ライザー=フェニックスの日常   作:兵太郎

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『では、1回戦第2試合!「リィVSシーリス」始め!!』


1回戦第2試合 〜リィの秘策〜

開始の合図と共に、シーリスはフルンティングを地面に叩きつける!地面にヒビが入り、割れた土や石の破片が宙に浮かぶ。それを、シーリスはフルンティングの横腹でリィに向かって打つ!

「にゃ!?」

とっさに顔面の前で腕をクロスさせ、身を守るリィ。しかし、ガードすることによってできた隙を見逃すシーリスではない。

土を守りきったリィの頭上には、すでに騎士のスピードで回ってきたシーリスが自慢の剣を振りかざしている!

「えっ、ちょっ」

 

リィの頭に、フルンティングの柄が叩きつけられた!

 

「お、おおおおおぉ〜〜〜!!」

頭を押さえて呻くリィ。どうやら戦車(ルーク)昇格(プロモーション)して、少しでも防御力を上げる事で気絶は免れた様だ。

そのリィの腹部に、シーリスの膝が飛ぶ!リィはガードする間も無く、蹴飛ばされて地面を転がる。

 

「……さっきの第1試合を観て思った事は、やはり油断は敵だという事以外にもう一つある。容赦は自分の首を絞める行為だという事だ」

シーリスは剣先をリィの方に向けながら、宣告する。

 

「リタイアしろ。さもなくば血に飢えたこの剣が、お前の身体を貫く。ルール上は死なない限り反則にはならんからな。殺す気は無いが、私は容赦しないぞ?」

 

うずくまってシーリスの話を聞いていたリィは、その言葉を聞くと、

 

 

着ているメイド服の襟首の中に、顔を突っ込んだ!

 

シーリスは突撃を開始する。頭をどこにあるかわからなくすれば、躊躇してくれると思ったのだろうか?などとリィの奇行に頭の中で?マークを浮かべながらも、その剣がリィに近づくのを止める事は無い。

(あの体勢と体型ならば、胸より下には確実に首がいっていない。ならば、腹部を突く!!)

衝突寸前のシーリスは、その少し前にリィが服の中から首を外に出すのを視界の端で見た。突撃されているとわかって逃げようと遅い行動を開始したのだろう、などとリィの性格を吟味して結論付けるシーリスの剣が、ついに座っているリィの位置へと重なる--!!

 

 

「……あれ??」

 

シーリスは、そう口に出す。理由は簡単。剣から肉を突き破る感覚が無かったからだ。音も無い。悲鳴も無い。もちろん審判達による決着の言葉も無かった。

剣の切っ先にぶつかっている筈の、リィの姿もそこには無かった。

「何!?あの状態から逃げた!?どうやって!!」

 

シーリスが混乱していると、上から声が聞こえた。クスクスという、笑いを押し殺してなお堪えきれずに出てしまった様な声だ。

 

シーリスが上を見るとそこには、悪魔の翼を広げて十mほど上を飛ぶ、リィの姿がある!

「ば、バカな!ありえん!!お前が翼を広げて飛び去るまでには五秒ほどの時間を要するはず!そのうちに私の剣がお前を貫いているはずだ!!なぜ避けている!?なぜ飛んでいる!?」

 

その叫びに、リィは反応し、口を開ける。

 

「ふひひ、フヒヒヒ、ヒハハハハ。ニャハハハハハ!ヒャハハハハハハハハハ!!」

 

返ってきたのは嗤い。それも、溜めて溜めて溜め続けていたものが放出した様な、とてつもなく大きな馬鹿嗤いだった。

 

 

 

 

 

 

 

と、不意にリィの姿が空から消える。

「何っ!?」

頭に血がどんどんと昇ってきながらも、何とか冷静にと努めながらリィを観察していたシーリスは、突然の出来事に驚愕を露わにする。

そのシーリスの横腹に、拳が叩き込まれる。シーリスはそれを受け、わざと地面をゴロゴロと転がり、謎の攻撃から距離を取ってその原因を探ろうとする。

しかし、その背中を踏みつけられたシーリスは、剣を片手に地に伏せる。首を回して背中にいる者を確認するシーリス。そこには、リィがいた。

 

ただし、様子がおかしい。

いつもは(時々だらしない顔になるが)美少女、とも言える彼女の顔が、ただならないほどに変化している。

視線はそこかしこを泳いでおり、一点に定まっていない。口は裂けているかと思うほどに大きく開いており、そこからは涎がダラダラと溢れている。頰は赤く染まっており、どこか火照っている様に見える。どこからどう見ても正気だとは思えない。

 

そんな奴が背中に乗っている、という事に危機感を覚えるシーリス。ここは一刻も早く離れた方が良い、と思い、彼女は持っている剣でリィの足を払うと、スピードを生かして全力で離れる。

 

「リィ、貴様何をした?完全に調子がおかしいぞ。恐怖にやられてしまったのか?」

シーリスの問いに応えるリィではない。彼女は再び視界から消える。それを見たシーリスは飛んで空に逃げると、寸前までいた場所にリィが立っていた。シーリスの先程の立ち位置に、再び拳を放っている。

