27話 静止した世界
神父の必殺の一撃を目前にして視界に映る物、いやそれ以外の全ても等しく停止し、その静止した世界の中を僕だけが認識出来ているようだ。
音も、熱も、何もかも感じない全てが止まった世界、どう言う原理で世界が止まったのかは理解出来ない、しかしこの現象を引き起こしたのは自分であると僕は直感的に察していた。
今までみんなが止まって見えたのも僕が無意識に止めていたのだろう、しかし今僕の前で起きている現象は今までの停止とは異なり、
指先どころか瞬きすら出来ていない、自分を必殺する技を目の前にして金縛りにされるのは非常に精神にクるのだが、動こうにも視線を移動させるだけで精一杯だ。
「無駄だよ、今の君じゃ『僕』の世界で動く事は出来ない」
止まった状態から脱っしようと足掻いていた矢先、神父の背後から
包帯を頭に巻き、病院の患者服を着ている僕は今の僕よりも7、8歳年下に見える、いきなりの展開に遂に走馬灯による幻覚が見え始めたかと達観しかけていたのだが、過去の僕は溜息を吐きながら僕を突き飛ばした。
「あまりにも情け無い自分が『観えた』からね、態々寿命を前借りして助けに来てあげたんだ。 ああ、しゃべる必要も考える必要も無いよ、僕は全てを『観て』『識っている』からね」
そう言って過去の僕は突き飛ばした僕の額に触れる、それだけで脳の中を弄くり回される感覚を覚え、その手を払い除けたい衝動に駆られる。 そして今更ながら何故過去の人物である記憶喪失前の自分が眼前に居るのかと言う疑問が生まれ始める。
「どうやって過去の人物である僕が未来に居るのか、と君は思っているだろう? それは僕……ひいては君の
次の瞬間、僕の目には此処では無い何処かの光景が映し出され、
いや、姿だけでは無い、その時の会話や空気など、ありとあらゆる物を見る事が出来た。
『首だけになってもまだ戦い続けるとは……流石
僕はアークライトさんが何をしようとして居るのかを察し、思わず叫びながら止めようとしたのだけど、僕の身体は叫び声一つ上げる事が出来ず、目に映る
『
首だけとなったアルカはそれに抵抗する事すら出来ずに蒸発し絶命する。
親しい者の死、それを見せ付けられて涙を流す暇も無く場面は変わり、
『俺が––––アダム・アークライトだ』
信じられ無い言葉だが、僕の疑念が晴れるよりも先に
『じゃァみんな、喰らい尽くしちゃって』
洗脳されてその命令に逆らえない彼女達は離瑠さんに喰らい付き、彼女を骨ごと喰い尽くす。
その光景を観るだけしか出来ない自分の無力さ、未来を見ていると言うならば何故其処に自分が居ないのか、悔しさに打ち震えている僕が最後に観たのは、他でも無い僕自身の姿であった。
『アダム・アークライト!! 予言しよう、貴様は負けるッ!! 全能者を目前にしてアダム・ブレイドに敗北する!! そしてコレは確定した未来ッ、貴様にそれを回避する術は無いッ!!』
真っ白に色素の抜けた白髪、正気の失われた顔、左天の技を浴びたのであろう、半身が消し飛び上半身と片腕だけが残った状態で、指を指して左天へと予言を放っていた。
気が付くと現実に引き戻され、額に触れていた過去の自分が手を引いていた。
「それが君の未来、何とかしたいんだろうけど時間が無いから詳しくは話さないよ、もし自分の未来を変えたいなら、真の力を知りたいのならば『白砂村』に来ると良い、何十年も前に廃村になった場所だけど僕らの実家は其処にある、そして実家の君の部屋には僕からのビデオレターが残っている、それを見れば君の事を全て話そう。じゃあサヨウナラ」
彼がそう言った瞬間には既に僕の前から過去の自分が消えており、全てが動き出す。
側から見れば倒れると同時に回避したように見えるだろう、頭の上を掠める様に突っ込んで行った神父の余波で吹き飛ばされた僕はアルカに抱き留められた。
「クロッ!! 平気か!? 怪我はしていないか!?」
「…………僕は、大丈夫だよ」
自分の疲労や怪我の具合よりも、アルカが生きている事に安堵し、僕は新たな決意を胸に抱く。
アルカや自分の部下になってくれた少女達を救う事、その為に自分の人生を掛ける事、その為ならばシメオンを敵に回す事も厭わない。
やってやる、僕の力は世界を支配する力、運命すら覆してみせるッ!!
「もう良い、下がれ二人共」
そんな時だった、アークライトさんの声が聞こえ、戦闘が中断されたのは––––––。
時間旅行の代償は寿命の消費、具体的には往復二年で一年の時を超える事が出来ます。
過去のクロ君は大体10歳前後、現在のクロくんは16~7ですので12~14年の寿命が消費されていました。
過去のクロは完璧に能力使えますので未来視も時間旅行も何でもござれです(但し寿命がもりもり消費されます)。