魔法少年マジカルアスラン 作:仙儒
GW。連休続きで旅行に行く人たちも多いだろう。
そんな中、俺は休みの日の予定は訓練に機械いじり、ゴロゴロしながら過ごそうと思っていた。
そう、思っていたんだ。
気が付いたら車の中に居て、左右にはアリサとすずかが、腕を組んでいる状態で、前の席からなのはが恨めしそうに此方を見ていた。
一体全体何があった。
眠っていた記憶もないし、車に乗った覚えもない。
忍さんに魔眼でも使われたかとも思ったが、こんなくだらない事に魔眼をつか…、いそうだよな。良く考えてみたら。
でも、それならイージス辺りが対応しそうなものだけど…。
問題ないと判断したのかね?
念話で問いかけるが首に吊るしてある深紅の三角形の宝石は服の中で、何回か点滅すると、それっきり何のアクションもしなかった。
光通信かとも思ったが、どうもそうでもないらしい。
無口の時はとことん無口だからな、このデバイス。
はぁ、と深いため息をはいて、考えるのをやめた。
と言うか、アリサにすずかよそんなに強く腕を組まなくてもいいのでは?
無理に振りほどこうとはしないから力を弱めてくれないかね?
そう訴えようとしたらすずかとアリサが笑顔で目が笑ってない状態で互いを見ている。
心なしか火花が散っているように見えるのはきっと疲れているからだろう。
この状態に。
胸がもっとあれば痛みも軽減できるかもしれないが小3のドラム缶体系には無理な話か…、そう思うがすずかの方が少し、ほんの少しであるが、胸の部分が柔らかいような気がする。
フェイトが居なければ一番胸がでかいのは、すずかだったのかもしれない。
まぁ、此処に居るメンバーも居ないメンバーも将来はナイスバディーに成ることが約束されているので大丈夫だとは思うが。
俺には関係ない話か…、考えてて悲しくなってきた。
そう考えながら車は旅館に辿り着く。
解放された俺は一番最初に両腕を確認した。
少し赤くなっているような気がする。
痣に成ったりしないよな、これ。
そう思っていると今度はなのはが腕を組んで来た。
なのはさん、今はちょっと勘弁してくれないかね?
そう思ってると微弱な魔力を感じた。
なのはからだ。
(じっとしてて、ユーノ君から習ったの。まだ、簡単な事しかできないけど)
そう念話が飛んできた。
確かにポカポカと優しい温かさを感じる。
なのはにこんなことできたっけ?とも思ったがStrikerSでティアナの足の捻挫治そうと申し出たのを思い出した。この位はこのころからできたのかもしれない。
ユーノはバックアップ能力で言えばシャマルの次に優秀な人材だったな。
後半はクロノにこき使われるのが印象付いていてすっかり忘れていたが。
さて、しばらくは自由時間だ。
なのははそのまま俺に寄り添うように付いてきてる。
すずかとアリサとははぐれてしまった。多分だけど、トリィとユーノがいない事からそいつらとじゃれ合っているのかな?
