魔法少年マジカルアスラン 作:仙儒
俺の家の場所がばれてから、何時もの三人は、習い事が無い限り、必ず家へ来るようになった。今では俺の家がちょっとした憩いの場だ。
それ自体は何とも思っていない。むしろ、この馬鹿でかい家にリニスと二人きりでは物寂しいから。
だけどよ、俺に群がるのだけはやめてくれないかね。
嫌われているよりはずっと良いが、正直疲れる時もあるし、一人でいたいときもある。
リニスは、フェイトと比べているのか、色々思うところがあるのだろう。少し陰りのある顔をし、物思いに老け込む時がたまにあるが、基本嬉しそうにウェルカム状態だ。
そう言えば、リニスは主が強く拒まないと明らかな悪意を持って来ない限り、事を荒立てはしない性格だったな。リニスがしっぽと猫耳隠しているのは主に対する配慮だったと思い返す。せっかく自由になったと言うのに、難儀な性格してるな。まぁ、少なくともこの世界に置いては大いに助かっているが。
話を戻そう。
それで、三人が来る前に出かけることにした。
約束をしている訳でもないし、でも、今回はリニスも桃子さんから日本食を習う約束はしていたな。その理由で一緒になのはが来ることもわかってるが。
因みに、リニスは桃子さんから日本料理を習い、桃子さんへはミッドの料理を教えている。特にパン作りの技術はリニスの方が優れているらしく、桃子さん曰く、大変勉強になったと言っている。翠屋評判が良くなったとか…、
取り敢えず家を出る。この三年間は魔導士としての鍛錬に力を注いでいたため、海鳴り市の地理は未だに把握しきれていない。これを期にどこで何が起こるかを確かめるためにも地理は把握しておいた方が良い。
そう思って散策して居たら見つけたよ、ジュエルシード。
こんな簡単に見つかって良いのかよ。
そう思いながらジュエルシードを拾い上げる。
こんな見つかりやすい場所に落ちてたら一般人が拾っちまうぞ。
そんなことを思い深いため息を吐いて、ジュエルシードを握る。
そのまま、イージスに念話で来てもらい、封印する。この数字は確か…、サッカー少年が彼女にプレゼントする物じゃ無かったか?
まぁ、なのはにトラウマ植え付けた物を取り除くと考えれば安い物か。
これで手に入れたジュエルシードは五つ。
なのは三つ持っているから残りは十個か。
…、あれ?不味くないか?フェイトは手にするジュエルシードの数が減っている。かと言って、フェイトにジュエルシードを渡す気は無い。
もう繰り返しちゃいけないんだ、あんなこと。
頭に浮かんだのは神社での出来事。
なのはが殺されたと勘違いしたあの日に誓った。
もう、軽い気持ちで動き回らないと。啓発な、なまじ知識があるが故の慢心。
それが誰かを泣かせる結果になりうると、わかってしまったから。
だから、悪いがフェイトにやすやすと渡せない。
イージスからの情報ではフェイトたちはもう動き出しているらしい。
住所もわかっている。
この事件、リニスには酷な事を強いらせてしまうな。
そう思うと、悲しさと怒りで胸が震えた。
考え事をしていたら目的の場所についていた。
…、図書館だ。目的としては、昔の地理を知るため。
この海鳴り市、龍脈…それも馬鹿でかいのがある。
それのせいで、ジュエルシードやなのは、闇の書、と言った異例が現れるのではないだろうか?
