魔法少年マジカルアスラン 作:仙儒
月村邸に御呼ばれした。
事は実は体育の時間に貧血で倒れたすずかを保健室に運んだ時に起きた。
何時も体育でトップクラスの実力を発揮するすずかが珍しい事もあったもんだと、明日、矢でも降るかな? 何て冗談を思いながら俺が付き添うことになる。
それはクラスの中で一番力があるのがばれてから、荷物運びや、力仕事を任されることがしばしば。参った物だよ。
余りにもすずかが気分悪そうに顔を赤くし、息も荒い。熱射病か、熱中症か、本当に熱か、とにかく具合が悪いのには違いない。
それにすずかは男が苦手で仲が良かったのが俺ということもある。
その総合的に見て俺が適任となったわけだ。
最初はお姫様抱っこで行くつもりだったが、なのはにアリサの笑顔の無言の圧力に屈し、おんぶと言う形で移動してた。
校舎に入り、人気のない廊下を速足で進む。
すずかの息がどんどん荒くなっていくからだ。
「すずか、もう少しだから頑張れ」
名前を呼ばれると病状が多少なりとも良くなる。
保健室に何とかついたものの、肝心の先生が居ないのだ。
しょうがなく、ベッドに座らせた時だった。
「ごめんね、アスラン君…」
かぷっ
首筋に一瞬痛みを感じると、ゴク、ゴクと何かを飲んでいる音がする。
まさか、原因は吸血衝動か! まぁ、本物の吸血鬼に比べたら大したことではないが。そのまま、操り人形にされるわけでもないし。
余韻に浸るすずかに
「そろそろやめて貰わないと此方が貧血になってしまうんだが」
そう言うと急に突き飛ばされる。
まぁ、幸い倒れる事は無かったが、その代わり、すずかは顔面蒼白になり、歯をカチカチとならしながら後ろへ後ろへとゆっくり下がっていく。
「あ、アスラン君、これは、その、えと」
相当混乱しているのかそのまま下がり続け、ベッドの端に手を取られて落ちそうになる。
「危ない!」
急いで伸びたもう一つの手を掴み此方に強く引き寄せる。
結果、抱き合うような形になる。
「あ、ああ、あああああああああ」
完全にパニックになった彼女を強く抱きしめる。
強い力で抵抗されるが、頭の後ろを鷲ずかみにし、
「大丈夫!俺はすずかの事を化け物何て思ったりしない!」
すずかの中にあるのは友に手をだしてしまった罪悪感と、嫌われることへの恐怖だ。
「あ、ああ」
段々抵抗してくる力が小さくなる。
それにより、強く抱きしめていた手を緩め、背中を優しくさすってあげる。
鼻をすする音と嗚咽が聞こえて来る。
「大丈夫。大丈夫…」
言い聞かせるように何度も何度も繰り返し。すずかの寝息が聞こえてくるまで続いた。
結局その日の体育の時間に戻ることは無かった。
先生に問い詰められた所、かかんき症候群を起こしたために、その場を離れることが許されなかったと言うと、信じて貰えたのか、家に連絡をしてもらい、すずかは早退となった。なのはにアリサがかなり心配していたが、こればかりは仕方が無い。
そんな矢先に電話がかかって来て、冒頭に至るわけだ。
電話がかかってきた位だから、此方の情報は殆ど掴まれてると思って間違いないだろうと思っていたが、イージスが何かをしてるみたいで、場所の特定はできなかったらしい。
相手は恭也さんを迎えに出すとのことなので待ち合わせの場所へと向かう。
夜の一族との交渉。できるだけ穏便に済ませたい。
俺の雰囲気を察したリニスが護衛に当たると言いだして聞かなかったので、猫の姿に成ってどんなことがあっても手出ししない、人間の姿にならない事を条件に俺の後ろをとぼとぼと歩いてくる。警戒心丸出しな彼女に溜息を吐きつつ、待ち合わせ場所である公園の入口へとつく。
そこには既に恭也さんの姿と、後ろにリムジンにメイドさんが待ち構えていた。
「アスラン、こっちだ」
言われなくてもわかっているのでそのまま速やかに乗り込む。
アスランの記憶の中では久しぶりに乗るリムジンだ。この座り心地に懐かしさを覚える。
こいつは何者なのだろうか?
あの忍でさえ両親のこと以外に把握することができなかった。
今回電話できたのもなのはがたまたま電話番号を知っていたからだ。
「…アスラン、お前は何者だ?」
つい口にだしてしまう。
「それについては後程、すず、月村邸にて話しましょう」
!こいつ、もう今回の目的が全てお見通しと言う事か。
頭は回るし、状況判断もできている。前回も思ったが、本当になのはと同い年か?
その後は沈黙が続く。
だが、動揺した様子も緊張してるそぶりすら見受けられない。
それどころか、逆に呑み込まれそうな感覚に陥る。
っと、いけないいけない。相手のペースに飲まれる所だった。
事、交渉ごとに置いて隙を見せる事は、相手に漬け込まれることになるのでどんなに苦しくても隙は見せてはいけないのだ。