魔法少年マジカルアスラン 作:仙儒
彼、アスラン君が去った後、彼が横目でちらりと見た方向から妻の桃子が出て来る。
「…、僕は父親失格、なんだろうな」
そう呟く自分に抱き付くように、けれどもそっと支えるように背中に寄り添う。
「それなら、私もよ、士郎さん。結局私達はなのはの事全然わかっていなかった…」
そう言う桃子にどう言葉をかければいいかわからなかった。
元々、そういった類は苦手、と言うか不器用だった。
恭也がいい例だろう。今でこそ忍ちゃんと言う理解者ができたが、それまで恭也の口から友達と言う単語が出てくることは無かった。
そんな恭也にどう接すればいいのか分からず、武者修行だと世界を転々としたこともあった。結果として恭也はより孤立していった。
ついぞ、恭也の口から友と言う言葉が出てくることは無かった。
だが、桃子と出会い、結婚してから、恭也も少し変わった。
それが、忍ちゃんと言う恋人を得た事で恭也は見違える程丸くなった。あれ程剣の事しか興味を示さなかった恭也が学校に行くようになった。
本当に忍ちゃんには感謝している。
未だに恭也の口から友の言葉は出てこないが。
そして桃子がなのはを生んだ。
どうしたら良いのかわからない僕をフォローしつつ、桃子がなのはと僕の間を取り持ってくれた。
だが、僕自身がへまをして、それを壊してしまった。
多分、一番大事な時期になのはを孤独に追いやってしまった。
だが、それを彼が、アスラン君が繋ぎ止めてくれた。結果としてなのはの孤独は無くなった。そう思い込んでいた。
なのはが良い子を演じていたのに気が付かなかった。否、それに甘えて考えないようにしていたんだ。
放任主義と放って置くのは別物。
彼の言葉が胸に強く突き刺さる。
なのはにはなのはを理解してくれる友達ができた。そのことに喜んでいた。
もう大丈夫だと思っていた。
なのはの心の壁と溝の深さに気が付かないまま…。
彼だけは知っていたんだ。他の誰でもない、彼だけは。
だけど、どうすればいい、今更どうすればいい。それすらわからなかった。
また、気配がした。そこには彼が居た。
「言い忘れた事がありまして」
そう言う彼が
「貴方方はまだスタートラインにすら立っていない。それに、そんな泣き言、聞く耳持たん」
僕たちの心を見透かしたようにそう言いった。「まぁ、愚痴なら何時でも聞きますから」苦笑いをしつつ、今度こそこの場を後にした。
参ったな。年下の、それもなのはと同い年位の子に諭されるとは…。どっちが大人でどっちが子供だかわからないな。
「士郎さん、私、帰ったらなのはとちゃんと話したいと思うの」
その話に頷いて「僕もさ」と告げる。
彼がなのはの悩みを教えてはくれなかったが、私達に答えをくれた。
「まだ始まってすらいなかったんだな。僕たちは」
その言葉に桃子は「ええ」と返す。
「なのはがアスラン君を好きな理由がわかったような気がするわ」
その言葉に「全くだ」と返す。
彼はそのことを知っていてなのはをこれ以上孤独にしないために彼は常に気にかけてくれていたのだ。
彼には感謝してもしきれない。
恭也が認めただけはある。相変わらず素直ではないが。
赤い弓兵の言葉を言って思った。
俺中二病じゃね?、と。それこそ今更か。でもあいつと同じなのは嫌だな~。
後、帰りに高町夫妻にビンタかパンチくらわないよね?
あんだけ偉そうに説教したんだから。
幾ら仏様みたいな人でも限度って言う物があるし。
考えててもらちがあかないので温泉につかることにした。
「あ、ようやく見つけたわよ!」
その声に振り向くとアリサにすずかなのはが桶にシャンプー等を入れて歩いていた。
念話でなのはからお父さんから何の話があったのか聞かれたが、最近のなのはの学校の様子を聞かれたと答えた。嘘は言っていない。ただ真実を濁しただけ。
原作でユーノの事をアリサ達に言う時と同じ言い訳を誰にするでもなく、自分を納得させるためにする。
「温泉に入らない?」
すずかの言葉に渡りに船だと思い、用意するから待っていてくれと言った所、
「その必要はないよ」と何故か俺の浴衣とパンツが入った桶を渡してくる。
待ってくれ、浴衣まではわかるが、俺の下着をお前が持ってるし。
そう言おうとしたら、すずかに人差し指で唇を優しく抑えられ、そのままその指を自分の唇に当てる。
闇に詮索は無用と言いたいのだろう。
そのまま、世間話をしながら温泉へと向かっていたら恭也さんと忍さんに出くわした。二人とも、これから温泉に入りに行くらしい。
そのまま一緒に温泉まで行く。
男湯と女湯で分かれる所で、ユーノを此方で預かる。
淫獣とか不名誉な事言われていたからな。流石に同情したのもある。
そのまま男湯に行こうとしたらシャツを引っ張られる。
え?
