魔法少年マジカルアスラン 作:仙儒
あれから念話を覚えたなのはからの愚痴が酷かった。
やれ、何で魔導士だと教えてくれなかったのか。やれ、どうしていきなり転移させたのか、とか。
転移に付いては感謝をしてほしい。あんな夜更けに出歩いてるのがばれれば、お説教コースは免れなかったんだぞ。
そう言ったら、うっ、と一瞬ひるんだがそれでもと食い下がって来る。
途中で念話切れば良かったんだが、切ったら切ったで次に会う時が怖い。しょうがないので渋々聞いていた。
リニスは早々に念話切って寝てやがりますよ。不公平だ!
イージスは…何時もと変わらないような気がする。
切ってんだか、聞き流してんだかわかんない。
っていうかオープンチャンネルで念話するのやめろ。要らぬ警戒持たせたり、イレギュラーが動く可能性も無きにしもあらずだ。
そう言うわけで今朝は眠い。
なのははバスで船をこいでいた。
授業を受けながらユーノからジュエルシードの話を改めて聞き、なのはは了承してしまい、俺も了承した。なのはだけを危ない事に巻き込めないしな。
幸い俺にも力がある。なのはを護る”楯”になる位にはな。そうだろう?”イージス”。
ギリシャ神話に置ける無敵の盾よ。
因みにまだレイジングハートはなのはの事をマスターとして認めていないみたいだ。
ユーノの話を聞き終えると架空シュミレーションにダイブした。
ただ、戦いはヒーローごっこでは無いと強く釘を刺しておいた。
本人はまだしっくり来てないみたいだったが。
それは時間が教えてくれるだろう。
俺もシュミレーションするか。護衛目標を中心としたもので。
なのはは連帯が取れる程上達していない。
そのことも主眼に置き、なのはの攻撃に巻き込まれないように立ち回る。
イージスが昨日の砲撃の様子や動きから予想される動き全てを演算し切った。
これ俺が凄いんじゃなくてデバイスがチート過ぎんだな、きっと。
遠い目をしながらそう思う。
まぁ、技術面ではアスランは間違いなくチートだが。オーバーテクノロジーだし。
昼休みまでシュミレーションは続いた。
イージスが強制シャットダウンしたのだ。なのはの方はまだやっているらしく、念話で教えてあげる。
「にゃ!」
いきなりの念話にびっくりしたのか奇声を上げるなのは。
「シュミレーションに熱心に成るのは良いが、根の詰め過ぎは良くないぞ」
なのはにだけ聞こえる声で告げる。
俺も人の事は言えないが…。
その後、アリサにすずかが奇声の理由と、昨日のフェレットがどうなったかを聞いていた。知ってはいるが、その場にいなかったため、会話には入れずにしょうがなく、何時もの場所取りをしに行く。あの場所、結構人気あるんだよな~。
で、原作通りフェレットは高町家で飼われることになった。
そして学校が終わり、いつも通りの帰り道に事態が起こった。
確か神社の方でジュエルシードが発動するんだっけか?ってか、したのか。
俺となのははアリサとすずかと強引に分かれて神社へ向かう。
途中、運動音痴のなのはがバテて、俺が認識妨害の魔法を使い、なのはを担ぎ、現場へ飛翔する。なのはの機嫌が少し悪くなるが構ってらんない。
神社の境内には気絶した女性が一人と、ジュエルシードを使ったであろう犬が居た。
正確には犬だったものだ。何とか犬の原型は留めているが、鉄で武装したような顔に、爪、しっぽ。目が良い故により現場がグロテスクな事に成っているのが良く見えた。
ちょうど下にユーノが居たので念話を入れてなのはを落とす。
俺はPS装甲をオンにして急ぐ。
犬は正気を失っているのか女性を襲おうとしていたのだ。
くそっ!間に合ってくれ!
「やめろーーー!!!!!」
俺が怒号を上げながらシールドを投げ飛ばす。
俺の声に反応したのか、此方を向いて大きく後ろに後退した犬。
その犬に腕をクロスして思いっきり体当たりする。
どんっ!
