第23話 シメオンビル落成式
翌日、落成したばかりのシメオンビルの前にはブラックスポットの住人の大多数が集っていた。
疲労の回復を梔ちゃんにして貰った為、万全の体調となった僕も右天としてアークライトさんの右側に位置し、眼下に見える人達を見下していた。
ビルの上層から見下す形になっている為、想像を絶する高さなのだが、僕は高さの事よりも足をガクガク震わせて僕の腕に抱き付いている梔ちゃんと、ソレを見たアルカに何でか知らないけれど潰すような勢いで足を踏み躙られている事が気になって仕方ない。
(梔ちゃん、本番だから離れて離れて)
(『むりむりむり、こうしょきょうふしょうなんだってば』)
(えーっと、アルカ? 梔ちゃんもこう言ってるし僕の足を踏むの止めて? そろそろ感覚が無くなり始めてるんだけど!?)
(言ったはずだぞ、私は軽い女では無いと)
高所恐怖症だからと言って可哀想なくらい足が震えている梔ちゃんはしっかりと僕の腕にしがみ付いて離れない、そしてその姿を見たアルカの踏付けも威力を増して行く悪循環、早いとこイベント終わん無いかなぁ。
…………終わった後も怖いけどね。
達観しながらイベントの進行に意識を向ける、如何やら演説は終わり、下から何人かニードレスの素養のある者を釣り上げている様だ、あっ女の子釣り上げた、やっぱりアークライトさんもロリコンなんじゃ無いかな?
そんな事を思った瞬間、弾丸の様な速さで神父が壁に飛び付き、足を突き刺してアークライトさんの真横に現れる。
指定した日はあと二日後だぞ? 五分前行動を心掛けろよ、いくら何でも早過ぎるだろう。
壁に刺さった神父はそのまま足を蹴り出し空中に浮くアークライトさんに向かって殴り掛かる、能力を使わない殴り合いの筈なのに鉛がぶつかり合った様な硬い音が辺りに鳴り響く、道理で奴の拳は痛い訳だ。
彼の姿を見てアークライトさんは何かに気が付いたのか、急に高笑いを初めてハイテンションになる。
「ハ…ハハハハ!! 何という巡り合わせだ……!! アダムプロジェクトの失敗作がまだ生き残っていたとはな!!!! 貴様の体…いただくぞ!!」
「黙れクソ野郎!! ケツの穴に奥歯突ッこんで手ェガタガタいわすぞ!!」
「くっくっく…一体どこを経由するつもりだ?」
「すっ…すごい、アークライト様の冗談初めて聞いた…」
「いや、あの人割とあんな感じにボケボケだよ?」
レジスタンスに潜入する直前に渡されたオリハルコン製のナイフ、それを取りに行った時にあの人報告書の間に少女部隊の新人達の写真を挟んでいた事があった、それでノックして入ったらすっごいびっくりして飛び上がり、空中で2回転くらいしながら着地して変な構えを取ってた事もあるし、意外とあの神父との共通点は多い気がする。
そんな事を考えていると何時の間にか戦いは空中戦に移り、様々な技が飛び交っており、その一つ一つを互いにコピーし合いながらの戦いなのだが、決定的に違うのはその火力。
同じ技同じ能力を使っていると言うのにアークライトさんの方が火力が上なのだ、アークライトさんはポテンシャルが違うと言っているのだが、あの神父は話を聞いてない。
到頭弾き飛ばされた神父、そんな彼を見てアークライトさんは提案を持ちかける。
「貴様にチャンスをやろう、後ろを見てみたまえ」
神父の背後、其処には彼らの戦いに巻き込まれまいと逃げようとした人々を踏み止まらせる為に現れた巨大テスタメント『ポチ(離瑠さんの命名)』が群衆に向かって照準を向けている。
「貴様の命を差し出せば、此処にいる人間共も助けてやろう」
「テメェ…」
あの中には神父の仲間もいる筈、自分の命か他人の命、究極の選択を突き付けられているあの神父はどんな答えを出すのだろう?
一、ハンサムの神父は突如反撃のアイディアが閃く。
二、仲間が来て助けてくれる。
三、諦める、現実は非情である。
「リトルボーイ!!!」
「殴ったーっ!?」
答えは四番の構わず殴り付ける、あのろくでなし神父一瞬の躊躇も無しに殴り付けやがった、刹那ちゃん達も呆れてるよ。
「だからどうしたァァア!! 雑魚は小細工が好きらしいな!!」
「……貴様に取引という処世術は無いらしいな」
口元の血を拭いながら僕の元へと帰って来たアークライトさんは殴り掛かって来た神父を殴り飛ばし、中に入って来いと言って僕以外の四天王を引き連れてビルの最上階へと帰って行った。
…………アルカが去り際に思いっきり踏み抜いてくれたから足の骨バッキバキだけどねー、梔ちゃんに頼んで疲労回復しながら治療しなきゃなぁ。
僕は神父の相手を任されてしまった為、これから専用のステージで彼と交戦しなくてはならない、と言っても新技も出来て火力不足も補たし、何より彼の動きや性格を見て知った、もう彼を予測する事が出来るし、負ける気はしない。
「さあ神父、ヤル気があるならば私の後に付いて来るんだな」
「はっ、誰かと思えば昨日の負け犬四天王じゃねぇか、テメェ見たいな雑魚の挑発に誰が乗るんだよ」
「ならば仕方無いな、未央」
「はーい、おにーちゃーん!!」
「はーい!!」
未央ちゃんに神父の呼びかけを頼んだ瞬間コレだ、男と女で対応が違い過ぎないか?
「…………行くぞ、専用のステージはこの先だ」
「うるせぇぞ雑魚、俺様に指示するんじゃねぇ」
…………塵一つ残らない様にしてやろうかな? 段々腹が立って来た。
次回神父戦、クロ君はハンデとして高みの見物です。
右天モードの彼は基本的に調子乗りですので上から目線だったり短絡的なのは仕様です。