それではどうぞ!
桜華国立水泳場
その日昴は親友秋原斗真の出る水泳大会の応援するために桜華国立水泳場に足を運んでいた。
「おお、すげぇ賑わいだな」
「そりゃそうだよ、ここら辺の高校の水泳部が全部集まっているからね」
茜も昴の付添いでこの水泳場に足を運んだのだが人見知りの性故、ついてきてもらった葵の背中に隠れながら昴と会話していた。
「・・・いやなら無理してこなくてもいいんだぜ?」
「そういうわけにもいかないよ、クラスメイトの晴れ舞台なんだし」
やれやれ、と昴は溜め息を吐く。人見知りの癖にこういうところは妙に真面目なのだ。
「姉ちゃんもわるいな、付き合わせてしまって」
「いいよ、茜がこうして進んで人前に出ることはいいことだし」
「そうかい。ま、俺としても都合がいいんだけどな」
「「都合がいい?」」
「ああ、そろそろかな?」
周りに異変が生じる。今まで歩いていた人達が葵たちに気付き始めたのだ。
「あ、見て見て!葵様よ!」
「本当だ!」
「茜様もいるよ!」
「アッカネサマー!!」
どんどん人が茜と葵を中心に集まっていく。
「あ、あの・・・」
人見知りの茜は目を回し始める。
一方昴は既に距離を取って逃げる準備を整えていた。
「じゃそういうことで、囮はまかせた!」
「す、昴待ってぇぇぇぇ!!」
無常にも昴は茜達を置いてどこかへ去って行った。
選手控室前
「おーい斗真―!」
昴は斗真に声をかける。
斗真もこちらに振り向く
「おお、昴か。よくこんな雑踏の中来れたな」
「囮を使ったんでね」
茜達が来ると都合がいいのはこのことである。
「囮?」
「こっちの話さ。それより調子はどうだ?」
「万全だよ。これなら一位も余裕だな」
「そいつはいいや、事故の影響はないようだな」
半年前、斗真は事故でしばらくリハビリを余儀なくされ今回が復帰後の初試合なのだ。
「それだけじゃないわ。秋原君の今のタイムは事故前のタイムより早くなってるのよ」
聞き覚えのない声に昴は声の方を向いた。そこには自分と同じ年齢くらいの少女がいた。
「誰?」
「私は片平小雪。秋原君の彼女なの」
「彼女っ!?」
「そう、ラブラブなんだから」
といい、斗真の腕を掴む小雪。しかし斗真は明らかにいやそうな顔をして手を払う。
「勝手なこと言うな。こいつはただの水泳部のマネージャーだ」
「もう、照れ屋さんなんだから」
「一生言ってろ・・・」
どうやら恋人というのは彼女の一方的な思いらしい。
「なんだ彼女じゃないのか。良かった~俺に内緒で彼女をつくる裏切り者なんていなかったんだな」
「安心しろ、お前は一生彼女なんて出来ない」
「なんだと!それが応援に来てやった親友に対する言葉かよ!」
「親友に本当の事を言って何が悪い!」
「上等だ表に出ろ!『親しき仲にもレンガあり』ってこと教えてやる!」
「なんならここでおっぱじめててもいいんだぜ?後レンガじゃなくて礼儀だ」
「え、ちょっと?二人とも?」
強く睨み合う昴と斗真を見てオロオロする小雪。このままだと本当にケンカをし出す勢いだ。
しかし、お互いニッ、と笑ったと思えば大きく口を開けて笑い出した。
「え、なになに!?」
完全に置いてきぼりな小雪。
そして二人は互いの拳を強く合わせる。
「絶対優勝しろよ!」
「ああ、当然だ!!」
そして二人は踵を返しそれぞれの場所へと向かって行った。
その姿は王族も国民も関係なく確かな友情があった。
合図と共に斗真は泳ぎ始める。
そのスピードは他の誰よりも早く突き進んでいった。
「よし、いいぞ!」
昴も手に汗握りながらその姿を見守る。
しかし、斗真がゴール直前まで来た時、異変は起きた。
突然斗真が動きを止めたのだ。
「どうしたんだ?」
勝負事には全力を注ぐ斗真がわざと止まっているとは考えられない。
昴は観客席から凝視し異変の原因に気付いた。
斗真が突然苦しみだし、水中でもがいているのだ。
「斗真っ!!」
「ちょ、ちょっと昴!?」
昴はそのまま斗真の元へ駈け出した。
秋原斗真は試合中に倒れ現在医務室に運ばれている。
そこには昴達も同行し医者の話を聞いていた。
「理由はまだ解りません。ただ全身の筋肉が発熱し、僅かに痙攣を起こしています」
「それはどういうことですか?」
「いえ、それが全く、しかし今も発熱を起こし続け全身の筋肉が膨張を始めているのです。このような例は今まで見たこともありません・・・」
昴は医務室のベッドで横たわる斗真を見た。
(お前はこんなくだらないことで終わっていい人間じゃないだろ・・・!)
