カーラマインはベルトから二本の短剣を取り出すと、片方を
それに対し雪蘭は基本の構え、『風花』を解くと右に跳び、そちらに拳を振るう。
と、
「っ!小細工は通用しないか!」
空中で体制を整え、着地するカーラマイン。その真正面に雪蘭が迫る。右の拳がカーラマインをめがけて振り下ろされる。それに対しカーラマインは腰の二本の長剣の片方を抜き、拳ではなく雪蘭本体を狙う。
「かかったわね!」
一足早く雪蘭の拳がカーラマインの顔を捉える……事はせず、顔の前を通り過ぎる。雪蘭は、腕を振った勢いでスッとカーラマインの横まで滑る様に移動し剣を避け、
「『氷山』!!」
腰を落として背中から体当たりをぶつける!カーラマインは再び吹き飛び地面を転がる。
「ほらほらどうしたの!?まだ一発も当てられてないわよ!」
挑発する雪蘭に対し、カーラマインは服についた土を払うと、長剣を両手で持ち、構える。
「炎よ!我が剣に宿れ!!」
瞬間、カーラマインの長剣に煌々と燃える炎が宿った!!
「……って、はぁ!?そんなのアリ!?」
雪蘭は驚愕する。カーラマインはそれにキョトンとして、雪蘭に告げる。
「ん?あれ?フェニックスは火の鳥だから、フェニックス眷属は皆、炎の技を操れる様にするんじゃなかったのか?」
「へ?」
「あれ?この前リーダーにそう言われて、この『炎を剣に纏わせる』技術を習得したんだが……」
それを聞いて、雪蘭はプルプルと震えると。
「ラァァァイィイィイザァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
雪蘭ではなく、審判のライザーに襲いかかる!主審の顔面に、重い拳が突き抜ける!
「WRYyy!?」
地面に倒れたライザーに馬乗りになり、雪蘭は彼を尋問する。
「ライザー!私聞いてないわよそんな事!なんで私を無視しようとするのよ!そりゃあ私は強いからそんなの必要ないなんて思っても仕方がないとは思うけど、だからって仲間ハズレは酷いんじゃないの!?」
「す……すまん……」
首が絞まっているのか、少しキツそうにしながらライザーは雪蘭に謝る。
「まだカーラマインとイザベラくらいにしか今の事は言ってなかったんだ。カーラマインとイザベラは特に頻繁に格闘の稽古をするから……いずれ他の眷属にも言うつもりだったんだが……」
「そういうのは皆を集めていっぺんに言うものよ!だってそうしないと不平等感とか出るでしょ!私だって言われれば一生懸命やったのに……あ、あんたのためじゃ無いけど。フェニックス眷属がそういう炎を操るって設定があるから、仕方なく合わせてあげるだけだけど!」
最後の方は早口で告げる雪蘭に、ライザーは真面目な顔になって言う。
「すまない……でも、雪蘭の都合も考えてたんだ」「えっ?」
「雪蘭……お前は生まれてからずっと教え込まれてきた、拳法が身についてる。その安定した力に別の刺激を加えたら、お前の強みが崩れてしまうんじゃないかって思って。今の試合を見てたけど、やっぱりお前は強い。だからこそ、下手に別の事を教える事はできない……お前のファイトスタイルを変えてはいけない……そう考えた」
言いながらライザーは、雪蘭の右肘あたりを撫でる。そこには、少し膨れた箇所があった。最初のレーティングゲームの際に射抜かれた矢傷の跡だ。
「下手に新しい事を教えて、そのせいでお前が敵に対応できなくなったら……いや、炎で怪我でもしてしまったら、俺はお前と師匠に申し訳が立たなくなっちまう。だから、お前にはあまり言うまいと思ってたんだ。ごめんな」
雪蘭はそれを聞いて、ライザーの身体から下りる。倒れたライザーに手を貸し、彼を起こした。
「私こそごめんなさい……まさかアンタがそんなに真剣に考えてるなんて、思ってもなかった。ただ単に、私だけ一緒に住んでないから忘れてるんだと思ってた」
「いいさ、俺だって悪かったんだ。お前に聞きもしなかった俺が……」
謝るライザーの口を、雪蘭は人差し指を当て黙らせる。
「私、優勝商品決めたわ。
優勝したら、アンタに炎の技を教えてもらうわよ。一日かけてきっちりと、ね。」
「!……ああ、わかったよ」
雪蘭はライザーから離れ、フィールドに戻る。中では炎の剣を持ったカーラマインが、親切にも待ってくれていた。
「……ん?終わった様だね。……表情が変わった。とてもいい顔だ」
「待たせたわね!早速で悪いけど、倒されてもらうわよ!!」
「私だって、楽に倒されはしないさ」
お互いニヤリと笑うと、雪蘭とカーラマインは激突する!
