今回の話で、以前より予定してました元海軍将校が輝夜の配下に入ります。
それは誰でしょう。
A.モーガン大佐
モ「なってやろうじゃないか、姫の配下によ」
B.たしぎ曹長
た「私は貴方みたいに強くなりたい、だから私も一緒に連れて行ってくださいッ!」
C.ねずみ大佐
ね「糞ッ! お世話になりましたッ!!(やばいぞ、海軍を首になった……)」
D.プリンプリン准将
プ「優秀な航海士、プリン大将と呼んでくれたまえ」
答えは、本編にてご確認ください。
「ニュー、今日のは自信作だ。まあ食ってくれ」
暗黒に満ちた波と風の世界に降り注ぐのは、白く淡い月明かり。
そんな孤独と寂しさにも似た情景を吹き飛ばすかのように、騒音と歓喜に満ちた音があふれ出す。
怒声と笑い声が混ざり合い船上からこだまする。
時折撃ちあがる七色の光が、暗闇に一瞬の輝き与えては消える。
海上のど真ん中で始まった宴は、打ち寄せる波よりも激しく、足場を揺らしていた。
そして、宴の中心に立ったタコの魚人は、一心不乱にその六つの腕を動かす。
「おおっ! ハチッ、これもなかなかの味じゃねぇかッ!?」
「流石タコの魚人ッ! これぞ本職ってやつかッ!?」
目の前に積み上げられるタコ焼きの山が、次々と男達の胃袋へと収まっていく。
そんな中で、黒い執事服を着た男、クロは、ずり下がる眼鏡を独特な仕草で戻しながら、出来上がったタコ焼きを皿へと盛り付けていく。
「おいッ、てめぇらッ! 姫様の分がなくなるだろうが、ちったぁ遠慮しろ」
こめかみに青筋を浮かべながら、苛立ちを抑えるように呼吸を整えると、手した皿を輝夜と永琳に差し出した。
「大丈夫だって。何せ、タコと小麦だけは大量にあるからな。いやぁ、タコ壺漁ってなかなかいいもんだな」
「心配すんな、ニューッ! まだまだ焼くから、どんどん食ってくれッ」
タコの魚人であるハチは、六本の腕を駆使して、器用にタコ焼きをひっくり返しては、皿へと移す。
そして、焼きあがる隙間をみて、タコをぶつ切りに、新しい生地を混ぜる。
「まあ、いいじゃないの。あなたも飲みなさい」
「ありがとうございます。姫様」
輝夜は、手元のジョッキに新しく、葡萄酒を注ぎ込むと、労をねぎらうようにクロへと差し出す。
クロは、タコ焼きの皿と引き換えに、ジョッキを受け取り、その酒を一気に飲み干した。
そしてふと考える。数日前から厨房でせわしなく働くタコの魚人が語った、にわかには信じがたい、グランドラインにまつわる話を。
輝夜と永琳は興味深くその話に聞き入り、今も楽しそうに魚人島への来訪を話していた。
他の船員たちも、人魚姫がどうだか話していたが、特に興味がなかったので、クロはその話を意図的に無視した。
魚人島へ向かうのはいいが、その前にどうしても伝えなければならないことがあった。
グランドラインは、悪魔の実の能力者をはじめ、魚人や巨人が跋扈する猛獣の巣窟のような場所だ。
クロ自身は、事戦闘において、能力者である輝夜と永琳が敗北することなど、想像できなかったが、個の強さ以外に、グランドラインを渡るためには必要なものがあった。
それを得ることなく、グランドラインへの突入は無謀であると考える。
「所で姫様、進路はこのままグランドラインへ進めることに相違はありませんね」
「なんだクロ? てめぇ怖気づいたのかぁ」
「もちろん」と答える輝夜のそばで、いつの間にか酒瓶と山盛りのタコ焼きを持ったギンが会話に割り込む。
すでにかなり酔っているらしく顔が赤い。
「ふんッ! 姫様が行くというのであれば、このクロ、海底監獄インペルダウンだろうが、海王類の巣であるカームベルトであろうがお供しましょう。ですが、突入してすぐに、どこぞの落ちぶれ海賊のように艦隊壊滅のようになれば、面白くはないでしょう」
「たしかになぁ。まさか7日で――ッ! てっ、落ちぶれ海賊ってのは俺達のことかッ!?」
ギンはジョッキを乱暴にテーブルへ叩きつけながら抗議する。
「はっ! 別に一週間たたずに49隻沈めた艦隊の事など知らんな」
「やっぱり俺らの事じゃねぇかッ! てめぇの一味だって解散しただろうがッ!」
立ち上がり拳に力を入れるギンとは正反対に、挑発的な笑みを浮かべながら、ゆったりとした足取りでクロは一歩を踏み出す。
「止めなさいあなた達。喧嘩したいなら、これでやりなさい。それと、殺し合いがしたいなら、船の外でやりなさい。生きてた方は回収してあげるから」
