ニィは蹴られて耐久力が低くなった爪を自分で折り、
「こんなもの、効かないわ!」
対して雪蘭は地に足をべったりと付け、構える。
「『
空気を切る音が連続して聞こえる。雪蘭の拳が飛んで来た爪を全て打ち砕いた!
「くっ……にゃ!」
飛び道具が駄目ならと、ニィが脚を変化させて一気に雪蘭の横まで移動、その腕を狙うが、
「甘い、遅い!」
逆にその膝蹴りを脇腹に受けて怯むニィ。そこに雪蘭が連撃を仕掛ける!
「『結晶』!」
パッと開いた手を顔面にお見舞い、喰らったニィはふらつく。
「……からの拳技、『大雪山』!!」
その場でぐるぐると回った雪蘭は、その遠心力を利用した裏拳で、ニィを真上に吹き飛ばす!
そこから、先ほどのイルと同じようにニィを地面に叩きつけようと飛ぶ準備をする雪蘭。
「……に゛ゃあ゛おぅ゛ぅ!!」
しかし、それよりも早くニィが動く!
空中でニィは急激に肥大化し、落下エネルギーをも味方につけて一気に雪蘭の上に躍り出る。そこで変身を解き四肢を全て雪蘭に向け、
「『爪合わせ』っ!」
一気に伸びる計20本の爪々!雪蘭は目を見開き腕を前に出す。
「『細ゆ……っ!?」
しかし間に合わない。この至近距離、五本ならともかく20本を捌ききるのは、飛ぼうと足に力を込めていた今の雪蘭には不可能であった。右脚の腿を貫通し、左手を削り、右頰を切った爪はさらに被害を広げんと動き始める。
「ぐ……あ゛ぁい!!」
痛みで顔をしかめながら、重傷になりそうな右脚に突き刺さる爪だけは根元から叩き折る雪蘭。身体を支えていた爪が折られ、ニィのバランスが崩れる。その隙を狙って雪蘭が一発!
「『
ニィの腹部に掌底をお見舞いする!
これにはニィも堪らず吹き飛んだ。内臓に負担が掛かったのか、ゲホゲホと激しく咳き込む。口から、数ヶ所赤に塗られた毛玉が飛び出た。
「こんな傷がどうした!私は負けられないのよ!
雪蘭の目が大きく見開かれる。彼女は腕を大きく突き上げた。その腕の先に、魔法陣が現れる!
「にゃ!にゃにを!?」
何かをされる、されてはまずいと感じたニィは腕を振りかぶる!
「『猫変幻・アムールタイガー』!」
分厚くなった腕が雪蘭を襲う!
が。
「つ、冷た!腕が……ああっ!?」
ニィは急激な温度の変化に、思わず腕を引っ込める。そして自分の両腕を見て驚愕する。
腕は、氷に包まれていた。完全に凍っていたのだ。
「これが私の魔力。氷による魔力装備、『
雪蘭の腕には大きな氷の手甲が付いている。雪蘭がその手甲で地面を叩くと、地面は一気に氷面へと姿を変えた!
「これが『白銀世界』!!」
雪蘭の足にも魔法陣が現れ、雪蘭の靴にスケートシューズのような刃を付けた。その刃を使って、雪蘭はニィに急接近する!
「にゃにゃ、寒い……!」
対して、ネコ科で寒いのが苦手なニィは本能的に縮こまる。それを見逃さない雪蘭ではない。
両腕を拳に固め、前に突き出し、先ほどから執拗にダメージを与えていたニィの腹部に押し当て、
「奥義・『
その言葉と共に、両腕を一気に突き出す!その衝撃はニィの腹部を襲い、摩擦の少ない氷の床ということもあって一気にフィールドの端まで吹き飛ばされた!
「ゲボッ!」
今度は毛玉でなく、真っ赤な鮮血を流し、それでも立ち上がろうとするニィ。その真上に、先程ニィがやったように雪蘭が飛びかかる。
「『細雪』!……から『吹雪』!!……そして『氷山』!!!」
流れるような攻撃にニィはとっさに爪でガードしたものの、一撃目で爪は砕け、二、三撃目をまともに喰らう!
「うぐっ……!」
しかし、攻撃をしていた雪蘭にもダメージが入る。先ほどの爪攻撃の傷痕から、じわりと温かい血が溢れてきた。透明な手の甲冑に、紅が混じる。
痛みを耐えるように唇を噛みながら、雪蘭は思う。
勝った。
ニィはフィールドの端でうつ伏せに倒れており、その身体は寒さか蓄積されたダメージのためか、震え続けるのみ。全身に力は入っておらず、完全に伸びているように見える。
(だけど、油断しちゃいけない!!)
