第18話 幹部就任
任務後、僕はシメオンの幹部に就任し、自分でも引くレベルの権力を握る事になった、しかも次期右天候補として。
まさか其処まで上り詰めるとは思ってもいなかったので思わず苦笑いが溢れてしまった、と言うか別に幹部の座も次期右天候補の肩書きも要らないんだけどなぁ……。
「浮かない顔だな、クロ」
「身にあまる権力は持て余すだけですよ、アルカさん」
「お前も幹部になったんだ、敬語はよせ、さん付けもだ」
荷物を取りに学園に帰ろう思った矢先、廊下でアルカさんとばったりと出会い、顔を逸らされながらその様な事を言われてしまった。
確かにシメオンの中ではかなりの仲だけど、目上の人だし戦いに関しての訓練もしてくれたのでタメ口で接するのは抵抗がある、微妙に此方の反応を伺っているのが気にかかるけど、折角の申し出は断らせて貰おう。
「えーっと、折角の申し出ですけれど、目上の人にタメ口を使うのは……」
そう言って断ろうとした瞬間、アルカさんは僕の肩を掴んで壁に押し付け、顔の真横をブチ抜きながら所謂壁ドンと言う奴をされた、但し
「もう一度言うぞ? 敬語とさん付けを辞めろ」
「わ、分かったよ、アルカ……」
「それでいい、お前と私の仲なんだ、変に気を使う必要は無い」
不思議な圧力を掛けれた僕はその圧力と眼力の前に敢え無く屈し、彼女の要求を飲む事となった。
アルカさんは満足気に頷きながら僕を解放してくれたけれど、今になって何故こんな事を言うのか気にかかる、是非聞いて見たいけど藪蛇な気がしてならないので黙っておこう。
「それじゃあアルカ、僕はちょっと学園に用があるからまた後で」
「…………ちょっと待て」
「うん? どうしたの?」
「あの事の礼がまだだった筈だからな」
そう言って、アルカに再び捕まった僕はそのまま頬にキスをされました、何で僕はこんなに女性にやりたい放題されるのだろう? そう言う星の下に産まれてるのかな? ねぇ、答えてよ神様!!
「一つだけ言わせて貰うなら、私はあの学園の連中の様な軽い女では無い、覚悟しておけよクロ」
彼女はキスをした後軽く僕を抱き締め、耳元でそう呟いてから去って行った、一応スキンシップ……なのかな? ハグとかキスは海外じゃ普通って言うし、アルカなりの親愛の証、かな?
唐突過ぎて混乱していたけれど、何とか持ち直して学園に荷物を取りに帰った僕は、其処で手厚い歓迎を受ける事になった。
僕の幹部昇進は既にこの学園にも伝わっており、ひなたちゃんや凛ちゃん達に色々聞かれたり身体中を触られたりと色々酷い目に合った。
意外な事に刹那ちゃん達が見当たらなかったので凛ちゃんから話を聞いた所、何時もの五人は丁度僕が任務に着いた頃に一軍に昇格し、この学園を去ったのだと言う。
聞きたい事は聞けた為、先生達に挨拶回りをしてから学園の外へと出る、一軍昇格と言う事は支社の方に居る可能性が高い。
バイクを走らせて支社の方へと向かったのだけど、其処でも彼女達による手厚い歓迎を受ける事になる、学園の方とは違いかなり手荒い物だったけど。
「一年も連絡無しで何処に居たのよ!? しかも帰って来たと思ったらいきなり幹部になってるし、何があったのか一から説明しなさい!!」
「刹那ちゃん、揺さぶらないで、く、首しまってる……」
「しかも次期右天候補何だよねー、クロくんすごーい!!」
「有難う未央ちゃん、そんな事より助けてくんないかな、頭が揺れて気分が……」
『知らない年上の女の匂いがする、この浮気者!!』
「そう言うなら抱き付いた状態で匂い嗅がないでくれるかな、梔ちゃん……」
「それにしてもあの逃げ回ってるだけのクロが幹部ねぇ、世の中不思議な事があるわねぇ」
「でもクロの能力を考えますと、妥当ではありますわよ」
「七海ちゃん、美咲ちゃん、嬉しいけどそろそろ目が回って来てるんだけど……」
出迎えてくれた五人と久々の会話を交わした僕は、この一年何をやって来たのかを大雑把に話し、自分の成長した能力も見せながら何時ものやり取りを楽しむ事にするのだった。
一年間気の休まる時が無かったので、彼女達とのやり取りは楽しく、暫くの間はゆっくり出来るかな、なんて考えていたのだけれど、その夜に僕に回ってきた連絡によってその期待は儚く散る事になった。
アカラス隊隊長カフカ死亡、情報によるとBS解放軍の生き残りを追っていた際にとある神父と交戦し、返り討ちに会ったそうだ。
次の出撃は右天、ミッシングリンク級の彼ならば神父達を下せるだろうと思ったのだろうけど、僕の気に掛かった事はそれでは無い。
カフカさんを撃破したメンバーの写真の中に見知った顔の人物、クルス・シルトが含まれている事に歯嚙みする。
きっと彼はこれからもシメオンに狙われる事になるだろう、解放軍の最後の生き残りと言う事もあるが結局僕らはチップを回収出来なかった、となると消去法で最後に生き残ったクルスくんが所有している事になる。
つまり、シメオンが存在する限り、彼は常に生命の危機に晒される事になるのだ。
自分の見通しが甘かった、あの時どの様な手段を使ってでも隊長から残りのチップを回収するべきだったのだ、そうすればある程度目眩しになった筈なのに……。
その夜、僕は無力さと悔しさに涙を流すのだった。
次回右天死す!!