『あ〜あ〜……ううん!ごほん!本日は忙しい中、この席に着いてくれた者達に感謝する。我が息子ライザーは小さな頃からレーティングゲームが大好きだった。その大好きなレーティングゲームで、激闘の末初勝利を飾った事を今日ここに祝いたいと思う!では皆の衆!グラスを持て!音頭は本日の主役に任せる!』
『……本日は俺の初勝利記念パーティーに来てくれてありがとう!どうか楽しんで行ってくれ!では……乾杯!!』
『乾杯!!!』
ライザーの音頭に合わせ、その場にいた者は一斉にグラスを上へと掲げる。そして、『ライザー=フェニックス、レーティングゲーム初勝利記念パーティー』が幕を開けたのだった。
この場に呼ばれているのは、親戚の他にはフェニックスの涙のお得意様や、フェニックス領の近くの領地の名主達。その間を縫う様に、フェニックス家のメイド達が料理皿や酒瓶を持って右往左往している。
ライザーは挨拶をした後、中央のステージを降りる。そのまま食事のある場所に向かった。バイキング方式なので好きなものが好きなだけ食べられる為、早く食事を確保しておきたかったのだ。
何人かと挨拶を交わしながらも食事をある程度取り、ご機嫌なライザー。その背中をツンツン、とつつかれ、後ろを向いた。そこにいたのはユーベルーナとリィ。今回はメイド総出の為、二人も一生懸命働いているのだ。
「ライ君、ワインはいかが?年代物のいいのがあるよ〜」「いやいや、ご主人にはこのウイスキーが似合うのにゃ」
目の前に二つの酒瓶が出される。どちらも美味しそうだ。
「ただ俺、両手とも皿で塞がってるからワイングラスは持てないぞ」
ライザーがそう言うと、リィは目をキランと光らせて、言う。
「そうなると思って、リィは秘策を用意しているのにゃ。これをリィが口の中に入れて、そのまま口移しでふぎゃ!?」
リィの頭が突然下がり、そのまま手に持っているウイスキー瓶に激突する!リィが蹲ったその後ろを見ると、そこには双子の妹、ニィがシャンパンを持って立っていた。
「あれ、ごめんにゃリィ。シャンパンを開けたら蓋が飛んでっちゃったにゃ」
どこか誠意のこもっていない口調でニィは謝る。それに対しリィは返事もできず、ただウイスキー瓶が激突したおでこを押さえている。
「あーあー、リィ大丈夫か?」
そう言うとリィは涙目ながらも、「大丈夫だにゃ、リィは大人だから、こんなの痛くも痒くも無いにゃ……」と無理に笑みを作る。「そうか、偉いぞ」と頭を撫でてやると、作り笑いが消えて本当の笑みがこぼれてきた。
「首の下も〜」「はいはいわかったわかった」と、いつもの様に首の下も撫でてやると、リィはもはやぶつかった事も忘れたかの様に満足そうに喉を鳴らし、目を細めて嬉しそうに尻尾を振る。それを二分ほど続けると、リィもいつも通り、元気になったのだった。
「……終わった?ライ君、それでどっちを飲むの?」
ユーベルーナに聞かれたライザーは、後で良いやと応えてその場から立ち去った。ユーベルーナが少しショックそうな顔だったから、後で構ってやろうと思ったライザーだった。
〜〜〜〜〜〜〜
食事に良い場所は無いか、と思いながら会場の中をうろついていると、傭兵三人組が食事をしているのを見つけた。ライザーはその輪に近づくと、三人もこちらに気づいたのか、場所を少し開けてライザーを迎えた。
「よう、楽しんでるか?」
その問いに三人は同時に首を縦に振る。
「出されている料理は美味しいものばかりだ!ジューシーな肉、柔らかい魚、新鮮な野菜、そしてふっくらしたパンにちょうど良い甘さのデザート!どれも素晴らしい出来で、食べるのがもったいないくらいだ」
食べるのが好きなカーラマインが言うと、残りの二人も同意する。それを聞いてまだ食事を口にしてないのに気づいたライザーは、肉を一切れ皿から取ると口に含んだ。
「……うん!確かに美味い!毎日の料理も美味しいが、これもまた絶品だ!」
「あ、ライザー。これも美味しいんだ。食べるかい?」
イザベラが、皿の上に乗っているゼリーを指差す。ライザーが欲しいと口にすると、イザベラはスプーンで一口分ゼリーをすくい、「はい、あーん」と口の前にに持ってきた。それをライザーはパクっと食いつき、ゼリーを口の中に入れた。