そして昴は頭に衝撃を感じる。アンノウンを察知したのだ。
(っ!?かなり近くにいる!)
「茜、姉ちゃん!ごめん!斗真の様子を見ていてくれ!」
「ちょっと昴!どこ行くの!?」
茜の問いに答えず昴はそのまま駆けて行った。
「この辺か・・・」
人気の無い雑木林の中に昴は立っていた。
そして視線の先にいるアンノウンを二体とらえた。
「グルル・・・」
「シャー・・・」
一体目はコブラのような姿をしたアンノウン、スネークロード アングィス・マスクルス。
二体目はメデゥーサを彷彿させるアンノウン、スネークロード アングィス・フェミネウスだ。
「変身!!」
昴はすかさずアギトに変身し、マスクルスに殴り掛かる。
「グゥ・・・」
マスクルスは頭の輪から杖を出しアギトに打ち付ける。
「フンッ!」
しかしアギトはそれを左手で受け止め右手でマスクルスの腹に拳をぶつける。
「グワッ!」
マスクルスは木に激突する、アギトは追い打ちを掛けようとするが、
「シャァー!」
フェミネウスの鞭がアギトの足に当たりダメージを与える。
(あいつはどこだ?)
アギトは辺りを見渡すがフェミネウスは木々に隠れこちらに姿を現さない。
さらに立ち直ったマスクルスがアギトに杖を突きつけてきた。
(集中しなければ・・・だったら!)
アギトはオルタリングの右端だけを叩く。
するとアギトの色が赤色に変色し、オルタリングから自分の角に似た形の鍔を持った刀『フレイムセイバー』を取り出し構えた。
これがアギトの三つ目の姿、パワーと卓越した五感を併せ持った『超越感覚の赤』フレイムフォームだ。
「はぁぁぁぁ・・・・」
アギトは腰を低く落とし感覚を研ぎ澄ます。
全ての感覚を活用しフェミネウスの居場所を導き出した。真後ろである。
さらにマスクルスがアギトに向かって突進し挟み撃ちの形となる。
しかしそれを読んだアギトは横に回避し、フェミネウスの鞭がマスクルスに当たるのを見る。
マスクルスは鞭の痛みでのたうち、フェミネウスはアギトに跳びかかる。
「でやぁぁぁ!!」
フレイムセイバーの鍔が展開し、炎を纏った刃先がフェミネウスに当たりフェミネウスを一刀両断した。
これがフレイムフォームの必殺技『セイバースラッシュ』だ。
「グゥ・・・」
仲間が倒されたのを見てマスクルスは突風を引き起こしその隙に逃げて行った。
戦いを終え、昴は医務室へと戻るが斗真の姿はなく、茜と葵だけだった。
「秋原君ならさっき病院に搬送されたわ」
「そうか・・・」
茜は昴の肩を掴み問い掛ける。
「所で昴はどこにいってたの?」
「え?」
「友達を置いてどこにいってたの?」
そう言って昴を見る茜の目には疑心に満ちていた。
「え、えっと~、財布を落としちゃってね。探してたんだよ・・・」
「ふぅ~ん・・・」
割れながらうまい言い訳だと感じる昴。だが茜は、
「友達よりお金の方が大事なんだぁ~・・・」
「い、いや・・・お金は・・・大事だよ・・・」
むしろ疑いを増してしまった。
「と、とにかくここに居ても意味はないわ。帰りましょう」
「そ、そうだね姉ちゃん・・・」
「・・・うん」
とりあえず家に帰ることにはなったのだが・・・
(すっげぇ見られてる・・・)
家への帰路の途中、茜は昴をじっと見つめ続けていた。
翌日
(やっぱり見られてる!?)
