NEEDLESS the World   作:ACS

16 / 44
第16話

第16話 夢

 

 

明晰夢と言う夢がある、夢の中でコレは夢であると自覚している夢の事だ。

 

僕は今、その明晰夢を見ている。

 

 

夢の中の僕は脳に負った後天的な障害と生まれ持っていた心臓の病によって会話をする事が出来ず、ベッドから動く事も出来なかった。

 

白い病室、味気ない病院食、今の自分とは真逆の弱々しい姿で横たわる自分を第三者の視点から眺めているのは複雑な気分だ。

 

場面が切り替わる、僕の頭には包帯が巻かれており、見舞いに来た両親がその手を握りながら涙を流して喜び、医者に向かって頭を下げている。

 

缶詰、シメオン、同じ肉体、何故か医者が発するその言葉だけが妙に耳に残り、夢の中にノイズが走る。

 

意識が浮上し、夢が終わるのだろう、ノイズは次第に大きくなって行き、夢の内容も分からなくなって来た。

 

ノイズ混じりの視界でベッドの上の自分を見る、言葉を発し身体が動く事に喜びを感じているのだろう、手を動かしたり父と母を呼んでいる。

 

––––––––––その直後、僕の能力が発現し、視界内に収めていた全ての物が風化した。

 

 

 

あまりの光景にベッドの上から飛び起きた僕は、丁度額のタオルを取り替えようとしていたアルカさんに盛大な頭突きを喰らわせてしまった。

 

涙目になりながら周りを見渡すと病室では無くアルカさんの部屋の中で、カレンダーの日付を確認すると三日は寝ていたらしく、その間僕は彼女のベットの上に寝かされていた様だ。

 

 

「いたた、す、すみませんアルカさん、夢見が悪かった物で……」

 

「大丈夫だ、私の事よりもお前は大丈夫なのか? よほど悪い夢でも見ていたのか魘され続けていたぞ?」

 

 

見れば僕の寝巻きは寝汗でじっとりと濡れている、両親どころか医者や看護師ごと病室を丸々塵に変えたのだ、夢見が悪いどころの話では無い。

 

気が付けば手も震えている、何気無く日常的に使用していた力が一転して凶悪な物へと堕ちるのだ、自分が恐ろしくて仕方ない。

 

そんな僕の怯え様に気が付いたのか、アルカさんはそっと僕の頭を撫でながら安心させる様に抱き締めてくれた。

 

 

「安心しろ、役者不足かも知れないが私が側に居る、今はゆっくりと身体を休めるんだ」

 

「は、はい……」

 

「それと、起きているなら何か食べるか?」

 

「……お願いします」

 

「分かった、大人しくしていろよ?」

 

優しい口調で語りかけながら僕をベットの上に押し戻すアルカさん、伊達に姉はやっていないらしく、抵抗らしい抵抗も出来ずに僕はすんなりと身体を横にする。

 

少ししてからアルカさんはお粥と林檎を持って来てくれた、僕は身体が動かないので必然的に食べさせて貰う形となるのだけど、息を吹き掛けてお粥を冷ますアルカさんを見ていると妙に緊張してくるは僕だけなのだろうか?

 

…………後でクルスくんに聞いて知った話だけど、このお粥はアルカさんの手作りだったらしい、『今度から義兄さんって呼ぶべきですか?』とか言われたから彼的にも珍しい事なんだろう。

 

 

食べ終わると同時に満腹感から眠気が来た為目を瞑っていると、僕が寝付くまで彼女は添い寝をしてくれた、夢見が悪い所為で人肌が恋しかった為か、直ぐに眠りに落ちてしまったのだけれど、今回は悪夢を見ることなく朝を迎える事が出来た。

 

 

取り敢えずは身体が動く様になり、隊長にクルスくんの治療時の事を能力の成長と言う事で誤魔化した後、自室にて自分の持つ力について考える。

 

あの夢は恐らく脳を酷使し過ぎた為に見る事になってしまったのだろう、自分の眠っている記憶の一部に間違いは無いだろうが、能力の力が今とは段違いに強かった事が気に掛かる。

 

 

試しに鉛筆に加速を掛けて劣化速度を上げ、様子を見る。

 

能力を掛けた瞬間から目に見える速度で劣化が始まり、ものの数分で鉛筆が腐葉土の様なグズグズの土塊に変わり、最後には風化し塵となって消えて行った。

 

夢で見た通りの現象を起こす事は出来た、だがしかし夢の中の僕は視界の中の物体を一瞬にして風化させていた、今の僕とは比べ物にならない。

 

未だに底の見えない力、忘れてしまった自分の記憶部分にその全貌が明らかになる為の材料があるに違い無いのだが、あの光景は忘れてしまった方が良い部類の物だ。

 

記憶を失う前の自分が後悔の念から自殺しようとした結果、それが失敗して記憶喪失止まりになった可能性もある、念願の健康を手に入れた矢先に家族と恩人を諸共に消し去ったのだ、後悔の念から身投げし、能力の発動によってギリギリの所で助かった、のか?

 

それにしてはナイフを所有していたり、見知らぬ土地に居たりと不審な点が多い、能力に関しても暫定的に速度を操る力となっているが、本当は別の力の可能性もある。

 

 

「ダ〜メだ、全っ然分からない、一回記憶喪失前の記憶を見た程度じゃ何の解決にもならないや」

 

 

もう一度夢を見れば何か分かるかも知れないけれど、正直なところ二度とあの夢は見たく無い。

 

身内は死亡してしまったのだから別に記憶喪失のままでも問題は無いだろう、寧ろ記憶を思い出す事で今の自分が消えてしまうかも知れないと言う事の方が恐ろしい。

 

 

レジスタンスのみんながアークライトさんを襲撃する予定の日まで後数週間、それまでに体調を万全にしておかないとな………。





イベント:過去の記憶1が発動しました、自分の過去について少しだけ知る事が出来ました。

イベント:『世界』の謎1が発動しました、自分の能力について本格的に疑問を覚えました。

イベント:アルカの手作り料理が発動しました、彼女の好感度が上昇しました。

イベント:アルカの添い寝が発動しました、彼女の好感度が上昇しました。


過去を思い出したのは未来予測によって普段使わない部分を使用した為、少しだけ記憶を知る事が出来ました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。