インフィニット・ストラトス 組織の怪人達 作:ガトリングさん
──とある一室──
施設のシンプルで6畳くらいしかない部屋とその半分を占領するほどの大きさのベット上で男は昨日渡された書類に目を通していた。
本名 ジョン・タイラー
性別 男性
身長 250cm
体重 170kg
経歴 SPC(シャーク・パンチャー・センター)警備員、施設周辺で倒れていたところを同施設で保護。それ以降の経歴は一切なく、また本人の記憶もない。
身体 心身ともに健康、警備員の仕事がら格闘訓練射撃訓練を受けていた。外傷のすべてが業務中のものであり特に頭部は損傷が多いためマスクを使用している。
武装所持に関して 専用機所持につきまして護身用の武装は本人に任せます。
ISに関して ISのサメ殴り業務についての研究の際、IS警備に就いたときに接触し動かせることが判明した。なおSPCからすでに専用機が譲渡されている。
男はそれを読みながら思考を巡らせていた。
SPCは確か此処の隠れ蓑として使用している団体だったはずだ。そこの警備員の設定はいいが記憶喪失はどういう意味だ? まさか都合の悪いことをそれでごまかせと……。IS学園はそこまで甘い学園じゃないと思うが、まあいい。下手に詰め込むよりはボロが出にくいだろうな。
書類を読み終えた男は体に詰まったものを吐き出すようにため息をした後、部屋を後にした。
──廊下──
「あら、ジョンじゃない。ジョン、ちょっとこっち来て」
男はそう呼びかけられ少しぎこちなく振り向いた。
「もうその名で呼ぶのか? いつもの番号はどうした」
「今少しぎこちなかったわよ、これから少なくとも三年はその名で呼ばれるんだから気をつけなさいよね」
「あー、わかったよ気を付ける。それで? 名前のことだけじゃないんだろう? 」
男はそういうと彼女の小脇に抱えられてあった分厚い本を指さした。いつもタブレットやら電子機器やらで物質的な情報管理を嫌った彼女がわざわざ重たい本を持ち歩くことなんてめったにないことだったからだ。
「これね、参考書。入学前に必ず読んどけって学園側から渡されてきたの。それにしてもわざわざ印刷物じゃなくてもデータで渡してくれた方がいいと思わない? こんな重くて分厚いの電話帳と間違えてしまいそう」
「流石にいないだろうよ、そんな奴。とにかくありがとうまあゆっくり読んどくよ」
男は本を受け取りながら心の中で本の方が有り難いのだがなっと思った。
──医療室──
「ドクターいるかい? 」
廊下で参考書を受け取った後、男は目的の場所についた。そこは医療室と名のついているが実質ドクターと呼ばれた男の研究室の様になっていた。簡素な机や資料棚、部屋の壁際に小型の培養液が並んだ棚がありガラスを挟んだもう一つの部屋には血にまみれた手術台が一つあった。その手術台で作業していた男が声に反応して振り向く。
「どうしたのかね? 0083番。体のことで何かあるのか? 」
ドクターは高身長で体格もいい壮年期の男性だったが顔色が悪く、血まみれの姿と相まって如何にも怪しい風貌だった。
「体についての検査もあるがもう一つ、制服のために採寸してもらいたいんだ」
「ああ、IS学園に入学するためにね、だとしたらジョンって呼んだ方がよかったかな? 」
「好きにしたらいい、どうせ三年は付き合っていく名前だ」
男は手に持っていた参考書をドクターの机の上に置こうとしたが一旦止めた、机の上をさすり液体で濡れていないことを確認してから参考書を置いた。
「安心したまえ、昨日掃除をしたばかりでね。どれもこれも新品同然さ」
「その割には手術台と服はいつもと変わりないが? 」
「急に解剖がしたくなってね……そうだ、午後からの検査だが、あの手術台の上でしてやろう。勿論私なりのやり方でね」
「それは断るよ、今は採寸してもうだけでいい」
男はそういうとドクターは少し肩をすくめて苦笑した。
──某所──
とある青年が息を切らせ脇目もふらず走っていた、しかも時折手元の地図や壁に描かれた矢印を見ながら走っていたため段々人気のない所に突き進んでいることに気が付かなくっていた。
「ここは……? 」
そうして入り込んだ一室にあったのは待機状態のISだった、青年がそこでようやく自分が違う場所に向かって入っていたことを知った。そのことを知った青年はさっきまでの移動は徒労だったという現実に少なからずショックを受けたがそれよりも今は目の前のISが気になってしょうがなかった。なぜこんな所にISが? なぜ周りに護衛も何もないのだろうか? と考えながらふと誘われるようにISに手を触れた。
それが世界最強の弟にして公式での最初の男性IS操縦者である織斑一夏の始まりであった。
次回は入学かも。