性に左右される、という話だった。 事実、閑古詠(しずか こよみ)ですら、七式突撃降魔機槍(シュネーヴァルツァー)の本来の能力を完全に引き出すことはできなかったらしい。

 もう一つは、唯里が孤児ではなかったことだ。

 “高神の杜”で暮らす少女たちの中では珍しく、唯里の家族は存命だった。 両親は獅子王機関の事務員で、歳の近い弟もいる。

 もちろん唯里とて、親の七光りで剣巫になったつもりはない。 だが、唯里の家族に配慮して、第四真祖の監視役などという危険な任務から外された、とも考えられる事だった。

 なので、唯里は雪菜に対して、今も負い目を感じている。

 自分がもう少し上手く七式突撃降魔機槍(シュネーヴァルツァー)を使えていたら。 彼女にも自分と同じように家族がいたなら、第四真祖の監視という危険任務に就いていたのは、唯里の方だったかも知れないのだから。

「気がついたか」

 

 ぼんやりと輝く薪ストーブの炎に照らされながら、古城が声をかける。

 吸血鬼の真祖というイメージから思い描いていた程遠く、それなりに魅力的といえなくもない顔立ちの少年だ。 見知らぬログハウス風の建物の床に、古城は、脚を投げ出して座っている。

 古城の隣に座るのは、黒髪に漆黒の瞳、顔立ちは整っており、何所かやんちゃさを連想させる少年だ。――少年が、神代悠斗と名乗る紅蓮の織天使で間違えないだろう。

 唯里はあやふやな記憶を辿りながら、ゆっくりと上体を起こした。

 その瞬間、左腕に鈍い痛みが走る。 グレンダが飛行中、飛龍に乗った騎士の銃撃攻撃で受けた傷だった。 グレンダが庇ってくれたお陰で、大した負傷ではなかったが、暫く左手で剣を振るのは無理だろう。

 あの後、古城たちが飛龍を退かせたが、銃撃戦で龍族化したグレンダがパニックを起こしてしまい、唯里はグレンダの腕に掴まれたまま、地上に向かって落下したのは覚えている。 そして地表に激突する直前、唯里の視界は銀色の霧に覆われた。 正確には、自分自身が霧に変わったような異様な感覚に襲われたのだ。

 その凄まじい濃霧の中で、巨大な甲殻獣の姿を見たような気がした。 もしかしたら、あれは第四真祖の眷獣だったのかもしれない。

 自らの肉体を霧に変化させて移動するのは、多くの吸血鬼が持つ特殊能力だが、本人だけでなく、周囲の物体全てを霧に変える現象など聞いたこともない。 今回は元に戻れたからよかったが、もし彼が眷獣の制御に失敗していたらと思うと正直ゾッとした。

 ともあれ、唯里とグレンダは、またしても古城たちに救われたのだ。

 

「つっても、何だ。 怪我させて悪かった。 まだあの時は、判断力が鈍ってたらしい」

 

 悠斗の謝罪に、唯里は頭を振った。

 あの絶対絶命で、この程度の傷で済んだだけで幸運と言えるのだから。

 

「えっと、気にしないでいいよ。……えーと、古城君、悠斗君でいいのかな?」

 

「呼び方は何でも構わん。……紅蓮の織天使だけは勘弁な」

 

「ああ、オレもそれで構わない。……てか、悪い。 隠してもらえると……助かる」

 

 決して目を合わせようとしないまま、古城がボソボソと小声で言った。

 

「きゃ……ああああああああっ!」

 

 その瞬間、唯里は制服を着ていない事に気づいて悲鳴を上げた。 幸い下着は身に着けたままだが、そんな事はなんの救いにもならなかった。 男子の前で堂々と肌を晒すなど初めての経験だ。 弟の前でもこんな姿は見せたことがない。

 悠斗は平静な顔をしていた。 唯里は恥ずかしながらこうも思ってしまう『悠斗君は、女性の下着姿に興味がないのかな?』と。

 だが、悠斗はある女性(凪沙)を深く想っているのだ。 なので、他人の女性の下着姿を見ても微動だにしない。

 

「──唯里さんになにをやってるんですか、先輩!?」

 

 唯里の悲鳴を聞きつけた雪菜が、バタバタとログハウスの奥から駆けつけてきて古城を睨む。

 下着姿の唯里を見て、おおよその事情を理解したのか、雪菜は深々と溜息を吐いて、

 

「本当に油断も隙もない吸血鬼(ヒト)ですね……」

 

「今のはオレのせいじゃなかっただろ!」

 

 古城が、ふて腐れたように頰杖をついて反論する。 実際、古城の言う通りだったので、唯里は頼りない笑みを浮かべるだけだ。

 

