問題児たちが異世界から来るそうですよ?~私は科学者です~   作:東門

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第四話

 

“ロマン”――――

いつの時代も人々が求め欲し、探すもの。

現代においてはそのほとんどが探求し尽くされ、一切人の手が及んでいないものなどほとんどない。

だが、だからと言って軽々しくそれを諦めることはできない。

手近にないのなら求める範囲を広げ、深海や宇宙。果ては異世界までがその範囲となる。

 

そして――――“ロマン”を見つけたのならばどれほど困難であろうと、無謀であろうと手を伸ばす。

それを笑うことは誰にも許されるものではない。

 

故に、誕生して以来、百年を優に超える時間をあらゆる存在から守り抜かれたそれへ手を伸ばすことも、また止めることなどできはしない。

――――人はその行動をどう思い、どのような言葉で表すのだろうか?

 

やはり無謀?蛮勇? 否、きっと人はその行動をこう呼ぶのだろう――――

 

 

 

 

 

――――そう、セクハラと。

 

「おい、どうした?ボーっとしてると胸とか脚とか揉むぞ?」

 

呆然とする黒ウサギと呼ばれた少女、十六夜はその豊満な身体へ這うように手を伸ばす。

 

「え、きゃあ!」

 

後一歩、ほんの数瞬行動が遅れていればその手は、長い時間を誰の手にも触れさせることなく守り抜かれた“神秘”へと届いていただろう。

 

「な、ば、おば、貴方は馬鹿です!?二百年守ってきた黒ウサギの貞操に傷をつけるつもりですか!?」

 

「二百年守ってきた貞操?うわ、超傷つけたい」

 

「お馬鹿!?いいえ、お馬鹿!」

 

「ま、今はいいや。後々の楽しみにとっとこう」

 

「左様デスか……ま、まあそれはともかく!ゲームに勝利した以上そちらの水神様からギフトを頂くとしましょう!」

 

「あ?」

 

「なにせ御二方は水神様本人を倒しましたからね。きっとすごいギフトを頂けますよー♪」

 

小躍りするような足取りで蛇神のもとへ向かう黒ウサギの前に、十六夜が不機嫌そうに立ちふさがる。

 

その後、十六夜は今まで疑問に思っていた『どうして自分たちを呼び寄せなければならなかったのか?』という疑問をぶつけ、その推理力で黒ウサギのコミュニティが衰退した崖っぷちのコミュニティであることが判明し、面白おかしく黒ウサギの口から『魔王にコミュニティを潰されたのでその魔王から誇りと仲間を取り戻す』というような説明を受けた。

これと同時刻、飛鳥と耀もガルドからコミュニティの現状を聞いている。

十六夜はしばらく難しそうな顔をしていたが「いいな、それ」と黒ウサギたちに協力する旨を伝えた。

 

「ほれ、あの蛇を起こしてさっさとギフトを貰ってこい」

 

「は、はい!……って、あれ?」

 

黒ウサギが何かに気づいたように辺りを見回す。

 

「どうかしたのか、黒ウサギ?」

 

「いえ、先程からシュタインさんのお姿が……」

 

『月の兎ーーーー!!?』

 

のびていたはずの蛇神の切羽詰ったような声が周囲に響き渡る。

その姿を視界に収めると、そこにはメアリに無理やり地にその体を縫い付けられ、刃物を両手に持ったシュタインに迫られる蛇神の姿があった。

 

『この小僧をどうにかしてくれーーーー!!』

 

「ええいうるさいぞ、神様ならば駄々をこねず尻尾の一本や二本けちけちせず切り取らせろ。また生えてくるんだからいいだろう?」

 

『生えるかッ、我をトカゲと一緒にするな!ええい、は・な・せ!』

 

「ダメだダメだ。敗者ならば粛々と勝者に従い標本か瓶詰めになるがいい!」

 

『ヤメロォーーーーーー!!!』

 

「何をやっているのですかお馬鹿様ーーーーーー!!」

 

スパァン!

 

黒ウサギの取り出したハリセンがシュタインの頭を捉え、そのまま張り倒す。

 

「なにをするのかね?ゲームに勝利した以上あれは私の自由にしていいのではないのか?」

 

「そんな事実は一切ありません!事前にゲームの商品が決められていない場合はゲームの後で双方納得のいく相応のギフトを勝者へ渡す決まりなのですよ」

 

「なんだと、おのれ騙したなあッ黒ウサギ!?」

 

「事実無根なのですよ!?」

 

その後、話し合いの末シュタインは蛇神の牙を一本貰う事で納得し、黒ウサギは水樹の苗とやらを受け取り「キャーキャー♪」いいながら回転するという頭の出来を疑う挙動を十六夜とシュタインは眺めるのだった。