「あんたはこっちよ」
そう言うアリサ。
アリサだけでは無い。すずかになのはも掴んでいる。忍さんはニヤニヤしながら此方を見ている。
「離せ、俺は男だぞ」
そう言うがアリサがある看板を指さす。
女湯だからか、そこには男のお子様は12歳以下まで、そう書いてあった。
不味い不味い不味い不味い、嘘であってほしい。冗談だよね?
「アスラン君は9歳!」
何故か嬉しそうに少し上ずった声のすずか。
そうだ!
「いや、忍さんも居るし」
そう、忍さんが居る。
これで勝つる。
しかし、忍さんは新しいおもちゃを見つけた子供みたいにニヤニヤしながら
「私は構わないわよ」
と悪魔の一言を発した。
嫌々、駄目だろ、普通。しかも彼氏と言う名の婚約者目の前!
俺、殺される。
そんなことは許さない筈だ。な、男ならそうだよな。
そう言う意味も込めて視線でヘルプを求める。
すると、恭也さんは遠い目をして諦めろと視線で帰してきた。
さりげなくなのはと入った後に殺すとか口パクで言ってきた。
そこは嘘でも忍さんって言うところだろ、シスコン。
じゃなくて、待って!男湯に入ろうとしないで!俺を見捨てないで!
ちくしょう、せめてユーノも道連れじゃ~!
と、思ったがさっきまで俺の桶に入っていたユーノが居ない。
前を見てみたら恭也さんの肩に乗っていた。さりげなく手を合わせてるし。
ブルータs…、じゃなかったユーノ、てめーもか!
そう考えて居たらずるずると引きずられていく。
幾ら2人と言えど子供2人、しかもアリサとなのはに俺を引きずる力は無い筈だ。
鍛錬を欠かしたことは無いこの身を引きずるのはすずかを入れても難しいんじゃ…
「はいはい、男の子なんだから諦めが肝心だよ」
忍さんでした、畜生! わかった、入るよ。入るから引きずるな。
俺が大人しく抵抗をやめて女湯に歩く動作をしたら、引きずるのをやめてくれた。
せめての抗いで女性陣達が着替えている場所からどちらからも見えない場所で衣服を脱ぐ。
すぐさま腰にタオルを巻いて女湯に足早に入る。女性は下着を外したり髪留めを外したりと時間がかかる筈。すぐさま体だけ洗って女湯を出ればそれだけ皆と入っている時間が短くなる。
…、と思ってた時が俺にもあったよ。
仲良し3人組はまだまだ未発達な体だ。
と言う事は俺と大差ないわけで、更に俺が急いで入ったことに気が付いて、3人組も急ぐ訳で、結果からいうと3人に捕まった。
流石に体にタオルは巻いていた。
しかし、ここで問題が起きた。誰が俺の背中を洗うかだ。
最初に名乗りを上げたのはアリサだった。
「夫の背中を流すのは妻の勤めよ!」
とのことだ。アリサよ、まだ夫婦じゃないぞ?