「でも、古城は鼻を伸ばしてたよな」

 

 古城は悠斗の言葉を聞き、うぐッ、と言葉に詰まってしまう。

 だが、仕方ない事でもあるのは確かだ。 これは男性の性とも言えよう。

 

「まあいいか。 古城が変態真祖なのには変わりないんだしな」

 

「ちょ、待て。 変態真祖は言い過ぎじゃねェーか」

 

「いや、日頃の行いを振り返ってみろよ。 まあ、古城が狙ってないのは確かなんだけど」

 

「だ、だろ。 つ、つーか、悠斗も凪沙にラッキースケベをかましたんだろ」

 

「……あれは吸血衝動がやばかったな。 まあ、吸血してないが」

 

 唯里は、古城と悠斗の言い合いを聞き、何処にでもいる男子高校生ではないか。

 もしかしたら、自分が監視役に選ばれても、問題はなかったのではないか?とも思ってしまう。

 雪菜は、古城と悠斗を見て溜息を吐くだけだ。 唯里が思うに、いつもこうなのか。と思った。

 

「動けますか、唯里さん? 応急処置だけはしておいたんですけど」

 

 包帯を巻いた唯里の左腕を見て、雪菜が心配そうに訊いてくる。

 どうやら唯里の制服を脱がせたのは、彼女だったらしい。

 

「ありがとう、雪菜(ゆっきー)。 怪我は大丈夫。 それより、ここは……?」

 

「登山客向けの山小屋だと思います。 自衛隊の封鎖の影響で、無人になっていたみたいです」

 

「そっか……」

 

 自分の隣で寝ているグレンダの無事を確認して、唯里はホッと息を吐いた。

 墜落地点の近くにあったこの山小屋を見つけて、古城たちは唯里を運んできてくれたのだろう。 外の明るさから判断して、唯里が意識を失っていたのは、二、三時間といったところか。

 

「あと少ししたら、浅葱が……オレの友達が迎えに来てくれることになってる。 グレンダもまだ動けそうにないし、今はここに隠れてた方がいいだろ。 もうすぐ陽も暮れるしな」

 

「あ、そうなの? 俺の眷獣で絃神島まで連れてこうと思ったんだが」

 

「いやいや、朱雀や妖姫の蒼氷(アルレシャ・グラキエス)の守護もないのに、本土からのそれは自殺行為だから。 凍死しちゃうから」

 

「あー、まあそうだな。 氷点下の空を飛行するとか自殺行為だわ」

 

「ということで、唯里さん。 迎えが来るまでもう少し辛抱してくれ」

 

「うん、わかった」

 

 雪菜に渡された制服を着ながら、唯里は、背中を向けたままの古城に同意した。

 同じ布団の中にいた灰色の髪の少女が身じろぎして、甘える子猫のように、唯里に抱き付いてくる。

 

「ひゅいりー……ひゅいりー……」

 

「グレンダ、怪我は大丈夫?」

 

「だー」

 

 少し寝ぼけているのか、謎の言葉で呼びかけてくるグレンダの髪を唯里は撫でた。

 オシアナス・ガールズが用意してくれたグレンダの服は、龍族化で再び弾け飛んでしまっている。 今の彼女が身に着けているのは、さっきまで暁古城が来ていた白いパーカーだけだ。

 グレンダの体に目立つ外傷はなく、それを確認して唯里は胸を撫で下ろす。

 

「で……悠斗。 この子は“聖殲の遺産”で間違えはないのか?」

 

「それは間違えないな。 グレンダは“情報”の器。 咎神(カイン)が残した護り手だよ」

 

「じゃ、じゃあ、安座真の目的は、自分が神になろうっていうのか?」

 

「いや、それはない。 グレンダの“情報”の器を利用しても、奴は神にはなれない。 でもな、神を復活させる事や、操る事は可能だと思う。 まあ、それには条件見たいなもんがあると思うけど」

 

「じゃあ、尚更、安座真に渡すわけにはいかねぇぞ。 最悪、“聖殲”の再現が起きても不思議じゃねぇしな」

 

「ま、そういう事だ。 俺らでグレンダを安全な場所へと保護させないとな」

 

 そうなれば、絃神島が最適な場所になるだろう。

 絃神島ならば、各夜の帝国(ドミニオン)も、真祖たちも聖域条約によってグレンダに手を出す事は不可能だ。

 気まずい静寂を破ったのは、ぐるぐる、という低い音だ。 空腹に耐えかねた唯里のお腹が鳴った音である。

 考えてみれば、唯里は今朝から何も口にしていない。 非常食のビスケットは、全てグレンダに奪われてしまった。

 そして、気山小屋の中にはいい匂いが漂い始めていた。 奥のキッチンで、非常食の残りで鍋料理を作っていたのだ。

 