……ちなみにメアリはボロボロの蛇神を戦鎚でつついていた。

 

 

 

 

 

そして十六夜、シュタイン、メアリ、黒ウサギの四人は世界の果て目指して歩いている。

その道中、そういえばと十六夜が口を開く。

 

「シュタインは黒ウサギの話聞いてたのか?」

 

その言葉に黒ウサギがびくりと肩を震わせたあとでウサみみをへにょりとさせる。

 

「ああ、確かに聞いてたぞ。そう確か彼女は、

『無知な猿どもが、私たちの野望の為にウブ毛までしゃぶり尽くしてやるぜこの野郎ゲヴァヴァヴァヴァ』と、言っていたな……恐ろしい限りだ」

 

「言ってません!」

 

「いや、言ってたぞ?」

 

「断じて言ってません!お二人共あまりふざけないでください!」

 

スパーン☆と黒ウサギのハリセンが二人の頭を叩く。

十六夜はヤハハ、と笑いシュタインは割と本気で「(・3・)アルェー?」といった感じだ。

 

「まあ私たちはなんでもいいとも。コミュニティの現状も君の嘘も特に気にしない。君たちも必死だったんだろう?しかたない」

 

「シュ、シュタインさん……申し訳ございません。それとありがとうございま――――」

 

「礼なんていらんよ……『そう…君が私の実験に付き合ってくれるというのなら、ね?』」

 

「予想通りの反応だったのですよーーー!!」

 

スパーン☆

 

本日三度目のハリセンがシュタインの頭に打ち込まれた。

ちなみにシュタインはちゃんと『ノーネーム』に入ることが決まった。

 

 

 

 

 

「「おお……!」」 「……ァ」

 

たどり着いたのは

トリトニスの滝は夕暮れの光を浴びて朱色に染まり、跳ね返る激しい水飛沫が数多の虹を創りだしている

楕円形のようにも見える滝の河口は遥か彼方にまで続いており、流水は〝世界の果て〟を通って無限の空に投げ出されていた。

絶壁から飛ぶ激しい水飛沫と風に煽られながら黒ウサギは説明した。

 

「どうです?横幅の全長は約2800mもあるトリトニスの大滝でございます。こんな滝は十六夜さんやシュタインさんの故郷にもないのでは?」

 

「ああ、素直にすげぇよ。ん?この〝世界の果て〟の下はどんな感じになってるんだ?やっぱり大亀が世界を支えているのか?」

 

「残念ながらNOですね。この世界を支えているのは〝世界軸〟と呼ばれる柱でございます。この箱庭の世界がこのように不完全な形で存在しているのは、何処かの誰かが〝世界軸〟を一本引き抜いて持ち帰った、という伝説もあるのですが……」

 

「なんだと!大亀がいないとはどういうことだ!亀を探してこんな場所まで来たというのに……仕方がない、世界軸とやらを削り取ることで我慢するとしよう」

 

そう言ってシュタインはメアリの戦鎚ジェットを使って世界の果てを降下していく。

 

「やめてくださいシュタインさん!世界の果てから先は箱庭の外、あらゆる時代のあらゆる世界につながっているのですよ!」

 

箱庭の外に出れば箱庭に戻れなくなるのはもちろん、どの時代のどの世界に行ったのかも黒ウサギたちは把握することができず捜索することもできなくなる。

その言葉にまだこの箱庭でやりたいことも多々あるシュタインはしぶしぶもとの位置へ戻ってきた。

 

「なんか見えたか?」

 

「ああ、なにやらへし折れる寸前の枯れ木みたいなのが支えてたぞ」

 

「ええっ、そんな感じだったのですか!?」

 

そうしてトリトニスの滝の絶景を存分に楽しんだ後、久遠と春日部の二人が先に向かった天幕に覆われた都市へ四人で向かった。

道中、

 

「しかし黒ウサギ。あの二人にはコミュニティの現状を説明するのかね?

おそらく気にはしないだろうが、騙して利用するつもりなら信頼関係など望まず相応の覚悟とギブアンドテイクの関係を徹底してもらいたいのだが…」

 

「うう…その話はもうやめてください…。黒ウサギは反省したのです。御二方にはちゃんと説明するつもりなのですよ」

 

「へえ、じゃあ俺たちには説明せず騙して利用するつもりだったのか」

 

「おお、怖い怖い…悪女だな悪女」

 

「……ゥゥ」

 

「なぜそうなるのですかーーー!!」

 

涙目で悲鳴を上げる黒ウサギをからかいながら進む。

ただでさえこの時点で心労で潰れそうになっている黒ウサギは、なんだか向こうの二人も今この瞬間にもなにか問題を起こしていそうな予感を感じるのだった。

 

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