第8話 人気者?
覗き魔撃退から数日、気が付けば学園内に僕のファンクラブなる物が出来たらしい。
手を抜いていたとは言え四天王の一人を撃破、立て続けに小さな噂になっていた覗き魔を取っ捕まえた、しかも傷だらけになりながらも梔ちゃんを無事に守り通した為、余計に人気が出たのだと言う。
立て続けの戦闘による疲労で結局保健室のベッドに逆戻りした僕はそんな話を保健委員のひなたちゃんと見舞い兼インタビューに来た凛ちゃんから聞いていた。
「はい、クロさん♪ あーん♪」
「……過労みたいな物だから自分で食べられるよ、ひなたちゃん」
「だーめーでーすー!! クロさんは今回の事件の功労者何ですよ? 今日はゆっくりしてて下さい!!」
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて……」
「はーい、じゃあじゃあ質問させて頂きますね♪」
「お手柔らかに頼むよ、凛ちゃん……」
この娘達は天然なのか計算してやってるのか分からないのだけど、やたらと距離が近く、気が付けば手を握られてたり馬乗りになられてたりと、美少女達に身体をペタペタ触られるのは男には色々毒だ。
その後暫く彼女達は質問と看病責めによって僕の精神力を削ってから帰って行った。
ほっと一息吐いた僕はそのままベッドに身を預けながら新たに進化した自分の力についてを考える。
加速と減速、その二つしか使えなかった今までとは違い、物体の劣化、肉体の回復、感覚の加速と言った物へと能力の応用が効く様になった。
自分の力が単純な物では無いと言う事は察していたけれど本当に謎の多い力だ、ミッシングリンク級の能力と言う物はこんなにも能力の応用が効くのだろうか?
悩みながらも目を瞑り、体の疲れを抜く為に眠りに着こうとしたのだけど、唐突に甘い香りが鼻をくすぐり疲労が抜けて行く。
(梔ちゃん? にしても姿が見えないんだけど……またベッドの中かな?)
そう思ってシーツを捲るも、裸で寝ている彼女は居ない、て言うか何時の間にか僕の中で梔ちゃん=裸と言う方程式が出来上がって居るんだけど……。
『残念!! 私は下だ!!』
「何でナース服?」
『安心しろ、下着は付けていない』
「付けて!? 何で履かない事が普通になってるのさ!?」
何でこの娘はほいほい裸を晒すのだろう? 真性の痴女なのだろうか? スカートを少しづつ上げるのも止めて、そろそろ理性が……。
遠い目をしながら彼女に呆れていると、目の前に梔ちゃんの顔があり、両頬を手で抑えられていた。
「へっ?」
「この間のお礼」
「く、梔ちゃんがしゃべっ––––」
僕が驚いた瞬間、彼女は僕の額に口付けをした。
あまりの事に思考がフリーズし固まってしまう、流石の梔ちゃんも恥ずかしかったのか、顔を赤くしている。
『流石に恋人じゃ無いからな、でこちゅーで我慢しろ』
梔ちゃんはスケッチブックにそう書き殴ると足早に保健室を去って行った、後に残された僕は夜まで呆然とするしかなかった。
「男に興味持つなんて梔にしては珍しいわね」
「にゃー、凄いねークロくん」
「まあ付き合い長いし? もしかしたら私達もそうなるかもね」
「確かに、クロは戦ってる時は凛々しいですからね、普段とのギャップがグッと来る時がありますもの」
聞き慣れた二人の声、見れば先程梔ちゃんが出て行った扉の所に何時ものみんなが立っていた、もしかして今の見られてた? あっ、頷かれた。
「そ、それで? みんなもお見舞いに来てくれたの? く、梔ちゃんのおかげでもう回復しちゃったけど……」
「それもあるけどね」
「?」
「クロくん、離瑠様に呼ばれてるんだよー」
「四天王を二人も退けたのですから、ある意味当然ですわ」
「まっ、その内の一人は覗きに加担してたけれどね」
(仲間割れしてたけど、片方四天王だったんだ)
取り敢えず起き上がり、離瑠さんの所に向かう為に服を着替えようとしたのだけど、一向に彼女達が去る気配がない、男の着替えを見て何か楽しいのだろうか?
羞恥心を抑えながらも素早く着替え、途中で別れた梔ちゃんを拾って所長室に向かう、覗き魔の折檻が行われたこの部屋はドアが消し飛び窓が割れ、壁に穴が開いている、どんな折檻が行われたのだろうか? 部屋の隅に使用済みであろう三角木馬やアイアンメイデンが転がっているし、離瑠さんは絶対ドSだね。
「良く来ましたねクロノス、先日の覗き魔の件は御苦労でした」
「僕に何か御用ですか?」
「ええ、全力を出していなかったにしろ四天王の内二人を退けた貴方のその能力に興味を持たれたアークライト様が明日直接見に来ます、体調を万全にしておきなさい」
アークライト、その名前を聞いた刹那達が息を飲む、確かその名前はシメオンのトップの名だった筈、そんな彼が態々僕の能力を見る為にこの学園に来ると言うのだ、驚かない方が不思議である。
「えっと、離瑠さん? 普通こういう事は僕の方から出向いた方が良いんじゃ無いでしょうか?」
「貴方の能力はまだはっきりと解明された訳ではありません、加えてアークライト様は多忙です、今回の件もスケジュールの合間に非公式で訪れるのでその心配は不要と言う事ですよ」
「な、成る程」
色々疑問や戸惑いが残るものの素直に退室、僕らはそのまま自室に帰る事になった。
アダム・アークライト、どんな人物なのだろうか?
超人的なニードレス達のトップに座る男、彼もまたニードレスだろう、でなければ離瑠さんや包帯さん達が従う事は無い。
こればっかりは会って見るしか無いな、そう思いながら自室の扉を開けると、ピンク色の照明と並んで敷かれた布団が目に飛び込んできた、側にはティッシュ箱も置かれていて梔ちゃんが布団の中でスタンバッてる、何時の間に?
『優しくしてね?』
「平常運転だね、梔ちゃん……」
多分彼女が僕の部屋に居るのは体調管理の為だろう、確実に明日全力を出せる様に能力を使ってくれている、気遣いか命令かは分からないけど有難い。
梔ちゃんとは別の布団に潜った僕はそのまま目を瞑り、ゆっくりと意識を沈めて行った。
次回アークライト様来襲。