「キッチンに非常食が残っていたので、お鍋を作って見ました。 今、凪沙ちゃんが火を見てくれてます」

 

 すると、凪沙が厚手の手袋を嵌め、鍋の端にある手持ち部分を持ち、薪ストーブの上に乗せ、凪沙はお玉を使い各自の御椀の中にスープを注いでいく。

 凪沙が料理を取り分け終わると、各自の目前には、具たくさんの野菜スープに、乾パンとチョコレートバーなどのお菓子類。 実に魅力的な食事だ。

 

「ありがとう、凪沙さん、雪菜(ゆっきー)。 なんだか、助けてもらってばかりだね」

 

「いえいえ、簡単なものですから。 お礼は不要です」

 

 まあ確かに、凪沙がちゃんとした食材を使って料理をすれば、三つ星レストランで出せる料理が調理できたりもするのだ。

 

「唯里さんには、昔から紗矢華さんがよくお世話になってましたから。 恩返しができてよかったです」

 

「あはは。 煌坂さんは、よく志緒ちゃんと喧嘩してたからねー」

 

 スープを口に運びながら、唯里は懐かしい気分で笑う。 同学年で同じ舞威媛候補で、どちらも気が強いこともあって、志緒と紗矢華は張り合うことが多かった。 その尻ぬぐいをさせられるのは、彼女たちと同室の唯里と雪菜だったのだ。

 

「そうか……姫柊と唯里さんは子供の頃からの知り合いなのか」

 

 古城が、不思議そうな表情を浮かべて聞いてきた。

 過去の話をするのは苦手なのか、雪菜は少し照れたように俯いて、

 

「そうですね。 学年が違ったので、直接お話しする機会はあまりなかったんですけど」

 

「ていうか、雪菜(ゆっきー)は誰ともあまり話さなかったよね。 孤高っていうか、小さなころからやたら冷静で、模擬戦のときとか、ちょっと恐かったし」

 

 目の前の後輩を見つめて、唯里はしみじみと呟いた。

 それを聞いた雪菜が、驚愕したように目を瞬く。

 

「こ……孤高? 恐い?」

 

「うん。 勝ってもニコリともしないし、話しかけても素っ気ないし。 私の渾身のギャグをスルーされた時はへこんだよー」

 

「そ、それは試合前で緊張してただけで……」

 

 雪菜が弱々しく弁解するが、彼女のその可愛らしい表情に悪戯心を刺激され、唯里は、ふふふ、と笑いながら続けた。

 

「やたら真面目で几帳面で、成績も抜群だったしね。 なんていうか、もう近寄りがたくて」

 

「私、そんなふうに思われてたんですか……」

 

 本気でショックを受けている雪菜を見て、唯里は少し反省した。 久しぶりに再会しても雪菜の生真面目さは相変わらずだ。 そのことが少し微笑ましい。

 

「あ、でも嫌われてたわけじゃないんだよ。 憧れてる後輩も多かったし。 雪菜(ゆっきー)七式突撃降魔機槍(シュネーヴァルツァー)をもらって第四真祖の監視役になったって聞いたときには、納得したよ。 やっぱりって」 

 

 雪菜を慌ててフォローする唯里の言葉を聞いて、古城が何かに気づいたように口を開く。

 

「そうか……唯里さんも剣巫ってことは、姫柊の代わりにうちの隣に引っ越してくる可能性もあったのか」

 

「いやいや、違うでしょ、古城君。 今は、雪菜ちゃんと二人暮らしなんだからね」

 

 凪沙の指摘を受け、古城は、ああ、そう言えばそうだったな。と呟いた。

 

「え? 雪菜(ゆっきー)と古城君。 一緒に住んでるの?」

 

 唯里が驚いて雪菜を凝視した。 雪菜は、唯里の大げさな反応に怪訝な表情を浮かべて、

 

「はい。 任務ですから」

 

「というか、悠斗と凪沙も同棲してるぞ」

 

「そうだな。 もうそろそろ、半年くらいか? つか、風呂掃除してねぇから、カビが這えたりしてないよな。……いや、牛乳も期限が間近だったはずだ」

 

 凪沙は頬を膨らませ、

 

「もう、その時はその時だよ、悠君。 そうなっても、一緒にお掃除すればいいし、牛乳は勿体ないけど廃棄処理すれば問題ないよ」

 

「……その通りなんだけどさ。 あー、祭りの前に一気に飲んどけばよかったわ……」

 

 そう言って、悠斗は肩を落とした。

 唯里は古城たちを見ながら、

 