学校の道の途中も茜は修の背中に隠れながら昴を見つめ続けていた。
「茜があんたのことをずっと見てるけど、昨日なにかあったの?」
「ま、まぁ、ちょっとね」
カメラの事を気にも留めずそのまま校門まで辿りつくと珍しく登校していた白井に出会う。
「兄弟そろって登校とは仲がいいのだな昴」
「同じ学校だし変なことじゃないだろ白井」
といった感じで会話をしていると白井という名前に葵が反応する。
「白井?もしかしてあなたが白井咲子さんかしら?」
「そうだが。櫻田葵、私を知っているのか?」
「ええ、前にテストの一年生の上位成績表にあなたの名前があったから」
「よくそんなことを覚えていられるのだな」
「姉ちゃんは見たものを絶対に忘れない能力を持ってんだぜ」
葵の能力は
見たものをすぐ記憶し、そして絶対に忘れないという能力である。
「・・・それは単に頭が良いだけではないか?案外地味な能力だな」
「地味とか言うなよ!姉ちゃんの能力は七の段を暗記出来るんだぞ!」
「昴、それだとものすごくショボイ能力に聞こえるぞ」
「あんたいい加減七の段覚えなさいよ・・・姉さんもなにか言ってよ」
「まぁ、強い能力を持ったとしても私じゃ持て余すから・・・」
「いやそっち!?」
兄弟達に見えない角度で白井は昴に耳栓のようなものを手渡した。
「これは?」
「私が作った小型通信機だこれで戦っている時も連絡が取れる」
「そいつは便利だな、所でそれにあいつの視線を変える機能はあったりしないよな?」
そういって昴はチラッと後ろを見る。相変らず茜がこちらを見ている。
「悪いがそんな機能はないぞ」
「そうか・・・」
一同は下駄箱近くまで歩いていくと今度は弥生に遭遇した。
弥生は昴達だけでなく奏達もいることを確認するといつものごとく敬礼で挨拶した。
「皆様方おはようございます!!本日も校舎は異常無しであります!!」
「・・・相変らずね、あんたのクラスメイト」
「最近はマシになったんだけどな」
そんな中も茜は昴を見続けていた。
教室
(いつまで見てるんだよあいつ!?)
授業中であっても昴は茜の視線を感じ、固まっていた。
そんな二人を横で見ている者がいた。花蓮である。
(茜、さっきからノートもとらずに昴のことを・・・ハッ、まさか!?)
花蓮はあらぬ誤解をした。
(いやいやダメでしょ茜!昴はあんたの双子の兄だよ!)
(それにあんたは王族だし色々まずいでしょ!?)
(でも・・・茜はあんなに真っ直ぐ昴のことを見て・・・)
(友達として私がするべきことは・・・)
花蓮が決意を固めると同時に授業終了のチャイムが鳴った。
「ごめん花蓮、私ノートとるの忘れてた。後で貸してくれる?」
「・・・茜っ!!」
ガシッ!と花蓮は茜の手を握る。
「たとえ茜が道を踏み外しても私、友達だから!最後まで味方だからね!!」
「え、うん、ありがとう。でもノートとらなかったことはそこまで酷いことじゃないと思うけど・・・」
「次は体育か・・・」
女子は着替えの為、教室にはいない。
茜の視線からやっと逃れてのんびり着替えようと思った矢先突然後ろから視線を感じた。
(まさかまだ茜が!?)
昴が振り向くとそこには茜ではなくメガネをかけたクラスメイトがいた。
「何してんの、福品?」
「茜さんに君を見張ることを頼まれててね」
彼の名は福品創。通称会長。
ちなみに会長とは茜ファンクラブの会長という意味でようするに茜の大ファンである。
「だからってこんなに近くまで来ることないだろ!」
「お気に召さらずに、お義兄さん」
「誰がお義兄さんだ、返答次第ではそのメガネをかち割るぞ」
昴の脅しもあってようやく距離を取る福品。昴がほっとしたのも束の間今度は全員の視線を感じた。
(あ、こいつら全員ファンクラブの連中だったの忘れてた・・・)
昴は男子全員の視線を感じながらも体育着に着替えグラウンドで野球をしているのだが
(やっぱり見てるぅ!?)
女子は隣のグラウンドでソフトボールをしているのだがやはり茜はファーストに立つ昴を見つめていた。
(ん?茜様がこちらを見ている・・・?)
バッターボックスに立つ福品は茜の視線が自分に向けられていると勘違いした。
(茜ファンクラブ会長として茜様の前でかっこ悪い姿を見せるわけにはいかない!!)
