オリ怪人は、ヒーローに倒してもらうんでいいよね!!   作:チビメガネ

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皆さんも巻き込まれの事故には気をつけましょう。
こちらがルールを守ってても訪れるのが巻き込まれの怖いところです。


侵入社員

 

 

「こりゃ高く売れるぜ……数千万か、いや億か」

 男は、これから自分が手にするであろう大金を想像して思わず笑みを浮かべる。

 警報もなり、数分も経たないうちに警備のものを来るのは誰が考えても分かるはずだが、この男はそんなこと気にせず宝石を手に取りその場に居座っている。

 

「ここのセキュリティーもザルだしよ。こんなに楽に稼げるなら働くのもバカらしくなるってもんだ」

 警官が数名倒れている部屋で、男は警報にも負けないくらい大きな声で笑い始める。

 

 A級賞金首 通称『侵入社員』

 この男は、富豪の家から大手の会社まで幅広く盗みを働く悪党である。今のように宝石を盗むこともあれば、会社の社員に成りすまし金庫や機密情報を盗み出し金にするかなりやり手の盗人である。しかしそれだけならば単なる窃盗犯で賞金首になることはない。

 この男は、彼を追ってくるヒーローや警察から逃げる、もしくは仕留める手段としてヒーローが使っている武器を盗んでそれを使用するという手段にでたのだ。

 ヒーロー協会はこれを知り、男を賞金首に認定。そして現在に至る。

 

「まだいるぞ。捕まえろ」

「おっと居座りすぎたか。反省、反省」

 1人の警備員が男のいる部屋のドアを開けると、5、6人の警官が部屋に入ってくる。その様子を見て男は、口ではそう述べるものの、体の向きを飛び降りて逃走できる窓の方向ではない警官がなだれ込んでくる方向へ向ける。

 

「さて改めて、攻撃力の確認をしておくか」

 男は左手に持った宝石をポケットに突っ込み、右手で持ち続けている槍に添えて構え直す。

 

「A級11位 スティンガーの武器、通称『タケノコ』の威力。とくと味わえ」

 名乗るように一言呟くと、叫びながら警官の軍団に突撃していく。

 

 警官の1人が、右足で踏み込んで棒を振り下ろしてくる。男はその攻撃を半身になって避けながら左拳で顔面を殴ることで、その警官を壁まで飛ばす。

 

「……槍って室内じゃ使えないじゃん。部屋の高さに対して槍長すぎだろ」

 その隙に背後に回り込んでいた警官が、左拳で殴ったところを狙って男に向かって踏み込んで棒を振り下ろすが、槍を横に構えられたことで、この攻撃を防がれる。

 それが合図だったのか、残りの数名の警官が拳銃を腰から出して、男に向ける。おそらく男の両手を防いだところを銃弾で仕留めようという算段なのだろう。

 

「やっべーな、これ」

 これには男も成す術ないと思ったのか乾いた笑いを浮かべながら、左足を地面から少し離しておく。

 その表情を正面で見ている警官は、顔の緊張が取れ強張っていた表情が微かに緩んでいく。

 表情が緩んだ瞬間に、警官の右腹に男の左足が爆音とともにめり込んでいく。

 

「……なんちゃってね」

 正面にいたはずの警官は、男から見て左後方に吹き飛ばされていく。当然のことながら飛ばされる軌道上にいた警官も巻き添えを食らい、壁まで飛ばされてしまう。

 

「槍と見せかけた火薬仕込みの靴による回し蹴りでしたー」

 巻き添えを食らわずに後ろで立ちつくしている警官に向かって、男はあっかんべーをする。

 

「さてと……」

 残った警官3名が、距離を取って男の様子を窺うなか、男はそんなこと気にもせず天井を見上げる。そして、一呼吸置いて警官のほうを向いて左手を横に振りながら言う。

 

「じゃあね」

 警官の1人が、待てと大声で叫ぶものの、背を向けて割れた窓から飛び降りていく男に聞こえるわけもなくあっけなく逃げられてしまう。

 

 この男は、明らかに彼らのことを舐めているのかもしれない。普通そのような態度を取っていたならば、すぐに捕まり、刑務所に入れられることだろう。しかしこの男はそうはならない。

 ただ単に一般人よりも身体能力が高いから、並大抵のものからは逃げられるという自信もあるだろうがそれだけではない。

 この男は、盗みに入る場所の情報をくまなく調べ上げてから盗みに入る。

 盗む場所が何階に存在するのかというのは当然のこととして、警備員の数、配置、シフトから始まり、その警備員の誕生日という絶対使わないであろう情報まで調べ上げる。従って男には逃げるルート、そしてそれに掛かる時間も分かっている。そして、万が一追い込まれた際倒せる人数は何人であるかも計算に入れ、その場で潰せる時間内で敵も減らしておく。そうしてできた余裕が、男が舐めているように見えている原因なのかもしれない。