トラックに思いっきりはねられたらこんな音がするんだろうな、そんな音がした。
犬は吹き飛び、再び立ち上がろうとするが、体当たりが余程効いたのか、立ち上がれないでいた。
これでなのはも神社の境内に上がってくれば封印完了だろう。
そう思っていた。
「ぐるぅぅぅぅぐぁぁぁぁぁ!!!!」
突然の変化。
犬が巨大化し、しっぽが鞭のように変化する。
それと同時に地面に亀裂が走り、神社が半壊する。
こんなの原作に無い。来て正解だったのか、過ちだったのかわからないが、少なくとも、なのは一人では対処しきれない。
「アスラン君!」
なのはの声が聞こえた。
「駄目だ、なのは、来るな!」
声は空しくなのはに向かってその凶暴なしっぽが叩きつけられる。
俺の冷静な部分が告げる。あれではバリアジャケットの展開が間に合わない。防御もまだ主と認めていないレイジングハートがしてくれるかは定かではない。していたとしても吹き飛ばされて何本もある後ろの薙ぎ倒された木を見て生きてるとは思えなかった。
ああああ、あああああああああ!!!
俺の甘さがこの事態を招いた!
俺がなのはを殺した!
「お前を撃つ!!!」
シュゥゥーン、パリィィィーン
頭の中で何かが割れる音が響く。
視界が一気にクリーンに成る。
「お前が、お前がなのはを殺した!」
そのまま、接近して相手が此方にしっぽで攻撃して来た時にギリギリの位置を通り抜け右足のビームサーベルで斬り付けるが、弾かれてしまう。
だが、そんなの関係ない。有りっ丈の力で右足のビームサーベルを突き刺し、怯み、しっぽが上がった瞬間に右足よりも出力を遥かに上げた左足のビームサーベルで斬り裂く。
「ぐあああああ!!!」
犬だったものは痛みに声をあげるが、直ぐに反撃をしてきた。
前足による攻撃が顔を捕える。
(プロテクション)
イージスが瞬時に反応、顔だけにバリアが展開されるが、踏ん張りがきかずにのけぞってしまう。が、空いた一番近い右足の出力アップされたビームサーベルで胴体に大きく斜めに切り裂く。
そうするとお腹辺りにジュエルシードが見えた。その勢いのまま一回転し手を伸ばし右手のビームサーベルを突き出す。
そのビームサーベルがジュエルシードを貫通した瞬間、凄まじい力の波動に包まれて吹き飛ばさる。
薄れゆく景色の中、ジュエルシードからの思念が聞こえた。
”強くなりたい”
そんな理由だけでなのはを殺したのかと思うと非常にやるせない思いだった。
怖かった。ただただ、怖かった。
息ができないんじゃないかと思う冷たくチクチクと刺すような空気。
何時もの優しいアスラン君が嘘のように変わってしまった。
この雰囲気を私は知っている。
お父さんが入院してた時のお兄ちゃんと同じ雰囲気だ。
そこで、思い返す昼間の一言。
”戦いはヒーローごっこじゃない”
その意味はわからなかったけど、とても悲しい瞳をしていた。
今なら分かる気がする。
魔法が、他の人にはない特別な力があることに喜んだ。
自分の絶対の価値を手に入れた気でいた。
でも戦うと言う事は此処まで怖く、ここまで人を変えてしまうのだと思い知らされた。今まで、簡単に考えて居た自分を引っ叩きたい。
そして、変わってしまった理由が私だと言う事に安堵した。
愛しの人は私のために此処まで変わってくれた。私のために思ってくれた。
だからだろうか…、ちゃんと魔法と向き合ってみようと思う。
魔法も一つの力なんだって、だから、強くなるよ。
アスラン君がこうなら無いために。アスラン君がアスラン君でいられるように。
そして、アスラン君と共にあるために。
私は強くなりたい。
「あのね、ユーノ君。私、もっと魔法の事知りたい。もっと強くなりたい。だから、私に力を貸して欲しいの。お願い、レイジングハートにユーノ君」
呆気にとられたユーノ君にも真剣な呼びかけに我に返り答えてくれた。
(YES my master)
レイジングハートが私を初めてマスターと呼んでくれた。
その言葉を聞いた瞬間に爆発音がして、振り返ると化け物の姿は無く、代わりに可愛い子犬と少し離れた場所に倒れているアスラン君が居た。
急いでアスラン君の元へ駆け寄ると紅色だった騎士甲冑が灰色の物へと変わっていく。
「アスラン君!どうしようユーノ君」
何度問いかけても揺すっても起きる気配が無いアスラン君に心が焦る。
「落ち着いて、なのは。大丈夫、気絶してるだけだから」
そう言いつつ魔法を使うユーノ君。
取り敢えずその一言に安心した。
犬がナルガクルガに!
大体そんな感じ