輝夜は新しい酒瓶を手に取りながら、暗く荒ぶる波へと目を向けた後に、二人を見つめる。その口元には若干の笑みを含んでいたが、その目に一切の偽りがないことを悟っていた。
クロとギンは互いに空になったジョッキに目をやる。
クロにとって、蓬莱山輝夜とはこの人生で、唯一畏怖と崇拝に当てはまる少女であった。
一騎討ちで圧倒的な力をもって完封されたうえで、反抗心すら認めて仲間へ迎え入れるほどの度量。
一言で表すのならば“覇王”。
だが、普段見せる幼い笑み。
しかし、無謀にもこの船に襲い掛かって来た海賊団に向けるのは、一切の躊躇いを排除した残虐な嘲笑である。
迷いなく「斬れ」命じる姿から、この幼い風貌の少女がどれほど過酷な状況で生きてきたのか想像を掻き立てる。
クロは、輝夜が最初にであった海賊船が自分たちであったことに、ある種の運命と幸運を感じながら、差し出された酒瓶に手を伸ばす。
輝夜はそれを笑顔で制してクロが持っていたジョッキへ、溢れるほどの酒を注ぎ込む。
そしてギンへと目を向けると、輝夜と同じ瓶を持った永琳がギンのジョッキへと酒を注いでいた。
妙におとなしく酒を注がれているギンを不思議な目で見つめていると、酒を注がれたギンがジョッキをクロへ突きつける。
「仕方ない。今日はこっちで勘弁してやろう」
「ふんッ! この前は俺の勝ちだったがな」
同時にジョッキの中身を煽り、一気に飲み干した。
「ああっ!? てめぇを部屋まで連れて行ったの誰か忘れたんじゃないだろうな」
「俺は頼んでいない」
空になると同時に空になったジョッキへ酒を注ぎたすブチとシャム。いつの間用意したのか、酒樽がそれぞれの脇へと置かれていた。
新しい酒を飲み干す二人。
「永琳さんの頼みじゃなけりゃ、誰が連れていくかッ!?」
「てめぇは、そのまま部屋の床に転がってただろがッ!?」
新しく注がれた酒を飲み干す。いつの間にか、周囲はどちらが勝つか勝手に賭けを始めている始末だ。
そんな光景をどうでもよさそうに流し見ながら、さらに二人は酒を煽る。
互いに怒鳴りあいながらも、どこかおかしさを感じながら、次々に注ぎ込まれる酒を飲み干していく。
そして深夜の宴会は、夜明けを迎えるまで続けていくのだ。
船員達にとって、ここ最近見慣れてきた光景であった。
ちなみにこの勝負の行方は、途中で乱入した輝夜が、酒樽ごと酒を飲み干して勝利したそうだ。
ギンもクロもその時の記憶は一切残っていなかったが、周囲の人間が口をそろえて言うからそうなのだろう。
そして翌日。クロとギン、そしてハチが輝夜達に呼び出されていた。
「あなたが、昨日進言していたことだけど、実際にこの船の航海士はどの程度の実力なの」
昨夜の宴会で酒を飲みながら、グランドラインへ向かうにはこの船の航海士では実力不足だと散々こき下ろしたことを思い出しながら、改めてそのことを告げる。
「その通りです永琳様。もともとが海賊船、まともに航海術を修めたものなどいません。あくまでもどきであり、後は経験が補っている状況ですよ。ハチやギンの話を聞く限り、この船の航海士では正直心元ない。もしも、グランドラインの奥、新世界すら視野に入れているのならば、優秀な航海士を雇う必要があります」
「確かに、まるでおとぎ話のような海を渡るのならば、並の以上の航海士が必要でしょうね」
腕を組み、考え込む永琳の横で、輝夜は優雅に茶をすする。
「確かになぁ。バラティエっていうレストランに、グランドラインの航海日誌があるらしいから行ってみますか?」
ギンも微かなグランドラインでの航海を思い出しながら、ふとバラティエでの出来事を思い出す。
ただ、グランドラインを実際に航海したことのあるハチがいるため、航海日誌の入手はあまり意味が無いようにも思えたが。
「航海日誌だけを手に入れてもねぇ。ハチもいることだし、話に聞いた料理長本人が乗ってくれるならともかく、その料理長は来ないでしょうしねぇ」
「やっぱりこの船に乗ってくれる航海士自体を探すべきでしょう。それに確か、ハチが話していた磁気を記録するための特別なコンパスが必要なのよね」
永琳の言葉に同意するように、輝夜はハチへと問いかける。