勝手に使命感に燃える福品は投げられたボールを思い切り振り全速力で走りだした。
しかしボールはバットの上端にぶつかりふわふわとした軌道で昴のグローブに収まった。
「よし、これで1アウトだな」
しかし、福品は猪の如く止まらず走り続けている。
「ちょっと?アウトだから・・・アウトだってば!!」
「うぉぉぉぉぉぉ!!アッカネサマー!!!」
「俺茜様じゃねぇし!?昴様だしっ!」
そのまま福品は昴目掛けてヘッドスライディングをかまし、双方仲良く保健室送りとなった。
保健室
「何してくれてんの?」
「・・・」
現在昴と福品は保健室のベッドに横たわり、福品は横にいる昴は見つめていた。
「ってかいつまで見てんだよ!」
「茜様の命に従ってるだけだ!」
「うわ開き直ったよこいつ!」
そうこうしていると昴はまたアンノウンを察知した。
(最悪のタイミングで来たー!?)
そう思いながらも跳ね起き保健室の窓を開ける。
「ど、どこへ行くんだ!?」
「俺には俺の都合があるんだよ!いいか茜には言うなよ・・・絶対言うなよ!」
そのまま窓から昴は部屋を出て行き保健室には福品だけになった。
「茜様に報告しなければ」
昴の言葉は耳に入っていない福品であった。
「変身!」
廃倉庫でマスクルスを見つけ対峙するアギト。
「グルルルルル・・・!」
(また姿が変わってる!?)
マスクルスは体中に金色の線が入りキングコブラを彷彿させる姿になったのだ。
(こいつらを強化させている奴がいる、多分そいつが元凶だな・・・)
強化マスクルスが跳びかかってくるのを紙一重で回避する。
「今はこいつをどうかするのかが先決か・・・」
そういいアギトはストームフォームに変身し、強化マスクルスの杖と鍔迫り合った。
その状態から強化マスクルスの足は
「っ!?こいつの手足に間接は無いのか!?」
両手を蛇のようにくねらせる強化マスクルスを見てアギトは緊張感を感じる。
そこに白井の通信が入った。
『昴聞こえるか!悪い知らせともっと悪い知らせがある!』
「すげぇ聞きたくないんだが・・・悪い知らせってのは何だ?」
『今君が戦っているのは恐らく囮だ。監視カメラが一瞬だけだが別の個体を発見した』
「何だって!?ってかそれより悪い知らせって何だよ?」
『櫻田茜と鮎ヶ瀬花蓮が君を探して学校を出た。君の近くにいるだろう』
「ウソだろ・・・・・・」
茜と花蓮は白井の予測通り昴が戦っている廃倉庫近くに来ていた。
「この辺だよね?」
「うん、昴のバイクが止めてあるし間違いないよ」
花蓮に聞き込みを頼みながらここまで来たのだ。
「花蓮ごめんね、付き合わせちゃって」
「いいよ、それにさっき言ったでしょ私は茜の味方だって」
そう言いながら廃倉庫まで来た二人は奇怪な光景を目にした。
青い仮面の戦士とコブラの怪物が戦っているのだ。
「何・・・あれ?」
「あれがひょっとして噂の仮面ライダー?」
コブラの怪物が突風を起こし、青い戦士を吹き飛ばすとこちらを見てきた。
「っ!?まずいよ茜!」
「・・・」
「茜!?何してるの逃げなきゃ!」
コブラの怪物は茜に目を向けると脳裏に声が響く。あの謎の青年の声だ。
『彼女はアギトではありません。ですが、彼女がもつ力は人間が持っていい範囲を超えるものです。危険な芽は早く摘み取るに越したことはないでしょう・・・』
その声を聞いた強化マスクルスは左手で右手の甲に文字のようなものをなぞった。
それはアンノウンが相手を殺す時にする仕草だ・・・
秋原斗真は病院のベッドでもがいていた。
掻き毟るような苦しみに叫び声を挙げ近くにいたナースが斗真の元へ来た。
「秋原さん大丈夫ですか!」
「う・・・あ・・・ぐあああ!」
ナースは患者の容態を見るために布団をどかすがそこで異常な状態であることに気が付いた。
斗真の手は緑色に変色し獣のような爪が生え、その目は赤く光っていた。
「イヤァァァァァァァァァァ!!」
恐怖のあまり悲鳴を挙げるナース。
その姿をカラスの姿をかたどったアンノウン、クロウロード コルウス・クロッキオは空から見上げていた・・・