「じゃあ、行ってくる!」
そう言うとライザーは家を出る。それをユーベルーナは見送った。
「……この頃一週間に二度は外出してるけど、どこに行ってるんだろう?」
「どーもー」
ライザーが訪れたのは、小綺麗で新しそうな道場。そして、その道場の中央には一人の老人が座っていた。
「ほっほっほ。よく来たの、ライザー。さぁ、今日も修行といこうではないか」「おう、師匠!」
「頑張るわねぇ、お坊っちゃん。根を上げて三日坊主になるかと思ったんだけど」
奥から出てきた女に、ライザーは振り返る。
「やかましい!ここで武術でお前に勝てる位に強くなるまで、俺はやめんわ!」
「あら、そう。楽しみね。何百年かかるか分かんないけど」
女は素っ気なく返すと、ライザーの横を通り、外へと出ていった--
最初にこの道場を見つけたのは、単なる偶然だった。
ライザーは、眷属にできるような強者を探して領地を歩いていた。
「はぁー、なんかなぁ、見ただけで『コイツ……できる!!』ってわかるような奴いないかな?」
ライザーはそんな事を愚痴りながら、歩いていく。すると、しばらく歩いた先、古臭い建物の前で、ナンパしている男達を発見した。
「よぉ、ねえちゃん」「俺達と遊ばな〜い?」
男達は二人で一人の女性をナンパしている。俺はその2人の背中を見て、思った。
(こ、コイツ、コイツらのどちらかは……できる奴だ!!)
ナンパしている方からは、微量ながら濃いオーラを感じられた。まるで、実力者がその力を隠しているが、漏れてしまっているかの様な……
(ど、どっちだ!どちらもそこそこ背が高いが、かなりヒョロヒョロだぞ……ハッ、まさか魔力のプロ!?)
ライザーはこっそりとその目でそちらを観察する。
「まぁまぁ、とりあえずお茶でもどうかな?」
そう言って片方の男が女の手を掴んだ……その時!
(な……オーラが、大きく……!!)
一瞬だった。一瞬感じていたオーラが大きくなり、次の瞬間には、男達が倒れ伏していた。
「アタシより弱い人とお茶なんて、バカじゃないの……アタシよりも強くなったら、考えてあげるわ♪じゃあね〜」
そう言って女は、古臭い建物の中に入っていった。
ライザーは慌てて男達に駆け寄る。男達はぐったりとなり、気絶していた。
「腹に一発ずつ、そして顎に一発ずつ…あの一瞬で、四撃!?」
ライザーは女が消えていった建物を見る。その入り口には、よく見ると木が立てかけてあり、文字が書いてあった。
「……『
ライザーはその中を訪ね、そして一人の若い男と出会った。
「……ん?なんだ?今、掃除中なんだけどなぁ」
雑巾掛けをしている男。ライザーは彼に話しかける。
「あの……ここは拳法の道場か何かで?」
「ああ…ここはあんたが言った通り、拳法の道場で間違いないが、あんたは何だ……ハッ、まさか!」
そう言うと男はライザーの手を取る。そしてその手をブンブンと上下に振る!
「あんた、入道志望者かよ!嬉しいねぇ!ここ数年、生徒が居なくてよぉ!後数年来なけりゃここも潰さなくちゃいけなかったんだよ!」
そしてそのままライザーは、あれよあれよと道場に入門させられてしまった。
「じゃあ、受講の曜日は星期二と星期五だから!よろしくな!」
そして受講初日。
「ほっほっほ、来たか我が弟子よ」
最初に来た時に若い男が掃除してた所に、一人の老夫が座っていた。
「爺さんが俺の師匠か?」「いかにも……俺……いや、この姿では儂…か。儂がお前…ではないお主に拳法を教える……あ、いや違う、伝授するのだ……じゃ!」
老父は口調が整っておらず、言葉があやふやだ。
「……ああもう、この口調は疲れる!」
そして老父は急に声を荒げると、「修行するぞ修行!」とライザーに若々しい口調で告げた。
「さぁ、まずは座禅を組んで、精神統一だ!」「あ、ハイ!」
そんなこんなで修行を開始した、その日の丑三つ時位に、彼女は帰ってきた。
「ただいま……ん?何やってんの、父さん?」
現れたのはこの間見た女の子。やっぱりこの家の子だったのか!とライザーは内心で喜ぶ。
「おお、雪蘭。彼はレヴィン。この『飛翼砕雪拳』の継承者となるかもしれない男……お前の兄弟弟子だ。仲良くしてやれ!」
そう言うと女の子は鼻で笑う。
「ハッ、そんなガキがアタシの兄弟弟子?笑わせてくれるわ。アタシは兄弟弟子なんていなくても、一人でこの『飛翼砕雪拳』の名を冥界中に響かせてやるわよ!」
そう言われて黙っているほどライザーは大人ではない。
「誰がガキだ!俺は……実はレヴィンなどという名前ではない!本名ライザー=フェニックス!フェニックス家の三男坊にして将来レーティングゲームの覇者になる男だ!覚えておけ!」
その言葉に、雪蘭だけではなく老父も驚く。
「……へぇ、あんたがこの領地を収めるフェニックス家の三男坊……何の為にわざわざこんな辺境のボロ道場に?」
「この前たまたまお前の戦いを見てな……あの強さは素晴らしい!そう思って眷属に誘いに来たら若い男に捕まってこうして入門させられたのさ」
その言葉に雪蘭は一瞬ポカンとした後、声高く笑い出した。
「あははははははは!アタシがあんたの眷属ぅ?そうねぇ、アタシに勝てたら考えても良いわよ。勝てたらね!」
そう言った瞬間、ライザーの胸に掌底打ちが入る。ライザーの視界が暗転した。
眼が覚めると辺りは明るかった。どうやら朝まで眠っていたらしい。近くには老父が待機している。どうやら見守っていてくれたらしい。
「……おい、爺さん」
俺が声をかけると、老父は「何だ?」と聞き返してきた。
「俺、次から本気で体を鍛えるよ。そしてあいつに勝って、眷属として連れて帰る。良いよな?」
老父はその言葉にゆっくりと頷いた。
そして次の練習日。老父は道場の外で待機していた。
「すまない、爺さん。勝手してしまって……」「良い良い、あんなボロボロな床や壁ではろくな修行も出来なかろうて」
冥界の匠の手により、数時間で道場が新築になった。ライザーはこうして、新しくなった道場で、週2回の修行の日々を過ごすのだった。
「今年中にはあいつに勝ってやる〜!」
ライザー君、道場に弟子入り!
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!