魔法少年マジカルアスラン 作:仙儒
猫を拾って早三日。
目を覚ます気配が無かった。
その間にイージスを疑うようで悪いのだが、獣医にも見て貰った。
その際、”珍しい猫だね”と言われた。
獣医ともあろう人物がネコ科ではあるとおもうんだけどと口にしたと言う事は魔力反応の事も考えてこの世界の種族の猫では無い事がはっきりした。
取り敢えず、猫用の缶詰の餌を買って置いてある。
人間の食べ物を与えてもいいのだが、どこまでがセーフなのか、どこからがアウトなのかがわからない。使い魔となれば余計にだ。
アスランの知識の中にも動物については点で駄目だ。トリィも鳥をモチーフにしてその動力源、いかに鳥に近い動きを再現できるかの筋肉の動きや、それに伴う力の働きを計算するために少し齧った程度の知識しか無いため、鳥の種類に対してもほとんどなかった。
どうして此処まで必死になっているかと言うと、見つけてしまった手前、死なれては目覚めが悪いからと言うのもあるが、レイの言っていた
「どんな命でも生きられるのなら、生きたいだろう」
この言葉が強く印象に残っているからだ。
実際にレイが言っている所をアスランは聞くことが無かったが、人を殺し、終わった後の虐殺の有様を知ってしまっているアスランであり俺だからの答えだ。
もう誰にも死んでほしくない。
都合のいい話だと言うのはわかっている。偽善であることも。
でも、やらない善より、やる偽善と言う言葉がある。
たとえ”偽”物であったとしても”善”だ。
それが例え自分がやってきたことに対する気休めだったとしても…。
止めよう。この思考は結論が出ない牢獄だ。
そう思いチョコを口に放り込む。
無論二日前に持ち帰ったチョコレートの山の中の一つだ。
次の瞬間固まった。それは猫の状態から人間の姿に変わったのもそうだが、その容姿に見覚えがあった。
「ん…プ、レシア…フェイ、ト…」
そうリニスだ。
もっと前から契約を打ち切られたと思っていたんだが、まさか今なんてな。
「あ、れ? ここは?確か私は…」
急に起き上がったせいか、少しふらついている
「無理をするな、大怪我に加え三日も寝たままだったんだから」
そう言って彼女を寝かせる。
「貴方は…?」
なおも起き上がろうとする彼女に順を追って説明するから寝たままでいろと言った。
寝たままでも話すことはできるしな。
「大怪我をしている所を拾ったんだ。その時に使い魔契約をさせて貰った。それしか方法が無かったんだ、すまない…その代わり俺の事は気にせずに自由に過ごして貰って構わない」
そう言うと混乱しているのか言葉を発さない。
互いに気まずい空気が漂う。
く~
音のした方を見てみると顔を真っ赤にしたリニスが布団で顔を隠していた。
そうだよな。一応獣医の所に行った時は栄養剤を打ってもらったが、三日もろくに食べてないんだもんな。
「すまない、配慮が足らなかった。すぐに食料をよういする」
そう言って食べ物を持ってくる。
皿に猫缶を幾つか開けただけだが…。
「その、猫の状態で拾ったからこんなものしかないがこれでいいか?」
そう言うとコクリと頷く彼女。
彼女の背中を支えながら起こし、皿とスプーンを渡す。
彼女は申し訳なさそうにして食べ始める。
余り見ていると食べずらいか。
そう思い、イージスだけを置いて、彼女が食べ終わったら念話で呼んでくれと念話で頼み部屋を出ていく。
さて、どうしたものかな。
激痛と冷たくなっていく感覚の中で、温かい光に触れた。
とても安心できる温もりだ。
次に目を覚ました時に、目に映ったのは大きな部屋だった。
そして此方を心配そうに見つめるフェイトと同い年位の少年だった。
私が何よりも引かれたのはその瞳だった。碧玉の瞳は確かな悲しみと孤独を孕んでいた。フェイトと全く同じ瞳だ。
起き上がろうとしてふら付くのを気にかけて心配してくれる少年。そこまでもがフェイトに重なって見えてしまった。
そして私を助けるために使い魔契約をしてしまった事への謝罪。普通使い魔には相手の賛同など関係ないのに真剣に謝って来る。使い魔のシステムを知らないのだろう。
一応魔力の根源を辿ると確かに彼に繋がっていた。あの時感じた温かな魔力だ。
そして、肝心の契約内容は私の自由だった。
本当に信じられない。正気かと疑ってしまったが、フェイトも似たような理由で使い魔契約をアルフとしていたことに納得がいってしまった。
本当に何から何までフェイトと同じ、違うのは性別と髪の色と瞳の色だけだろう。
だからだろうか? フェイトの事は気になるがもうあちらに戻る手段が無い。だから、この少年の使い魔として仕えていこうと思ったのは。
その後、使い魔にあるまじき事が起きてしまったのが、大きな誤算だった。