まぁ、トリィは大丈夫だと思うけど、ユーノは…、どうでもいいか。
庭を歩いていると高町夫妻と鉢合わせた。
ちょうど俺となのはと同じように寄り添っている。
本当にオシドリ夫婦だよなぁ、羨ましい。
俺もいずれこんな奥さん持ちたい物だ。
そんなことを考えたら桃子さんが見透かしたように此方を微笑ましそうに見ていた。
そうしたら、士郎さんが桃子さんに何か言い、桃子さんはなのはを連れて旅館の中に入って行ってしまった。
「少し、話でもしないかい?」
そう言って、中庭の池の方を指さす。
それに俺は無言で頷く。
中庭の橋の上、立派な池に色とりどりの鯉が優雅に泳いでいる。
「夫婦水入らずだったのに良かったんですか?」
その問いかけに士郎さんは笑いながら誤魔化す。
「聞いたよ、バニングスさんから。婚約者なんだって?」
その話か、
「自分も知りませんでした。父上とも母上とも碌に過ごした時間はありませんでしたから」
そう、二人とも愛してくれてはいたが、仕事を優先させる不器用な人物だった。
不器用な所だけ似たのかもしれない。
でも、誕生日の日だけは必ず帰って来てくれた。
それも今となっては、意味のない物へと変わってしまったが。
士郎さんに桃子さん、二人にしつこく誕生日を聞かれたが、これだけは口を割ろうとは思わなかった。それは、自分さへいなければ、とか、父上を止められていれば悲劇が大きくなることはなかったと言う罪悪感からくるものだった。
結局、この話については珍しく高町夫妻が折れる形で決着が付いた。
その代わり、なのはと出会った日を代わりの誕生日として、毎年祝ってもらっている。
だが、態々こんな話をするためだけに、桃子さんとの時間を割いたとは思えない。
「で、本題は何ですか?」
士郎さんは「あはは、誤魔化せないか」と苦笑いをしながら頬をかく。
真剣な顔つきになり、空気が変わる。
「最近なのはの様子が可笑しいんだ。何かの武術をやっているわけでは無いのに時折、戦士のような目をすることがある。朝弱い筈のなのはが必ず早めに起きてどこかに行ってしまう。恭也が一度後を付けていったことがあったが、”あの”なのはを見失うどころか、見つけ出す事すら叶わなかったらしいんだ」
士郎さんの話を聞きながら恐らくは結界を張って朝練をしているのだろうと言う事が察せた。
だが、それは、元来、もっと先の話だったはずだ。
それはそれとして、この人もちゃんと娘を見て居ることに感心した。
原作でも薄々気が付いては居たのだろう。
「…、それについては時が来れば、自ずと解決するでしょう。それよりも…」
そういいながら士郎さんを見据える。
「放任主義とほったらかしていることは別です。俺と出会い少しは変わったかもしれませんが、まだまだなのはは良い子を演じています。もしかしたら、本人もそれが”当たり前”になってるんでしょう」
そうして士郎さんから目を逸らし背を向ける。
け、決して偉そうなこと言いまくって怒らせてるんじゃないかとビビっているわけでは無い。無いったらない。
まぁ、おふざけはここまでにしておいて、
「そんな子が自分にできる特別を見つけたらどうなるか、否定せずに受け入れて褒めてくれる存在ができた時の行く末を知らない貴方ではないでしょう。なのはは壊れるまで続けますよ。そうなってからでは遅いのです。俺のようになってからでは…、だから、もっと構ってやってください。此処がお前の家で俺の娘だと、特別な何かが無くても大切な家族だと、帰るべき場所であることを、多少強引にでも、なのはに恐怖を与えてでも伝えなくちゃいけない事です。それは、自分にはできない、他の誰でもない貴方たちにしかできない事です」
そう、なのはの大怪我はこの事から来ている。
自分を必要とされない恐怖。そんな幼少期からのトラウマから辿り着いてしまったなのはの初めての脱落。もしかしたら、必要なことかもしれない。
だが、回避できるのなら回避したい事だ。
もしかしたら、俺はその時には居ないかもしれないから。
今のうちから、ちゃんとした土台と支える柱を築いておきたい。
そのためならば、ぶん殴られるくらいの覚悟はできている。
「…、そうか。やっぱり君に話して正解だった。参考になったよ。…なのはの事、よろしく頼む」
その言葉にどんな意味が託されているのかわからない。
どれだけの思いと覚悟が込められているかわからない。
だけど、これだけは言える。
「はい、自分の、俺の命が続く限り護り、支えていくつもりですよ」
明日には無いかも知れないこの身、それでも、戦ってでも護らなきゃならない物があることを知っているから。
それは、士郎さんも知っているはずだ。
話している時から気が付いてはいたが、近くに気配を感じていた。少し気になったが敵意や殺気を感じない事から気にしない事にしていた。
…、夫婦の時間をこれ以上邪魔するわけにはいかないな。
チラッと気配のする方に視線を送り、少し深めに頭を下げてその場を後にする。