ただ話すだけの小説   作:ふがふがふがしす

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一話目


かごめかごめ

 

 

「かーごめかごめ、かーごのなーかのとーりーはー」

 

「…急にどうしたの?」

 

「ん?いや、なんかふと頭を過ったから歌ってみただけ。深い意味はない。」

 

「ふーん。…かごめかごめって色んな解釈があるよね。有名な所だと、徳川埋蔵金とか。」

 

「あー、歌詞が暗号になってて~ってやつ?日光東照宮だっけ?場所。」

 

「他の説もあるらしいけどね。それなんかは、かごのなかのとりを、籠の中の鳥居…つまりは神社を指しているみたいな話だったはず。そして、一番最初のかごめかごめは籠の目を指していて、それが六角形だから宝石の暗喩なんだって話だったかな?他のは具体的な場所の暗号だったと思うけど…、忘れた。」

 

「忘れたんかい!」

 

「そりゃなんかで聞いた話だからね、忘れもするよ。」

 

「なんか納得いかんが…まあいいや。それで?幾つか解釈があるって言ってたけど他のは?」

 

「んー?他の解釈だと…、結構黒くてどろどろしたのがあったね。」

 

「黒くてどろどろ?なんぞ?」

 

「かごめかごめは籠女籠女って書くパターンだね。籠女っていうのは、籠を抱えたように見える女性のこと。」

 

「籠を抱えたように見える女性?あー、もしかして妊婦さんとか?」

 

「そうそう、よく分かったね。それでその後に続くかごのなかのとりは、籠の中の鳥。…妊婦さんが抱えてる籠の中は何かすぐわかるよね?」

 

「そりゃ赤ちゃんだろ。胎児って言った方がいいか?」

 

「どっちでもいいんじゃない?まあ、ここまでなら普通にお目出度い話なんだけどね。」

 

「だよな。んで?どこが黒くてどろどろしてんだ?」

 

「そんなに慌てない慌てない。何時何時出やる。これは簡単だね、籠女…つまりお母さんが、自分のお腹の中に居る子供に、貴方は何時出てくるの?早く会いたいな。みたいな感じかもしれない。」

 

「普通にほのぼのしてくる光景だな。」

 

「そうだね。次は夜明けの晩に。胎児のとっての夜明けって言うのは何時だと思う?」

 

「胎児にとっての夜明け…?夜明け…夜明け…んー?分かんね。」

 

「ふふふ、まあ分かりづらいよね。夜明け…つまりは日の出る事だよね?日が出るとどうなる?」

 

「ん?そりゃ明るく……ってそうか!胎児にとっての夜明けってのは、胎児が初めて光を見る日!つまりは出産の時だ!」

 

「そうそう。それで夜明けの晩、つまりはもうすぐ夜明けになるってことだから、臨月の事を指すんだ。」

 

「おー、もうすぐ生まれそ…う…?あれ?ちょっと待て。この後の歌詞って…。」

 

「あれ、気が付いちゃった?…そう、この後の歌詞は鶴と亀が滑った、だ。胎児は籠の中の鳥…鶴で、お母さんはそろそろゆっくり歩く亀。…もうなんとなく結末は予想がついたかな?」

 

「お、おおう…。もしかして…?」

 

「…そう、妊婦さんは転んだか落ちたかした。その衝撃で妊婦さんは流産してしまったんだ。」

 

「…切ねぇ…、もうすぐ自分の子供に会えたってのに…、悲しすぎるぜ。」

 

「まだ終わってないけどね。」

 

「…ん?そういやそうだ。この次は…後ろの正面だぁれ?…って、え?いやいやまさかそんな。」

 

「後ろの正面だぁれ?これが妊婦さんの言葉だとしたら、後ろに誰が居た、ということになるね。…つまり、妊婦さんは後ろから誰かに押されて転んだ、もしくは落ちたんだろうね。」

 

「ひでぇことしやがる…。なんだってんだ…。」

 

「それが誰かっていうのも、またいろいろあるんだけどね。姑がやったーとか、妊婦さんはお妾さんで、本妻に恨まれてーとか。まあ、どちらにせよどろっどろだよね。昼ドラ並みかそれ以上に。」

 

「女って…怖いな…。」

 

「ふふふ、女の嫉妬は、古来より恐ろしいとされてるからね。…女繋がりでこんな解釈はどう?」

 

「おいおい、どろどろはもうお腹一杯だぜ?」

 

