問題児たちが異世界から来るそうですよ?~私は科学者です~   作:東門

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第五話

都市内部は召喚された四人+一匹+一機のいた世界では考えられない造りだった。

天幕の中でありながら降り注ぐ太陽の輝き。道行く人々は人類種だけでなく、リザードマンや人狼といった人外の存在も多く道を闊歩している。

 

当然この状況を歓迎しない十六夜とシュタインではなく、黒ウサギの静止も振り切りあっちへふらふらこっちへふらふら。

十六夜は露天に並んでいる見たこともない雑貨や食料品を見て回り、シュタインは道行く人にとんでもないことをしようとする。

そしてそれを黒ウサギがハリセンで引っ叩き、待ち合わせ場所の噴水広場へ引っ張っていく。

 

ようやく噴水広場へ着いた頃には黒ウサギは既に体力の限界といった様子だった。

しかし忘れるなかれ、問題児は十六夜とシュタイン以外にまだ二人もいるのだ。

当然問題を起こさないなんてことはなく―――――

 

「な、なんであの短時間に〝フォレス・ガロ〟のリーダーと接触してしかも喧嘩を売る状況になったのですか!?」

「しかもゲームの日取りは明日!?」

「それも敵のテリトリー内で戦うなんて!」

「準備している時間もお金もありません!」

「一体どういうつもりがあってのことです!」

「聞いているんですか三人とも!」

 

 

「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」」」

 

 

既に問題児の内二人はこの“ノーネーム”のリーダーのジンという少年とともに“フォレス・ガロ”とやらに喧嘩をふっかけていた。

 

「なるほど……“善は急げ”と言うやつだな、理にかなってる」

 

「何一つ良くないのですよーーー!」

 

「別にいいじゃねーか。見境なく選んで喧嘩を売ったわけじゃないんだから許してやれよ」

 

状況をニヤニヤ笑いながら見守っていた十六夜もおもしろそうだからいいとばかりに止めに入る。

 

「い、十六夜さんは面白ければいいと思っているかもしれませんけど、このゲームで得られるものは自己満足だけなんですよ?この〝契約書類〟を見てください」

 

“参加者が勝利した場合、主催者は参加者の言及する全ての罪を認め、箱庭の法の下で正しい裁きを受けた後、コミュニティを解散する”

 

「ふむ―――まあいいじゃないか。まず足元の掃除から始めるのは新生活で大切なことだぞ?」

「そのとおりよ。これから先、あの外道が私の活動範囲で野放しにされることはとてもじゃないけど我慢できないわ。だからここで決着をつけておきたいのよ」

 

「僕もガルドを逃がしたくないと思っている。彼のような悪人は野放しにしちゃいけない」

 

「はぁ~……。仕方ない人達です。まあいいデス。腹立たしいのは黒ウサギも同じですし。〝フォレス・ガロ〟程度なら十六夜さんかシュタインさんのどちらか一人いれば楽勝でしょう」

 

「何言ってんだよ。俺は参加しねぇよ」

 

「当たり前よ。貴方なんて参加させないわ。もちろん、シュタイン君もね」

 

「まあ、私はゲームの土産話さえ聞かせてもらえればいいよ」

 

「だ、駄目ですよ!御三方はコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと――――」

 

「そういうことじゃねぇよ黒ウサギ」

 

「そのとおりだ。ゲームを仕掛けたのはこの三人で、ゲーム内容を決めるのは向こうなのだから参加者もこの三人で固定だろう。要はそういうことだろ十六夜?」

 

「大分違うけどな。まあ俺は人のゲームに横槍入れるような無粋なまねはしねえよ」

 

「……。ああもう、好きにしてください」

 

 

 

 

 

しばらく明日のゲームの話をしていると、話が黒ウサギがコミュニティの現状を隠していたことに向いていった。

 

「ううう……本当に申し訳なかったのですよ~~」

 

「もういいわ。私は組織の水準なんてどうでもよかったもの。春日部さんはどう?」

 

「私も怒ってない。そもそもコミュニティがどうの、というのはどうでも……あ、けど」

 

そういえば、と耀は迷うように呟いた。

 

「どうぞ気兼ねなく聞いてください。僕らに出来ることなら最低限の用意はさせてもらいます」

 

「そ、そんな大それた物じゃないよ。ただ私は……毎日三食お風呂付きの寝床があればいいな、と思っただけだから」

 

空気が―――――死んだ。

 