リィはシーリスの方を向くと、再び消える。今度はシーリスは大剣を身体の前に出し、剣で前身を守ろうとする。ガードが完了したギリギリの所で、リィの拳が剣に叩き込まれる。シーリスはその隙を逃さずリィの腹部を力を込めた左脚で蹴りつけた!リィは、おかしくなる前の様に呻き声を上げたりせず、ただ素直に重力に従って地面に落ちていく。シーリスは攻撃が当たった事に少し安堵しながら、落ちていくリィを見守る。

「何だ、あの力や速さは……服の中に何か、強化剤でも仕込んでいたか?」

シーリスは、レーティングゲームなどで見た事の無かったリィの秘めたる力を見て、そう懸念する。通常のレーティングゲームで取れない、反則とも言うべきドーピングによる超強化。それが強さの理由だと思わないとリィのパワーアップに納得ができない。

(確かにこのトーナメントは反則はほぼ無い様なものだが……そうまでして勝ちにいく必要が……あー)

優勝賞品を思い出して腑に落ちるシーリス。その思考の隙を突き、リィはシーリスの後ろに回って彼女をアームハンマーで叩き落とした。

「ええぃクソッタレ!私としてもそんなくだらない理由で負ける訳にはいかないぞ!」

起き上がりながら怒鳴るシーリスの目の前にリィが現れる。その手には立派な獣の爪が、今にも獲物を仕留めんとばかりにキラリと光っている。シーリスが横っ飛びで爪の射程距離から外れると、リィはそちらを向き再び突っ込んでくる!

シーリスはフルンティングで何とか両腕による攻撃をいなすと、二撃目を放とうとしている状態の身体にトゥーキックをお見舞いし、その反動でまた少し距離を取る。

(何か弱点を探さねば、このまま負ける!何か……っ!)

再三の突撃を剣で対処する。と、そこでシーリスに疑問が浮かぶ。

(目に見えないほどのスピード……それなのになぜガードできるんだ?……あ!)

 

シーリスの頭の中に一つの仮定が生まれる。

(試してみる価値はある。ただ、外したら隙は大きい。一か八か、だな)

 

シーリスは最初と同様剣で地面を叩き、粉塵を今度は自分の上に撒き散らし、そこから距離を取る。石つぶてがパラパラと降るのをリィは笑いながら観ていた。

 

石や砂が全て落ちきる。すると、それを待っていたかの様にリィが姿を消す!

 

「リィ……やはりお前は馬鹿だな。せっかくのスピードも、きちんと動ける様にしなければ意味がない」

 

シーリスは両足を横に大きく開くと身体を横に向け、リィがいた方向とは反対側に、大胆にフルンティングを振りかぶる。

 

「お前はさっきから、突撃する前に数秒から十数秒のラグが生じていた。その間、お前は私の位置を確認していた。しかし」

 

シーリスは脚に力を込め、勢いよくフルンティングを横振りする!

「そんな事をするのは、移動中でも良かったはず!さらに言えば、攻撃も単調なものだった。大体が背後に回るか正面突撃かの二パターン。そのスピードを活かせれば、いろいろな場所から攻撃ができただろうに。

 

そこから導ける答えは一つ!」

 

豪快なスイング、その軌道の先に、リィが現れる!!

 

「お前は、その驚異的なスピードで移動できる代わりに、まっすぐにしか進めない様だな!!」

 

ガッ!!とリィの脇腹にフルンティングの腹が直撃し、

 

リィの身体は一直線に屋敷の方へと飛ばされていった。壁にぶつかり、落ちていくリィを遠目に見て、ライザーは勝敗を決した。

 




オマケ

リィをふっ飛ばしたシーリス。その頭の上に、コツンとぶつかるものがあった。先ほど巻き上げた石だろうか?などとシーリスがそれを拾い上げる。

「……実?」
シーリスが手に取ったのは、何かの植物の実。匂いを嗅ぐと、甘い香りが鼻腔に着く。
と、
「……にゃ!?シーリス!早くそれを捨てて!匂いがこっちにくる前に!!」
フィールドの外からこちらを見ていたニィが、慌てた様にそう言う。
「リーダー、燃やしてくれー」
そう言ってライザーの方にその実を投げると、彼は一瞬でそれを炭にした。

「……燃えたかにゃ?」
恐る恐るニィが質問する。そのニィにシーリスは質問を被せた。
「あの実はなんだ?リィの強化と関係があるのか?」
それに対しニィは、できる限りその炭からも離れる様にしながら言う。
「あれは……私達猫又……いや、猫にとっての天敵とも言える存在……その名も

『MATATABI』

あれを嗅いだら最後、しばらくの間は興奮と共に意識が飛んでしまうのにゃ……ああ、恐ろしにゃ」
「確かに、かなり狂暴化していたな。


満月の日のシーリスみたいだ」
主人からのその言葉を聞き、シーリスは固まる。
「……えっ、私っていつもあんな感じなのか?」
「まぁ、涎を垂らしたりはしていないが、白目を向いて奇声をあげて襲い掛かってくるから似た様なものだなぁ」
それを聞いたシーリスは、

「っ!」
顔を赤くして己の癖(?)を恥じるのだった--


今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!

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