「まぁ、ドンマイだ。空回りしたことくらい気にすんな!」
「そうそう。相手が悪かったよ。」
試合後の帰り道、いつもの三人で帰る。
「ああ。本当にチームには申し訳なく思う。」
「ところでさ、未来って北海道からなんでわざわざ東京に来たの?」
「たしかに。北海道にも全国で戦えるチームはあるし。それに東北にもあるぞ。」
「それはね、あの人のおかげなんだよ…」
そう、あのときあの人と出会ってなければ……
オレがサッカーを始めたのは小学3年生のときだった。
小柄で無口だったオレになにか特技を持ってほしいということで両親が地元の小学校の釧山少年団に入れてくれた。
「港 未来です。よろしくお願いします。」
「おう!おれはこの学年のコーチをしている本堂だ!コーチって呼んでくれりゃあいい。楽しくがんばろうな!」
それはもう普段人目につかないところでひっそり暮らしていたオレはガチガチに緊張している。
「オレは青根!よろしくね!この学年は今はお前含めて9人しかいないからギリギリ8人制の大会にでれる。…あっ!あとオレが一応キャプテンだ!」
オレにできたはじめての友達。
暑苦しいけど。
「よーし!じゃあまずリフティングからだ!4年生になるまでに50回できるように練習するぞ!」
「コーチ!コーチ!オレこの前40回いったよ!」
「おっ!葉山はいっつも練習前に練習してたもんなぁ。あと十回頑張れ!」
40回……すごいなぁ。早くみんなに追い付かないと!
よっと、…いち、にぃ、さん…………さんじゅう、…………ごじゅう。…アレ?
「……あの。」
「ん?なんだ?どうした未来?コツを教えてほしいのか?」
「50回できました。」
「おいおい新入り~。そりゃ嘘だろぉ。ですよねコーチ。」
「うーん。…よし!集合!最後のやつグラウンド1週!」
『急げー!』
「よし。じゃあ未来!みんなに50回見せてやれ!」
そ、そんな無茶な。
人前にたったのなんて日直のとき以来だ。
「えっで、でも…。」
「いいからいいから、失敗してもいいぞ。やってみろ!」
「う、うん。」
…いち、にぃ、さん……………………ごじゅう。
『うぉ~すげぇーー!』
「お前すごいな!サッカーやってたの?」
「い、いやはじめてだけど。」
「すげぇ!みんなこいつ天才かもな!」
チームのみんなが次々にほめてくれた。
ほめられたのなんて久しぶりだ。
「よし!次は二人組でインサイドキック!」
ふ、二人組!?
声をかけることができず余ってしまった。
「よし!未来は特別にオレとやるぞ!」
コーチがやってくれた。
「えいっ!」
コロコロとボールは転がってコーチの足元で止まった。
「ははっ。ナイスパスだ!よし。インサイドキックを教えてやる。」
そうしてオレに20分付きっきりで教えてくれた。
「よし!じゃあ最後にミニゲームをやろうか!」
『よっしゃあ!』
『今日はオレが得点王になるぞ!』
ゲームが始まり、オレはいなにをすればいいかもわからないまま、ほとんど動かずに時間が過ぎていってしまう。
「未来!走れ!」
急に声がきこえ、ボールがきた。
足で踏んづけてトラップ。
「シュート!」
教えてもらったばかりのインサイドキックでゴールにけりこんだ。
『ナイスシュート!』
『やったな!オレたちの勝ちだ!』
サッカーの楽しさにこの日、気づいたんだ。
「お母さん!」
「どうしたの未来。」
「今日ね、リフティグ50回できたんだ!それにね、ゴールも決めたんだよ!」
「あらあら。それはすごい。でも、その汚い足をすぐ洗ってきなさい。」
「はーい。」
サッカーをはじめてからオレは変わった。
家で一人で遊ぶことも減って、チームのみんなで遊ぶことが増えた。
そしてサッカーのほうはチームはあまり強くなくて県大会にいくようなことはなかったけど、個人としてはトレセンにも選ばれて、充実した日々を送っていた。
そして少年団を卒団して、中学の部活に進んだ。
一年生の時からレギュラーで使ってもらい、サッカー漬けの毎日を送っていた。
チームは強かった。
他の小学校からも生徒がたくさん来ていて、部員もたくさんいた。
そして中3の時に、チームは運もあり、中体連の全国大会に出場した。
そして一回戦。
「ふー。やっぱ静岡は暑いねぇ。」
そういうのはチームの点取屋、室井。
県大会でもミラクルゴールを連発した。