「その通りだニュー、グランドラインを航海するには、ログポース、もしくはエターナルポースが必要になる。エターナルポースは目的の島の磁気を永久に記録したもので、輝夜姫さんの目的だと、ログポースが必要だと思うぞ」
「それって、どこで買えるのかしら? それと、いくらぐらいするものなの?」
永琳は、ハチたちに見覚えのない奇妙な文字をノートへ書き込みながら、問いかける。
「そうだニュー。グランドラインへ入れば大概の島で手に入ると思うぞ。ただ、東の海だと……、ニュー、リバースマウンテン近くの大きい街、たしかローグタウンだったかニュ、そこなら多分手に入ると思うぞ」
「じゃあ、とりあえずはローグタウンで、グランドラインへの準備を行いましょう。それで航海士の方だけど――。クロ、優秀な航海士を手に入れる方法はあるかしら?」
輝夜に見つめられ、ずれた眼鏡を戻しながら、クロは申し訳なさそうに答える。
「申し訳ありませんが、在りません。大手の商船などにコネがある者なら、退役した海軍を雇うこともできるでしょうが……」
「海軍かぁ……」
クロの言葉に、ギンは若干嫌そうに眉を歪めた。ただ、それ以上は何も言わずに、何かしら深く考えむ。
そんなギンを尻目に、クロは海軍上がりの航海士について考える。
退役していても海軍上りだ、その選択肢は海賊船であったならば、考える必要すらない選択肢であろう。
しかし、輝夜自身は、海賊を名乗っているわけではなく、名乗る意味もない。優秀な航海士を仲間にするならば、兵卒でも問題はないだろう。
それならば、できればグランドラインに駐在していた経歴を持つ者が望ましい。だが、優秀なものほど、大手の商会へ流れていく。
一種の天下りである。戦闘能力が失われたとしても、グランドラインでの航海経験と、一通り修めた航海術は何処も喉から手が出るほどほしいものだ。
「そういえば、最近新聞で読んだけど、斧手のモーガンという元大佐が、罪に追われて脱走していたわね。運よくこの船に襲いに来ないかしら」
何気なしに、つぶやいた輝夜の言葉にクロは僅かに眉をゆがめる。
「モーガン……、ですか―――」
「なにかあるのかしら、クロ?」
一瞬、クロを不思議そうに見つめる輝夜の視線を、クロが僅かに逸らそうとしたのを輝夜は見逃さなかった。
そして、一呼吸をおいてクロは短くかつての因縁を述べた。
「――奴の、右腕を切り落としたのは、私ですからね。できるなら避けたい者です」
それ以外にも何やら含みがありそうに感じたが、輝夜はそれ以上の追及を避けて、優しげに話す。
「まあいいわ。どうせ逢える確証なんてないのだし。だけどもしも出会えば、私はそいつを勧誘してみるわ。仮にも大佐なら、グランドラインでの航海経験もあるだろうし、航海術も持っているでしょう。あなたはどう思う?」
「姫様が望むならば、このクロは否とは言いません」
その言葉が本心で有ることは間違いないだろうと輝夜は思う。しかし、その言葉だけがすべてだと輝夜は思わなかった。
「……ねぇ、クロ賭けをしない? 私がこの先で、モーガンに逢うかどうか? 私は逢うと賭けるわ。もしも逢ったならば、あなたの真意を私に語りなさい」
受けないという選択肢はなかった。隠さずに話せと問えば、クロはすべてを話すつもりで合ったのだから。
しかし、輝夜は強引には問わずに、戯れの混じった提案を投げかける。
戯れゆえにクロは、その問いを興ずるつもりで、今一時だけ、船長クロの表情をもって輝夜へ問い返した。
「賭けとおっしゃるのならば、私が勝った場合何をいただけるのでしょう」
「私の――、地上で犯した罪。それを語るならば対価になるでしょう」
それは、クロにとって、とても興味深いものであった。
時折輝夜が見せる少女の姿からは想像もできない、老練じみた手腕。その在り方と、存在感の理由を一かけらでも聞くことができるのならば、己がかつて行った悪行を提示することなど問題なかった。
「楽しみにしております」
「そう簡単にはいかないわよ。私、運はいい方だから」
この賭けにおいてのみ、クロと輝夜は対等であった。ゆえにクロは、再びあくどい顔で声なく笑った。
その場に居合わせた他のメンバーは、二人の会話に入ることができずに、その成り行きを黙って見守っていた。唯一永琳だけが、何か言おうとしていたが、軽く輝夜に制しされたので、それ以上何かを言うことはなかった。
そして話は、再びこの船の航海の話へと戻る。
他に航海士のあてがないかどうか?
