第4話 便利な能力
目を覚ますと梔ちゃんを抱き締めた状態で寝ていた様だ、この娘本当にいい匂いがするからってえっ? 僕もパン一何ですけど、コレって他人から見たら僕が連れ込んだ見たいに思われるんじゃあ……。
ど、ど、ど、如何する? 堂々としてれば問題無いかな? いや、梔ちゃんの事だから確実に僕の事をからかう為に絶対にそっち方向に話を膨らませる筈だ、逃げるしか無い。
そう決めた僕が逃げる為に服を着替えていたら、ベッドの中から梔ちゃんが起きる音が聞こえたのでそちらを振り向くと、寝ぼけ目を擦りながら梔ちゃんが起き上がる所だった。
『おはよう、昨日はお楽しみでしたね』
「いや、僕は手を出してないから!!」
『知ってる、クロはヘタレだから』
「ぐっ、言い返せない」
ドヤ顔で仁王立ちをする梔ちゃん、隠すところ隠さずに立っている為色々大事な所が丸見えなので彼女の顔を直視する事が出来ない。
「ほ、ほら、もう朝だし、部屋に戻ったらどう?」
『それもそうだな』
やけに物分りの言い返事だなぁ、そう思っていた時期が僕にも有りました。
返事と共に梔ちゃんはドアノブに手をかける、全裸のままで。
「待って、ストップ、何で服着ないの!?」
『この部屋まで全裸で来たから着替えが無い』
「えぇぇ……」
女子校だからか良く廊下を下着姿や全裸に近い姿で歩く生徒達を見る事はあるけど、流石に男性の部屋に来る時も全裸なのは如何な物かと思うよ?
「と、取り敢えず僕のシャツあげるからそれを着て、ね?」
『ほう? 裸ワイシャツとは中々分かっているな』
「女の子だよね君? 本当は中身おっさんとかじゃ無いの?」
『悲鳴でも上げれば良いの?』
「止めて下さい(社会的に)死んでしまいます」
速攻で土下座した、やりたい放題の自由人に抵抗するのは得策じゃ無い。
その後クローゼットの中からシャツを取り出し、梔ちゃんに着せようとしたのだけど、そのタイミングでドアが開いてしまった。
「クロー、朝よ? 今日は用事があるから早めに着替えて––––––って、何やってんのよ?」
「あ、いや、刹那ちゃん? コレには理由が……」
『バレちゃったね、ダーリン♪』
「誤解を産む様な事言わないでくれるかな!?」
「……梔はクロの事随分と気に入った見たいね」
『からかうと面白い』
女の子に虐められて喜ぶ趣味は僕には無い筈だけど、何だかそう言った趣味に目覚めそうだ。
何というか、危なげな思考になり始めたので梔ちゃんにシャツを着せながら朝早くから僕の部屋に来た刹那ちゃんに用事とはなんだったのかを聞く。
何でも今日は外出可能な日、今までは学校の敷地内だからと加減をしていたリンチも外なら本気でやれるとの事なので、僕を呼びに来たと言う、やっぱりみんな僕を殺しに来てる。
「えっと、そのリンチってもしかして、何時もみたいな五対一?」
「もちろん」
(リンチに対して何も言わないって事はみんな認めてるんだ……)
と言うか刹那ちゃん達は七海ちゃん達と仲悪くなかったっけ? 仲良く僕を虐めるのは止めて欲しい、割と切実に。
暗い気持ちで着替えると、部屋の前には既にみんなが集まっていた、殺る気満々みたいだね……。
僕の準備が出来上がった所で外出、遮蔽物の無い荒野にてリンチが始まった。
戦闘時間は二時間ほど、僕の勝利条件は相手側の全滅、若しくは二時間逃げ切る事、敗北条件は僕の戦闘不能と言うルールだ。
開始直後から刹那ちゃんが僕に向かって突撃、その速さを減速させながら倍速で回避し、服の裏に付けてある模擬戦用のおもちゃのナイフを八本掴んで投げ付ける。
