ライザー=フェニックスの日常   作:兵太郎

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主役は遅れて

ライザーが家を出てから、二度夜が明けた。もう戦場はすぐそこである。

「どんな奴がいるのかな?俺の手足になってくれるような奴はいるかな?」

彼は希望と願望を胸に戦場に向かう。

 

その頃、旧魔王軍とSAFSの戦いはある流れの変化を迎えていた。

前日は昼も夜もSAFSの攻撃に会い、少なからず打撃を与えられた旧魔王軍だが、彼らは今日も朝から戦場に出てきていた。

SAFSの大佐、イザベラはため息をつく。彼女としてはさっさと降伏してもらい、戦争自体を終わらせて基地に帰ってシャワーを浴びたいのだ。

「懲りない奴らだ。いや、それとも上の指示に従っているだけか?……まぁ良い、蹴散らせ!」

その言葉を合図に、SAFSは一斉に魔法攻撃を開始した。傭兵達はどんどん倒れていくが、しかし、彼らは誰一人として死んではいない。なぜなら、SAFSが放つ魔弾は全て相手を痺れさせる効果しか付与していない、殺傷能力の無い弾だからだ。

SAFSは敵を殺すことをあまり良しとしない。敵、とは一概に言っても、悪魔にだって一人一人、事情や戦う理由がある。それを何も知らずに殺すのは正義の心に反するという気持ち故だ。それに、敵兵というのは死ねばそれで終わりだが、生きていれば色々と使い道もある。敵の現存兵力や装備、布陣している場所などの情報を上手くいけば聞き出せるし、恭順させてからもう一度、こちらのスパイとして敵陣に送ることもできる。敵兵は、殺すより生かして活かす方がメリットが多い、というのが彼らの考え方である。

「よし、回収しろ!」

その短い命令に、イザベラの部下100名のうち約80名は敵兵回収に向かう。しかし、それが良くなかった。

 

「いやはや今日も朝から絶好調!やはり我らに敵はありませんな、大佐!」と、副官エーミールはイザベラを振り向く。彼女は小さく右の唇を上げ、笑い慣れていないのか引きつった笑みを浮かべる。そのぎこちない笑みが、しかし逆に可愛く--

 

不意に、その表情が崩れた。彼女の顔面の右半分が、突然吹き飛んだ。

「は?」

エーミールには何が起こったか分からなかったが、部下の一人が遅れて言う。

「スナイパー!」

スナイパーだと!このあたり半径300mは敵は一人もいないはず!もしや、それよりももっと遠くにいたのか!?と一瞬エーミールは考える。しかし、そんなことよりも大事なことがあった。

「大佐!大丈夫ですか!」

そう声を掛けたが、大丈夫だとは露ほども思っていない。エーミールはイザベラの顔を覗き込み、うっ、と声を呑んだ。

イザベラの顔は右半分が弾け飛び、右の眼は無くなっていた。その顔は見るも無残と言った様子だった。唯一幸いだったのは、脳が吹き飛ばされていないことだ。

「おい、誰かフェニックスの涙を持ってこい!」

エーミールはそう部下に命令する。今回の反乱鎮圧の際のもしもの時用に、大佐二人は一つずつフェニックスの涙を支給されていた。彼はそれを使ってイザベラを治そうと思っていたが、部下はこう言った。

「フェニックスの涙は……昨日大佐がキース大佐に使ってしまい、もうありません!」

その言葉にエーミールは眼を見開き驚愕する。その顔は焦りに塗れ、汗がだらだらと流れた。兵士達の中に、回復系の魔法を使える者はいない。今回前線に連れてきたのは力に特化した屈強な戦士の中で、更に電撃魔法を習得した者100名だ。彼らが操られるのは電気と無属性の魔力等で、回復の知識は無いに等しい。

この傷は支給された回復薬では治らない。フェニックスの涙は使ってしまっている。キース大佐はフェニックスの涙を持っているし、自陣に戻れば回復役はいるが、彼女はもってあと十分。キース大佐に報せようにも、自陣に戻ろうにも間に合わない。

 

エーミールは、上司の死を悟った。彼は怒りに震える。彼とイザベラは、十年を越える月日をパートナーとして歩んできた。凸凹コンビながらも、上手くこれまでやって来た相方の死に、彼は激昂する。

「スナイパーだ!敵のスナイパーを見つけ出し、速やかに処分せよ!大佐の敵討ちだ!全体、進め!正義の為に!」

SAFSのイザベラ隊は彼女を簡易ベッドに寝かせると、そのベッドを大きな岩陰に置き、100名による敵軍突撃を行う。今の彼らには、敵を生かして捕らえる、などといった事は頭から吹き飛んでいた。

不幸な事に、激昂したエーミールの耳には彼女のか細い声は聞こえなかった。

「……行かないで……」

彼女は残った左眼から涙を流しながら、だんだんと遠のいていく仲間達を目で追っていた。しかし、彼らも視界から消えていく。だんだんと血が減っていくのが何となくわかる。視界が暗くなってきた。

「う、うう、ううあああ」

イザベラは死への恐怖のためか、声にならない声を上げた。

 

 

「さぁて、着いた着いた!結局夜通し飛んで二日かかったか……まだやってるかな?」

そんな中、主役は遅れて戦場にたどり着いた。都合良く、彼女の近くに。




さぁ、いよいよライザー君登場!ここからはライザーのターン!

今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!
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