魔法少年マジカルアスラン 作:仙儒
すずかはアスランのベレー帽を手に入れた。
公園前にてリムジンを降ろしてもらう。
ここからは歩いて帰ると伝えて。
(アスラン、あの話は本当ですか?)
リニスから念話が入る。
「…ああ」
その一言で空気が一段と重くなる。
でも、project F のようなものでは無い事を伝えないとな。
「リニス、確かに俺は遺伝子操作を受けて育ったが、ちゃんと母上が腹を痛めて生んでくれた子だ。非人道的な扱いをされていたわけでもないし、ちゃんと愛してくれていた」
これだけは胸を張って言える。ろくに帰ってこなかったが、電話やネット電話で、毎日のように、しつこい位かけて来た母上。
これだけは伝えないとな。
「リニス、お前の大切な存在がもし敵に回ったらどうする?」
くしくもキラとアスランは兄弟のようにして育った。この世界にはいないが。
それが敵になり悲しみ、苦渋の決断、怒り、憎しみ。それら全てをまとめて互いに殺そうとした。
これから訪れる未来を少しは知っているために聞いておきたかった。
俺とキラの二の舞になることがないように。
だから俺は彼女の返事を待つ前に、告げた。
「お前は何があっても、その大切な存在の味方をしろ。例え俺と敵になっても。そのためにお前の自由の選択をあたえたのだからな」
彼女は少し考えた後、
(例え大切な存在が敵に回ったとしても私はアスランを裏切ることはありません。私は貴方の使い魔なのですから)
…フェイトが敵に回っても果たしてそう言いきれるだろうか?
「だったら約束してくれ、悲しみと怒りだけで撃ち合う事だけは絶対にしないと」
話ながら来たらいつの間にか家についていた。
扉を開けて中に入る。彼女にもういいぞ、そう告げると俺は母上の墓標に向かい再び外に出る。
アスランの壮絶な過去を聞いてしまった。
その時に思った。誰かが彼の側で見守っていてあげないといけないと。
小さなその背には想像を絶する過去があり、それでも前を向いて生きている。
立派だと思った。だが同時に、どうしてもその背中は強がっているだけなような気がして。誰かが支えてあげなくては潰されてしまいそうで。何時か彼を支える人が現れるまでは私が彼を支える。
そう、例え、プレシアやフェイトが敵に回ったとしても。
それでも支えると決めたから。彼について行くと。それが私が出した答え。
使い魔としての責務もあるが、それだけじゃない、それを選ぶ自由を私には与えられているのだから。
しかし、アスランを見てると戦いに備えていると言うか…いいや違う。そんなものじゃない。もっとこう…死に急いでいるように感じた。
それが非常に狂気じみて見えて…。
もっと自分を大切にするように教育していく必要があるかもしれない。
そう強く思わせる背中をしていた。