仲間を得た昴の新たな戦いをご覧ください!
それではどうぞ!
第17話 孤児
その日、昴は愛車の手入れをしながらあることを考え込んでいた。
それは斗真が病室で言った言葉である。
『具体的にはなんだ?どういう制度を出して、どう言って国民を納得させるんだ?』
思えば今までアンノウンとの戦いに集中していたのでそのことを後回しにしていた。
しかし、いずれは答えを出さなければならず、その日は少しずつ近づいている。
昴は熟考しながらバイクを磨き終え、点検のためにエンジンをかけようとするが、
「あれ?かからない」
何度もエンジンキーを挿してもバイクはうんともすんともいわない。
「お兄様、どうかしたの?」
兄の様子を心配して末っ子の栞が近づいてきた。
「バイクの調子が悪いようだ。あ、そうだ!栞、バイクの声を聞いてくれないか?」
栞はコクリと頷き、バイクに耳を傾ける。
栞の能力は
有機物、無機物関係無く対話をする事が出来る能力だ。
この能力を使えば、バイクの不調の原因を“バイクから”直接聞き出せるのだ。
「プラグに異常をきたしているって、バイクさんが言ってるよ」
「プラグかぁ・・・これは一回修理してもらわないとダメだな。あっ、でも今日商店街で選挙活動の予定があるから間に合うかな・・・・」
「それなら地図さんに近道を聞いてみる」
「おう、頼むぜ」
「うん!」
太陽のような眩しい笑顔を見せ、栞は地図を探しに家の中に戻った。
わずか5才ではあるが利口で素直な栞を昴は愛おしく感じる。
(栞、お前はそのまま大きくなってくれよ・・・)
栞から聞いた道のりを通って昴は後一歩で商店街に着く所まで来た瞬間、アンノウンを察知してしまう。
(ごめん栞、教えてくれた近道無駄になっちまって・・・)
昴は来た方向を逆戻りし、アンノウンの所へと向かった。
路地裏
少年は走っていた。自分を追うカラスのような化け物から逃げる為に。
その化け物がクロウロード コルウス・ルスクスだとは知らない。
「カァァァッ!」
ルスクスが少年の前に現れ襲おうとした時、横から飛び出した青年がルスクスを蹴り飛ばす。
「早く逃げろ!」
青年の言葉通り離れようとするが、何を思ったのか物影に隠れ様子を伺う。
そして少年は見てしまった。
「変身!」
青年が仮面ライダーアギトに変身するのを・・・
「どりゃぁ!」
少年に見られていることに気付かずアギトはルスクスに接近戦を仕掛ける。
ルスクスも対抗しようと、頭の輪から刀を取り出すが狭い路地裏ではかえって不利になってしまっていた。
「ハッ!」
ルスクスの攻撃をすべて躱しカウンター攻撃でダメージを与えるが、ルスクスは形勢不利と見たのか手前の室外機を破壊し発火させる。
アギトはストームフォームに変身し、突風を起こして一瞬の内に炎を消し去る。
その隙にルスクスは飛び上がっていた。
「逃がすかよ!」
アギトは壁を蹴って飛び上がり、さらに隣の壁をまた蹴って飛び上がるのを連続でやることによって瞬く間にルスクスの前に姿を現しハルバードスピンを放つ。
しかし、ルスクスが急転回し羽にかすっただけで逃げられてしまった。
「逃げられたか・・・まあいい、次があるさ・・・・・っ!」
地面に着地し、変身を解除すると先程逃がした筈の少年がまだこの場にいたことに気付く。
「み、みた?」
少年は黙っている。
「あの、出来ればこの事はオフレコで・・・」
昴は少年が周りに漏らさないように頼み込む。
しかし、少年の返答は予想外のものだった。
「お前が遅れたからパパやママが死んだんだ!!」
「え?」
少年はそのまま走り去っていこうとする。
「お、おい、待ってくれ!」
昴は少年を追う。
頭の中で何かが引っ掛かっている。昔、同じ事を言われたような・・・
彼がその事に関係しているかもしれないのだ。
しかし少年の足は思っていたより早く身軽で障害物だらけの路地裏を風のように通り抜け昴との差を引き離していく。
(まともに追いかけてもダメだ、こうなったら先回りして・・・)
昴は少年の移動ルートを予測し、少年の目の前に立つようにするべく路地裏から抜け出すが・・・
「きゃっ!?」
ちょうど近くを歩いていた女性にぶつかってしまう。
そしてその女性には見覚えがある。いや、無いはずが無かった。
「姉ちゃん!?」
「昴?どうしたの!?」