結果は、大きな商船を見かけたらそこで勧誘してみる。それでもだめならローグタウンで探すということに決まった。
そして大まかな方針が決まったところでその日の会議は終了した。
大まかな航海の方針を決定して数日の間、旅そのものは順調であった。
だがここで、ローグタウンを目指して航海を続ける輝夜に、目に見えた問題が浮上してきた。
まともな補給ができていなかった海賊船で、歓迎会と称しての宴会が連日続いていれば、食料が目に見えて減っていくのは当然の事であった。
永琳達が行ったタコツボ漁で、大量のタコはいまだに残っているが、それだけでは飽きが来るのは当然である。
酒も医療用に確保しておいた分を除いて底を突いたために、近くに補給ができる場所はないかと話されているところであった。
そんな時に、島に着くよりも早く、効率の良い補給艦が監視していた男の目に映る。
「姫様ッ!! 船ですッ! 交易船が、海賊に襲われているようですッ!!」
マストの上で見張をしていた男が声を張り上げる。そして、声を聞いた者達が慌ただしく騒ぎ始める。
甲板で海を眺めていた輝夜は、その声に反応してふわりと浮きあがり、マストの高さで停止する。
そして、甲板で丸太ほどのダンベルを持ち上げていた、ギンとブチがマストの根本へと近づいてくる。
「筋トレだけで退屈していたところだ。ちょうどいい」
「おうッ! 今日こそは姫様にいいところを見せて見せるぜッ!」
獲物を前にした肉食獣のような目で、襲われる商船を見つめるギンとブチ、そこへ騒ぎを聞きつけた永琳が、クロを伴ってやってきた。
「騒がしいわね? 何かあったのかしら?」
疑問を投げかけるも、すぐに目の前の光景を目の当たりにした永琳は、輝夜と同じようにふわりと空へと浮かびあがる。
「襲われているのは、ガレー船かしら?」
「ねぇ永琳、食せっかくだし食料をいただいていきましょうか」
「そうですね。そろそろ香辛料他もそろえたいと思っていたところですし、ちょうどいいでしょう」
それじゃあと輝夜が、一人飛び出そうとするところをクロが大声で制しする。
「お待ちください姫様ッ! 行くならば私もお連れください」
「ちょっと待てッ! それなら俺が行くッ!!」
クロに続いて、ギンは負けじと声を張り上げる。
ここ数日の戦闘を振り返り、その戦闘の大半を輝夜が単独で行っていることに、恐れ多いという思いが二人にはあった。
虹色の光で、船ごと撃ち抜くのならばまだ良かったのだが、直接船に乗り込み船長と、毎度毎度一騎討ちまがいの事をやられては、こちらとしても面子がない。
しかもそれが成立すればいいが、そんなものを受ける海賊などまずいない。
クロ自身、最初に輝夜が提示した提案をけっているのだ。
「てめぇなんぞ任しておけるかッ! 引っ込んでろッ!!」
「あッ! てめッ、だけに良いかっこはさせねッ! 」
クロとギン、どちらが向かったとしても戦力的には問題ないだろう。毒による体力の低下が解消された今、その実力はクロ自身も口には出さないが認めている。
では、なぜ毎回、このような子供じみた口論を続けているのか?
その答えを二人はいまだはっきりと意識していなかった。その答えを二人は別々の理由をもって意図的に避けている。
答えを無意識に避けるクロは、今のこの状況をただ自身が幸運であるとだけ考えている。
輝夜達が、船と船員を求めている時に出会った事、そしてこの船員達に対して、クロの統率がある程度残っていた事により、輝夜の傘下に収まることができたのだから。
出会う順番が違っていた場合、クロ達が今生きていることはなかったであろう。
クロはギンとの言い争いを止めて、再び輝夜に自分が共にいく事を希望する。
その後でクロは、巡り逢わせが悪かった海賊達へと、僅かな憐れみのこもった視線を向けた。
絶対的な能力を持つ輝夜と永琳の前に、たかが一隻の海賊船は樽に乗った流民と大差ない。
唯一生き残る可能性があるとするならば、輝夜自身が戦いにおいていくつかのルールを敷いて、自分の力を縛っている傾向があることだろう。
圧倒的な力からくる傲慢ともいえるものである。しかし例えルールで縛ったとしても輝夜達の敗北をクロ達は想像できない。
だが、輝夜達の勝利を確信していたとしても、自分たちが後方で手をこまねいている理由にはならなかった。
クロは、輝夜に無様な姿を見せまいと、持ってきた猫の手を嵌める。
ギンは、ここ最近常用していた剣を二本腰にさす。
その光景に、輝夜は口元をほころばせながら答えた。
「いいわ。ならばクロ一緒に来なさい。永琳、ギンと共に敵船の砲を潰しなさい。残りは私たちが乗り込むまで砲撃で海賊船の注意をひきなさい。当てなくていいわ。相手の砲弾が届くぎりぎりを維持。永琳っ、砲を潰せば空へ合図を、それを確認次第、接近して敵船を制圧しなさい。分かったわね」
「御意」
「仕方ないわねぇ」
「いいぜ姫さん。じゃあ永琳さん頼むぜ」
永琳は、やれやれといった感じに吐息を漏らすと、ギンを背後から抱えるように掴んで浮かび上がる。
