第37話 黄泉帰り
クルスくん達から別れた後、僕とアルカはシメオン本社に向かっていたのだが、思ったより神父達との接触が長引いた事と、脳内麻薬によるハイテンションが治った事によって猛烈な倦怠感を自覚し、一度近くの宿屋で休む事にしたのだけど、疲れの所為で未来視が使えなくなっていた僕は絶賛人生の分岐点に立たされていた。
「あの、アルカ? 目が覚めたら両手が後手で拘束されてるんだけど……しかも僕パン一だし」
「そうだな」
「で、なんで僕の上に馬乗りになってるのか聞いていい? 後なんで脱いでいるの?」
「分かっているんだろう? つまりそう言う事だ」
た、確かに色んな未来で僕とアルカがそう言う関係になっている所は見るけど、別の未来を辿った自分だから何処か他人事だったんだけど、…………どーしよう。
まだ月が登っていて、窓から差し込む光がアルカの横顔を照らし出している、その顔は何時に無く真剣で、とても綺麗な顔だった。
「…………ほ、本気?」
「冗談でこんな真似をする女に見えるのか? 私は。 それに、そろそろはぐらかしていないでお前の答えを聞かせて欲しいのだ、私と梔のどちらを選ぶのか」
「…………」
「お前も分かっているだろう私達の気持ちを、後はお前の気持ちだけなんだ、クロ」
「………アルカ」
「見て見ぬ振りは止めろ、私はお前を愛している、お前は私の事等周りにいる親しい女の一人としか思っていないだろうが、私にとってクロノスと言う男は代わりの居ない唯一の男なんだ。 …………ハッキリと答えを聞かせて欲しい、答えがなんであれ私はそれを受け入れる」
恐らくアルカは近い内に必ず左天かアークライトさんと衝突する事になると踏んでいる、だからその前に僕の口からこの事を聞いておこうと思ったのだろう。
アルカと梔の僕への好意、それには薄々気が付いては居たけれど、答えを出す事が怖くてその好意に見て見ぬ振りをして来たのだ。
同時に付き合うとか、そう言った事をするのは不義理な気がするし、
二人は可愛いし綺麗だ、僕なんかとは釣り合いが取れない程に、それでもアルカは僕に思いを告げてくれた、真っ直ぐに目を見て愛していると。
答えは、返さなくてはいけない。
腹を決めた僕が口を開こうとした時、窓の外から僅かに風切り音が聞こえ、僕達は反射的にその場を飛び退いた。
次の瞬間、僕達が今迄居た場所は不可視の斬撃によって解体され、見るも無残な事になってしまう。
部屋のハンガーに掛けていたキリストセカンドの聖骸布をアルカに着せ、コートの下からオリハルコン製のナイフ二本と投げナイフを取り出して床に置き、敵の襲撃に備える。
「…………ふ、ふふっ、何処の馬の骨だ? 私とクロの蜜月の始まりを邪魔するとは、余程命が要らないらしいなッ!!」
「……僕、要らないんじゃ無い?」
燃えるアルカを尻目に能力を使用しようとしたけれど、残念ながら戦闘に使えるレベルでは無く、未来視も行えない、今のままでは足手まといな為、本来なら聖骸布は僕が着るべきなのだろうが、嫌な予感がする。
冷や汗が一滴、僕の頬を伝って床へと滴り落ちる、同時に窓から一人の男が部屋の中に入って来た。
「クックック、男と女の時間を邪魔して済まないな、だが私もその男に用があってな」
「貴様は、カフカッ!!」
「………クローンか」
アルカの苦い声によって、僕はシメオンがクローン技術を持っていた事を思い出した、確かあの技術は第三次世界大戦時の物だったと記憶している、技術の進歩によってニードレスのクローンも作れる様になった、という事か。
「…………そうなると前右天も」
「Exactly!! と言ってもボクら二人とも出撃前の記憶までしか覚えていないから、何時の間にか右天から降ろされた事が気に食わないんだよね〜」
「それにだ、お礼参りする前に貴様の事を探って居たら何と残りのチップを貴様が持っているじゃ無いか」
「だからボクらが貰ってやるよ、右天の称号と共にねッ!!」
そう言って、右天はマントの下からナイフを取り出し、それを無造作に振るって見せた、彼の手を離れた瞬間ナイフが消え、不可視の凶器が僕達に襲い掛かる。
僕は彼の手元を見てナイフの軌道を予測し、足元のナイフを投げ返して全てのナイフを叩き落とす、カフカの方はアルカが対応してくれているのか、彼の斬糸が僕の元まで届く事は無い。
閉鎖的空間では爆弾も使用出来ない、盾等でもオリハルコン製のナイフの斬撃は防げない、多少強引だけれど急所以外へのダメージは無視して右天の首を落とす。
身を低くしながら接近し、跳ね上げるように腕を振るって首を刎ね飛ばす、不思議な事に右天は不敵な笑みを浮かべながら無抵抗なまま首を刎ねられた。
隣を横目で見ると、アルカもカフカの上半身を消し飛ばした、しかし彼女の顔には苦虫を噛み潰した様な顔をし、仕留めたカフカの遺体から距離を離していた。
違和感の正体、それは直ぐに分かった。
死亡した筈の二人の身体が粘土をこねる様に再生し、立ち上がる、それはあの変身女の様な印象を思わせる物出逢ったが、未来を知る僕はその正体を知っている。
「…………エデンズシード」
「いっえーっす!! 唯のニードレスに過ぎないお前達には到底敵わない神の領域さッ!!」
「仮に勝てたとしても、既に我々のクローンは完成している、貴様達が死ぬまで追い続けてやろう」
これは、長い戦いになりそうだ……。
何時から疲労を負わなくなったと錯覚していた?
的な感じで調子乗って技を使いまくっていたツケが回ってきました(白目)
再生怪人はオーバーキルしなきゃ(使命感)