櫻田家の長女で昴の姉の葵であった。葵の近くには彼女の友人達もいる。
「いや、これは・・・その・・・」
あたふたしていると例の少年が走り抜ける。
「ごめん!話は後でするから、今は何も聞かずにあの子を捕まえてくれ!」
昴はそのまま少年を追って走って行く。
その慌ただしい様子を葵の友人である静流、奈々緒、卯月は唖然としていた。
「あれって確か葵の弟の昴君だよね?」
「なんて言うかさ、変わってるよね、あんたの兄弟」
「でもちょっとかっこいいですよね?」
「おやおやぁ~、卯月はああゆうのが好みなのかな?」
「そ、そう言っているわけじゃなくて・・・」
「で、どうするの?弟君追いかけるの?」
「う、うん、ちょっと様子を見てくるから、ごめんね皆」
そう言って葵は友人達と別れ、昴を追いかけて行った。
「はぁ・・・はぁ・・・」
少年を追いかけていたら日が暮れてしまっていた。
「なんて足の速さだ・・・」
「隣町まで来ちゃったようね」
「姉ちゃんごめんな、付き合せてしまって・・・」
「いいのよ昴。それにしてもなんであの子を追いかけていたの?」
「え?それは・・・」
葵が昴の目を見て問い掛け、昴は思わず目を逸らす。
勉強は昴の大の苦手分野だ。そんな昴が一度も落第も留年のなくここまでこれたのはひとえに葵が勉強を教えてくれたおかげである。
姉には感謝してもしきれない程の恩がある。そのため昴は葵には頭が上がらず彼女に嘘をつくととてつもない罪悪感に襲われるのだ。
どう言えば罪悪感を感じずに誤魔化せるかを考えていると例の少年をまた発見する。
「あ、いた!」
少年も昴達に気付き、逃げようとするが前から歩いてきた女性に捕まる。
「一樹!どこに行ってたの!」
どうやら少年の保護者のようだ。
「だってあいつらが追いかけてくるから・・・」
と、少年はこちらに指を指すと、女性は青ざめた顔になった。
「葵様?・・・昴様?」
お詫びをしたい女性に連れて来られた先には孤児院があった。
表札には『土亥孤児院』と書かれていた。
少年改め一樹はそこに着くと真っ先にそこの院長であろう老人に向かって走り出す。
「ゆうじい!」
老人は一樹を抱きしめ、中に入れるとこちらを向く。
動揺していた女性とは違いこちらを見ても驚く様子もなく穏やかな笑顔を見せる。
「おや?これは珍しいお客さんですね」
「え?ではこの孤児院をお一人で営んでいらしているのですか?」
応接室で葵と昴は老人の話を聞いていた。
「えっと、あの女の人はそうじゃないんですか?」
「彼女もこの孤児院の出身者です。もう独り立ちしているのですが私を心配してたまに手伝いに来てくれるのですよ」
昴の問いに老人は答える。とても落ち着いた姿に昴は年相応の年季を感じた。
「でも、これ程の人数を一人で・・・」
応接室を覗く子供達の数は多く、クラス二つぐらいは作れそうな人数である。
「中にはやむをえない事情でここにいる子も少なくないですが、最近は特に物騒ですからね。あなた方も聞いたことがあるでしょう?不可能犯罪」
「!?」
不可能犯罪
それは人間には到底出来ないような殺され方が起きているという都市伝説で正体は勿論アンノウンの仕業だ。
警察は余計な混乱を避けるため事実を公表しないがそれが逆に不可能犯罪の信憑性を高めているのだ。
「あなた方が出会った彼もまた、不可能犯罪によって両親を亡くしたのです」
この言葉で昴は頭の中に引っかかっていたものの正体を理解した。
彼は昔、自分が救えなかった人の子供だったのだ。
『お前が遅れたからパパやママが死んだんだ!!』
彼の言葉が脳内で再生され昴はうなだれる。
「俺のせいだ・・・」
その独り言が老人にも聞こえたようで、
「いえ、貴方のせいではありませんよ。人には出来ること出来ないことがあります。無理に出来ないことを嘆くより、出来ることに全力で取り組むことの方がいいでしょう」
「いや、違う。それは俺が出来ることなんだ・・・!出来たはずのことなんだ!」
「昴・・・?」
詳しくは理解できないが昴の自責の念を感じ取ったのか葵は老人に提案する。
「あの、私達にここの子供達の面倒を見る手伝いをさせてもらえないでしょうか?」
「姉ちゃん?」
それは償う方法を考えていた昴にとって渡りに船であった。
「いえ、手を煩わせるわけには。それに王家のあなた方には他の成すべきことがおありでしょうに」