それに続くように、輝夜はクロの手首を掴んで空へと浮かびあがる。
「主砲の発射と同時に私たちは突っ込むわ。じゃあ貴方達しっかりね」
「分かりました姫様ッ!?」
「おうっ! 任せてくださいッ!?」
威勢よく動き出す船員たちは砲を前方に並べて、そのタイミングを計る。
「ようしッ! 撃てッ!!」
シャムの声と大声と共に、無数の砲弾が海賊船へと向けて放たれる。
砲弾は、海賊船の手前へと着水して、水しぶきを上げる。
商船に意識を取られていた海賊船は、輝夜達の船に気付いて慌ただしく砲門を移動さた。
雲に隠れるほどの上空で、四人は合図の時を待っていた。
そこから見えるのは豆粒のように見える人影。
「すげぇ。光景だ」
「ああ、まったくだ」
まさに特別な能力者でなければ絶対にお目にかかれないほどの絶景であった。
クロとギンは人生で初の空を飛ぶという状況に少なからず気分が高揚するのを感じていた。
言葉は出ずに、ギンとクロの言葉が少なくなる。
そして、そろそろ砲撃の始まりそうな距離にまで船が近づく。
「ところで姫様。海賊は皆殺しでよろしいので?」
「それは、状況次第ね」
再び静かになる天空に、砲撃の音が響きわたり、雲の影で待機していた輝夜達は、海賊船へと向けて一気に急降下する。
すでに商船には数人の海賊たちの侵入を許してしまっていた。
幾人かの戦闘経験者が、打ち込まれる矢を避けながら、投げ込まれる縄を叩ききっていたのだが、一度海賊たちの侵入を許してしまえば、形勢は一気に傾いてしまった。
「貴様らッ 俺の船に何するつもッ―――いぃ?!」
高身長でターバンを巻いた男が、怒りに任せて叫ぶ。とがった耳は、怒りにで赤染まり、今にも飛びかからんとするが……、身近に撃ち込まれた銃弾の痕を見ると、その勢いも一気に脆弱なものへと成り下がった。
「お前の船は、いずれ海賊王になるこの三日月のギャリー様がありがたくいただいてやる。よくここまで船を運んでくれたなっ」
奇天烈な三日月型の髪をした海賊。不遜な態度で、幾人かの手下たちが船に乗り込むのに成功するのを確認すると、自身も商船へと乗り移って来た。
段々と増えていく海賊達を、忌々しげに睨み付ける商船の船長だが、それ以上何も言えずに一歩一歩後退していく。
誰でもいい、船と金を守ってくれと願うが、高い金を払って雇った護衛達も、海賊たちの勢いに押され気味だ。
そんな時、一人の男が、
「貴様ら海賊風情が、この私プッ!! ぐばぁッ」
勇敢に名乗りを上げようとして、銃弾に撃ち抜かれた。
その男は記憶を失っていた。しかし己の胸に宿る正義に従い海賊たちに、果敢に立ち向かおうとしたのだ。
だが残念なことに、その思いには一切の実力が追い付いていなかった。
その男は悪魔の実の能力者でもなく、銃弾を見て避けるだけの動体視力も持っていない。
海を渡る男として、身体は鍛えられていたが、それだけだった。
ただ己の信念だけを持って、敵わぬ敵に立ちふさがったのだ。
「雑魚が私の前に立つとは、見所があるな。その褒美に、ほれもう一発」
海賊ギャリーが握り締めた銃口は、身動きできない男へと向けられる。
一発目の銃弾は急所を外れて身体を貫通していたが、すでに逃げるだけの力も残っていなかった。
そこに放たれる二発目の銃弾。
太ももが撃ち抜かれた。
続けて三発目が肩を撃ち抜く。
痛みは体中に恐怖を走らせる。そして肉体と精神を呪縛するように硬直させる。
銃口から逃れようとする身体は動くことを拒み、必死に丸くなろうとする。
その行為に何の意味もない。
その行為が何の解決にもならないことを男は身をもって知っていた。
うめき声がこぼれた。
頭上をかすめるように銃弾が通過する。
悲鳴が聞こえた。
ただ奪うだけの行為を見逃すことは出来ない。
無力な人間を虐げるだけの力を男は認めたくなかった。
けれども、それらを助けることが出来るほど男は強くなかった。
誰よりも正義にあこがれていた。
しかし、手にした権力は彼らを抑える枷にすらならなかった。
男はアイツ負けた。
アイツとは何か?
思い出せない――。
思い出したくない……。
失った記憶を思い出そうとすると、ひどい頭痛が走った。
木片に引っかかるようにして漂流していた所を、男はこの商船に拾われたのだった。
この時代、あまねく海賊たちに襲われた船は少なくなく。命を落とすことすら頻繁な日常で幸運なことであった。
大海賊時代。今の時代を一言でたとえるならばこれ以上に適切な言葉はないだろう。
あの大悪党ゴール・D・ロジャーが放った一言が、すべての始まりだった。
多くの民の血が流れる。
それを目の前にしたとき、決心したのだ■■になることを。
■■を背負うことを……、自分が何になろうとしていたのか? 思い出せない。
だけれども、この海賊を見逃すことは出来なかった。
何とか、立ち上がろうと歯を食いしばるが……、男は弱く無力であった。
