第15話 愛する者の為に……。
その晩、僕はベッドの中で自分の脳内麻薬分泌速度を無理矢理加速させて一時的に体調を万全に整えていた。
あの時僕は寝たフリをして隊長を誤魔化したけれど、廊下からアルカさんの気配がしていた、夜食と言っても簡単な物程度だったせいで運悪く隊長の独り言を聞いてしまったのだろう。
––––––––彼女の性格を考えると、恐らく。
そう考えていると部屋の扉が静かに開く、其方に視線を向けると、俯き加減のアルカさんが僕の方に向かって歩み寄って来ているのが分かった。
「…………僕を殺しに来ましたか? クルスくんを守る為に」
僕の一言でアルカさんに躊躇いが生まれた様で、振り上げた手刀を僕の首に落とす事が出来なかった。
以前の彼女なら僕の言葉程度に惑わされずに首を切り落としただろう、しかし僕らは親しくなり過ぎた、既に僕の中ではアルカさんは友人であり、刹那ちゃん達と同じくらい大切な存在だ、彼女の中の僕がどの様な位置に居るのかは分からないけれど殺す事を躊躇う程度には思われているのだろう。
「…………外に行きましょう、此処で僕を殺したら内部の犯行と言うのが目に見えています」
「…………そう、だな」
素直に僕の後を付いてくるアルカさん、音を停滞させて二人して周りに気付かれ無い様にしながら外出、拠点から遠く離れた場所で向かい合った。
「此処なら、誰にも見られませんし、この一帯の音も停滞させていますから誰にも聞こえません」
「………………」
「ですから気兼ねなく戦えますよ、アルカさん」
彼女は後ろを振り向かない人だ、一度僕を殺すと決めたのなら必ず殺そうとするだろう、だけど僕もそう易々と殺されはしない。
もし僕が此処で殺されれば彼女は二度と他人に心を許す事が無くなり、全て一人で抱える様になるだろう。
それを防ぐ為にも、この戦いは必ず勝たなくてはならない。
「アルカさん、僕も全力で貴女を倒します」
「……………お前が私に勝てると思っているのか?」
「予言しましょう、僕は無傷で貴女を封殺すると」
その一言と共に僕の目の前の地面が爆発する、塵一つ残らず蒸発しているので躊躇いはあれど彼女も本気の様だ。
射殺す様な視線で僕を睨み付け、殺意をぶつけるアルカさん、訓練中なら引け腰になっていたかも知れないけれど、今はそんな物に気圧される気は無い。
「強気に出たものだな小僧、貴様の能力を私は何度見たと思うんだ? その欠点も既に理解しているのだぞ、貴様こそ私に傷一つ付ける事はできん」
「確かに、僕の能力は視界外からの攻撃には対応出来ないですが、無駄ですよ」
そう言って、僕は四倍速でアルカさんに接近し、左手を突き出して彼女を4秒前に置き去りにしようとする。
けど、散々訓練で使って来た技な所為かその脅威を重々理解している彼女には届かず、回し蹴りと共に放たれたヒートエクスプロージョンを返して来たが、その技は既に
回し蹴りの下をかい潜り、蹴りを放った足とは逆の足を水面蹴りで払って転倒させる。
倒れた彼女はその体勢から
「無駄ですよ、僕は貴女の動きを全て予測しています、万に一つも攻撃は当たりません」
僕がアルカさんに強気で居られるのは新たに思い付いた技を使用し続けているからだ。
『未来予測』自分の思考速度や認識速度等を加速させ、周囲の状況から十数秒先の未来までを予測する技だ、コレの欠点は予測の為の判断材料として相手の事をある程度知っていないと発動出来ないと言う点だが、目の前の女性の事は十分過ぎる程知り過ぎている、一挙一動その全てを予測しきる事が可能だ。
「既に貴女の動きは全て僕の掌の上だッ!! そしてッ!! 貴女を封殺出来るもう一つの技をこれからお見せしようッ!!」
歯軋りをしながら伝導・
振動とは動き、そしてその動きには当然速度がある、ならばその速さを僕が操れない道理は無い。
急に能力が使用出来なくなった事と4秒前の世界に取り残された事によって生まれた一瞬の空白、その瞬間に彼女を背負い投げて地面に叩きつけて肺の空気を吐き出させ、首筋にナイフを突き付けてから現実時間へと帰還させる。
「僕の勝ちですよアルカさん、この状況でも反撃策を練るのは見事ですが、その全ては読めています。 行動に移る前に潰せるので諦めて下さい」
「…………一つだけ、頼みがある」
観念した様に脱力しきったアルカさんは、僕に向かって縋るような表情である提案を出してきた。
「………………私の事を好きにしてくれて構わない、どんな事でも聞く、何だってする、だからクルスの事だけは見逃してくれないか?」
「……………」
「……………やはり、か。 ならいっその事殺してくれ、お前に殺されるなら––––––」
「初めから友人を売るつもりなんてありませんよ、早とちりは止めて下さい」
確かに僕はシメオンに所属しているが、それでもその理念に賛同している訳では無い、僕がアークライトさんの下に居るのは行き場の無い僕を拾ってくれた恩人達が居るからだ、だから友人を売ってまで彼の命令に従う気は無い。
ナイフを仕舞いながら立ち上がり、アルカさんに手を差し伸べるながら笑いかける。
「それに、僕にとってアルカさんは大切な人ですから、貴女が悲しむ様な事はしませんよ、言ったでしょう? 美人の涙が最優先だって」
「…………信用、しても良いのか?」
「信用も信頼もして下さい、僕は貴女の味方です」
その一言で彼女の肩の力が抜け、僕の差し出した手を握り返してくれた。
格好付けてそのまま彼女を起こそうとしたのだけれど、昼間の疲労を脳内麻薬によって一時的に無視していたツケと未来予測による強烈な頭痛でそのままアルカさんの方に倒れ込みながら気を失ってしまった。
…………相変わらず締まらないなぁ。
取り敢えず死亡フラグは回避しました、相変わらず応用性と成長性の凄まじい能力である(白目)
後クロくんが割と好戦的だったりテンションおかしかったのは脳内麻薬分泌によって『最高にハイッて奴ダァァァァァア!!』状態だったからです(適当)
現在使用できる能力
加速:四倍
減速:0.25倍
停止:1秒(任意発動不可&無意識)
劣化:接触している物限定
回復:接触している人限定(リスク有り)
音の停滞:自分の周辺の音を聞き取り辛くする
脳内麻薬の分泌:最高にハイッて奴ダァァァア!!
必殺技
『君は4秒前の世界に居るッ!!』
対象の神経伝達を停滞させ、全ての感覚・認識を4秒遅らせる。
接触する事が条件で発動、解除は遠隔からでも任意で可能。
必殺ゲージを1ゲージ使用(適当)
『その動きは既に予測済みだッ!!』
自身の思考速度や判断速度を超高速化させてあらゆる可能性を考慮し、敵の動きを全て予測する技。 十数秒先まで予測可能。
相手の技、性格、能力などを知る事が条件で発動可能、回数を重ねる事で予測の精密さが増す。また、あくまで予測な為結果は絶対では無い。
必殺ゲージを1ゲージ使用(適当)
追記
アルカに(ヤンデレ)恋愛フラグが立ちました。