魔法少年マジカルアスラン   作:仙儒

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幼少期

にぎやかに過ぎる時間。アスランは幸せと葛藤にさいなまれていた。

 キラに言われた何時でも話し合える幸せ。

 兵士だから、仕方が無いから、自分が手を赤く染める事でこんな悲しみは少しでも早く終わるならば。そうやって敵を殺してきた。

 

 長い道のりだった。

 

 なのに戦火は広がるばかりで、泣く人は増えるばかりで…。

 だから父親に問いただしたのだ。戦争を終わらせる気はあるのか…。

 だが、返ってきたのは敵を皆殺しにすれば終わる。そんな返事と一発の弾丸が答えであった。しかも殺さなかった理由は機密を持っているから、そんな下らないアスランにとってはどうでもいい事だった。

 だからアスランはザフトと決別を決めたのだ。

 その辺を皆は薄っぺらい忠義などと後ろ指を指したが、考えて欲しい。

 

 自分の息子を、最早道具としか思わずに復讐の鬼となった父親。その父親が地球を滅ぼすと。核兵器を惜しみなく使おうとしていたら、君はそんな父親に賛同しついて行けるか? 何となくじゃなく、自分の意志でついて行くと胸を張って居られるか?

 

 結果として父親は部下に殺され、アスランの最後の手段として、自らの命で父親と自分の殺戮の罪を償おうとした。

 だが、それはカガリによって止められる。そこでカガリに死ぬのは卑怯だと諭され、生きて贖罪の道を選ぶことをした。それはキラ、カガリ、カリダ、ラクスが居たから頑張れた。歯を食いしばって立っていられた。オーブの復興にも全力で取り組んだし、孤児院の仕事も引き受けてきた。

 

 そんな自分がこの場に居ることが許されるのか?

 そんな後ろめたい理由から中々祝いの席の真ん中に出れずにいた。

 

 それに気が付いた士郎さんが問いかけて来る。

 

「楽しんでいるかい?」

 

 その問いかけに「ええ」としか返すことができなかった。確かアスランは口下手だったな。

 

「その割には楽しそうじゃないね?」

 

 その問いかけに申し訳ない気持ちになる。楽しいのは事実だ。だが、

 

「いえ、楽しませて貰ってますよ。ただ、果たして自分があの中に入る資格があるのかどうか…」

 

 自分はアスランではないが、アスランなのだ。アスランの体験、経験。そういうものが全て入っているのだ。この体には。加えて生前の私はアスラン贔屓だったし、感情移入も激しかった。

 

「…君にはそういうのはまだ早い。それになのはに言ったんだろう? 勇気を出せって。その本人が勇気を出せないでどうする」

 

 そう言って士郎さんに押されて宴の真ん中に背中を押されていく。

 待って、心の準備が…

 そこに待っていたのは料理の追加を持ってきているなのはが、今度は代わりにジュースの入ったペットボトルを持って嬉しそうに走って来た。

 確かなのはは、運動音痴だったはず…

 そう考えて居たら何もない場所で滑って転びそうになる。

 落ちは忘れてないのな。そう思いながらスライディングでなのはの下へと滑り込む。

 

 蓋の開いたペットボトルからジュースが少し零れ、頭からそれを被ってしまうが、それだけですんだ。

 

「にゃ、アスラン君御免なさいなの!!」

 

 あたふたするなのはに不思議と笑いが込み上げて来た。

 

「ああ、笑うなんて酷いの!」

 

 なんて場違いな事を言い出すなのはにすまない、と謝り、タオルは無いかと言った所、思い出したのか「すぐに持ってくるの」と言い残して行ってしまった。

 

 これを見ていた桃子さんが良かったら風呂に入ってきなさいと洗面所兼、脱衣所にほうりこまれた。仕方が無いので服を脱ぎ風呂に入ることにする。

 

 入り、シャワーを浴びながら思う。桃子さんの小悪魔のような顔をしていたことに。

 絶対になにか良くない事が起こる。そう気を引き締めていると誰か脱衣所に入ってきた。? 桃子さんかな? ベレー帽洗ってくれるって言ってたし。幸いベレー帽と髪の毛以外に被害は無い。

 しかし、カラカラ、そういう音がして振り返るとなのはが入ってきた。無論裸で。

 

「アスラン君さっきは御免なさいなの、代わりにアスラン君のお背中流すの」

 

 …え?え?は?

 何かの間違いだと思いすまないと言って脱衣所を出ようとしたら片手を掴まれた。

 

「お背中流すの」

 

「…わかった。お願いしよう」

 

 両目一杯に涙目になりながら言われたら断れないだろ。あと、なのは、ちゃんと前を隠そうな?

 まだそう言った事が理解できないのはわかっているが、女の子が赤の他人の男の前でタオルで前を隠すどころか、堂々と全裸で立っている。桜色のポッチが丸見えである。

 

 桃子さんこれを考えてたんだな? そう思い深いため息をつく。

 

「ため息つくと幸せが逃げちゃうの」

 

 此方の意図にも気が付かずにそう言うなのは。訂正しとくよ、幸せが逃げたから人は溜息をつくのだと。

 そのまま、椅子を出され、座るように指示され、素直に従う。出たら士郎さんと恭也さんに殺されないかな?

 それだけが不安だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し賑やかな場所から離れた場所にアスラン君がいた。

 なのはが彼から離れて以来祝いの席から距離をおく姿。その眼には悲しみと深い闇が渦巻き、陰りを見せていた。

 何らかの事があると思い話しかけて様子を伺う。返ってきたのは自分はこれに入る資格があるかどうかだった。

 やはり…か。

 それは疑念から決定的な革新へと変わった。体つきからしてあれはCQCを体に叩き込まれているのだろう。それは要人暗殺、それも今回の怪我の原因となった”パトリック・ザラ”の子供であると。

 そう思うと同時になのはに取り入ったのは僕への復讐のためかと思ったが、彼のさっきの態度を見る限り、僕が彼の父親を殺したことを知らないのだろう。

 確か、情報の下調べ段階で彼の母親のレノア・ザラは血のバレンタインデーと言われる2月14日の大規模な中東のテロで死んでいることが確認された。他にもたくさんの人が亡くなった今世紀最大の核を使ったものであり、犠牲者も10万人近く出ている。

 彼は天涯孤独の身なのだと。

 

 

 ふと、紅い騎士甲冑の彼の姿が鮮明に頭に蘇って来る。

 あの日、集中治療室にどうやって入ったのか、何をして私を目覚めさせたのか。

 それはわからない。ただ、来るべき時に彼に謝罪をしなければならない。

 それまでは生かしておいてくれ…。

 だが、不思議と彼は真実を知った所で此方に対する恨みや憎しみを抱かないだろうと思えてしまう。それをさっきの姿から察してしまった。

 そんな負い目を感じながら、彼がなのはに言ったことを口にし、背中を押して祝いの席の中心へと連れていく。今日は僕と彼の祝いの席なのだから。

 




カリダ・ヤマト

キラの育ての親でありアスランの母親のレノア・ザラの親友。
レノアの多忙さからアスランを預かりキラの育ての親でもあった。
因みにアスランの初恋の相手はカリダだったりする。
キラの本当の母親、ヴェア・ヒビキの実の妹。
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