ライザー=フェニックスの日常   作:兵太郎

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女傭兵

「……キース大佐の攻撃がやっと終わったか。よし、私達は逃げ行く敵軍に合流するぞ!」

 

ライザーとイザベラは敗走する傭兵達の最後尾に紛れることに成功した。ライザーは、共に走っている周りの傭兵達を見渡す。

(屈強な奴……屈強な奴……)

彼は、自分の眷属候補をこの機会に探していた。すると、前で少しどよめきが起こった。しかし、傭兵達自体は何事も無くただ敵本陣へと戻って行っている。

「どうしたんだろう?」と思っていたライザーだったが、その理由はすぐに判明した。

通路の右側、そこに1人の女傭兵が倒れていた。頭にバンダナを巻き、人間界でいう騎士の様な鎧を着た女だった。腰には短剣を数本持っている。その身体に傷は無さそうだが、どうしたのだろうか。ライザーは不思議に思って近づく。

「おーい、大丈夫か?」

その女は、意識はあるのかこちらを向いた。その口が動くが、何を言っているのかわからない。ライザーは耳を口元に近づける。

 

「……はら……腹が、減った……何か、食べ物を……」

 

……。

「よし、行くぞイザベラ!」「お、おう」

そうやってライザーはその場から立ち去ろうとするが、足を掴まれた。

「……食べ物。食べ物をくれないか?」

「……あーもうわかった!これあげるから!」

ポケットに入っていた食べかけのチョコレートを渡す。彼女はそれを食べると、すくっと立ち上がった。

 

「よおぉし、元気が出たぞ!再び反撃と行くか!」

「いや、撤退命令出たんだが」

思わずイザベラが突っ込む。彼女はこの女傭兵にキースと同じ面倒くささを感じた。

 

「そうか、撤退か……すまない、折角食べ物を分けて貰ったのに……そうだ、チョコレート、ありがとう。感謝してる」

女傭兵はお礼を言ってくる。ライザーは少し照れながらも「味方通し、助け合いは当然だ」と返した。

 

その後、女傭兵と3人で敵本陣に走る。

「……ねぇ、あんた名前なんていうんだ?」

女傭兵がこちらに尋ねてきた。名前か……ここはフェニックス家にとって敵地。本名を言うと確実に狙われる。言うべきでは無いだろう。どうしようかなとライザーは考える。

 

「お、俺は、俺の名前は……そう、レヴィン!レヴィンだ!」

レイヴェル命名の時を思い出し、ライザーは咄嗟にそう口走っていた。

(父さん、あなたの付けようとした名前は、無駄にならなかったようだ!)

ライザーは父の抜けた所に改めて感謝した。ところで、この名前はその後も時々ライザーの偽名として使われる様になる。

「へぇ、なかなかイカした名前だね。そっちの橙髪のお姉さんは?」

「わ、私!?私は……い、イーザだ!」

「ふぅん、変わった名前」「はぅ!」

……ネーミングが安直だなとライザーも思ったが、気にしない事にした。

「私の名前はカーラマイン。傭兵歴は5年。初めて戦場に経ったのはレヴィンの歳くらいの時だな。それから何度か戦場を渡り歩き、今回が10回目の戦場になるが……あまり戦況は良くなさそうだ」

その後も女傭兵……カーラマインと話しているうちに、敵陣に到着した。敵陣は旧魔王幹部とその配下のいる場所と、傭兵達のキャンプに別れていた。旧魔王幹部のいる場所は贅沢そうな造りだが、傭兵達のキャンプは金をかけていないのが丸わかりなほど、差がある。

 

カーラマインは傭兵達のキャンプ群の奥へと進んで行く。ライザー達は黙ってついていった。やがてカーラマインはかなり奥の、そこそこ大きなテントの前で止まった。

「ふぅ、ついた。レヴィン、イーザ、あんたらも入るかい?」

カーラマインはそう訊いてくる。ライザーが頷くと、彼女は入り口を開け、中にエスコートしてくれた。

周りに警戒しながら中に入るライザー。すると、奥に人影がぼんやりと映る。

「おかえりー、なかなか遅かったな……ん、誰だ、お前」

「ただいま、そいつらは客だ」

「おお、カーラマイン。お前の客か」

よく見るとテントの中で、女傭兵が一人横になっている。髪を頭の上で何房にも分けるという独特の髪型をした、背の高そうな女だ。

「紹介しよう、こちらレヴィンとイーザ。私の恩人だ」

「カーラマイン、また食べ物を恵んでもらったのか?」

女傭兵はやれやれと肩をすくめる。こういう事は今回が初めてでは無いらしい。

「レヴィン、イーザ。こちらはシーリス。私の傭兵仲間だ」

「シーリスだ、よろしく頼む」

 

女傭兵……シーリスはこちらに浅く一礼する。その背中には大剣を背負っていた。

シーリスはカーラマインに尋ねる。

 

「どうだった、カーラマイン。今日の戦果は」

「これはもうダメだ。みんな戦う気を失ってる。中には自分達から捕まりに行ってる奴もいる。勝てるわけがない。最初から無謀だったんだ」

 

女傭兵2人はライザーとイザベラが居るのもお構い無しに、話を続けていく。やがて話はまとめに入ってきた。

「そろそろ引き時か?」「そうだな、捕虜にはなりたくないし」

その言葉を聴いて、ライザーは立ち上がった。

 

「お前達、逃げるなどよりもっと大きなことをしないか?」

 




カーラマインにシーリス、参戦です!

今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!
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