投げた内の半分を0.5倍速、残りの半分をそれぞれ倍速と等速で投げつける。
速さの違うナイフをばら撒く事でタイミングを外し、避け辛くすると同時に攻めにくくする、刹那ちゃんは一度後ろに退きナイフ群の全体を見ている。
どうやってナイフを迎撃するか、その手順を考えているのだろうけど、僕は減速させた状態から倍速に変える事も出来る、彼女が飛び込む際にナイフの動きを変える事で撃破する事が出来るはず。
そう思った瞬間、空から美咲ちゃんが作って未央ちゃんが投げたであろう大岩が降って来た、然もナイフは七海ちゃんの技で全部吹っ飛ばされた、うそん。
慌てて岩の動きを低速化してその真下から逃れる、早いとこ刹那ちゃんか梔ちゃんを倒さないとダメだ。
逃げ回っていた僕だったが、美咲ちゃんの岩の槍や七海ちゃんの水柱による全体攻撃、その隙間を高速で駆けながら
殴り掛かって来る刹那ちゃんに苦戦しながらも梔ちゃんに狙いを定める。
彼女は香りのフラグメントを使い、人の肉体を操る事が可能なので僕の動きを止められるといくら倍速で動けた所で意味が無くなってしまうのだ。
とは言え既に三人から猛攻撃を受けており、時々未央ちゃんの大岩が飛んで来る状態だ、
それに体力的にも限界が現れ始めた、連続した能力の使用と徐々にエンジンの掛かって行く攻撃に被弾数も増え始めている、まだ一時間も経っていないのにだ。
その思考の一瞬を突かれ、僕の身体が梔ちゃんの技によって止められる、しまったと思った時には既に遅く、僕の眼前には刹那ちゃんが迫っていた。
更に左右からは岩と水の槍、上空からは未央ちゃんのヒップアタック、逃げ場がない。
殺られる、そう思った時だった。
–––––
感覚にして1秒程度だろうか? たった一瞬だけ全ての物の動きが止まった様に思え、唖然としている内に全員に吹っ飛ばされて見事KO負け。
その後僕は負けた代償にみんなの
因みに勝った時の僕に対するご褒美は全員とのデート券だった、勝っても負けても荷物持ちだった訳か。
喫茶店で繰り広げられるガールズトークを聞き流しながら先程の現象についてを考える。
動きが止まった様に見えた、けれどもそれはたった一瞬の出来事、減速と加速を駆使すれば似た様な現象を起こせるからそれなのだろうか?
自分と相手の動きに差が有り止まって見えると言う物かな? あの一瞬で少しだけ能力が成長してそれが出来る様になったのかな?
浮かんでは消える疑問に頭を悩ませて居ると、僕の様子に気が付いたのか七海ちゃんが声を掛けてくれた。
「さっきから黙ってるけど、何か考え事?」
「……えっ? う、うん、戦ってる時またみんなが止まって見えたんだよ」
「ふーん、でも私達は止められた感覚は無かったし、クロが倍速以上の加速が使える様になったからとかじゃ無い?」
七海ちゃんの意見も僕と同じ様な物、試しにテーブルの上の水を零して見たが、四倍速、0.25倍速まで可能となっていた。
相対して十六倍差、止まって見えるのも当然なのかな?
自分の能力について考えていた僕だったけど、荷物持ちの他に服選びや小物選びもやらされる事になり、学園に帰る頃には周りが止まった現象の事をすっかり忘れていたのだった。
時間停止は意識して使えません、時々クロ君の危機に対して勝手に発動します。
女の子達の荷物持ちに振り回されるクロ君、切実に代わって欲しいなぁ(白目)
現在クロノス君が使える能力
加速:四倍速
減速:0.25倍速
時間停止:1秒(任意発動不可&無自覚)