 

 そしてこれはヒーローに対する盗みにも適用される。彼は彼らの身体能力、癖なども何故か調べ上げてから武器を中心に盗みに入る。その情報の中には、盗みに入るヒーロー以外の情報も入ってきており、今ではかなりのヒーロー通となってしまった。

 

 ただ彼は知らなかったのである。

 

 ヒーローの情報というのは頭では理解していたとしても、実際には自分の想像の遥か上であるということを……。

 

 

『A市に建設されたマンション北西で現在異常な震動が確認されたとのことです。怪人の可能性が高いとのことで、A市に向かう予定の方は控えるようにと先程ヒーロー協会より発表されました。』

 無事に無傷で宝石を盗み出し、警官も撒いた男の耳にそういうニュースが聞こえてくる。盗人であるこの男にとって、混乱をした場所に侵入しようと無意識に思うことは仕方ないことなのかもしれない。しかしこの男もあのマンションは、ボフォイが監修していることは理解しているため、実際にすることはない。

 

 そうは頭では分かってはいるものの、やはり盗みに行きたいようで空を見上げながら小声で

「いけそうなら、いこうかな……」

 そう呟くのだった。

 

 今日のやることを終えた男は、まだ辺りが明るいうちに槍を片付けるために家に戻ってからさっさと宝石を売り飛ばして夜遊ぼうとでも考えながら、スキップをしながら帰路についていた。

 今から男の家に帰ったとしても2時間ほどあれば、金に換える時間を含めても余りがでるのは明らかである。そう考えると夕方にもならないかもしれない……いや、そもそも今回の戦利品は昼からと言わず、何日も続けて遊び続けられる代物だ。男がスキップだけでなく、鼻歌も歌い始めるほど喜ぶのも無理はないのかもしれない。

 

 そんな様子の男の後ろの建物の屋上には、日の光で反射した弾が輝く。

『こちら、黄金ボール。目標を確認、どうぞ』

 男が周りの視線を気にせずはしゃいでいる姿を確認した黄金ボールが無線で向かいの路地に隠れているヒーローに連絡を取る。

 

『こっちも確認した。手筈通りに追い込んでくれ』

『了解』

 隠れている1人であるイナズマックスが返事しながら、その建物付近に潜んでいるスティンガーに右手で、GOサインを出す。それを確認したスティンガーは無言で首を縦に振り移動していく。

 

 男が右に道を曲がっていく。スティンガーは背後を尾行するのではなく、路地を曲がっていき男が歩いている道と合流した位置で奇襲を仕掛けようということだろう。

 

『あと数秒で来るぞ』

『分かった』

 パチンコ越しに相手を改めて確認した黄金ボールが、合流地点で身を潜めているスティンガーに伝える。

 その無線の通り、数秒後に待ち構えているスティンガーに大通りから鼻歌が聞こえてくる。

 両手で構え直すスティンガー。そして片足が路地から確認できた瞬間に踏み込んで、首元を貫く勢いの突きを相手に向けて放つ。

 

「おっと」

 男は、路地との合流地点を通り過ぎず、後ろに下がって攻撃を避ける。

 

「俺の『タケノコ』返してもらうぜ」

 おそらく作り直したのであろう槍を持ち直し、スティンガーは男と向かい合う。

 

「やれるもんならやってみろ」

 その様子を見て、笑いながら男も構える。

 

 互いに踏み込み、突きを繰り出し合う。

 槍の先が2人の距離の中心で、衝突する。

 スティンガーは、それを確認して一歩踏み込んで、槍先を下にずらして自分の槍を左手で回転させる。

 

「ギガンティック……」

「お前の癖は把握してんだよ」

 その叫びを遮るように言った男は、下方向に向いた槍先を左足を踏み込み、スティンガーの左足を突く……避けられたものの、体勢を崩すには十分だったようで回転突きを繰り出す前に数歩下がることとなるステインガー。

 それに伴って男は、一気に近づいて火薬仕込みの回転蹴りを腹にぶち込む。その攻撃が直撃したそのヒーローは、向かいの歩道まで飛ばされる。

 

「ギガンティック」

 次は男が叫びながら槍を回転させていく。

 

「ドリルスティンガー」

 飛ばされて四つん這いに崩れ落ちているヒーローまで、残り数歩とであり、立ち上がるまでの時間を考えると回転突きを避けきれることはないだろう。それを察した男は、顔の表情は緩めて、その叫び声をより大きくしていく。

 

「四連……」

 最後の一歩を踏み終わり、相手に槍先が届こうとしていたその瞬間……空気を切り裂いて直進した弾が男の右手に当たり、その反動で持っていた槍が手から離れて上空に舞い上がる。