身体を痛めつけるようにして無理やり起き上がらせ、かすむような視力で海賊たちを睨みつける。まっすぐに、眉間を捉える銃口に焦点が合った。
悔しかった。
失った記憶が、何か思い出そうとしているのか、ひどく頭が痛んだがそれもすぐに終わるのだろう。
あの人と同じように……、
血が出るほどに食いしばった歯が欠ける。
そして、最後のときを感じたときに確かに自分は見たのだ。
「め、がみ……、」
引き金が引かれるよりも早く。黒い髪の少女が銃弾をさえぎるように降臨した。
空を翔る輝夜が目にしたのは、銃弾を浴びた人間が、それでも尚立ち上がろうとする姿であった。
そして今、その男はその命を終わらそうとしている。
羽よりも軽いその引き金は、たやすく男を殺すだろう。
男もそれを自覚しているはずであった。
両目からこぼれる涙は無念の証である。
しかし、宿った信念だけは失われていなかった。
「クロ、雑魚を制圧しなさい」
その信念の宿った瞳を見たとき、輝夜はクロを甲板に向けて放り出すように手を放すと同時に、須臾を操る程度の力を発動させた。
一秒にも満たない時間を操作し、今まさに死ぬ運命にある男の歴史へ介入する。
「じゃあな」と笑う海賊が、引き金を引いた。
飛び出した銃弾は、逸れることなくまっすぐに男へと飛来する。
避けるすべのない男は、死を感じて、奥歯を強くかみしめる。
撃ちだされた銃弾が到達するまで数秒もかからない。だが、一秒もあれば充分であった。
男の前に割り込んだ輝夜は、須臾を操る程度の力を解除すると同時に、手にした扇子に対して、永遠を操る程度の力を発動させる。
手にした扇子が、銃弾を受けて止める。
薄い和紙で作られた扇子が、普通ならば銃弾を受けて無事で済むはずがなかった。
しかし、輝夜が持つ永遠を操る程度の能力は、その不可能を可能へと変化させた。
永遠を操る能力とはすなわち変化を拒む能力である。
銃弾から受けるはずであったエネルギーを拒み、その壊れるはずの変化を拒絶する。
銃弾は、こもったエネルギーのすべてを拒絶され失われると共に、乾いた音を立てて甲板に落下した。
その光景をはっきりと認識できたのは、輝夜をおいて他に居ない。
突如現れた、少女の姿に甲板に立ったすべての人間が動きを止めた。
「め、がみ……」
三発の銃弾を受けた男は、集中力が切れたように甲板に崩れ落ちる。
その直後、一泊の間をおいて悲鳴が上がった。
「ぎゃぁああああアあっ!!」
甲板に立つすべての人間の視線が悲鳴の元へ注がれる。
悲鳴を上げたのは海賊の方であった。身体中を切り裂かれ、大量の血を流しながら三人の海賊が膝を付いた。
誰一人状況を把握することなかったが、悲鳴の理由が、残忍な笑みを浮かべる黒服の男だと即座に悟った。
「ッ!? てっ、てめぇっ、一体どこから」
目の前に現れ笑みを浮かべる絶世の美少女と、執事風の男の登場に海賊たちに動揺が走った。
「ギャリー船長ッ! 」
情けなく、すがるような声で海賊達が叫ぶ。
ギャリーと名乗った海賊は、手下の士気を落とさぬ為に、努めて横暴な態度を崩さず、突如現れた輝夜と、手下を切り裂いたクロを睨み付ける。
「ちっ……、悪魔の実の能力者か?!」
このような常識を覆すことをできるとすれば、それはグランドラインに存在するらしいという悪魔の実以外に他ならないとギャリーは理解した。
突然の悪魔の実の能力者の介入を警戒して、ギャリーは警戒を強めた。
「あなたが、船長ね。私と勝負しない?」
まるで場違いな提案と、その口調にギャリーは僅かな冷静さと、過剰な残虐性を取り戻す。
頭の悪い問いかけだとギャリーは思った。
たった今銃弾を防ぎ、手下を切り裂いた能力を発動させればいいのに、いまだに自分が生きていることに、ギャリーは短絡的な希望を見出した。
「勝負だと?」
「ええ、貴方と私の決闘よ。貴方が勝てば、無傷で見逃してあげても――ッ!?」
優雅に告げる輝夜に対して、ギャリーは最後まで輝夜の言葉を聞くことなく、即座に引き金を引いた。
決闘という言葉に、ギャリーは笑いがこみ上げてくる。まさか海賊に対してそんな馬鹿な提案を行う者が居るなど夢にも思わない。
デーイビーバックファイトでも行うつもりか。馬鹿らしい。海賊がそうそう律儀に規則など守るはずがないのだ。
そして、まともな決闘で自分は勝てないと悟り、不意打ち気味に残った弾丸すべてを発射する。
外すことのない距離でその弾丸は輝夜の身体へと吸い込まれていく。
とっさの判断力と果断さは船長として申し分のないものであった。
だがしかし、その判断は悪手であり、この時ギャリ―の運命は決定された。
「お嬢ちゃん、そういうのはお友達とやりなっ」
「てっめぇッ。自分が何をしたかわかってやがるのかッ!」
突如の不意打ちに対して、底冷えするような低い声でクロが告げる。
その怒りすらも、にやにやと笑いながら嘲笑する海賊達。
だがそれも、次の一言によってすべてが言葉を失った。
「リザレクション」
青白い光が、輝夜の身体から瞬間的に明滅し、着物の隙間から銃弾がボトボトと落下する。