「次のは、可哀想な女の人の話だけどね。」

 

「どちらにせよテンション下がりそうだな、おい。」

 

「それはもう仕方ないね、諦めて。…そうだね、籠の鳥って表現があるけど、それってどういう風に感じるかな?」

 

「ん?んー、やっぱり自分の本意ではない、やりたくない居たくない場所に閉じ込められている…とかかな?」

 

「うんうん、やっぱりそうだよね。次の解釈は先に簡単に言っちゃうと、遊女説だね。」

 

「遊女?遊女って言うと…あの、吉原とかそういう?」

 

「そうそう、口減らしとかで売られたり~、とかもあるのかもね。まあ、そんな風になりたくてなったわけじゃない、とある遊女のお話。」

 

「いきなり重いんだけど。」

 

「仕方ないね?まあ、とりあえず解説に移ろうか。まず、かごめかごめ、かごのなかのとりは、の部分。まあ、ぶっちゃけすぐに分かるとは思うけど、これは遊女の事だね。囲われてる女の人。籠の鳥になってる女の人。」

 

「まあ…、そうなるよな。」

 

「何時何時出やる。これも簡単。何時になったらここを出ていけるの?早く出ていきたい、解放されたい。…そんな切実な嘆きが聞こえて来るかのようだね。」

 

「…。」

 

「夜明けの晩に鶴と亀が滑った。…ここはまあ、いわゆる姓交渉の暗喩だよね。…解説するのは恥ずかしいから、先に進ませて貰うね。」

 

「顔…、真っ赤だぞ?」

 

「う、うるさい!自覚はしてるから黙ってて!…こほん、気を取り直して…、後ろの正面だぁれ?これは自分の境遇を嘆いて伏せていても、新しいお客さんがすぐ後ろにもう来てる。振り向きたくない、もう嫌だ。そんな悲哀が込められているね。」

 

「救いは…救いは無いんですか!」

 

「え?救いは…、うーん。この童歌って地方によって歌詞が違うらしいんだよね。それで、その中に後ろの少年だぁれ?というのがあるんだよ。その少年が身買いしてくれる優しい人…ってくらい適当なのでいいならどうにか?」

 

「適当すぎる!」

 

「正直、どうしようもないからね。ん、救いが無いという点ではこっちの方が酷いかも。」

 

「追い討ち!?」

 

「かごめかごめ、ここの部分は、囲め囲めが訛ったものっていう説。」

 

「聞いてないしこいつ!!」

 

「囲いの中に入れられたのが、死刑囚だったっていう説。」

 

「…えぇー。」

 

「何時何時出やるは、何時処刑されるのか、明日か明後日か。みたいな?刻一刻と迫ってくる処刑の時に、ガリガリと精神が削られていきそうだね。もしかしたら、牢の中で悔やんでるかもね、どうしてあんなことをしてしまったんだ。なんであそこで立ち止まれなかったんだ…って。」

 

「ねぇなんでそんな心情描写しちゃったの?なんで?」

 

「そりゃ君のリアクションが面白いからだよ。」

 

「ですよね!」

 

「まあ、そんな当たり前な事は置いといて。」

 

「置いとかれちゃったよ!」

 

「夜明けの晩に、鶴と亀が滑った。夜明けの晩はまあ、朝方かな?鶴と亀が滑ったというのは、どちらも長寿の象徴。それが滑った、つまりは死の暗喩なんだろうね。」

 

「ついに処刑の時か…。」

 

「そして最後の後ろの正面だぁれ?これはまあ、斬首刑だったのかな?俺を殺したのは誰だ、と誰何してるのかもしれないし、自分が死ぬことを信じられなくて、信じたくなくて現実逃避してたのなら、最期に見えた首の無い胴体が自分のモノだと思わなくて、そう思いたくなくて…。あれは自分じゃない、自分じゃないんだ、自分じゃないはずなんだ!…じゃあ、あれは誰なんだろう?とでも思ったのかもね。」

 

「前者は呪われそうだし、後者は狂ってるし本当に救いがないな。」

 

「まあ、恩赦でもでない限りはまず助からないしね。夜明けの晩に来たのが、脱獄の手助けだったっていう説もあるけど、それはまあいいや。そろそろいい時間だし。」

 

「お、そうだな。もうこんな時間か。ささっと帰って飯食って寝るかな。」

 

「ふふふ、食べてすぐ寝ると牛になるよ?」

 

「うっせーよ。ほら、帰るぞ。」

 

「はーい。」




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