 

 男はすぐに弾道の方向を確認し、黄金ボールを視界に捕らえる。

 男の次のヒーロー武器の狙いは、黄金ボールのパチンコと形状記憶弾金であった。男の狙いであったということは、黄金ボールの技能も情報として知っていたということを意味している。今の状態であれば、一対一ならスティンガー相手に負けることのない侵入社員といえども、A級であり、なおかつ近距離同士の戦いに不利なそれなりに射程のある黄金ボールとなると話が変わってくる。実際には打破する手はあるが、奥の手であるのであまり使いたくない。

 となると選択する手は一つである。

 

「逃げっか」

 黄金ボールの弾が当たらないように建物に囲まれた路地に逃げ込みながらヒーロー2人を撒くこと。

 それがこの男にとって今取ることができる最善の策である。

 

「さっきまでの威勢は、どうした」

「うっせ」

 弾も避けながら、スティンガーとの攻防を続けて逃げていく。

 

 しかし、その逃げ込んだ先には……

「稲妻飛び後ろ回し蹴り」

 イナズマックスの蹴りが待ち構えていた。

 

「勝負あったろ。宝石とこいつらの武器を置いてきな」

 顔面に直撃したことで膝をついてイナズマックスを見上げる男に対して、合流をした黄金ボールが言い放つ。

 

「なるほど……」

 その声を聞き、そう呟く男。

 このような狭い建物に囲まれた路地でのイナズマックスとスティンガーの挟み撃ちは、逃げ場がない分相手をするのが難しい。しかも避けようと少しでも上に跳躍をしたら弾が飛んでくるということだろう。

 

「いいだろう……こちらも奥の手を使わせてもらう」

 男の言葉を聞いた3人は、緊張した表情で構え直す。

 

 男は右のポケットに手を突っ込んでとある薬を出し口に入れて飲み込む。

 

「なんだこれ」

 するとどういうわけか、男の体が巨大化し、筋肉も膨張していき6m強の体になっていく。

 

「バケモンに成り上がった」

 驚くイナズマックスに対して、大声をあげて笑い始める怪物。そして丁寧にもこの原因を教えてくれるのであった。

 

 男は、とある組織のアジトに盗みを働こうとしていた。そしてある時全ての準備を終え、侵入した。ちょうどそのころその組織は、とある2人組に狙われ攻め込まれようとしていたので、難なく侵入することに成功。そして男は一番気をつけようと思っていた喋るカブトムシもその2人組に気を取られており、お目当ての品を本当に苦労なく手にすることができたらしい。

 その品とは、人を怪人化させる薬である。しかしこれは試作品もいいところで副作用もあると思われたので、死ぬもしくはどうあがいても捕まってしまう恐れがあるときには使いたくなかったそうだ。

 しかも、もう改良品が作られただろうと後日そのアジトに入ろうとしたらもうアジトはなく手に入れられることができなかったらしい。

 

「つまり……」

 ヒーローの後ろに回り込み、拳を振り落とす怪物。その拳はもの凄い大きな音とともにコンクリートに練り込む。

 

「スティンガー」

 黄金ボールが叫ぶのも意味を成さず、意識を失うスティンガー。

 

「この通りお前ら程度なら一発で仕留められんだよ」

 そう言って指を鳴らして、イナズマックスのほうを向く怪物。

 

「いいぜ、やってやる」

 冷汗が一筋イナズマックスの頬を通り過ぎ、地面に落ちていく。

 怪物は不敵な笑みを浮かべながら、拳を握り直す。

 

 ……このとき怪物は知らなかったのである。

 

 

 

 このとき、怪物は知らなかったのである。

 A市で起こっていた怪物騒動は単なる喧嘩とも言い難いヒーロー2人の仕業であったことを。

 そしてその1人がその阿修羅カブトを一撃で仕留めたということを。またもう一人がS級ヒーローの中でも抜きんでて強いということを。

 

 このときサイタマは知らなかったのである。

 自分が進化の家に行ったとき、もう一人侵入者がいたということを。

 そして、タツマキにが抑えられて進んだ先に怪物がいるということを。

 

 タツマキは知らなかったのである。

 何も知らなかった。 

 そう……何も知らなかった。

 

 

 

 

 

「お前もお終いだ。黄金b……」

「邪魔」

 大通りにどうにか逃げ出して黄金ボールと向かい合っていた怪物は、タツマキの低空飛行の延長線上にいた。

 タツマキが手をかざすと、跡形もなく体が粉々にされていく。

 

 

「お前今何かしなかった……破裂音みたいなのしたぞ」

「あんたは黙ってればいいのよ、ハゲ!! 」

  顔を押さえつけられながらサイタマが言ったのはそんな言葉であった。

 

 

 

 

 

 






またネタがあげるかもです。


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