第31話 時間操作
僕が自分の能力を自覚すると同時に家に掛かって居た時間停止が解除され、あらゆる物が動かせる様になった事が分かる。
『自分を死ぬ前の状態に回帰させた僕はその力を使ってイザナミが討たれた頃に転生、その転生先が今の僕達だった』
そしてその際に人間の身体が能力の強さに耐えられず、脳に障害を負ってしまって居た、けどそれを手術で治療した所為で力が解放され、両親が消滅したのだ。
時間操作、神の血肉を食った話、アルカと梔は静かに聞いていたけれどその荒唐無稽な話に絶句してしまっている。
『君は時間に関する事ならば何だって出来る、未来視、過去視、回帰、時間旅行、何だってね? 時の経過を利用すれば起こせない現象も無い』
正に無敵、全知全能を気取るつもりは無いがそれに似た事が容易に出来る、更に能力を自覚した事で自分の過去と未来が大量に雪崩れ込み、今自分が何処にいるかすら認識する事が難しくなって来た、成る程子供時代の僕が人生投げる訳だ。
梔の能力によって気付けされた僕は何とか現代に戻って来る事が出来たけれど、その事すら既知の範囲内だと言うのがなんとも言えない複雑な気持ちだ。
呼吸を整えながら少しずつ未来と過去を見ない様に調整した僕は再び映像に意識を向ける。
『コレで僕が説明する事は無くなったみたいだね、覚醒したばかりだとまだ未熟な技しか使えないだろうけど、それも身体が馴染むまでの話だから安心しなよ』
「……それは、ありがとうよ」
『あと餞別、君の障子紙以下の防御力を補う物だから有難く受け取るんだね』
そう言って過去の僕が指を鳴らすと、あの神父の纏っていた服に良く似た物が僕の前に現れた。
『ソレの名前は確か叢雲だったかな? いや、叢雲は剣の方だったかな、じゃあそのコートの名前はなんだっけ? ………まぁ良いやそれ、キリストセカンドの聖骸布ね、それがあれば未熟な君も技の反動でダメージ受ける事は無いだろうさ』
多分、その言葉を聞いた僕らの思いは一緒だったろう。
…………何でそんな物持ってるんだよ!?
『なんでって、僕過去に行って大神と会ってるし……、彼が殺された後にコレ剥いで来たに決まってんでしょ?』
「人生飽きて記憶喪失になったんでしょ!? バリバリ能力楽しんでんじゃ無いか!!」
『えっ? 何だって? これ録画してる映像だからさ、君が何言っても僕には聞こえないんだよねー』
「今更!?」
『あっ、録画切れるからさよーならー』
そう言って映像は途切れた、思った以上に軽い性格の自分に割とショックを隠せなかったが、知りたい事を知る事が出来た。
後はアークライトさんに喧嘩を売りに行くだけなのだが、その前に此処数日の強行軍の回復と、僕とアルカの行方を追って来た刹那ちゃん達との交戦が残っている、コレは未来視で予知した未来なのだけど、今の僕の力だとこのタイミングでは交戦する未来を変える事が出来ない為、迎え討つしか無い。
食料は時間停止で保存している物があるし、水は井戸から汲んでくれば良い、家自体も新築同然なので身体を休めるには十分だ。
梔は勿論、アルカですら疲労の色が浮かんでいるのだ、無理をして山奥の山奥にあるこの村から出る事も無い。
その事を二人に話しながら客間へと案内した後、台所で料理を作る、足りない事こそ美徳と言った風習が残る村な為か質素な物しか作れなかったが、山菜や川魚などと言ったブラックスポットではお目に掛かれない物だし、彼女達も満足してくれた様だ。
後はお風呂と寝床なのだが、能力の確認と言う事で外に逃げる事で連れ込まれる事を回避、あのまま家に残っていると薄い本的な展開になる未来が見えたので早々に退散させて貰う、僕は順序が必要なタイプだからそう言うお誘いは結婚してからにして欲しい。
外に出ると既に満月が空に浮かんでいた、キリストセカンドの聖骸布に身を包んだ僕は先ず小手調と言わんばかりに近くにあった大木にプレデタークロスを放ち、それを半ばからへし折って見た。
足に衝撃が走れど痛みは無い、白銀のコートは着るだけで全身を護ってくれる代物なのだろう、同じ材質であろう手袋も同一の力が込められて居る様で、アトミックヘイルスパークを放っても反動が全く無かった。
そして此処からが本番、僕は消し飛ばしてしまった木々を回帰させて森を再生しようとしたけれど、どうやらまだ完璧に使いこなせて居ないらしく、一番初めにプレデタークロスでへし折った木は倒れたままだった。
恐らく時間回帰にも何秒、もしくは何分前と言った縛りがあるらしい、と言っても身体が能力に馴染むまでの問題のようだけど。
同じ様に時間停止を行ったが、此方はもっと顕著で3秒間しか止められ無かった、しかもクールタイムがあるらしく停止後は30秒程能力が発動しなかった、過去の自分は少なく見積もっても170年経過した木造建築を新築に戻し、かつ7、8年の間その建物の時を止めていたのだからそれに比べると未熟者も良い所だろう。
自分の成長速度を加速させると言う手も無くは無い、けど未来視によれば反動があり、前に見た未来の自分が白髪化していたのもコレが原因らしい、そもそも出来る事が多過ぎて何をどうすれば自分の成長速度を加速させられるのかが分からない。
なので少しでも自分の力を発揮する為に加速、停滞、停止と言った基本の技を翌日に現れる予定の刹那ちゃん達に備えて黙々と能力の把握に勤めていく事にするのだった。
時を操る能力が覚醒しました、今は大幅レベルアップによって新技を大量に習得した様な状態ですので試し射ちしてる所です、次回までには完璧に把握します。
尚アルカと梔はお風呂と寝床でそれぞれ既成事実を作る気だった模様、未来視でバレて未遂に終わりましたが(白目)