そして輝夜は、何事もなかったかのように海賊たちへ冷ややかな視線を向けた。
「姫様、こやつらは私が」
「船長は私が下すわ」
その言葉を聞くと同時に、クロの姿が掻き消えた。
独特の歩方である抜き足によって、常人では在りえないほどの速度に加速したクロは、船長を避けるようにして、背後の船員たちを刻んでいく。
次々に崩れ落ちる船員たちに、さすがの船長も顔色を変えた。
「なっ!? 何なんだッ!? てめぇら、一体何の実の能力者なんだッ!? ずるいぞッ!?」
「残念だけど、悪魔の実の能力者ではないわ――。そして残念。あなたの負けよ。だけどその結末を選んだのはあなた自身よ」
手にした扇子を閉じて、まっすぐにギャリーへと突きつける。
「待っ、待てッ! そうだ、もう一度決闘のチャンスをくれ。いや、俺の負けでいい、この通りだ。積荷も全部やるッ! だからッ!!」
すでに、ギャリーにとって輝夜の姿は幼い少女ではなく、底の見えない化け物に見えていた。
戦意は崩れ落ちていた、しかし輝夜がその言葉に応じることはなかった。
「人の命は一度きり。たった一度の選択ですべてを失うことすらあり得る。あなたは自分のルールによってここまで来た。だらか、ここでの死はあなたが自分で定めたこと……、限りある素晴らしい一瞬は、私の中で永遠に変わる。さようなら」
話し終わると同時に、強い光が輝夜の前に発せられる。
それを知るや否や、黒い影が輝夜の背後に飛び込んだ。
そして、七色の光が海賊団に向けて解き放たれる。
「待っ! あああ――ッ、―――――――――――――」
叫び声は即座にかき消され、海賊達は、光に飲まれ、その身体は海へと投げ出される。
―――残されたのは、一瞬の生を終えて、永遠へと転じた躯の姿であった。
輝夜は静に、躯たちに一瞬の黙祷をささげると、残された海賊船へと視線を向ける。
船上で孤軍奮闘しながらも、ギンは向かってくる船員を切り倒し、甲板に並べられた砲弾をけり倒していく。
さらにその上空からは、ギンの死角からせまる海賊を無慈悲に射抜いていく。
最後の砲が床に転がると同時に、永琳は空へと向けて光を放った。
すでに決着はつきそうであった。
「錬丹『水銀の海』」
まるで流れる水のような青い光の波が打ちあがる。
そして青い光に反応して、遠くから砲撃に徹していた船がこちらへと近づいてくる。
手には、おもむろに剣を掲げた男達が、その戦意を海賊船へと向けていた。
「永琳さんと、輝夜様に良いところ見せるぜッ!!」
「「「「「おおッ!?」」」」」
「どうやら、永琳達の方も片付きそうね」
加勢に向かうかと問うクロに対して、必要ないと答える輝夜は、いまだあっけにとられた商船の乗り組員へ言葉を掛ける。
「危ないところで在りました。遠目に海賊船に襲われるあなた方が見えましたので、僭越ながら加勢させていただきました」
目の前の光景に思考がついて行かなかった商船の船長だが、海賊が駆逐されたのを確認すると、全身で喜びを表しながら輝夜の前に歩み出る。
「あっ、ああありがとう、助かったッ!? 俺はランカー商会会長の、ガランカーダ・ランカーだ。あんた、あなたの名前は?」
似合わない不気味なでウィンクをしながら輝夜へ近づこうとするが、二人の間に割り込んだクロにその行為を静止させられる。
「蓬莱山輝夜です」
そこへ、海賊団の残党の制圧が終わった永琳が、空からゆっくりと舞い降りてきた。
「姫様、海賊船の制圧は完了しました。残っていた財宝と食料は船に運びこむように指示しておきました」
「ありがとう永琳」
役目を終えた永琳が、改めてあたりを見回すと、何人もの護衛達が傷を負って、倒れ込んでいた。
「あなたが、船長ですか? せっかくです。私も治療のお手伝いをさせてもらっても」
「あっ、ああ、頼む」
そして永琳は、あわただしく動き回る船医と共に、けが人の治療へと向う。
「ところで、あんたらはいったい?」
海賊船を殲滅する戦力もさることながら、絶世の美女と美少女。
そして、奇妙な武器を持った執事風の男に、まるで少女達と釣り合っていない粗暴な風貌の船員達。
これで興味を惹かないわけがなかった。
「私どもは、グランドラインへ向けて旅をしているものです。ちょっとした好奇心でね」
いたずらっぽく笑う輝夜に、ランカーは思わず頬を染める。
「あんたのような美人がッ、こんな船で、どうだ、何なら俺の商船へ来ないか、あんたのに不住させんぞ」
「あら、熱烈な歓迎はうれしく思いますが……、残念です商船如きでは私には役不足ですわ」
力強い視線と共に、いたずらっぽく笑みを浮かべる輝夜。
全てを魅了するかのような笑顔と、尊大な物言いは、まるで噂に聞いた海賊女帝の様だと思われた。
「その代り一つお願いがあるのですが?」
「なっ、なんだ? 積荷の香辛料がほしけりゃ好きなだけ持っていっても、なんならこの俺様がそっちの船にッ! ぐぼっ!」
息を荒げて興奮するランカーは、突如背後からの一撃を受けて崩れ落ちる。