この箱庭の下層弱小コミュニティで潤沢な水源を持つところなどそうはなく、風呂は割と贅沢なものなのだ。

もっとも、この問題は十六夜とシュタイン+メアリの手によって悲惨な目に合わされた蛇神から水樹を強奪したので解決済みなのだが。

 

「それじゃあ黒ウサギ。今日はもうコミュニティに帰る?」

 

「あ、ジン坊ちゃんは先にお帰りください。この水樹と皆さんのギフトの鑑定はこちらでやっておきますので」

 

その後、ギフトの鑑定ができるという巨大商業コミュニティ“サウザンドアイズ”へ向けて出発した。

途中、微妙に桜に見えない桜の木にツッコミを入れながら歩いていく。

 

そしてようやく二人の女神が向かい合う旗の掲げられた“サウザンドアイズ”の支店へ駆けていくが――――

サッと建物から出てきた女性店員が看板をしまい店を閉めようとする。

 

「まっ」

 

「待ったなしです御客様。うちは時間外営業はやっていません」

 

「そのプロ根性……見事!」

 

「見事でも何でもないのですよッ、まだ閉店まで時間があるというのに客を追い返すとは何事ですかー!?」

 

「そうですね、確かに〝箱庭の貴族〟であるウサギの御客様を無下にするのは失礼ですね。では事情は店内で伺いましょう。ただし……コミュニティの名と旗印の提示をお願いします」

 

「こちらは“ブルー・ヴァイパー”のコミュニティだ。これが旗印」

 

そう言ってシュタインが一切の躊躇なく、懐から一本の十字剣に青い蛇が巻き付いた青地の旗を取り出して提示した。

 

「ダメですシュタインさん!名と旗印の捏造など決してやってはいけないことなのですよ!」

 

「ならばどうする、どうせ“ノーネーム”ではまっとうな客としては扱われないんだろう?なにか策でもあるというのか」

 

「うっ……それは~そのですね……」

 

「いぃぃぃやほおぉぉぉぉぉ!久しぶりだ黒ウサギイィィィ!」

 

黒ウサギは店内から飛び出してきた和装ロリのフライングボディアタックをうけて少女と共にクルクルクルクルと空中四回転半ひねりの後、街道の向こうにある水路まで吹き飛んだ。

 

「きゃあ――――…………!」

 

悲鳴が遠くなり最後に水しぶきをあげて水路へ落ちた。

 

「し、白夜叉様!?どうして貴女がこんな下層に!?」

 

「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろうに!フフ、フホホフホホ!やっぱりウサギは触り心地が違うのう!」

 

「し、白夜叉様!ちょ、ちょっと離れてください!」

 

黒ウサギが抱きついた白夜叉と呼ばれた少女を引き剥がし店の方へ投げつけた。

そしてその方向にはシュタインと十六夜が立っており――――その先の流れはまあ察するとおり。

 

「十六夜」

 

「おう、やるか」

 

一見、息の合ったコンビプレイといった様子で二人が同時に動き出す。

シュタインの前面の地面がドロリとした泥のようなものとともに形を変え、二人の目の前に“鉄の処女/アイアンメイデン”が作り出される。

当然二人の方向へ飛んできた白夜叉は作り出された鉄の処女の中に吸い込まれ――――閉じた。

 

「ぎゃああああああああああああああ!!?」

 

周囲に白夜叉の絶叫が木霊した。そして次に動き出すのは十六夜だ。が――――ここで考えてもらいたい。

確かに“一見”二人は息の合ったコンビプレイを見せているように見える、が。この二人はまだ出会って半日ほどしか経っていないのである。

故に互を理解して動いたように見えてもそれはそう見えるだけでしかなく

 

「「あ」」

 

「NOOOOOOOOOO!!!」

 

十六夜は軽く蹴るだけのつもりだったが、シュタインのせいで予想外の位置で白夜叉の動きが止まったために本来想定した位置で蹴り足が止まらず、そのまま白夜叉の入った鉄の処女を――――蹴り抜いた。

存分に手加減した結果だが、それは十六夜の力から見ての手加減であり、鉄の処女は粉々になり、白夜叉は吹き飛んだ。

想定外の結果に場の空気は完全に凍りついており、二人はしばし互を見て

 

「「イエーイ♪」」

 

と、ハイタッチした。

 

「イエーイ♪、ではないのですよお馬鹿様方ーーーーーー!!」

 

恒例となったハリセンアタックが黒ウサギの手によって炸裂した。

 

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