まずはカーラマインが炎剣を横薙ぎに振るう。対して雪蘭は、バックステップで退避する。
続いて五本の短刀を投げつけたが、それは全て雪蘭の裏拳で弾かれる。
弾きで動きを止めた雪蘭の頭上から、カーラマインは右手で炎剣を振り抜く!
「効かないわよ!」
雪蘭は再び横滑りをして剣を避ける。が。
「それはどうかな!」
カーラマインは空いた左手で腰からもう一方の長剣を抜くと、雪蘭に向かって突きを放つ!!
雪蘭はそれを、右手で受ける。骨に剣が当たる音が、鈍く響いた。
しかしそれでも。雪蘭はニヤリと笑う。
「エサに喰らいたいたわね」
雪蘭は、足に力を込める!カーラマインの視界にもそれが見て取れた為、彼女は左手の剣を捨て一瞬で距離を取る。
直後、カーラマインがいた場所に強烈な膝蹴りがお見舞いされていた。
「残念だったな!私を捕まえるには、速度が足りなかったみたいだぞ!」
言いながらカーラマインは、力んでしまい隙だらけの雪蘭に、炎の剣で突撃を仕掛ける!
「これで……終わりだ!!」
「万物は天へ昇り、天は雪を降らす」 「!?」
カーラマインの突撃は、しかし避けられた。突いた、と思った時には、雪蘭は翼を使い上に飛んでいた。カーラマインは勢いをできるだけ殺さない様に地面を蹴って飛び上がる。
「鳥は翼を用い、翼は天を切る」
カーラマインの長剣が雪蘭の腹に刺さる……直前、雪蘭の右肘が剣にぶつけられる!
「天を切る翼に、雪結晶が勝てようか。いや、勝てまい」
長剣に纏った炎が分散し、空気に溶けていく。生身の剣身が雪蘭の肘とぶつかった!
「結晶は砕けて、翼となる」
しかし、その剣も刃先を肘にぶつけた途端に、粉々に砕け散った!カーラマインは驚きながらも、ベルトから数本短剣を引き抜き、全力で雪蘭に投げつける!
「翼となりし雪結晶に、万物何が勝てようか。いや、勝てまい」
雪蘭は対して、再び右手を使って全てを叩く!叩いた短剣は粉々になり、雪のように空を舞い、雪蘭の右手にくっついていく!
「砕雪をまぶした飛翼は、誰にも砕けぬ。誰にも崩せぬ
それが天命なりて、それが運命なり
故に、飛翼砕雪は無敵の力となる」
攻撃が通らないと見たカーラマインはその場を離れようとしたが、そこで何かに引っ張られるように雪蘭の前に送られてしまう!カーラマインは顔をひきつらせ、最後の抵抗と言わんばかりに残った短剣二本を両手に持ち、雪蘭に直接刺しにかかる!
が、雪蘭はそこで目を見開き、
「飛翼砕雪拳、最終奥義。
『飛雪千里』!!!」
カーラマインの腹部に、雪蘭の右拳が叩き込まれる!
カーラマインは一瞬、くの字に身体を曲げると。
次の瞬間には、地面に叩きつけられていた。
のみならず、カーラマインの周囲は陥没した様に凹み、フィールド全体がひび割れていた。
「が……ゴホッ!……ゴボッ!!」
カーラマインは何かを言おうとしたが声は出ず、二回目の咳と共に血塊を吐き、そして意識を失った。
『勝負あり!』
告げるライザーに向かって、雪蘭は左手でピースサインを作った。
〜オマケ〜
「ひーん……痛いぃ……」
雪蘭は穴の空いた手に、慌てて『フェニックスの涙』を塗る。先に折れたらしき骨に塗るため、指を空いた穴の中に入れるのだが、その際に肌に指が当たる度に痛みが走る。
「戦ってる時は何ともなかったのにぃ……」
言いながら雪蘭が治している隣に、カーラマインがお姫様抱っこでライザーに運ばれてきた。
「『フェニックスの涙』を借りるぞ」
ライザーは『フェニックスの涙』をカーラマインに飲ませようとするが、カーラマインは気を失っていて口を開かない。
「……仕方ないか……」
ライザーは口に『フェニックスの涙』を含むと……カーラマインにキスをする。
「って、えええええ!?何やってんのよライザー!!?」
慌ててツッコミを入れる雪蘭に、ライザーはいつも通りの口調で言う。
「いや、どうも『涙』が自力では飲めない様だったから、俺が口移しで飲ませてやったんだよ」
「何でアンタが飲ませる必要があるのよ!?ディマリアさんとか呼んでくればいいじゃない!」
「いやぁ、こう言うのはできるだけ早く治した方がいいと思ったからさ」
「アンタ、治癒目的の為とはいえ、乙女の唇をそんなやすやすと奪っていいと思ってんの!?カーラマインもそれを知ったら怒るわよ!?」
その言葉にライザーは、思わぬ発言をしてくる。
「え?前やった時は、怒られなかったけどな」
その後ライザーに雪蘭の奥義が飛んだのは、言うまでもない。
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!