《Music Rainbow Online》~わたくしがチート斧を捨てて不人気デバッファーを選んだ理由~   作:たまごやきは甘いほうが好き?それとも…

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第二話

次の日のことですわ。

 

「んじゃ行ってくるぜ……あいてっ!?」

 

 家から元気よく飛び出そうとしたところ、お姉様にぶん殴られてしまいました。

 

「もう、せっかくのパーフェクトお嬢様『歌雨ななよ様』のイメージが悪くなっちゃうわよぉ」

「わ、わかりましたの」

 

 んなもんどーでもいいイメージですの、と思いつつ通学路へと向かっていると目の前によく知った後ろ姿が見えてきました。

 ぴょこぴょこと揺れる可愛らしい赤毛のツインテール。

 

「あらまぁ。むいではありませんの」

 

 てってって、と。走り寄って肩を叩くと、

 

「あ、歌雨ちゃん……ご、ごきげんよう」

「ええ。ごきげんよう」

「……あはは」

 

 元気の無さそうな声が返ってきましたわ。

 この子、ナガジョに入学したときから同じクラスなんですが、と言いますか昔からの幼馴染なのにちょっと様子がおかしいですの。

 小学生の頃は元気いっぱいで引っ込み思案のわたくしをグイグイ引っ張ってくれた子でしたのに。

 中学に入ってから妙によそよそしいと言いますか……わたくしがVRMMOにかまけてたからなのでしょうか。

 

「大丈夫ですの? むいってば、なんだか最近疲れてるように見えますわ」

 

 何故かびっくりした様子でわたくしの目をジーッと見てきましたの。

 紫色のまん丸な目でそんなに見られますと、なんだかちょっと恥ずかしくなってきましたわ。

 

「あ、あの……わたくしのお顔に何かついてますの?」

「う、ううん。なんでもないよ! あ、ごめんお友達が来ちゃったみたいだね。私先に行くねっ! 挨拶してくれてありがとう、ですわ!」

「……あ!」

 

 なんなんですの?

 挨拶してくれてありがとうって……。

 不思議に思って首をひねっていると、

 

「きゃーっ! 歌雨様ごきげんよう」

「歌雨様、一緒に登校致しましょうっ、そうしましょう!」

 

 クラスのいつものよくわからない女子たちに囲まれてしまいましたわ。

 まったく。むいってば……こういう方々はお友達とは言いませんのよ!

 

 授業の終わりを告げるチャイムが流れ、わたくしがいそいそと帰り支度をしていた時ですの。

 

「ねぇねぇ、知ってますか? 昨日テレビでやってたんですけど、BEO2が突然サービス終了するって告知出したんですって」

「えーっ、だって凄い人気だったじゃん! なんで、どーして!?」 

「それが深刻なバグが出たからって言ってそれっきりなんですって。私のお兄様も遊んでたんですが、そりゃもう絶望してしまって……」

「そりゃそーでしょ……。あのゲームの為に会社やめちゃった人とかいるみたいだし。ご愁傷さまって感じだなぁ」

 

 まぁ、前作のBEOも突然切って2へと移行したから予想してた人は多かったみたいだけどね、なんて会話を耳を大きくしながら聞いていたら、

 

「あ、あのっ! う、歌雨ちゃんっ」

 

 モジモジと、わたくしの机の前に立っているむい。

 

「どうしましたの、むい?」 

「あのね、あのね……」

 

 思い切ったように赤毛のツインテールを揺らして、

 

「一緒についてきて欲しいところがあるのっ!」

 

 ◇◇◇

 

「ここ……ですの?」

「うんっ」

 

 なにかと思いましたら、ゲームセンターじゃありませんの。

 流山に唯一ある巨大な遊戯場。

 アンダーハウスと呼ばれるその大きな建物の中にはコインゲームから始まり、クレーンゲームやビデオゲームが所狭しと並んでおりました。

 

 下校ルートでちょくちょく見かけるので気になってはおりましたが、わたくしの場合BEO2以上のゲームを知らなくてすぐに帰宅してましたわ。

 だっておウチで遊ぶVRMMOのほうがリーズナブルで楽しいんですもの。

 

「ちょっと遊んでいきたいなぁって……ダメ、かな」

「いえいえ、遊ぶのは全然構いませんのよ。でも――あなた、ゲームやりましたっけ?」

 

 小学生のときは内向的だったわたくしにとってゲームは切っても切り離せない娯楽でしたが、むいの場合は家でちまちま遊ぶよりも外ではしゃごうよってイメージでしたのに。

 思い出しましたわ。新作ゲームが発売してさっそく買いに行こうとしたとき、むいに見つかってしまったあの日のこと。

 いきなり手を引っ張られて何故か見知らぬ森の奥へと探検が始まって……道に迷ってやっと帰れたのは夜の九時過ぎでしたの。

 お姉様にこっぴどく怒られたり、ゲームは売切れたりで踏んだり蹴ったりでしたわ!

 

「も、もしかして歌雨ちゃんイヤだった?」

「いえ。ちょっと昔のことを思い出してましてたの」

「?」

 

 心配そうに頭に疑問符を掲げるむいに、

 

「とりあえず遊ぶなら中へ入りましょう。下校時間ですし、クラスの子に見つかったら色々と面倒ですわ」

「あはは、歌雨ちゃんはゲームなんかしないって噂だもんね。家では紅茶を飲みながらドイツの小説を嗜んでるとか、執事やメイドさんが三百人いるとか、毎日イタリアンやフランス料理のフルコースじゃないとダメだとか……」

 

 し、知らない間にそんな噂が!? そんな冗談みたいなお嬢様いるわけねーですわ……。

 実際、昨日は箸でポテチを食べながら積んでいたオフラインゲームの消化をしてましたし、ご飯だって朝に食べた納豆ご飯とシシャモ二本だけの一食でしたのよ。

 夕ご飯の仕度をしてくださったお姉様には申し訳なかったのですが、お風呂からあがったら食欲が無くなってしまっていたもので。

 

「もう、いいからいきますわよっ」

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