晴れ渡る青空の下、麻帆良が全国各地から訪れた大勢の人々笑顔と賑わう声であふれる中、タカミチ・T・高畑は世界樹の周辺で行われる告白を阻止するための見回りをしていたが、少し休憩するために広場のベンチに腰掛けて煙草に火をつけ、その煙を肺いっぱいに吸い込むとそれをため息とともに外に吐き出しながら、祭りで楽しむ人たちの様子を眺めていると、視界の端から自分と同じく麻帆良学園の教師であり、魔法使いでもある瀬流彦を確認する。。
「高畑先生、休憩中ですか?」
「そうですね、ちょっと休憩していますがすぐに再開しますよ。 瀬流彦先生も休憩ですか?」
「いえ、僕は高畑先生の姿が見えたので少しお話でもしようかと思ったんですけどね」
「かまいませんよ、僕も誰かと話がしたいと思っていましたから」
「ありがとうございます、高畑先生」
「いえ、気にしないでください」
瀬流彦はそう言うと、タカミチの座っているベンチに少し間をあけて腰を下ろし、タカミチはすでになくなりかけていたタバコの火を消すと、持っていた携帯灰皿に吸殻を入れる。
「毎年思いますけど、誰かの告白の邪魔をするのはやっぱり心が痛みますね」
「そうですね、世界樹の魔力のせいで強制的に告白が成功するとはいえ、告白する本人はそんなことは知らずに勇気を振り絞って告白している人がほとんどでしょうからね」
世界樹は麻帆良祭の日に溜め込んだ膨大な量の魔力を外へと放出するため、世界樹の近くで愛の告白をすればたとえ魔法を扱う素質のない者の告白だったとしても、世界樹の放出する膨大な魔力により相手への暗示のような魔法となってしまい、相手の意志とは関係なしに告白が成功してしまう。
そのため、タカミチを含む魔法関係者は世界樹周辺の見回りを行い、告白しようとするカップルがいれば申し訳ないとは思うものの麻帆良祭の終わりまで気絶してしてもらっているのだが、今年は少々事情が違った。
「ディセプティコンの奴らはどうして麻帆良祭の日に攻めて来るんですかね……」
「僕も同じことを朝からずっと考えてはいますけど、理解は出来ても納得はできませんでしたよ」
ディセプティコンが麻帆良祭の日に襲撃するという予測は超による説明では、麻帆良祭という全国から何万人という人間が集まるこの日に襲撃すれば大勢の人間を殺すことが出来るという理由えあり、タカミチや瀬流彦もその考えが襲撃する側から見れば間違ってはいないとは理解できるが、それでももっと他の日ではいけないのかと考えてしまう。
「それに未来で人類のために戦ってくれたっていうオートボットっていうロボットたちも本当に来るか分かりませんし、来たとしても僕たちにそれがオートボットかディセプティコンか判断できない可能性もありますし……」
瀬流彦や他の魔法関係者たちもタカミチや学園長を通してオートボットの特徴などを聞いてはるが、その一番の違いが目の色くらいであるため、それがほんとうにオートボットであるかどうか判断できるか不安がる声や本当にオートボットが味方なのか疑問に思う声や、中には超は実はディセプティコンの手先だと言い出す者さえいる状態であった。
「信じるしかないでしょうね……」
「信じる……ですか?」
「そうです、超くんが未来から来たということもディセプティコンが麻帆良を襲撃するということも、そして来るかどうかも分からないオートボットたちのことも、全部信じてみましょう」
タカミチのその言葉に瀬流彦は驚いたような表情でタカミチを見るが、タカミチは懐から新しい煙草を取り出して火をつけ口に咥える。
「超くんが未来から来たことやディセプティコンたちによる襲撃、それに人類の味方であるというオートボットの存在も、どれも嘘だと言い切ることは簡単です」
そこまで言うとタカミチは少し休憩するように煙草の煙を吸い込み、煙を吐き出してから再び話し出す。
