第30話 白砂村
その日の内に
ブラックスポットから白砂村への移動時間は約二日、旧東京からですら丸一日掛けて移動していたのだから仕方ない、身を潜めるためにも目の届く場所で能力は使えないので大人しく両手に花な状態で旅を満喫するしか無いんだけど……。
僕の右肩をアルカが左肩は梔が、それぞれ肩を枕代わりにしたり腕へ抱き付いたりして眠っている、男としては嬉しい事なんだけどアルカの握力が異常だったり、人目があるのに梔が服の下に僕の腕を入れてたりと素直に喜べない。
電車とバスを何度も乗り継いだ僕達はやっとの思いで白砂村が存在した山に到着、此処から先は道も無く、標識も無い。
「クロ、本当にこんな場所にその白砂村とやらはあるのか? 私には唯の荒れ山にしか見えんぞ」
『それに人が通る道どころか獣道すら無い』
「………いや、此処に間違い無いよ」
一見すると人が住めそうに無い山に見える、それは僕も同意見なんだけど、妙な既視感と言うか既知感と言うのか、兎に角その様な根拠の無い確信が僕を呼んでいる。
腕の仕込みナイフをスライドさせ、雑木林を斬りながら先へと進む、初めて来た筈の場所なのに何故か道順が分かるのは僕が白砂村出身だからなのだろうか?
しかしそれだと疑問が残る、過去の僕は白砂村の事を
彼が両親を消してしまい、実家に引き取られたのならば其処には当然ひとが住んでいるはず、なのに彼は廃村になっていると言う、つまり彼は人の居ない白砂村に自分の実家が有るという事を自力で探し出したと言う事だ。
能力を使ったか? けど其処までして白砂村に行く必要は無いし、そもそも何十年も経過した実家が人の住まない状態で残っているのかも疑問だ。
(結局の所、行ってみるしか答えは出ないって事か……)
「…………クロ、考え事も構わないが目的地が見えてきた様だぞ?」
そう言われて顔を上げると荒れ果てた神社が目に飛び込んで来た、風化して解読し辛いが其処には『伊耶那美神社』と書かれている、白砂村と関係があるのかは分からないけれど、神社に触れてその歴史を直接視る。
深く深く集中して行くと、
俄かには信じ難いが霊やそう言った物が存在しており、この村ではその因縁が強く残っていて外界との連絡を遮断した、それと村の顔役である六家の一つ、宮本がこの神社の近くにある様だ。
日も暮れてきたので能力を使用しながら宮本家に向かう、此処まで来ればシメオンの目も届かないだろうから安心して技を使用する事が出来るし、早いところ寝床が欲しい。
体力的に力尽きた梔を背負って木々を飛び越え、過去視で割り出した宮本家に到着する、途中アルカの視線が痛かったが、辿り着いた場所は妙に新しく、僕らは思わずたじろいでしまった。
「クロ、この村は廃村だと言っていたな」
「そのはず、だよ」
「だが、この家はあの神社に比べて余りにも綺麗だぞ? 人の手入れが入っていない様には思えん」
『それに雑草も生えていない、人の気配も無いのに』
「…………中に入ろう、多分この家が僕の実家だ」
扉を開けて日本屋敷の中に足を踏み入れる、その瞬間不思議な閉塞感を感じて踏み止まってしまったが、それを感じているのは僕だけの様で、二人はサクサクと進んでしまっている、床板や壁には埃一つ無く、障子や畳も真新しい、梔が障子紙を破ろうとして指を痛めている、試しに裏拳で叩いてみたけれど薄い障子紙が鉛の塊を殴り付ける様な硬さをしていた、恐らくこの建物の劣化を止めているのだろう、僕の感じていた閉塞感はコレか。
アルカが襖や障子を開けようとしているが、鍵が掛かっている様にビクともしない、玄関が開いたのは其処だけ意図的に開けられる様にしていたみたいだ。
家内を三人で手分けしながら散策、開く部屋を片っ端から調べて行った結果、梔が年代物のCDとプレイヤーを発見して持って来た。
彼女の見つけた部屋は当主の持つ書斎らしき場所、机の引き出しに隠されずに置いてあったらしい、直ぐに別の場所を探っていたアルカを呼び、三人で書斎に入ってプレイヤーを再生する。
映像には書斎の椅子に座って踏ん反り返る僕の姿が映っていた。
『やあ、この映像を見ていると言う事は自分の真実を知りたくなった、という事だね?』
「いや、映像越しに聞かれても答えようが無いし……」
『前に言っただろう? 僕は未来が見えるんだ、君達の受け答えも想定して録画してある、ちゃんと答えてくれないと僕が痛い人間に思われるじゃん』
『昔のクロは何だかウザい』
「今とは性格が違うな……」
『あっはっはっは、酷い言いようだね? 僕だってまだ子供なんだぜ? まぁ良いや、それじゃあ本題に入ろうか』
「前世の話、だね?」
『その通り、そしてコレから僕が話すのは紛れも無い真実だ』
そう言って、彼は居住まいを正して語り始めた。
イザナミとイザナギと言う二柱の神の因縁から始まる白砂村、その長い歴史の中で行われた修学旅行生の虐殺、イザナミへの生贄として捧げられた32人の犠牲者、僕の真実はその時から始まったらしい。
『僕はその時の当主、宮本那都彦の第二子として生を受けていた、姉の音禰が死んだ後に産まれたから丁度宮本家が没落する際だ、大体君達の時代から170年前くらい前の話か、運が悪かったとしか言いようが無い』
「待て、170年前の話だと!? ふざけるのも大概にしろ、人間であるクロがその様な時を生きられるはずが無いだろう!!」
「アルカ、これは多分僕の前世の話だよ」
「さっきから前世がどうのと、信じられる訳が––––」
「アルカ、僕を信じて」
「…………分かった」
『続けるよ? 兎に角、没落後に産まれた僕は迫害されながらも10歳頃までは生きていた、けれどもある日村の子と喧嘩してね、鎮守の森に追い立てられて死んだ』
試しに過去視をして裏を取って見たが、嘘を言っている様子は無い、それどころか雪崩れ込む様に過去が見えて来た。
『僕は死後、奈落へと落とされ100年程拷問を受け続けた、能面の様な化け物に淡々と殺され続ける日々に限界を迎え始めた頃、その能面から一つの提案を受けた』
「そう、そうだ、僕はその能面から巨魅葬りになれ、そうすればこの奈落から解放され、何不自由無い生活を約束すると言われたんだ……」
『何か思い出したの? クロ』
『それをにべもなく受け入れた僕は忘却の椅子に座らされ、前世の記憶を忘却する事になった』
「けど、最後の最後、奈落の壁をよじ登り、自分の相棒である霊の手を掴もうとした瞬間に思ったんだ……」
『
「一矢報いた瞬間、僕はこの力に目覚めたんだ」
『そしてその力を使って自力で転生した、いや正確には
「そうだ、僕のこの力は––––」
『君のその力は–––-』
「『–––––時を操る能力』」
自分の力、真実を知った瞬間、頭の中の歯車が完全に噛み合った気がした。
神の細胞を取り込み、死にながら適応し、能力を開花させて無理矢理回帰&転生を行ったクロ(前世)、凄まじい度胸ですね(白目)
遂に次回は覚醒回です。