魔法少年マジカルアスラン 作:仙儒
女友達とプールに遊びに来たことないから、少し緊張する。
「お前にしては珍しくそわそわしているな」
監視椅子に座ってる恭也さんから声がかけられる。
それにどう答えたらいいのかわからなかった。
「庭にプールはありますが、同い年の子と入って遊ぶ…、と言う経験がありませんでしたから」
そう答えた。
嘘は言っていない。現にアスランとしては遊んだ経験と言うのはあまりない。
何時も機械弄りばかりだった。
この世界にはキラが存在しない。故に遊ぶと言う事がなのはに出会うまで殆どと言っていいほど無かった。後は任務ばかりだ。
俺の答えに「そうか」と答えた恭也さんは遠い目をしていた。
別に俺の人生について同情してほしいわけでは無い。現にこの世界に来た時の不都合が無いようにと言う神様の配慮だろうし。
それこそ、それはお話の中の設定に過ぎない。
大切なのは”今”と”これから”ではないだろうか?そう悟ったのはC.E.でのデスティニープランだった。
あれは、明日を取り戻すための戦いだった。
明日、未来と言う未知の希望の為に剣を手にすることを選んだ。
俺にとってアスラン・ザラと言う人物は常に迷い、時に立ち止まりながらも自らの正義に忠実な男だった。
ブレブレの信念と言われ、罵られて来たが、彼ほど辛く、冷静で残酷な決断を強いられて来た人物はいないだろう。
口下手で、諦めが悪くて頑固で強がり。
弟同然の人物と殺し合い、実の父の過ちにいち早く気が付き、贖罪の道を選んだ。
これは死ぬよりも辛い事だ。
とこれは俺の見解だ。どこぞの物書きでは無いが、俺の趣味は人間観察だ。
小説を読み、アニメを見て、ドラマCDを聞き、辿り着いたアスランと言う人物像。
彼の生き方は不器用で実に、生前の私と思考の仕方が一緒だった。
だから、俺は得点でアスランに成ることを望んだ。
とはいえ、俺はアスラン・ザラと言う同姓同名で容姿が同じだけの、全く別の人物だ。そこら辺をはき違えてはいけない。
流石に両親の事や俺の今までの生き方のセッティングまでは頑張りすぎだとは思うがな。あの女神様。
だから恭也さんみたいに同情されるのは勘違いもはなはだしいということだ。
「アスランくーん!」
声のした方を向くとなのは達が水着で此方に走って来ていた。
「お待たせなの」
その場で水着と俺をチラチラと見ているのに気が付いた。
しかし、そう言ったお洒落を知らない俺は何て答えればいいのか迷った。
「似合ってるんじゃないか?なのは…、アリサにすずかも」
そう言う言葉で濁して答えた。
それに満足したのか
「良かったの」
「当たり前じゃない」
「うふふ、良かった~」
上から順になのは、アリサ、すずかの順番で答えが返って来る。
というか、アリサよ、当たり前だと言うのなら最初から聞くな…、いや、聞いてきては無いけどさ。
「リニスも似合っていると思うぞ」
こういう場になれていないリニスにもそう声をかけるが、やはり恥ずかしいのか何処かおどおどしている。
そういう態度が逆に男心をそそるのだが、気が付いていないようだ。
忍さんも苦笑いしている。
近づいて来ようとする男達は恭也さんの殺気の籠った眼差しに近づけない。
まぁ、リニス事態格闘術を覚えて居るので襲われても返り討ちに成ると思うが。
プールに来てただ泳ぐのも芸が無いので元々、恭也さんと話をする前に買っていたものを投げ渡す。
水鉄砲だ。無論、水を補給済みだ。
「かけをしないか?負けたらあそこで一曲歌ってくるって言うのはどうだ?」
そう言いながら、中央に設置されている大きなステージを指さす。
そこにはのど自慢大歓迎と書かれた看板が立てかけられていた。
今日は休日、込み具合は上場。それであの場に立って一曲歌うのは勇気が居るぞ。
「面白いわね、その話、乗ったわ!」
乗りのいいアリサが名乗りを上げた。
それに対してなのはにすずかは戸惑った様子でいる。
遊ぶために買った水鉄砲。
ただの…、そう、ただの水鉄砲だった筈なのだ。
構えて撃とうとした瞬間に狙った人物の頭から、心臓部分から血が噴き出して倒れるイメージが一瞬だが頭に浮かんでしまった。
親しい人物をこの手で殺す。モビルスーツ越しに銃を向ける事は多々あったが、直接向けるのは数える位しかなかった。
それもちゃんとセーフティロックをして、或は威嚇のためにだけで、撃つことは無かった。
酷い話だ。
古い記憶を見せられて、今更引き金を引くことを躊躇うなんて…。
皮肉だ。
ただの遊びなのに怖いのだ。怖く思えてしまうのだ。
そうやって膠着している間に水がかけられて、はっとなる。
勝負はもう始まっていたんだったな。
こっちに向かって勝ち誇ったように笑うアリサの姿があった。
「戦場で固まる何てまだまだね」
そう言いながらステージを指さしている。
「でも、アスラン君、大丈夫? 顔色悪かったよ」
「そうなの。アスラン君、具合悪い?」
すずかになのはが心配してくれて苦笑いを浮かべながら「大丈夫だ」、そう告げてステージの方へ行こうとした。
アリサには言いたいことがあったが、ここで怒鳴ってもしょうがないだろう。
ステージに向けて歩こうとしたらアリサに手を引っ張られた。
何だと思い振り向く。
「わ、私だって可笑しいのはわかってたわよ! ほ、ホントなんだからね!」
ちょっと微笑ましく思いわかっているよと言う意味で頭を軽く撫でた。そのままステージに上がっていく。
何を歌おうかな?