ライザー=フェニックスの日常   作:兵太郎

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『では、1回戦第1試合!「イザベラVSニィ」始め!!』



1回戦第1試合 〜拳と爪〜

「フッ、フッ、フッ」

イザベラは一定間隔で呼吸をしながら、ファイティングポーズを取ったままその場から動かない。身体を揺らし、まるで食虫植物の様に獲物が飛び込んでくるのを待つ。

ニィはそれを、ただ黙って見続ける。どこかに隙が無いかを探しているが、イザベラは全くと言って良いほど隙を見せない。

二人は試合が始まってから三分ほど、どちらも全く動かなかった。観戦者達も固唾を飲んでそれを見守る。

 

「グゥゥゥゥ……ニャア!!」

ついに我慢の尾が切れたのか、ニィがイザベラに向かって飛び込む!両手の爪をかなり伸ばして、引っ掻く体制に入った!

空中で大きく振りかぶり、全力でイザベラの顔と胴を狙いにかかる!

 

が。

 

ガシイィィィ!っとその爪が手に掴まれる。顔面と身体を切り裂くはずだった武器は、その一歩手前で止められた。

イザベラは鋭利な物を掴んだ事による手の出血も気にせず、むしろより強く爪を握りしめ、思い切り地面に叩きつける!

「グェ……ぁ……うに゛ぁぁあああ!?」

ニィは悲鳴をあげる。その右手の爪が五本中三本、左手が五本中二本、それぞれ剥がれていた。

「……脆い」

イザベラはニィの手から剥がれて自分の手に食い込んだ爪を外すと、地面に放り投げ、かかと落としでそれを粉砕する。粉々に砕け散ったそれを見ながら、イザベラはニィに言う。

「もうリタイアした方がいい」「……っ!」

その声は決して冷酷でも無く人を馬鹿にした響きも無く、むしろ優しささえあった。そんな声でイザベラは言う。

「長年傭兵稼業をやってきた私とお前では、やはり経験値の差というものがある。それはそうそう破られはしない。世の中には大物喰い(ジャイアント・キリング)なんて言葉があるが、それは決して勝てるはずが無い、なんて言われてたやつが勝つからそう言われる。逆に言えば、それだけ勝つ目が少なかったという事だ。今のお前も同じ。無駄に傷つけられるよりは早く降参した方がいい。今だって……痛いだろ?」

ニィは右手で左手を抑えながら、イザベラの方を向き直す。その目には涙が浮かんでいた。

 

しかし、その目は死んではいない!

 

「そんな、初戦敗退なんてお断りだにゃ!」

ニィはイザベラに強く言い、今ある残りの爪を地面に叩きつけ、折る!するとその両手に、新たな十本の爪が出現する!

「奥義・『爪合わせ』!ニィはここに来てからの修行でこんな事も身につけたのにゃ!」

先ほどとは違い、少々青みがかった爪を見てイザベラは眉をしかめる。

「やる気なのか?」

イザベラの先ほどより低い声に、しかしニィは臆さず答える。

「当たり前だに「残念だ」

 

ニィの腹部に、イザベラの左拳が突き刺さる!

 

「せめて痛みを知る間も無く気絶するがいい。

 

『紫電掌』」

 

イザベラの手から電撃が走る!それはニィの身体を貫くと更に数m上空まで飛んでいき、そこで霧散した。

「か……はぁ…………」

白目を剥くニィの口はだらしなく開き、中からザラザラとした舌が無遠慮に垂れている。身体は微弱な電磁波に震えていて、イザベラがその手を離すと今にも崩れ落ちそうだ。その急な衝撃に身体が耐えられなかったのか、時々わざとらしいと思うほどに大きく振動する相手を見て、イザベラは短く

「……勝負あり、だな」

イザベラは拳を一度身体から離すと、倒れかかってきたニィの頭を肩に置き、抱きかかえるように持ち上げる。そこから彼女を寝かせるため動かそうとする。

 

 

その肩に、痛みが走った。

 

「っつ!」

イザベラは肩を見る!そこには先ほどまで白目を剥いていた少女が、大きな口を開けて噛みついていた!

「あがよううはおあっえいあいぎゃ!」

ニィは更に顎の力を強める!数秒して、ゴキン、という鈍い音が辺りに響く!

イザベラは数度右手でニィの腹を殴り、なんとか肩からニィを外す。が、噛み付かれた左腕には力が入らなくなっていた。

「……肩を外したか」「本当は骨を噛み砕くつもりだったんだけどね」

左腕を使い物にならなくさせられながらも未だ余裕を持った感じのイザベラに、ニィは苦々しい顔をしながらも応じる。その身体の震えは止まっている……というより最初からなかったかの様に堂々と立っているニィに、イザベラはなぜ痺れていないのかを質問する。

「私に勝ったら教えてあげるにゃ」

言うと、ニィは爪を空にかざす。その爪には、強力な電気が流れており、バチバチと音を立てている!!

(なるほど、爪を避雷針の様にして電気を全てそこに逃がしたのか……)

そう考えているイザベラに、再び顔と胴をめがけて爪が飛ぶ!

「今度のは電撃入り、掴んでも痺れるにゃよ!」

イザベラは後ろに飛び、それを避ける。しかし、

 

「遅いにゃ!」

昇格(プロモーション)して騎士(ナイト)の速さを手に入れたニィがイザベラの背後に回る!そしてその背中を全力で切りつける!

「がぁっ!!」

イザベラは呻くが、倒れない。彼女は脚に電気を纏わせた回し蹴りでニィを威嚇しながら、間合いを取る。

「にゃ!?今のはかなり本気だったんにゃけど!?」

ニィの動揺、その一瞬の隙を突きイザベラはニィに急接近し、その長く伸びたに蹴りを入れる!最初に叩き割った時よりかは硬くなっていた爪だが、イザベラの蹴りの前に十本まとめて容易く散った。

それを見たニィはギョッとして、騎士の力で逃げようとするが、イザベラはその服を掴み自分に引き寄せ、

 

「『双撃紫電掌』!!」

 

避雷針を無くした身体に右拳と左拳を当て、電撃を浴びせる!!

イザベラの電撃で、ニィはゴロゴロと1mほど転がり、停止する。

「一応、念には念をというやつだ」

イザベラはその両手に魔力の電気の塊を造り出し、ニィに思い切りぶつける!それはニィの腹部に当たり、霧散する。

ニィはピクリとも反応しなかった。イザベラはそれを見ながらライザーに告げる。

「ニィはもう戦闘不能だろう。早く看病してあげてほしい」

 

ライザーはこう答える。

 

いや(・・)まだだな(・・・・)

 

 

何っ!?とイザベラが言うと同時、

 

ニィはすでにイザベラの目の前にいた。

「なっ!?」

イザベラは右腕を前に出してガードしようとしたが、

 

 

その顔面に、戦車(ルーク)昇格(プロモーション)したニィの右拳が突き刺さった。

「ぶ……がぁ……」

倒れゆくイザベラの腹に、更にニィは1撃をお見舞いする。

地面に仰向けになり肢体を投げ出して、イザベラはそれから20秒間動かなかった。

 

『……イザベラ戦闘不能、これによりニィの勝利とする!』

 

「ジャイアントキリング成功ってね」

ゲホッ、と血……ではなく毛玉を吐きながら、ニィはニヤッと笑った。

 

 

 

 

 




1試合目はニィの勝ち!ちなみに、なぜ彼女が電撃を喰らって動けたのかはまた次の機会……かな?

今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!
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