時には渋味も忘れずに
そんなギャグが私は大好きです
第1話 つまりそういうこと
カイト・アルバトスと言う少年がいる。
産まれたのは寒い冬の日で、ある小国の貧村にある農家の家だった。
そこでカイトは、四年の歳月を過ごした。
ある年、かねてより火種の燻っていた隣国からの侵攻が始まった。
カイトのいた村は、侵攻軍の進路上にあった。
だから
カイトが自分の産まれた村で過ごしたのは
四年間だった。
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黒鉄で造られた無骨な剣が振り抜かれ、首が飛ぶ。
力を失った身体が崩れ落ちた。
「シャリオー!!」
今しがた、死体となった男の名前を呼ぶ女の声。
ほとんど反射的に、剣の腹を盾のように掲げる。
衝撃はその直後にあった。
「殺してやる!!」
まるでハンマーのような形状のメイスが、剣の腹を何度も強かに叩く。
「こいつ、よくも、よくも皆を!!」
女の声には嗚咽が混じり、次第に力も弱まっていく。
「返して、皆を、返してよぉ……」
ついには攻撃を止め、その場に座り込んでしまう。
「ごめんよ」
その声に思わず顔を挙げた女の目に、高速で迫る黒い刃が映った。
………
……
…
自分以外に動くものがいなくなり、ようやくカイトは剣を納めた。
「疲れた」
一言、呟きと共にため息が落ちる。
思えば、丸半日は追いかけっこと戦闘を続けていた。
それも、自分より明らかな格上を相手に。
「……ごめんよ」
顔を半分に断ち切られた女の死体に、もう一度声を掛け、
カイトはその場を後にした。
………
……
…
狭い路地を歩いて街中に出ると、辺りには味方側の兵士が集まっていた。
「終わったのか?」
その中で、一番位の高い格好をした男が話しかけてくる。
「はい、ここにいた残党は全て仕止めました」
カイトの返答に、周囲の兵士達から驚きと感嘆の声が挙がる。
──……マジかよ。
──……すげえ、恩恵持ちを殺っちまった!
ざわめく周囲をそのままに、カイトは言葉を続ける。
「いくらか散りましたが、そちらには自分の小隊が向かっております。殲滅は時間の問題です」
上官の男はそれを聞くと、満足気に頷いた。
「よくやった。かつてない戦果と言えるだろう。今のうちに、褒美でも考えておけ」
そして周囲へと首を巡らせる。
「先遣隊は?」
「戻っております! 抵抗は微弱、戦意も低く、落城は目前とのこと!」
「隊列は?」
「中央広場に展開済みです。皆、部隊長の指示を待っております」
やり取りを終えた男は、周囲にいる自身の部下達に向かって声を張り上げる。
「この長かった戦争もようやく終わる。我々の勝利で終わる。この期に及んで、もはや諸君らの資質を疑いはしない…………勝つぞ!!」
鬨の声が挙がる。
カイトはそれを見て、軽い高揚を感じていた。
思えば人生の半分以上を過ごしてきた戦争が、もうじき終わろうとしている。
「アルバトス、お前は他の小隊員と合流し、後衛に加われ。ここまで来たのだ。無理はするな」
上官の指示に従い、その場を離れるカイト。
「戦奴第七小隊隊長、カイト・アルバトス!」
背中から呼び掛けられた声に振り返ると、そこには上官を中心に整然と列を揃えた兵達がこちらを見ていた。
皆、口元には笑みが浮かんでいる。
「その戦果と、これまでの働きに!」
「総員、敬礼!!」
ザッ、と音を揃えた敬礼は、勇壮な光景だった。
カイトは戸惑いつつも返礼を返し、また歩き出す。
「まったく、奴隷相手に優しい人達だよ、本当に」
飽きれながらも嬉しかった。
そして少しだけ寂しい。
10年過ごした戦争が終わる。
それはまるで、自分の居場所が無くなってしまうような、そんな寂しさだった。
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マルネシア王国の歴史書には、開戦のきっかけとなった利権から、
後に『林檎戦争』と記されるこの戦乱で、戦争奴隷だけで編成されたある小隊の活躍が残されている。
捨て駒として使われるはずだった少年、少女達の軌跡は、まるで英雄譚のようであったという。
敵国に突如降臨した『神』とそのファミリアを打ち倒し、母国に勝利をもたらした英雄と。
歴史にその存在を刻み込んだ。
文字通りの英雄達は、終戦後、恩赦で奴隷身分から解放された後、その姿を消した。
導入終わり。
多分もう、この国は出てこない。
シリアスとかマジ勘弁。世界は優しさでできてるはず。
きっと。