「ですが、嘘だと言い切って何もしないでいるのは楽でしょうけど、超くんの情報がすべて正しかった時、僕らが何もしなかったツケが僕たちに返ってくるどころかディセプティコンはおろか魔法すら知らない普通の人たちにすら容赦なく降りかかるんですよ」
「で、ですけど……もし超くんの情報が嘘だったら」
「いいじゃないですか、嘘でも」
「えっ!?」
タカミチの言葉に麻帆良の町がディセプティコンの手で破壊されるのを想像したのか、瀬流彦は血の気が失せて青くなるが、情報が嘘であった場合のことを問いただすが、嘘でもいいと言うタカミチに驚いて言葉を失う。
「襲撃がなければそれが一番いいですし、もしもオートボットたちが来なかったとしても麻帆良を守るという使命は変わりませんよ」
「……あ」
タカミチの麻帆良を守るという言葉に瀬流彦は自分のすべきことに気付き、納得したように声を上げる。
「そうですね……麻帆良を守るっていうことは絶対に変わりませんね。 よしっ!!」
瀬流彦は自分に言い聞かせるようにそう言うと、勢いよく立ち上がる。
「相談に乗ってくださってありがとうございました高畑先生。 おかげで何をするべきかはっきりとわかりました」
「いえ、僕も少し迷ってはいたんで、ちょうどよかったですから気にしないでください」
「そうだったんですか、そう言ってもらえるとありがたいです。 それじゃあ、僕はもう見回りに戻ります」
「そうですね、麻帆良を守ることも大切ですけど、見回りを疎かにしたら意味がありませんからね」
瀬流彦とタカミチもお互いに穏やかに笑いながらお互いに違う方向へ歩いて行くと、麻帆良祭で楽しむ人ちの中へと消えていった。
†
麻帆良大学工学部の葉加瀬の研究室には麻帆良祭が始まる前から超と葉加瀬はおろか、ディセプティコンの襲撃に備えるために麻帆良のコンピューターなどに詳しい弐集院などの魔法使いたちも朝からずっと研究室で作業をしている。
作業の内容としては、麻帆良のセキュリティの強化や対ディセプティコンの武器、超と葉加瀬がこの2年間ずっと作り続けてきた田中さんや多脚戦車などの点検を中心に行っており、対ディセプティコンの武器などを作るべきとの意見もあったが、新しく作るよりはディセプティコンとの戦闘に備えて万全の状態にしておくべきという超の意見に全員が武器や田中さんなどに異常がないかどうか交代しながらではあるが、昨日の晩からずっと作業を続けていた。
「ふぅ、点検だけとはいえ、これだけあるとやっぱり大変ですね」
ずっと点検の作業を続けていた葉加瀬だったが、作業中は全くといっていいほど疲れを感じなかったが、その作業を中断したせいか今までの疲れがどっと全身を襲う。 疲れを感じる体を動かして、全身を大きく伸ばすと同じ姿勢で作業ばかりしていたためか体の関節から音が鳴り全身の血が体中を駆け巡るのがはっきりと感じられ、疲れがいくらか楽になったように葉加瀬は感じる。 体をほぐし終えた葉加瀬が超の方を向くと、超は未だに黙々と作業を続けている。
「超さんも少しは休憩したらどうですか? 昨日の夜からずっと作業をしてるじゃないですか」
「気持ちは嬉しいけど、せっかく作ったのにいざディセプティコンとの戦闘で不具合が出たり故障したりしたら何の意味もないからね。 私はいいから葉加瀬は休憩して来ていいよ」
葉加瀬は昨日の夜からずっと作業を続けている超に休憩してくるように言うが、超は作業の手を緩めることなくそれを断る。
「たしかに戦闘中に故障なんて絶対にあったらいけないですけど、このままじゃディセプティコンが攻めて来る前に倒れちゃいますよ。 そんなことになったら何の意味も無いじゃないですか」
「た、たしかにそうだけど……」
超は葉加瀬の言葉に思う所があったのか、動揺して作業の手が少し遅くなるが、それでも止まらない超に葉加瀬はため息を吐く。