「うん、フルーツの甘みが控えめながらもきちんと感じられる、良い味だ!」
そう言うとイザベラもそうだろうと笑いながら、ゼリーをまたすくうと、今度は自分の口に入れた。
〜〜〜〜〜〜〜
食事をしながら談笑したライザーは、皿の上が空になったタイミングで三人と別れ、皿を返却しに向かう。そこでイル・ネルと会った。二人は棒状のキャンディを舐めながら、ニコニコと笑っている。ライザーが見えると、二人は近づいてきてライザーに抱きついた。
「お兄ちゃんお兄ちゃん!聞いて聞いて!もうすぐお母さんの病気が治るんだよ!」「退院するんだって!また一緒に暮らせるね!」
「おお、良かったな!」そう言ってライザーは二人の頭を撫でる。二人はその間は目を瞑って、撫で終わると同時にまた話し始める。
「お兄ちゃん、お母さんを助けてくれて、ありがとう」「お兄ちゃんのおかげでお母さんは健康になりました」
そう言って二人はぺこりと頭を下げた後、満面の笑みで言う。
「「お兄ちゃん大好き!!」」
その言葉にライザーも、「俺もお前らが大好きだぞー」と返して、二人を抱きしめる力を少し強くした。
〜〜〜〜〜〜〜
皿を返却して二人と別れた後、ライザーは少し風に当たろうと思い、テラスへと出た。テラスには何人か男女がいたが、皆ライザーを見るとそそくさと建物の中に戻っていった。
ライザーは夜空を見上げる。いつもの様に曇っていると思っていたが、どうやら珍しく雲が無い様で、ただひたすら暗闇が空に広がっていた。その中でただ一つ、欠けた月だけが一人ふわふわと浮いている。
「……うっ……グスッ……」
そこで、女の子の泣き声が聞こえた。ライザーは、こんな楽しいパーティーの中でどうしたんだ?と思いながらそちらに近づく。そこには、レーティングゲームの時と同じ、動きやすそうなタンクトップとパンツというファッションの雪蘭が、外のベンチに腰掛けて鼻をすすっていた。
「雪蘭……どうしたんだ?暗い顔して?」
その問いで側にライザーがいるのに気づいたのか、雪蘭は目と鼻を拭うと、立ち上がった。
「別に……何でも無いわ。ただちょっとお酒が回っちゃって……ここで涼んでたの」
ライザーはそうか、とだけ言うと、雪蘭の横を通り過ぎ、ベンチの後ろの柵に寄りかかった。ライザーの背後にはフェニックス領の中の家々が並んでいる。しかしライザーはそちらに目を向けず、雪蘭をただ見る。
少しして、雪蘭は口を開いた。
「ごめんなさい……」
ライザーはその一言に驚く。
「私、自分が今まで強いと思ってたの。だけど、今回のレーティングゲームでは、敵の王に思いっきり殴られてそのままリタイア。そのせいであなたのパーフェクトゲームにはならなかった」
「気にしてないよ、勝てたんだしさ。それにあの王はめちゃくちゃ強かったし。最初の一撃なんて俺の身体を貫通したんだぜ!俺が不死鳥じゃなかったらまずかったと思うくらい強かった……」
「そんな強い相手の力量を測れなかった時点で、私は弱いのよ」
雪蘭はそれだけ言うと、下を向く。その足下に、ポツポツと水が落ちていく。
「ごめんなさい……ごめんなさい……私が足手まといになっちゃって…私のせいで……」
そう言う雪蘭を、ライザーは抱き寄せた。
「大丈夫、お前は良くやってくれてるさ。聞いたよ、腕に矢が刺さってなお、敵を倒したんだろ?」
ライザーはそう言うと、腰にある雪蘭の右腕をなぞる。一箇所不自然に凹んでいるところを、ライザーは愛おしむ様に触れる。
「お前は何も悪くないさ。俺はお前に感謝してるよ。ティミッドを倒した最後の技……飛翼砕雪拳の奥義も、お前に会えたからできたんだ。お前に会えてなかったら俺は、あいつに負けてたかもしれない。だからお前には感謝はありこそすれ、不満なんてない。
だから……もう謝らなくていいさ」
「……」
「一つ言わせてくれ……ありがとう、雪蘭」
その言葉を聞き雪蘭は、大粒の涙をライザーの手に落としながら、叫ぶ様に泣いた。ライザーは彼女を、泣き疲れて眠りに落ちるまで抱きしめていた--
パーティー終了、次回から久しぶりに仲間集め!次のターゲットは……あの影の薄いお姫様でしょうかね?
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!