過度な期待はご遠慮ください・・・
それではどうぞ!
「兄上、お願いがあります」
休日の日、自宅のソファーでくつろいでいた昴は突然、弟の輝から声を掛けられた。
「お願いって何だ?」
「はい、これから僕が生きていく中でして置かなければならない事です。そしてそれには兄上のお力が必要なのです!」
自分が頼りにされている事に気分を良くした昴は調子づく。
「ま、俺は何をやらせても1番の男だからな。俺の力が必要なら何でもやってやるぜ」
(昴・・・また調子の良い事を言っちゃって・・・)
それを遠くから冷めた目で見据える茜に気付かず輝は昴にある事の協力を要請した。
「仮面ライダーを見つけて欲しいのです!!」
「「・・・え?」」
遠くで聞いていた茜と一緒にその一言にポカンと口を開け1分が経過し、昴は意識を元に戻し、
「え?え!?仮面ライダーって・・・仮面ライダーってこと!?」
「はい、そうですが?」
「いやいやいや・・・何で、急に、そんな事を・・・言い出すんだよ?」
「仮面ライダーに弟子入りしたいからです!」
((えぇぇぇぇぇぇ!?))
この異常事態に、事情を知る茜も入ってきた。
「どうして急に仮面ライダーに弟子入りしたいと思ったの?」
「はい!僕もこの国の王子としていずれは国を守る立場に立つ事になります。しかし今の僕には力がない、その為にヒーローとして活動している仮面ライダーに弟子入りする事で守りし者の極意を授かりたいと思ったのです!!」
「う・・・うん、すごく立派な心構えだよ・・・」
茜は昴のそばに寄り添い、輝には聞こえないヒソヒソ声で昴に話しかける。
『どうするの昴?これってかなりの難題だよ・・・』
『いや、答えるのは簡単だろ。その後がどうするかって話で・・・』
そう、解決策は容易だ。
輝が会いたい仮面ライダーは目の前にいるのだから、『私が仮面ライダーだ』と言えば済む。
しかし、それをあっさり言うことは出来ないのである。
『どうする・・・?』
『言うつもりなの?』
『言うわけないだろ、何の為に今まで隠してきた思っているんだ・・・』
『でもさっき何でもやるって言ったよね?』
『しょうがないないだろ!自分を探してくれなんて哲学みたいな問題になるとは思わなかったんだよ!』
「あの、兄上に姉上、どうかされましたか?」
「「な、何でもないよ・・・」」
このままヒソヒソ話を続けても埒が明かないので昴は立ち上がり高らかに宣言する。
「よしわかった!お前の望み、引き受けた!」
「本当ですか!?」
「ああ!ちょっと調べてくるからお前は家で待ってな!」
そう言って昴は家から飛び出して行った。
(何をする気なんだろう・・・)
目をキラキラさせている輝とは対称に茜には不安しかなかった。
「頼む、出てくれよ・・・」
昴は家の前で斗真に電話を掛けていた。
『あ、なんだ?』
「(よし繋がった!)斗真、たなび・・・じゃ無かった、頼みたいことがあるんだ」
そして昴はこれまでの経緯を話すが斗真は、
「と言うわけで変身した姿で輝に会ってくれないか?」
『やだね』
「何でだよ!こっちは大ピンチなんだよ!」
『大ピンチって、自分から追い込まれてるんじゃねえか。他を当たれよ、俺は今忙しいんだよ』
「何が忙しいんだよ?」
『決まってるだろ。今日は桜庭らいとの新CDの発売日だろうが!昨日の夜から店の前に並んでんだよ!』
それだけを言って斗真は一方的に通話を切った。
「昨日の夜から!?アイドルオタクって怖えぇ~・・・」
気を取り直して今度は白井に電話を掛け、再び事情を話すが、
『断る。秋原斗真にでも頼みたまえ』
「そこをなんとか・・・てかさっき斗真にも断られたんだよ、せめて弥生に代わってくれ」
『残念だか今彼女は他の事に夢中でこちらの声は届かないよ』
そう言われ電話越しから弥生の声を聞きとると『123?いや321だったか?』とブツブツと呟き続け、とても人と話せる状況ではないようだ。
『それに現在G3は大破、G3-XもAIを調整中で動かせない。諦めたまえ』
「予備のスーツとか無いのか?」
『・・・ないよ』
「いやあるだろ、その間は絶対ある間だろ!?」
しかし白井は答えることなく通話を切ってしまった。
「まじかよ・・・全滅かよ~」
ガクリ、と昴は肩を落とすがその反動である方法を閃いた。
「・・・ちょっとずるいがこれしかないな・・・」
公園
昴から仮面ライダーを見つけたという連絡が来て輝は現在、公園で待っていた。
(昴・・・まさか本当に・・・?)
茜も心配になってこっそり輝の後をつけ、木陰で様子を疑っている。
到着から10分が経過したその時、突然バイクのエンジン音が鳴り響く。
その音に輝と茜は反応し、音の方を向くとそれは居た。
「天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ!熱く響いてイイ感じ!追跡撲滅いずれもマッハ!仮面ライダーキター!命燃やしてズバッと俺参上!さぁ振り切るぜ!この星をなめるなよ!!」
(何かいろいろ混ざってるー!?)
そこに居たのは顔をお祭りの屋台によくあるお面で隠し、明らかに段ボール製の即席ヒーロースーツに身を包んだ昴であった。
(さすがに無理があるでしょ!?ってか怒られるよ、いろんな意味で!)
しかし、こんなパチモン臭溢れる偽仮面ライダーを見ても輝の目の輝きは消えなかった。
「か、仮面ライダーだ!」
(えぇ~!?偽物だよね!?どうみても偽物だよね!?中身は本物だけど!)