「休んでいる間のことは私に任せて下さい。 武器も田中さんのこともずっと作り続けていたんですから心配はいりませんから、安心して休んでて下さい」
「いや……うん、わかったよ。 私は少し休んで来るから、その間のことは葉加瀬に任せるよ」
あとのことは任せるように言う葉加瀬に超は反論しようとしたが、葉加瀬の言っていることが正しかったことと、葉加瀬の目が真剣なものであったため説得は不可能であると判断して休憩を取ることにした。
「はい、わかりました。 あとのことは私に任せて、超さんはしっかり休憩してきて下さいね」
休憩するとの超の言葉に葉加瀬は嬉しそうに笑いながら超を見送る。 超は笑顔で自分を見送る葉加瀬や作業を続ける他の人たちのいる麻帆良大学の工学部の研究室をあとにして、自分の部屋のある研究室へと向かう。
大学の工学部と自分たちの研究室があまり離れていないこともあってすぐに研究室に着いた超は、研究室の自分の部屋に入ると、自分が思っていた以上に疲れが溜まっていたからか、超は部屋のベッドへと勢いよく倒れ込む。
「葉加瀬の言うとおりだ。 このままじゃディセプティコンの奴らが来る前に倒れるところだった」
倒れたベッドの上で超は自分に休憩するように進めた葉加瀬に感謝すると、いままで溜まっていた疲れがどっと押し寄せて来るせいで眠くなり瞼が閉じていく。
「みんな、もう少しだ。 ディセプティコンを倒してかならず……未来を……変え……るから」
超はこの時代にはいない未来の仲間たちと、必ず来ると信じているオートボットたちに向けてそう誓うと、ついにその目が閉じて眠りについた。
†
広大な宇宙に存在する数えきれないほどある惑星のうち、他の惑星と同じく全く生命体のいないとある星にあきらかに自然に出来たとは思えない物体がある。 それは地球で言うロケットであり、そのロケットの中には金属で出来た五体の青い目をしたロボットが集まっていた。
そのロボットたちは超と共に未来でディセプティコンと戦っていたオートボットであり、斥候のバンブルビーに軍医のラチェット、武器担当のアイアンハイドにオートボットの副官のジャズ。 そして、オートボットの司令官であるオプティマス・プライムが揃っていた。
『ラチェット、オートボットの信号をキャッチしたというのは本当なのか?』
『ああ、とても微弱な信号だったが間違いなく我々オートボットの救難信号だ』
『そうか、まだ無事な仲間がいてくれたか』
オプティマスがラチェットに信号が本当にオートボットのものか確認してそれが本物だと分かる仲間が無事なことをジャズが仲間の無事に安堵する。
『仲間が無事でオイラ本当に嬉しいよ!! みんな早く迎えに行こうよ!!』
『そうなんだが、問題が一つある』
『……問題?』
『それは一体どんな問題なんだラチェット』
問題があるとのラチェットの言葉に喜びの声を上げていたバンブルビーは首を傾げ、ジャズはそれをラチェットに訊ねる。
『信号が発信されている同じ星にディセプティコンの反応も確認できた』
『ディセプティコンだと!? 』
ディセプティコンの反応があるというラチェットの言葉にアイアンハイドが声を荒げる。
『おいラチェット! その信号は本当にオートボットのものなのか!? もしディセプティコンの罠だったらこっちが危険に晒されるぞ!!』
『落ち着けアイアンハイド! たしかに罠の可能性は高いが、信号を無視すれば助けを求める仲間を見捨てることになるんだぞ!!』
『だが罠だったら全員死ぬかもしれないんだぞ!!』
『待ってよ二人とも! 喧嘩なんてしたりしないで!!』
声を荒げながらラチェットに詰め寄るアイアンハイドに仲間のことを思うジャズが反論するが、それでも治まりそうにないアイアンハイドを見たバンブルビーが声を上げる。