あれが狸寝入りの可能性もあることは、一回戦を観ていた雪蘭は百も承知。一気に、確実に決めるために、心を平静に整える。
両手足の甲冑を消し、雪蘭は飛び上がった。目を瞑り、唱える。
-万物は天に昇り、天は雪を降らす-
「な……まさか!?」
その1撃を喰らっていたカーラマインは、思わず声を漏らした。
-鳥は翼を用い、翼は天を切るー
「そんな、今のニィにそんなものを喰らったら……」
イザベラも、仮面に隠されていないもう片方の目を見開く。
ー天を切る翼に、雪結晶が勝てようか。いや、勝てまい-
-結晶は砕けて、翼となる-
「雪蘭ちゃん、ダメ!ニィちゃんが!」
イルが悲鳴をあげた。しかし、雪蘭は反応しない。
-翼となりし雪結晶に、万物何が勝てようか。いや、勝てまい-
「まずい、雪蘭に声が届いていない!余程の精神統一を決めている!まさに氷の精神だ!」
シーリスが冷静に分析し、叫ぶ。
-砕雪をまぶした飛翼は、誰にも砕けぬ。誰にも崩せぬ-
ーそれが天命なりて、それが運命なり-
「……」
ライザーはただ、ニィを見つめる。
-故に、飛翼砕雪は無敵の力となる-
「……っ!ニィ、起きて!!避けて!!」
リィが必死に声を飛ばす。
「ゔ……にゃ……」
声を聞いて、ニィは意識を取り戻す。爪を伸ばすと、それを氷に突き立て立ち上がる。虚ろ眼で、空に浮かぶ雪蘭と対峙する。
そこで、雪蘭は目を見開いた。
「飛翼砕雪拳、最終奥義。
『
雪蘭が、ニィへと飛ぶ!
その拳がニィへと届く--
--寸前!
「……炎よ、我に宿れ!!」
ニィの両手。その先に伸びる爪牙に、真っ赤な焔が顕現する!
「……えっ!?なんで!?カーラマインとイザベラ位にしか教えてなかったんじゃ……」
その炎に気をとられ、動揺し、雪蘭の心が揺らいだ!!
拳はニィの顔面に当たる。しかし、カーラマイン戦ほどの威力は無い。せいぜい、拳法の演舞で行う正拳ほどの威力しか出ない!
「あっ……しまっ……」
拳を振り抜いた状態で空中に取り残された雪蘭。慌てて翼を広げようとする。
しかしその数瞬早く。
「『
ニィの両腕が、燃える刃が雪蘭を襲い。
雪蘭は炎を纏って錐揉み回転、そのまま地面に叩きつけられる。
薄氷の地面はヒビ割れ、結晶が散った。
ニィの炎も霧散し、空に溶ける。なんとか立っていた足は支えをなくした事で折れ、その身体は崩れ落ちる。
倒れ伏した二人にユーベルーナとディマリアが駆け寄る。その片手ではフェニックスの涙の瓶が光る。
そして、この大会の主催は顔を引き締め、宣言する。
「この戦い!
両者共に相手を倒したことにより、両者を勝者とする!
よって優勝者は!!ニィ!雪蘭!両方ともだ!
皆、二人を称えろ!!」
静まり返った観客は、やがて思い出したかのように騒めき、そして最後には割れんばかりの喝采が飛び出した!!
フェニックスの涙によって外傷を綺麗さっぱりなくした雪蘭とニィ。意識のない二人をライザーは抱きしめる。
「意識が飛ぶまでやらせてしまったことは、すまないと思う。だが、俺にはあの戦いを止めることはできなかった。
そして言わせてくれ。
おめでとう!!」
まずは、大変遅れて申し訳ありません!
バトルは試合展開を考えるのが難しく、私生活が忙しくなったこともあり、過程を考えているうちにこんなに時間が経ってしまっていました。
待っておられた方、申し訳ありませんでした!
このトーナメント、当初は形式と優勝者だけを決めていたため、新技等、平等さに欠けてしまったような気がします。みんな頑張って修行しているので、新技はちゃんとできていますよ!
次回、エピローグ。
そしてその後は、残りの眷属探しです!全員仲間にするまでは止めません!
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!