「ランカー様っ、何勝手な事言ってるんですかッ。申し訳ありません、私ランガーの秘書をしているヘトロと申します」
ヘトロと名乗った紫の髪を結った女性。目元が少々吊り上がっているが、顔立ちは整っており、十分美人の部類に入る。
背筋をすっと伸ばし、歩き方はきびきびとしており、ヘトロ本人の努力がうかがえる。
「……、えっとヘトロさん? 船長はいいのかしら?」
「いいんですよ。私の気持ちに気づかないこんな奴―――。それで、お願いといいましたか? 無論この船と、命を助けていただいた恩人ですから、できる限りのことをさせていただきますが、さすがに積荷丸々よこせなどの無茶はできないのですが……」
どうやらランカーよりは、常識的な思考を持っているようなヘトロに、輝夜は言う。
「積荷は、あそこで浮いている海賊の賞金額から売ってください。それよりも航海士を探しています。グランドラインを渡るだけの力を備えた航海士を紹介してくれないかしら?」
「グランドラインをですか? さすがにすぐには……、少し確認しますので、待ってもらえますか?」
「ええ。海賊の後始末もあるでしょうし。では、お願いしますね」
輝夜の願いに、さすがのヘトロも渋い顔をする。何せ、この時代優秀な航海士は引く手数多だ。
それもグランドラインで通用するレベルとなれば、相当である。
だが、命の恩人に対して下手な人物を紹介するのはランカー商会の沽券にかかわる。
グランドラインへ航海可能であり、ランカー商会が吐き出せる人物……、ヘトロは足早に、測量室へと向かう。
その夜、次の島までの護衛を条件に、積荷の料金を半額まで割り引かせた輝夜達は、深夜の宴会にいそしんでいた。
そんな時だった、全員に酒がまわり始めたころ、包帯まみれの男が姿を現した。
「話は聞かせてもらった」
宴会上に姿を現したのは、風車にも見えなくもない、十字に薄紫色の髪を結った男だった。
「君たちがグランドラインへと向かうなら、ぜひ私を一緒につれて行って貰いたい」
そして、手の甲を向けるように敬礼すると、輝夜達に向かって笑顔を向け、ヘトロがその言葉に続く。
「私たちの商会が出せる航海士ですが、本人の意思もあり彼が良いかと。実力だけは、グランドラインでも通用すると、航海士が言っていました……。ただ……」
そこで言葉を濁し、すまなそうに額の汗をぬぐいながらヘトロが続ける。
「ドクトル永琳にも話しましたが、彼は……、記憶喪失なのです」
「記憶喪失って、それ大丈夫なのかッ?!」
ヘトロの言葉に、近くに居た輝夜の配下がざわめきだす。
「そうだ、確かに私に記憶はない。だが、ランカー船長に拾ってもらわなければ、私は海の藻屑になっていただろう。決して、ランカー船長の顔に泥を塗るようなことだけはしないと誓おう。そして、私はそんな自分が何者かを知るためにグランドラインの魚人島へと向かいたい」
男は、ランカー商会に助けられ、意識のないときに、『魚人島』とつぶやいたらしい。
ほかに自身の記憶につながるものはほとんどなく、せいぜい下着に書かれていた名前くらいだった。
失った記憶を取り戻す為に魚人島へ向かいたいと告げる。
「航海士としての腕は保障できるのね?」
「はい、他の航海士に何度か確認させ、グランドラインについてもおそらく、航海経験があるようなことを話していました。確証はありませんが、今すぐに出せる人物は彼が限界です」
ヘトロが申し訳なさそうに告げると、輝夜はじっと目の前の男の見つめる。
男の航海士の腕は今ここではわからない。しかし、商会の航海士がある程度保障するなら、ひとまず信用してみるのも手だろう。他に伝手はないのだ、その状況で新しく航海士を配下にすることができるかと考えれば、この男を加えるべきだろう。
少なくとも、その目からは覚悟だけは決まっているように感じる。
「いいでしょう、あなたを雇うわ。これからよろしくね」
輝夜は握手を求め、男の名前を改めて問う。
「ありがとう、ミス輝夜、そして皆さんも。私の事は気軽にプリンプリンとでも呼んでください」
記憶のない男は、かつての自分を探す為に、グランドラインへの突入を決めた。
そこに、自分記憶への手がかりが何一つなかったとしても、今の彼にそれを知ることは、残念ながら在りえなかった。
突然の問題に正解した皆さん、不正解だった皆さん、スルーした皆さん、ここまで読んでいただきありがとうございます。
前回の更新からかなり空いてしまい申し訳ありません。
あれですね、文章力も筋肉と同じで、書かないとどんどん衰えていくようです。ここまで書くのに何度も書き直して、ようやく投稿できるかと思えるところまで来ました。
かなりブランクが開いてしまいましたので、おかしな所がありましたらコメントなどいただけると嬉しいです。
感想だけでもうれしいです。
なるべく間隔が空かないようにするつもりですが、次回の更新は未定です。
書きあがり次第投稿しますので、その時は、またよろしくお願いします。