一応親通しが勝手に決めた許嫁だが…、
そこでなのはが核爆弾を落とした。
「アリサちゃんは許嫁かもしれないけど夫婦じゃないの!それに、アスラン君の背中を流すのはなのはなの!前に一緒に入った時に気持ちいいって言ってくれたの!」
その一言にアリサとすずかが固まる。
「どういう事よ、説明しなさい!」
そう言いながら揺すられる。
景色が激しく上下する。
やめて、は、吐いちゃう。
「や、やめろ!なのはと一緒に風呂に入ったのは5年前だ。と言うかよく覚えてたななのは」
それを褒められたと勘違いしたのか「えへへ~」と両頬に手を当て頬を赤らめるなのは。
その態度とは逆に機嫌が悪くなっていく2人。
アリサはどんどん掴んでいる肩に爪が食い込んでくるし、すずかは目のハイライトが消えて「ふふふ」と不気な声をあげている。
「それじゃあ、それぞれが場所を決めてそこを担当すればいいんじゃないかしら?」
相変わらずニヤニヤしながら飛んでも発言して部位を分けてそれぞれが洗ってくれることになった。
もうどうにでもなれ…。
3人ジャンケンで洗う所を決めるらしい。
結論からいおう。
背中、なのは。両手両足、アリサ。前、すずか。
色々突っ込みたいけど待った。前は無いだろう、前は。
だが、俺の意見など届くはずもなく、作業は進んでいく。
「アスラン君…、凄い」
誤解を生みそうなすずかの言葉だけど俺の割れた腹筋や胸板見て言ってるセリフだからな。
「た、確かに服の上からじゃわからないけど凄いわね」
腕の筋肉を見てアリサが言う。確かに俺は近接戦闘を好むため自然と剣を使う筋肉が付くところだよな。
「広くてごつごつした背中だけど、綺麗なラインなの」
何を基準に綺麗なラインと言っているのかわからないが、確かに歪みはしてないな。今の所。
これも近接戦闘をしてる産物かね。あとCQC。時々ストレッチ代わりにやっている。まぁ、射撃訓練もちゃんとしてるし、得意ではあるのだが、どうしても近接戦闘に成りがちなんだよな。そこらへん、アスランなんだなと自分でも思う。
ゴクリッ
生唾を飲む音が聞こえた。
このままではらちが空かないので自分で洗おうとしたら3人から「「「ダメー!!!」」」と悲鳴じみた声が響く。
今は俺たちのほかに偶々客が居ないので良いが迷惑だぞ。
そのまま、それぞれが洗ってくれた。
流石に腰の下も洗おうとしたすずかは全力で止めたが。
それで湯船にようやくつかる。
はぁ~、苦労した。その苦労が温泉によって癒されていくようだ。
誰かが温泉は魂の洗濯だよと言っていたが、正にその通りだと思う。あれ?風呂だっけ?まぁどっちでもいいや。
「あれ?アスラン君って温泉初めて? タオルをお湯につけるのはマナー違反なんだぞ」
そう言いながらニヤニヤしている忍さん。
知ってますよ。でもね、俺にも譲れないものがあるわけですよ。
「あの、どうしても取らないと駄目ですか?」
答えがわかってはいるけど一応聞いてみる。
「マナーだからね」
私だってタオル巻いてないでしょう?と言ってきてそう言えばタオルを巻いていない事に気が付く。
因みにアニメでは見えないように緑色してたけど、此処の温泉、透明なのよね。
となると必然的に女性の象徴を見てしまうのは男の性なわけで、デカくて柔らかそうな胸だな~とか、恭也さんはこの二つのお山を好き勝手してるとかマジでリア充爆発しろ!
そんなことを思っていたら視線に気が付かれたのか胸を両手で押し上げるようにして、
「アスラン君も男の子だね。でもこれは恭也の物だから駄目よ」
と言ってきた。
それは勿論仲良し3人組にも聞かれている訳で、皆、自分の胸を見て居た。
そして3人から「「「Hっ!!!」」」と息の合ったツッコミにいたたまれなくなる。
悪い空気の中口から出たのはアスランの本心だった。
「いや、あのすいません。両親と一緒に風呂に入ったことが無かったので、一緒に入ったらこうなのかな、と思いまして」
俺に両親がいない事をこの場に居る全員が知っている。その中でも忍さんにすずかはより深く俺の事を話してあるわけで、空気が一気に重苦しい物へと変わる。
忍さんも流石にバツの悪い顔をして「ごめんなさい」と呟いた。
俺も湿っぽい空気にしてしまった事を詫びて、「やっぱり男湯に行きますよ」と言い残して湯船から出た。
追ってくる気配は無かった。
俺は男湯に入る気すら失せて、近くの自販機にあったフルーツ牛乳を一気飲みしてやっちまったと言う感情と罪悪感で一言
「最悪だ」
そう呟いた。