「はい、ですがこの国に親のいない子供達がいるのは国に不足がある故、その責任を負うのも王家の義務だと感じたのです」
葵の言葉を聞き、老人も折れたようで首を立てに振った。
「分かりました。そう言うことでしたら1日だけあなた方にお任せしましょう」
老人の了承を得て、葵は昴の方へ向き、ニッコリと笑う。
「これでいいのよね?」
「姉ちゃん・・・・・!」
思わず泣きそうになるのを抑え、昴は葵に心から感謝した。
翌日
昨日の夜に父からの承諾を得て櫻田兄弟一同は土亥孤児院にいた。
歳の近い輝と栞は子供達に混ざって遊んでいる。
光は桜庭らいとの歌を披露している(正体を明かせないので真似ということにしている)。
葵と遥は年長の方の子供達に勉強を教え、岬は分身達を総動員で家事をしている。
子供達の面倒は修、奏、昴、茜の四人が交代で行っていた。
「はぁ・・・疲れた・・・」
現在は奏と昴が給湯室で休憩している。
「まったく、姉さんも面倒なことを言うわね、こんなだから順位下げたいのに下がらないのよ。まぁ、私のイメージアップには相応しいけどね」
「またそんな事言っちゃって。結構ノリノリで遊んでたくせに、あのデカイ滑り台、姉貴が出したんだろ?」
「あ、あれはね前の滑り台にガタが来てたから危ないなー、って思って出したのよ!」
「はいはい、そう言うことにしますねツンデレねーさん」
「誰がツンデレよ!」
そんな姉弟コントをしていると交代したばかりの茜が入ってきた。
「ごめんどっちか変わってぇ~!」
「「速いなおい!」」
ダブルでつっこむ二人。
「もう無理!恥ずかしくて耐えられないよ!」
「お前あんな小さな子供相手にも人見知り起こすのかよ!?」
「だってあの子達『茜様はどうしてテレビでパンツを見せてくるのー?』って聞いてくんだよ!?修ちゃんも悪ノリしてくるし!」
「そりゃお前支持率アップのためって言っときゃいいじゃねぇか」
「そんな事でアップしたら苦労しないよ!」
いや、お前の場合してるんじゃね?と昴は心の中で福品ら茜ファンクラブを思い出しながら考える。
「とにかくどっちか変わって!」
「嫌よ、30分毎に交代するって決めたじゃない。大人しくその質問にも答えていきなさいな」
「うう、かなちゃん、昔はよく飴とか出してくれたのに・・・」
「それ前に姉さんも似たようなネタ使ってきたけど打ち合わせでもしてるの!?」
そう言っていると手伝いの女性が給湯室に入ってくる。
「すいません一樹を見ませんでしたか?」
「一樹くん?そういえば今朝から見てないよね?」
「また、孤児院を抜け出したのかも・・・」
「また?」
「はい、あの子、よく抜け出すんですよ、追っかけたら隣町まで来てたってことはよくありますし・・・」
そんな中昴が口を開く。
「あの、もしかしたら俺、あいつがどこに行ったか知ってるかもしれないです」
「本当ですか!?」
「はい。茜、重力制御で俺を運んでくれ」
「え、私?」
「俺の予想が当たりならここから遠い場所になるからな」
茜は昴を掴み、一樹を探すべく飛んで行った。
「よし、このまま真っ直ぐ行ってくれ」
昴をナビにし、茜は町の上空を飛んでいる。
「ねえ昴?」
「あ、なんだ?」
「どうして一樹くんの居場所に心当たりがあるの?」
「前に会ったかもしれないからだ」
「それってアギトの事と関係しているの?」
「そ、そうだな・・・」
茜にはもう隠し事をしないと決めたので昴は話すことにした。
「あれは今から3年前のことだ・・・」
3年前
「でやぁー!」
落雷を避け、ハルバードスピンを放ち、クラゲのアンノウン ハイドロゾアロード ヒドロゾア・イグニオを撃破した。
戦いに勝利したが昴の顔は晴れなかった。
後ろを見ると黒こげになった遺体がある。
現場に到着した瞬間、イグニオの電撃によって殺害されたのだ。
「俺が間に合わなかったから・・・・・」
せめて弔おうと近づくとあることに気付いた。
遺体の下に少年が倒れている。上の二人は両親で彼を庇ったのだろう。
「おい、大丈夫か!?」
そして少年はこちらを見て叫んだ。
「お前が遅れたからパパやママが死んだんだ!!」
「ということがあったんだ。俺はあの子にどう言葉を掛ければいいんだ・・・?」
葛藤する昴を見ながら、茜もあることを思う。
(3年前!?ということは中学生の時からアギトになってたの!?)