木陰に隠れているので茜の声は届かない、
「あなたが仮面ライダーなのですか?」
「うむ、吾輩が仮面ライダーである。輝君だったか、私に弟子入りしたいそうでござるな」
「はい!どんな苦しみにも試練も乗り越えて見せます!だから僕を弟子にしてください!」
「うむ、良い心掛けで候!」
(語尾は統一しようよ!)
しかし、輝の前で姿を見せられないので茜はツッコミを心の中に留めるしかなかった。
「ならば最初の試練を与えよう。手を差し出すのニャー」
「手を、ですか?」
輝は言われるままに手を差し出すと昴は彼の手に百円を置いて最初の試練を言った。
「ピクルスサンド買ってきて、駅前のパン屋に置いてあるやつ」
否、最初のお使いを言った。
「はい、了解です!」
輝は一分の疑問も持たずピクルスサンドを買うために駅に向かって行った。
輝の姿が見えなくなるのを確認すると茜は迷わず昴の元へと駆け出し、ボディブローを能力込みで放つ。
「グオッ!?お前、いたのかよ・・・」
「居たよ。ずっと見てたよ・・・」
昴はすぐに土下座の体形になる。
「すいませんこの事は誰にも内緒にしてください!」
一方茜は可哀想なもの見る目で昴を見下ろす。
「どの事?その面白いコスプレの事?小さい弟を騙して使いっ走りをさせた事?」
「こ、これにはわけが・・・」
そして昴はこうした理由を話す。
「とりあえず今日は適当に試練を与えて夕方あたりに合格サインだして事を早めに終わらせようと思ったんだよ」
「あくまで本当の事は言わないんだね」
「言えるわけないだろ。アンノウンの事もあるし。それにもしあいつがその事を知ったら『僕も戦います!』って言い出しかねないだろ」
「まぁ、たしかに輝の性格上放っておかないだろうね・・・」
「だろ!俺としても家族を巻き込みたくないからこの事は有耶無耶にするのが一番なんだって。だからこの事は内緒でしてくよ・・・なっ、いいだろ?」
「・・・ピクルスサンド、くれたらね」
「おう、その保険の為に輝に行かせたんだよ」
とりあえず茜との話は解決し輝が戻ってきた。
「師匠!ご注文のピクルスサンド買ってきました!」
「うむご苦労!まずは第一関門突破でござる。次は・・・」
夕方
第一関門の後もアスレチックを使ってのSASU○Eやビ○ーズブ○トキ○ンプなど様々難題を課したがどれも輝は突破して見せ、逆に昴のスタミナが限界に近づいていた。
「ゼェ・・・ゼェ・・・ちょっと休憩しようか・・・」
「僕は大丈夫です!」
「いや、わかるよ。でもお主だって生き物だから休まないと体ボロボロになるからさ・・・」
「わかりました!そう言うことでした休憩に入ります師匠!」
(はぁ・・・これで少しは体力を回復出来る・・・)
何とか言いくるめて昴は一旦休憩を取る事に成功した。
しかし、その時昴の気は緩んでしまった。それが原因なのかお面の輪ゴムが切れ素顔が露わになってしまったのだ。
「あ、兄上・・・!?」
「ん?、あっ、やべ!」
すぐに昴はお面を着け直すがもう遅い。
「兄上、これはいったい・・・」
「て、輝・・・これには深~いわけが・・・」
「騙したのですか?」
「え?」
「偽ったのですか?」
「いや、その、だからね・・・」
昴は心臓に鋭い矢が刺さる様な感覚を憶えた。
「僕が本気で強くなりたいと思っていたのに兄上はその思いを踏みにじったのですか!?」
「・・・はい、すいませんでした・・・」
昴は意気消沈し、自分の否を認めた。
「そういう事でしたもう兄上には頼りません自分の力で仮面ライダーを探します」
そう言って走り去っていく輝を追う気力は昴には残されてなかった。
「・・・嘘、バレちゃったね」
「・・・」
代わりに茜が駆け寄るがショックを受けたのか昴は膝を抱えたまま石像の如く動かない。
「もう、そんなに傷つくぐらいなら最初から本当の事を話せばよかったのに」
「・・・」
「昴の心配もわかるけどさ、冷静に考えてみれば輝なら大丈夫じゃないの?特殊能力だってあるんだし」
確かに輝の能力
大人よりも力持ちになりそれに比例して身体能力も強化される。
事実、昴が出した課題は
「もう既に秋原君や弥生ちゃんと言った仲間もいるんだし、一人だけで戦う理由もないでしょ?」
ここで昴はようやく口を開いた。
「たしかに輝の能力ならその気になればアンノウンと互角に渡り合えるかもしれない。でもあいつがその気になれるかがわからないんだよ」
「どういう意味?」
「ほら、あいつ結構怖がりじゃん?」
あ、と思わず茜は盲点をつかれる。
前に自分の代わりに栞とお使いに行ったとき犬の前で脅えていたし、心霊番組を見ていた時は自分と一緒に震えていた。
たとえ大人以上の力を持つ能力を持っていたとしても彼自身は小さい子供に過ぎないのだ。
「アンノウンは狙った相手なら赤ん坊だって襲うような連中だ。そんな化け物相手に心を平静に保ってられると思うか?」
昴の言うことには茜は反論できなかった。
そして昴が立ち上がってどう輝に謝ろうかと考えていたその時、アンノウンの気配を察知した。昴は顔を強張らせる。アンノウンを感知したことではなく感知したその方角にだ。
「!?この方角は確か・・・」
それはさっき輝が走り去った方角と同じではないのか。
「まずいぞこれ・・・!」
昴は即席ヒーロースーツを脱ぎ捨てバイクに跨りエンジン全開でアンノウンの居る方へと向かった・・・
長くなったのでで後編に続きます。