魔法少年マジカルアスラン   作:仙儒

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空白期

 誰かと家で食事するって良いよな。

 そんな考えが浮かんでいた。アスランの記憶の中では母親はほとんどおらず、一人でご飯がほとんどだった。あんな父でも、母上が殺されるまでは不器用ではあったが、気にはかけてくれていた。電話やメールも一日に必ず一回はしてくれていたと記憶にある。

 C.E.でも似たような物だったが、カリダが居た。幸い彼女は本当の子供の用に愛情を注いでくれたし、兄弟のような存在であるキラが居た。

 その分恵まれていたと思う。

 

 この世界には頼れる人なんて居なくて、一人凍えるような日々を過ごしていた。

 そんなことを思う心さえ麻痺して居て、一人でいるのは良い。何の行動も縛られない。一人で居るのは良い、気を使わないで済む。

 そんなことを思うことで誤魔化せていた。

 リニスとの一緒の食事でそう思い知らされた。

 人は一人では生きられない。その意味が今なら痛いほどわかるよ。

 大人だったから、転生前の記憶があるからで慣れたつもりでいた。

 でも、子供の感情の起伏って凄いんだなって、今改めて思い知ったよ。だって、これだけのことでこんなにも満たされているのだから。

 

「…リニス、ありがとな」

 

 少し間の抜けた顔をした後、少し困った顔をしながら

 

「どうしましたか?アスラン?」

 

 そう問いかけて来た。

 

「No man is an island.」

 

 そう言うと心配そうに口にしてくる。

 

「アスラン…」

 

 そのことに対して

 

「せっかくの食事中に湿っぽくなったな、すまない」

 

 この家についての説明の際に両親の事については伏せた。

 彼女も深くは追及してこなかった。だが、今の反応を見る限り、薄々は気が付いているのだろう。

 デバイスは英語話すしね。生前は英語とは無縁の生活を送っていたが、アスランになってから、主要国の言葉は一通りマスターしていた。

 英語に始まり、ドイツ、フランス、ロシア、北欧に色々だ。

 イージスはあえて日本語を話してくれるが。

 

 …そう言えば、イージスの事を彼女に紹介していなかったな。

 後で紹介させよう。イージスは普段無口でしゃべらないから。でも俺の事を誰よりも熟知している存在だ。鬼畜な訓練も俺を思っての物だし。ただ、もう少し自重してくれると嬉しいな。

 そんなことを考えながら食事を終える。

 

「ご馳走様、美味しかったよ」

 

 そう言うと彼女も顔を笑顔にし、お粗末様でしたと告げて、皿を片づけに行く。

 本当に律儀と言うか何と言うか…高町家に彼女。本当に優しい人達が集う不思議な街だよ。海鳴り市は。

 そう思いながら場所を変え、オカリナを取り出す。

 アスランは楽器何てやったこと無いが生前の俺の趣味でやっていたものだ。

 

 オカリナ独特の切ない音が木霊する。今宵の夜空は大きな満月。それがその曲をより引き立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は洗った皿を拭き、思い出す。

 アスランが漏らした一言「No man is an island.」を。アスランが詩人なのかはわからないが確かに漏れた、本音だと思った。思わせる程の重みがあった。

 言葉の意味は”一人では生きられない”と言う意味だ。

 薄々感ずいては居た。

 この屋敷に来て、アスラン以外のひとけが無かったのも、家族について語らなかったのも。憶測の域を出なかったが、何よりあの目、あの雰囲気。あんなの一日や二日で出せるものではない。屋敷の内部を把握するためたまたま外に出た時に、湖の手前に墓標を見つけてしまった。

 レノア・ザラ。名前からしてアスランの母親なのだろう。

 父親の事も考えたが、彼の態度、そしてこんな膨大な敷地を有しているのに使用人一人いない事を鑑みると、恐らくは…。

 何て残酷な事だろう。フェイトもアスランもこんなに小さな子が一体何をしたと言うのだろうか?

 

 そんなことを考えて居たら微かに音が聞こえた。

 ここから先は確か、ガラス張りの部屋だったはずだ。

 音がするのはその外から。

 ガラス張りの部屋を通り抜け、外に出た先にアスランの姿を見た。

 どうやらアスランが楽器かなんかを演奏しているらしい。

 その音色と、風景が妙に寂しくて、アスランが助けて!と言っているように聞こえてしまって、飛び出して抱きしめたくなる気持ちを必死に抑える。

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