「フェニックスが……首を切られたくらいで死ぬか!」
そう言い終わった頃にはライザーの首は再生を終え、彼は拳を上に振り抜く。が、それは宙を切ったのみだった。
上にいた者は壁を蹴ってクルクルと回りながら座っている女の子のもとに着地する。その顔には驚愕が張り付いていた。
「く、首を切ったのに死なないなんて……怖!」
その顔は座っている女の子と瓜二つだった。髪の長さと結んでいる場所が違うくらいで、彼女らは、生えている八重歯に至るまで全てが似ていた。
「どうした!何かあったのか!?」
眷属三人も遅れて家に入ってくる。彼女達に先に行かせなくて良かった、とライザーは心の中で自分の眷属の無事にホッとした。
座っていた女の子も床板を一枚取り外すと、中からもう一人と同じ武器を取り出す。チェーンソーだ。
対峙するライザー達と女の子、おそらく双子だろう。彼女らは痩せている弱々しい見た目にとても似合いそうに無い武器を持ち、構えている。ライザー達も彼女らをどうすればいいのかわからず、行動に移れない。一触即発の雰囲気を崩したのは、後ろで寝ている女性だった。
「コホ、コホコホッ!」
その音に双子は反応する。二人はチェーンソーを床に置くと、その女性の方へと向かう。
「お母さん、大丈夫?」「寝苦しかった?うるさかったかな?」
もはやライザー達のことは気にもしていない様子で、双子は奥で寝ている女性ーー今の会話からして、双子の母親か?ーーに話し掛ける。ライザー達は訳がわからなかった。
「どうしたんだ、ライザー?何があったんだ?」
「いや……ノックして家に入ってみたら首を切られてしまった。不意打ちだとはいえ、この俺に攻撃を喰らわせるとは……」
「……まぁ、君は結構隙だらけだしな」
ライザーはその言葉を華麗にスルーすると、女の子達に話し掛ける。
「お嬢さん方、大丈夫かい?そこのお母さんも無事?」
質問に対し、双子の片割れがこちらをキッと睨みながらライザーに言い放った。
「お母さんには手を出させないよ、絶対に!」
「いや、手を出す気は無いけど。ちょっと聞きたい事があっただけだし」
「え……」
ライザーは、内乱が終わったことと、ここに来た経緯を告げた。話を全て聞いた双子は顔を近づけて相談を始める。少しすると彼女らはこちらに謝ってきた。
「ゴメンなさい!勝手に首を切ったりして!」「ゴメンなさい!」
急な謝罪にライザーも驚く。
「い、良いよ良いよ。死ななかったんだから。死んでたら文句を言っていたところだけど……」
「そういえば、なんであなたは死ななかったの?」「そうそう、なんで?そもそも、あなたは誰?」
双子が聞いてくる。ライザーは、その時を待っていたとばかりに自己紹介を始める。
「俺はこの地を治めるフェニックス家の三男坊、将来のレーティング・ゲーム王者候補筆頭(自称)の最強の王、ライザー=フェニックスだ!そして彼女達はその栄えある眷属達!」
「ふぇ、フェニックス家!?」「上級貴族!?それも……この地を治める!?」
2人はそれを聞いた途端、姿勢を正し地に頭を伏せる。
『フェニックスさん、いきなり攻撃しちゃってゴメンなさい!』
ライザーは、そういった反応を待っていたと言わんばかりに満足そうな表情をする。
「おう……良し良し、なかなか良い子達じゃないか。面を上げい!」
双子は顔を上げると、ライザーに懇願した。
「フェニックスさん、お母さんを病気から救ってください!」「お母さんを、助けてください!」
ライザーは2人に手を取られると、彼女らの母親の所に連れて行かれた。眷属3人も彼の後についていく。
「ゲホゲホ、ゴホッ」
二人の母親は顔色が良くなく、汗がダラダラと流れている。カーラマインがその表情を見て、脈と体温を手で測り、考えだす。
「これは……インフルエンザかも知れんぞ」
「インフルエンザ!?早く病院に連れて行かないと!下手したら死んでしまう病気だぞ!」
そのライザーの言葉に、双子は悲しそうに答える
「お金……無いの」「病院に行く方法も……無いの」
……その言葉は、今まで何不自由なく暮らしてきたライザーには聞いたことの無い言葉だった。
双子は、今話した事で現実を思い出したのか、暗い顔をしだした。
「お母さん……死んじゃうの?」「このままじゃ、死んじゃうの?」
双子の問いに、ライザーは無言で頷く。
「そんな……いやだぁ!もっとお母さんと一緒にいたいぃ!」「うえええーん!やだぁ!」
そんな泣き声が辺りに響く。ライザーは、しばらく考えると、双子の母に近づき、その身を抱き抱える。
「あ……」「お母さん!」
ライザーはそのまま外を飛び出すと、空に飛び出した。
「あんなに頼まれちゃ、仕方ない。領地の人の言う事を聞くのは、その地を治める貴族の義務みたいなもんだしな……お前ら!俺はこの双子の母親を病院に連れて行く!シトリー領の一番大きな病院で待ってるからな!あと、子供達に空の飛び方を教えてあげてやれ!じゃあな!」
こうしてライザーは双子の母親と共に、病院に向かう。病気はまだ深刻化していないようで、母親は入院こそするものの、命に別状はないとの事だった。
母親の入院手続きが終わって部屋に入るのを確認した後、ライザーは一息つく。外の販売員から飲み物を買っていると、双子と眷属達が到着した。
双子はライザーを見つけると、大急ぎで近寄ってくる。
「お母さんは!?」「無事なの!?」
「ああ、無事だよ。入院は必要みたいだが……あの症状だったら命に別状はないってさ」
その言葉に彼女達は力が抜けたかのようにへたり込んだ。
「良かった……」とつぶやく彼女達だが、その直後にハッとした表情になる。
「お金……どうしよう」「どうしようか?」
不安そうな顔をする双子。そんな彼女達に、ライザーは言った。
「お前達の俺への攻撃、子供とは思えないくらい素早くて、正確だった。お前達は成長すれば、きっとかなりの戦力になる。どうだ、俺の眷属にならないか?」
『眷属?』
「ああ、俺の眷属になれば、きちんとした食事も出すし服も着れる、寝る場所だって用意してやる。それに……お前らのお母さんも世話してやる。まぁ、お母さんの入院に必要な金はこっちが勝手にやった事だから眷属の話とは関係無くこちらが払うが……どうだ、悪い話では無いだろう?」
その言葉に双子はお互いの痩せた身体を見て、それから病院を見ると頷き、ライザーに言った。
「私達、あなたの眷属になります!」「これからよろしくお願いします!」
「ああ、よろしくな!えっと……」
「イルです!」「ネルでーす!」
「そうか。よろしく、イル、ネル!」
こうしてライザーは新しく二人を眷属にした。そのスピードから『
「よし、じゃあ帰ろうか!」
こうしてライザーの旅は、五人の眷属を手に入れるという成果で終えたのだった。
これで眷属は5人!残りの駒は、『女王』1、『戦車』1、『僧侶』2、『兵士』7です!つまり最大11人。まだまだ先は長い!
次回、帰宅。
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!