インフィニット・ストラトス 組織の怪人達 作:ガトリングさん
──学園前──
普段なら女子しかいない筈のIS学園の前に一人、本来ならいるはずのない人間が一人いた。もしも平時の学園だったなら、一般女子生徒もいてその不自然さが極まっていたところだったが幸いにも入学式の途中だったため、そこには男以外誰もいなかった。
「しかし……予定通りだからといって他の生徒より遅れるのは居心地が悪いな」
そう言うと男は入学前に話があるということで職員室に来るように言われていたのを思い出し、場所を訪ねようと受付まで歩いて行った。
──受付──
そこでは女性二人が受付の業務をしていた、が入学式で人もなく予定にあるのが男性一人が来るだけと聞いていたので雰囲気は休憩時に近いものであり世間話などをしていた。無理もない、予定の男性は二番目の男性IS操縦者なのだから多少浮足立つのも仕方ないことであった。
そうこうしているうちに予定の男性の姿が見えてきた。
「ねぇあの人じゃない? 」
「確かに、ロングコート風だけどIS学園の制服だし……」
段々近づいて来るにつれて男の体格がはっきりわかっていく、山脈を思わせる肩幅、堅牢な城壁の様な胸板、その肉体に相応しい四肢。そのどれを散っても受付嬢を威圧させるのに十分どころか過剰であった。
「すまない、ジョン・タイラーだが職員室を教えてくれないか? 」
男、もといジョンはそういうと同時に事前に作っておいた身分証明書を提示した。
受付嬢は恐れながら受け取り顔? を確認しバーコードを機械で読み取りながら本人確認をして返した。
「しょ、職員室は本館一階南門から入って左に進んだ先にあります」
「ありがとう」
ジョンはそれを聞くとそのまま本館に向かっていった。
後に残された受付嬢は自身の足元に広がる汗だまりを見て驚愕した、これは大量に汗が出たのにもかかわらず一切気が付かなかったほど緊張していたことを表していたのだから。
「きょ、今日は早めに休みにはい入っていいよね? あ、ああ汗ふかなきゃ」
「う、うんそうしたほ、ほうがいいよ」
彼女たちはからだを震わせながらそういった。
──職員室──
織斑千冬は一人で、いや見た目は清掃員の恰好をした学長先生と二人で待っていた。事情があって入学式に遅れてくる男性IS操縦者のことだ。実は彼の正体については学長と担任である千冬、一部の人間以外には知られていないことで、今手物にある資料は学校生活用の仮の姿であることは知っていた。本当の事は公にはできないのでハッキングの心配のない口頭伝達で伝えることになっていた。幸い入学式ということもあり職員室には千冬以外全員いないからできたのだ。
そうこうしているうちに扉を叩く音がした。
「入れ」
千冬がそういうと扉が開きジョンが扉をくぐりながら入ってきた。
「失礼する」
「お前がジョン・タイラーか? 」
「ええ、わざわざ時間をずらして密会しているのです。成り済ましということはないでしょう」
「そうだろうな、例え偽物だったとしても教わるのはこちら側だ。少なくとも情報漏洩はしない」
「そちらの方は学長先生ですね? 」
ジョンにそう聞かれた学長先生は帽子を取りながら答えた。
「如何にも、やはり恰好だけではだませないね」
「話には聞いていたのですよ。前もって」
「そこまでわかっているのなら話は早い、かけた前」
「わかりました」
ジョンはそういうと前もって用意されたであろう椅子に座った。腰を下ろすと同時に軋む音がしたが特には気にしなかった。
「まず、私の出生について話しましょう、織斑先生黒ウサギ隊について知ってますよね? 」
「ああ、昔教官を務めていたから知っているが……まさか」
「そのまさかです、ただ遺伝子の強化だけではなく他人数の遺伝子が入っています」
「まさかそんな技術があったとはね」
話を聞いていた二人は特段動揺を見せなかった。試験管ベイビーの事は二人とも知っていたし、千冬にとってみればかつての生徒によく似た人といった印象しかなかった。
「やはり動揺を見せませんね、しかし黒ウサギ隊の場合はただ単に遺伝子強化ですが私の場合、多人数の遺伝子が合成強化しているのです。表向きには話せません」
ジョンのその言葉を聞いて千冬と学長はジョンの言わんとしている事を理解した、ただ単に皮膚を移植するにしても拒絶反応によってうまく移植することができない。しかし目の前の男は多人数の遺伝子を拒絶反応を起こさずに結合しそして生きているのだ。そんな話は聞いたことが無い、もし本当にそうなのであればこの男の後ろにいる組織の科学力は想像の上をいくものだろうと予測できた。
「ふむ、だからなのかは知らないが女性にしか動かせないISを動かしている理由にも繋がる」
千冬はそう言ったが学長先生の方は思考に集中していた。
もしも、もしも彼の中に女性の遺伝子が含まれているからISを動かせるだったのなら話はそれで終わりだ。しかしそう簡単に事が進むか? 普通の女性でも適性がなかったらISを動かすことはできない、ただでさえ多くの遺伝子の一部である女性の遺伝子に反応し動かすことができるのか? そう簡単にうまいこと行くはずがない。もしも彼の遺伝子の話が本当であれば……相当な科学力を有していることになるだろう。そうISコアを作成できるくらいの科学力が。
学長先生が頭の中で推理しているとジョンが言った。
「私の体のことについてはこれで終わりです、質問は? 」
「いや特には無いが……いやでは無いのならその仮面について説明してくれるか? 」
「これですか? いやなに傷がありましてね。保護するために着けているだけですよ」
「そうか、そういう事情なら構わない」
その時ずっと口を閉ざしていた学長先生が口を開く。
「なるほど、話は分かりました。とりあえず入学式には出れませんでしたが今日から貴方はIS学園の生徒だ。よろしく頼むよ」
「ええ此方こそよろしくお願いいたします」
そう返事を返すと千冬は腕時計を見ながら
「ではそろそろ教室に戻らねばならない、タイラーは私が受け持つクラスだから一緒に来い。それと」
千冬がジョンの近くによって小声で言う。
「貴様がどこの誰かは知らんが少なくとも私の生徒に危害を加えようと思わないことだ」
「わかってます、その為に来たわけではありませんから」
「そうか、では行くぞ。今頃ホームルームで自己紹介でもしてる頃だろうからな」
千冬がそう言いながら職員室を出ていく、ジョンもそれについて行きながら一人心の中で思った。
これから始まる学校生活、平穏に進めればいいが。っと
やっと出生について書けた、次は主人公たちと出会えるかも。