「え、えっと、古城君たちも、悠斗君たちと同じ感じなの?」

 

 顔を見合わせる、古城と雪菜。

 

「まあ一応。 似た感じだな」

 

「先輩、帰ったらお風呂の掃除ですからね。 サボりは許しませんからね」

 

「えー、メンドイ。 オレのダラダラする時間がなくなる……。まだ一回も使ってないんだし大丈夫じゃね」

 

 古城たちのマンションの修理は完了しているが、家具や、身の回りの物がまだ揃っていないので、悠斗たちのマンションに居候をしてるのだ。

 

「いえ、定期的に掃除は必要です。 埃がついてるかもしれないので」

 

 雪菜は、私がリビングとキッチン周りを担当します。と言っていたが、古城は唇を曲げていた。

 

「……わかりました。 先輩のご飯の量は、今後減らすことにします」

 

「それは勘弁。……はあ、解ったよ。 やればいいんだろ、やれば」

 

「最初からそういえばいいんです」

 

 唯里は動揺していた。 四人の会話を聞いていると、最早、夫婦の域だ。

 四人の自然なやりとりを、唯里は暫く無表情に眺めていたが、やがてついに発作的な衝動に襲われて、

 

「夫婦か!」

 

 思わず天井目がけて大声で叫ぶ。

 

「な、なんだ!?」

 

「唯里さん?」

 

「どうした?」

 

「もしかして、凪沙のお料理が口に合わなかったとか?」

 

 古城たちが、驚いた顔で唯里を見た。 四人とも、唯里が突然なにを言い出したのか理解できないという表情だ。 よもや自分たちの行動に問題があるとは、夢にも思ってないのだろう。 だが、そんな雪菜たちの仲睦まじい姿は、ほんの少しだけ唯里の罪悪感を溶かしてくれた。

 雪菜が唯里の代わりに危険な任務に就いたことには変わりないが、第四真祖と呼ばれた少年は何所か気だるげで、これといった危険はないし、紅蓮の織天使と呼ばれている少年も、優しく友達想いと解ったからだ。

 紅蓮の織天使には、監視役が就いてないと聞いていたが、凪沙という想い人が隣にいる限り、危険はないと判断できる。

 第四真祖、暁古城。 紅蓮の織天使、神代悠斗に対して抱いていた緊張感と警戒心も消えていた。

 

「ごめんなさい、なんでもないから。 ちょっと叫びたくなっただけだから」

 

「お、おう」

 

 古城が、おどおどと返事をする。

 そして、一つの疑問も感じていた。

 冷静に考えれば古城たちには、唯里やグレンダを助ける義理はないのだ。 彼らがこの地を訪れた理由は、凪沙を保護する為であり、安座真と戦う理由などない。

 なのにどうして、唯里たちの為にここまでしてくれるのか──。

 その理由を知りたくもあり、同時に、それを彼らに聞くのが恐くもあった。

 一つだけ解っているのは、古城と悠斗、そして凪沙を──姫柊雪菜が信頼している。ということだ。

 そして見えない絆、とも言えばいいのか、四人からはそれが感じ取れた。

 

 ――閑話休題。

 

 グレンダは腹が膨れて眠気を催したのか、布団の上に丸くなって再び寝息を立てている。

 だが、グレンダの耳がピクリと動き、彼女は低く唸った。

 古城たちも気づいていた。奇怪な魔力の持ち主が、この山小屋へと近づいている。唯里がそれを古城たちに告げようとした瞬間、雪菜が立てかけてあった“雪霞狼”に手を伸ばすのが見えた。

 

「……飛龍です」

 

「見つかったのか……早かったな、くそ」

 

「……もしかしたら、安座真だけじゃないかも知れない。 何か、奇妙な気配も感じる」

 

「……うん、凪沙も感じる。 何か、朱君たちと魔力の波動が似てるね」

 

 シリアルバーの残りを口に含んで、古城と悠斗が素早く立ち上がる。

 よく見れば古城も雪菜も、悠斗も凪沙も靴を履いたままだった。 安座真たちの襲撃に備えていたのだろう。

 慌てて追いかけようとした唯里を見て、雪菜が冷静に伝えてくる。

「唯里さんはグレンダさんをお願いします。 もしもの時は、私たち(・・・)を置いて逃げてください」

 

雪菜(ゆっきー)……」

 

 山小屋を出て行く雪菜たちの背中を見送って、唯里は思わず苦笑した。

 当然のように雪菜が口にした一言を、思わず口の中で繰り返す。

 

「(私たち、かあ……)」




邂逅は、次話になりそうです(-_-;)
戦闘回かー。上手く書けるかな……。

ではでは、次回もよろしくです!!
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