『待って! それならオイラが偵察に行くよ! 信号が本物ならオイラが仲間を助ければいいし、もし信号がディセプティコンの罠ならその時はオイラを残していけばいいよ!!』
『なにを言うんだバンブルビー!! それじゃあ、お前が危険すぎる!!』
『でも、それじゃあ他にどうすればいいのさ!?』
オートボットの中で一番若い故に未熟なバンブルビーは自分が偵察に出ることを志願するが、あまりの危険性の高い偵察という任務にジャズが反論するが、バンブルビーも声を荒げてジャズに反論する。
『おい、どうするんだオプティマス! お前も黙ってないでなんとか言え!!』
お互いに声を荒げながら言いあうジャズとバンブルビーにうんざりしたのか、アイアンハイドはラチェットの報告を聞いてからずっと黙ったままのオプティマスになんとかするように言うと、オプティマスはその青い両方の目をラチェットに向ける。
『ラチェット、信号が発信されている星にディセプティコンがいることは間違いないのか?』
『ああ、それは間違いない。 むしろ信号の方が微弱すぎて怪しいくらいだ』
『そうか、それともう一つ確認なんだが、その星に生命体は存在するのか?』
『生命体? 生命体は信号のあった星に存在するが、それがどうしたんだ?』
『生命体のことはどうでもいいだろ!! それよりこれからどうするんだオプティマス!!』
生命体の存在について聞いてくるオプティマスに対して不思議そうにラチェットは答えるが、どうするか言おうとしないオプティマスに我慢出来なくなったアイアンハイドが苛立ちながらオプティマスに聞くと、オプティマスは決意したのか仲間たちに顔を向ける。
『信号のあった星にディセプティコンがいるのは私たちの仲間を追って星に辿り着いたのか、それとも信号が私たちを嵌めるための罠なのかはわからないが、一つだけ分かることがある。 それはディセプティコンがその星の生命体を決してそっとしてはおかないだろうということだ』
オプティマスのその言葉に全員が納得し、そしてオプティマスがどうしたいのかもすぐに理解した。 それはディセプティコンと戦い続けてきたからでもあるが、それ以上にオプティマスならばそうするであろうという信頼でもあった。
『自由はすべての生き物の持つ権利だ。 それにその星の生き物たちを我々の過ちの犠牲にする訳にはいかない』
『命を落とすかもしれんぞ』
『覚悟は出来ている。 たとえ命を落とすことになったとしてもディセプティコンの好きにはさせん』
命を落とすというラチェットの言葉を聞いてもオプティマスは躊躇すること無くディセプティコンとの戦うことを告げる。 少し考えれば愚かと言えるオプティマスの判断に仲間たちは躊躇することなく決意する。
『分かったよオプティマス。 お前が行くなら俺たちも行くぜ』
『ああ、罠だろうと関係ない。 ディセプティコンの奴らは全員八つ裂きにしてやる!!』
『オイラだってディセプティコンなんかに負けやしないよ!!』
オプティマスの決意にジャズが共にディセプティコンと戦う意思をオプティマスに伝えると、アイアンハイドが展開して鼻息を荒くしながらキャノン砲を展開し、バンブルビーは明るい声で戦うことを伝える。
『もちろん私も一緒に行くぞ。 戦いになったら間違いなく怪我人が出るだろうから私が必要になるだろうからな』
『そういうことだオプティマス! 俺たち全員一緒に行くぞ!!』
オプティマスを除いてたった4体しかいないオートボットのメンバーはその全員が命の危険を覚悟でオプティマスと共にディセプティコンとの戦いに臨む意思を宿した青い目でオプティマスを見つめる。
『ありがとうみんな。 君たちと戦えたことを誇りに思う』
自分に向けられる強い意志を宿した8つの瞳から目を逸らすことなく、自身もまた彼らと同じかそれ以上の意志を込めて彼らを見つめ返す。
『さぁ、行くぞ! オートボット出動!!』