思えば昴に不審な行動が目立ち始めたのは中学に入ってからすぐのことだった。
思っていたよりも早く昴が戦いに身を投じていたことに茜は驚愕を憶えた。
「おい!あの子を見つけた!降りてくれ!」
「あ、うん!」
昴の声で我に返り茜はゆっくりと昴が指定した場所に降りた。
そこは橋の下で一樹の下には花が添えられていた。
「やっぱりここにいたんだな・・・」
一樹は昴の声に答えず下を向いている。
「一樹くん、皆が心配してるよ。さ、孤児院に帰ろう?」
茜は手を差し伸べるがその手を払いのけ、昴を睨みつける。
「あそこは帰る場所なんかじゃない!僕の居場所はあいつが奪ったんだ!あいつが手を抜いたりしなければ・・・」
「一樹くんっ!」
茜は一樹の肩を強く掴む。
「それは言っちゃ駄目!それだけは・・・絶対に・・・!」
彼女なりに昴の気持ちを汲んでの発言であろう。
しかし昴は、
「止めてくれ茜」
決して自分を擁護しなかった。
昴が何かを言いかけたとき一樹は飛び出した。
不幸なことにアンノウンを感知し、一樹の目の前にはルスクスが立っていた。
「!?」
ルスクスは刀で貫こうとする。
「させるかぁぁ!」
昴は飛び上がりルスクスと一樹の間に立って刀の突きを胴に受けた。
「昴っ!?」
茜は昴が刺されたと思って叫ぶが昴の体は貫通せず、血も流れていない。
茜の位置からは見えないが昴はオルタリングを出現させ刀を防ぎ、間一髪の所を凌いでいたのだ。
「確かにお前の言う通りだよ。俺がお前の居場所を奪った・・・でも!」
ゆっくり変身ポーズを構えながら昴はルスクスにパンチを決め叫ぶ。
「変身!!」
オルタリングの両端を叩き昴はアギトに変身した。
振り向くと一樹は呆然としており、それを傷つけないよう力加減をして抱きしめる。
「俺が全力でお前を守るから・・・」
言葉足らずの昴に出来ることはそれしかなかった。
アギトはルスクスの方を向き、茜に声をかける。
「一樹を頼む!」
「うん!」
言われた通り茜は一樹を抱き上げ、安全な場所へ避難させる。
「カァァァァ!」
ルスクスが刀を振るい斬りかかる所をアギトはフレイムフォームに変身しそれを防ぐ。
「クワッ!」
ルスクスは飛び上がり、急降下してくる。アギトはそれを迎撃しようと構えるが他のアンノウンの気配を察知し、左に避ける。
アギトがいた場所にはルスクスの他に3体のクロウロードが立っていた。
鎌を持ったクロウロード コルウス・カウルス。
白い髪のクロウロード コルウス・カノッスス。
そして女王のような出で立ちのクイーンクロウロード コルウス・イントンススだ。
「昴!無事か!?」
声がする方を見上げると橋の上にギルスとG3が立っており、橋から飛び降りてくる。
「私達はこいつらと戦っていたんだ、だが急に飛び去ったので追ってみればここに辿り着いたのだ」
「なるほどね・・・」
三人が並び立つと同時に4体のクロウロード達は空へ飛んでクイーンのイントンススの周りを旋回する。
そしてクイーンの合図と同時襲い掛かる。
ギルスはギルスフィーラーを伸ばし、G3はGM-01でけん制し、アギトはスピード重視のストームフォームに変身することで応戦するもジリジリと削られていく。
(青の姿なら攻撃を流すことができるけど決定打に欠ける、でも赤の姿では攻撃を捌ききれない・・・!)
もし、2つの特性を持った力があれば別だが生憎そのような都合の良い形態をアギトはまだ持っていないのだ。
(だが俺には仲間がいる!)
アギトはフレイムフォームと化す。
「斗真、俺をあの指揮してる奴の所まで投げてくれ!」
「なんだって!?」
「いいから!」
ギルスはアギトの思惑を察しギルスフィーラーをアギトの足に巻き付ける。
「しっかり狙えよ・・・」
ギルスは腕を振り回しジャイアントスイングの容量でアギトをイントンススへと投げ飛ばす。
「でやぁぁぁぁ!」
フレイムセイバーの柄を展開し、セイバースラッシュを繰り出す。
イントンススは避けようとするが翼に刃が当たり、羽を切り裂きアギトとともに落下した。
「よし、これで!」
とどめを刺すべくフレイムセイバーを振り上げるがその時、アギトの全身に衝撃が襲う。
他のクロウロード達がアギト目掛けて一斉に頭突きを繰り出したのだ。
「ぐっ!?」
予想外の衝撃にアギトはその場に崩れ落ちる。
「昴ぅぅぅぅ!?」
弥生の悲痛な声がただ響いていた・・・
勘のいい人は察しているでしょうが次回はあのフォームが登場します。
次回 熱風
お楽しみに!