だとすれば、それの大まかな場所さえわかってしまえば、そこに新たなイレギュラーが起こる可能性が高い。
そう思い、本を探している最中に車椅子の女の子が精いっぱい背伸びをして本を取ろうとしていた。
何も考えずに危なッかしいから、後ろから手を伸ばし、本を取る。
「これか?はい」
幸い立っている俺には取れる位置にあったので取ることは簡単だった。
「あ、ありがとうございます」
そう言ってぺこりと頭を下げて来る。
「今度からは周りの人に頼むんだぞ、無理して君が怪我した方が施設の人に迷惑だ」
酷い言い方かもしれないが、他の本も一緒に落ちてきたり、最悪棚が倒れて押しつぶされる何てことも無きにしも非ずだ。
まぁ、この棚を見て居る限り、地震対策の為なのか金具やなんかで目に見えない所で止めてあるので大丈夫ではあるだろうが。
「あの、迷惑でなければ、その、一緒に話して貰っても…」
そう言われた。別段、地図を見に来た以外で目的も無い。
それに龍脈の地点は大体の予想はついている。その確認をしたいだけだ。
「昔の地図のある所まで案内してくれたら良いよ」
常連さんっぽいし、その位はわかるだろう。
「はい、こっちです~」
大阪弁を使うこの子、どこかで見たことあるな。
無事に地図を手に入れて目的のページに目を通す。
やはりか、そう思い本を閉じる。
「早いですね、もういいんですか?」
そうたづねてくる少女。
「ああ、目的の物は確認できたし、…、ああ、そうだ俺はアスラン。アスラン・ザラだ、よろしく」
自己紹介と同時に右手を差し出す。
少し驚いた顔で、嬉しそうに
「八神はやてです。よろしゅうお願いします」
そう言って握手する。
薄々勘づいては居たが、やはりか。
八神はやて、闇の書の所有者。こんな幼い子が独り暮らししてると思うと胸が痛む。
前世の記憶を持つ俺でもあのだだっ広い家では孤独を感じていたのだ。
はやてがセクハラをするのは母性を、母親を求めていたからだろう。
優しく微笑み、頭をポンポンとして、
「同い年ぐらいだろう、敬語はいい、楽に話してくれ」
そうすると少し顔を赤らめて
「ほな、アスラン君」
そう言われて俺は笑いながらよくできましたと、頭を撫でる。
それから二人でたわいもない事を話す。星座の事、神話の事、童話の事、はやてに合わせて話したつもりだが、つい熱が入ってしまい、二人して時を忘れて話し込んだ。
気が付けば日は傾き、黄昏時へと変わっていた。
分かれ時、はやてがまた会えるかと、友達に成ってくれと言ってきた。
だから、俺は俺の思いを告げた。
ドクンドクン!
はやては自分の胸に手を当てて顔を赤くしていた。
一目ぼれだった。
こんなこと、漫画やアニメ、小説の中でしかない事だと思っていた。
思い返すアスランとの出会いを。
その日も暇を持て余していた。
一人暮らしで、学校にも通って無いため友達など一人もいなかった。
だから、今日も図書館で本を読むことにした。
その日たまたま読みたい本は自分の手の届かない所にあった。
普段一人暮らしなため、全ての事を自分一人でやらなければならなかった。
その考えが私から他の人に頼ると言うことが選択肢に無かった。
後ろからすーと伸びて来る白くて長い手。
その手が私が読みたかった本を取って「はい」と渡してくれた。
振り返ると青い髪の毛、碧玉の瞳。卵を思わせるような真っ白い肌に、まるで作りだされたんじゃないかと思う程の完成された顔の輪郭。
モデルさんかと思った。
その時だ。同じ瞳に気が付いたのは。
そこから衝撃が起きた。まるで雷が頭から直撃したような衝撃だ。
それと速くなっていく鼓動。
思わずそこから去ろうとした彼を引き留めた。引き留めたは良いが何を言えばいいのかわからなかった。ただ、名前も知らない、初めて会った彼と話がしたかったのだ。
断られると思ったが簡単な事でOKを出してくれた。
その後自己紹介をして色んな話をした。話をしていたら気が合って、とても嬉しかった。
今日ほど夕日よ来ないでくれと思ったことは無い。
お別れの時。
「あの、私友達いなくて、その、友達になってつかーさい!」
そう必死に絞り出した言葉だが、アスラン君は少しむっとした顔で立っていた。
「名前を呼んで、話をしたら友達じゃないのか?少なくとも俺は友達と思っていたがお前は違ったみたいだな」
そう言って、そっぽを向いてしまった彼に私はあわてるだけだった。
そうすると、そっぽを向いていた顔がクツクツと笑いながら
「冗談だよ、嬉しかった。またな」
そう言ってパニック状態だった私の頭を優しくポンポンとした後、不器用ではあるが優しく撫でてくれた。少しごつごつとした手で。
またな、か。
良い響きやな…