ボランチの青根とサイドバックの葉山は少年団からの付き合い。
これにチームで一番上手かったオレを含めた4人がチームの中軸だった。
そして相手は地元静岡の焼村中。
オレたちと同じく市立で注目を集めていた。
それもそうだ。全国大会に市立が出るということはたまたま全国レベルの選手が何人か揃うということだ。
しかし焼村は違う。
今大会で三年連続の全国出場。
市立で三年連続は極めて異例だ。
しかし、オレたちにとっては下手に名門の私立と当たるよりもラッキーだったと考えていた。
しかし、そんな思いも試合開始30秒でくずれる。
「ピーッ!」
試合開始。
「おらぁ!」
キックオフシュートそのキックオフシュートは凄まじい勢いでネットに突き刺さった。
開始4秒で先制点を許した。
「や、やべぇ。」
「いや、まだはじまったばっかだ!こっからこっから!」
気持ちで負けるわけにはいかない。
「ピーッ。」
そしてこちらのキックオフ。
室井とのワンツーからシュートチャンスを迎えるも…。
「鈍いな。」
相手GKの高速の飛び出しの前にシュートを打てない。
そこから高速カウンターで2点目をとられる。
「な、なんだよこれ!」
「いったいどなっていやがる!」
一方的な虐殺は試合終了まで続き最終的なスコアは18-0。
全員が悔しさと絶望の涙をながしていた。
初の全国で屈辱的な経験をして、オレたちは卒部をした。
そして北国の短い夏が終わり秋のある日。
「なぁ。未来は高校どこいくの?」
オレは青根と進路について話していた。
「高校はどこでもいい。」
「なんで?サッカー辞めんのか?」
「違う。」
「どういうことだ?」
「東京に親戚が住んでる。そこに居候して向こうのJリーグのユースに入ろうと思う。」
「ハァ?」
「全国で戦ったやつらはきっとプロになる。そんときにリベンジできるように、プロへの近道をオレは選ぶ。」
「ってことはオファーが来たってことか?」
「いや、きてない。でも、練習参加の許可をもらった。冬休みに一週間見てもらいにいってくる。」
「それってリスク高くないか?冬休みにはみんな試験勉強ピークだぞ。」
「ああ。わかってる。だが幸いオレのそんな決断をしてでも「だめだったらうちに。」っていってくれている高校があるんだ。挑戦できる環境があるんだからオレは挑戦したい。」
「なるほどねぇ。じゃあ高校も向こうの高校を受験すんの?」
「ああ。で、青根はどうするの?」
「オレは高校からオファーがきてるからそこにいくよ。」
「そっか。」
そして、運命をかけた一週間がやってきた。
「今日から一週間。テスト生として参加する港 未来だ。みんな、覚えてやってくれ。」
「よろしくお願いします。」
「テスト生ってことはまだ中学生か、よろしくな!」
そして一週間後。
「未来!ちょっと残れ。」
「はい。」
ユースの責任者に呼ばれた。
きっと合否の話だろう。
「この一週間。お前のプレーをみた感想を言わせてもらう。スルーパスや密集地帯でのボールキープには光るものがある。だが、背が小さい。そして、緊張で全力を出せていなかった。大一番で力を発揮できない選手は引き受けることはできない。」
頭が真っ白になった。
『不合格』
ショックだ。
しかし二度目の挫折を味わってから3日後。
帰りの飛行機に乗るため電車で移動しているときに運命が大きく変わっていく。
「どうしたのですか?顔色が悪いですよ?」
電車で隣に座っていたおじさんに声をかけられる。
「いや、実はサッカーをやっているのですが、ユースに落ちてしまって。」
「……サッカー。…ですか。中学は?」
「釧山中学です。」
「北海道の中学ですね。…と、いうことはこの前の全中にでていましたか?」
「え?あ、はい。」
なんだこのおっさんは。サッカーファンか?
「(なるほど。あのときの子でしたか。どういう理由で東京のユースを目指したのかはわかりませんが、これはチャンスです。)ところで、高校は決まっていますか?」
「い、いや。決まっていません。でもオファーをいただいているところがあるのでそこにいこうと思っています。」
「では、うちに来ませんか?」
「え?ええ~~!?」
過去編。
難しいですね。
もっとないようは濃くしていきたかったのですが。
また勉強していきます。
次はいつになるかわかりませんが。
またよろしくお願いします。