城下町のAGITΩ   作:オエージ

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遂に樹との決着です!
最強フォーム誕生の瞬間をお見逃しなく!

城下町のAGITΩの初投稿からちょうど3ヶ月になるこの日この時間に第3部の最終回を投稿します。
それではどうぞ!!

※栞のセリフに『あれ?』ってなった方はボルメテウスさん氏の『ハイスクールD×D 結崎怜は仮面ライダーただし幽霊 』をお読みください。


第38話 光輝への目覚め

櫻田兄弟達は困惑していた。目の前に現れ絶体絶命の危機を救った二人の存在を見て。

片方は茜だということにすぐに気付けたがその茜の隣にいる存在に目を向ける。

金色の肉体に二本の角、明らかに人でない風貌であった。

 

だが葵と修は兄弟の中で違う意味で仰天している。

 

「写真と同じ姿・・・!」

 

葵は以前樹によってアギトの写真を見せられていた。

 

「間違いない・・・あの時俺が見た金色の人影だ」

 

修は過去に見た昴の変身を頭の中でフラッシュバックした。

 

そして謎の戦士は自分達の方へ振り返り喋った。

 

「姉ちゃん、兄貴、姉貴、岬、遥、光、輝、栞・・・怪我はないか?」

 

その声には聞き覚えがあった。無いはずが無かった。

櫻田家のバカなお調子者の次男の声だ。だがそんな次男の声が頼もしく聞こえる。

 

「そこで見ていてくれ、俺があいつを・・・ぶっ飛ばす!!」

 

そう言い昴はアナザーアギトの元へと駆けて行った。

 

「ど、どういうこと?」

 

岬が周りにいる者達の思っていることを代弁した。

 

「あれは何者なの?まさか、すー兄が?」

 

「そうだよ」

 

茜は即答し周りは目を見開いた。

 

「あんた・・・知ってたの!?昴が仮面ライダーだったてことを!?」

 

「茜ちゃんなんで黙ってたの!?」

 

「ごめん・・・昴が言わないでおいてくれって言ってたから今まで黙っていたけど、この町の都市伝説、仮面ライダーアギトの正体は櫻田昴なんだよ」

 

茜の告白を聞いてこれまで仮面ライダーと接合したことがある兄弟は大いに反応を示す。

 

「兄上は本当に仮面ライダーだったんだ・・・!」

 

輝は以前昴に仮面ライダーを探して欲しいと頼んだ際昴は変装して騙そうとしたがある意味で昴は約束を守っていたということを気付かされた。

 

「お兄様も・・・仮面ライダー・・・!?」

 

栞は思い出した。かつて出会った少年の事を。短いながらも決して忘れることの無い彼との交流を。

 

そして茜は兄弟に昴の秘密について語り出した。

 

「昴はアギトに変身する力を持ってずっと戦い続けていた。私達を守る為に、どんなに傷ついても落ち込んでも誰にも話せずにいた、心配して欲しくなかったから、自分の力に脅えられるんじゃないかと不安だったから。今まで心の中でその気持ちを抱えたままだった」

 

「でも今昴は決心したんだよ。もう隠したりしない、大切な家族に本当の自分を受け入れてもらえるように必死で今、戦っているんだよ。自分を含む家族を救うために!」

 

茜の言葉を聞き遥はある事を悟った。

 

(そういうことか・・・能力で導き出された確率の本当の意味は・・・!)

 

 

 

 

 

「うおおおお!」

 

アギトは叫びながら先制攻撃としてアナザーアギトにタックルを仕掛ける。

アナザーアギトに避けられるもすぐに体制を立て直し強烈な回し蹴りをアナザーアギトの頭部に放つ。腕でガードするもアナザーアギトは蹴りの勢いを完全に止めきれず仰け反った。

 

「やりますね・・・」

 

今まで避け切っていたアギトの攻撃を始めて受けてもアナザーアギトの無感情な口調は崩れない。

 

「しかし宜しいのですか?アギトの姿をご兄弟の前に晒して・・・」

 

「ああ、俺はもう決めたんだ。家族に本当の自分を偽ったりしない、兄弟の目の前でお前を倒して証明してみせる。アギトの力は誰を傷つけるための力じゃなくて守る為の力だってことを、家族にも!お前にも!!」

 

トリニティフォームへと変身したアギトは飛びあがって二つの武器を振り下す。ストームハルバードは風を、フレイムセイバーは炎を纏いストームファイヤーアタックとなってアナザーアギトに襲い掛かる。

 

「甘い・・・」

 

だがアナザーアギトは自身の肩に接触する前に二つの武器を掴み動きを封じる。しかしアギトも負けじと武器を押す手を強めていく。

 

「守る為の力?無駄です。人間は表面しか見ない。異形である私達に脅え敵と決めつけ迫害する。そんな愚か者を守って何になるというのです」

 

「どうかな?誰もが俺達を蔑んだりするわけじゃない。現に俺の兄弟達を見ろ、アギトの姿を見ているのに全然脅えてないじゃないか」

 

「それは彼らがあなたを信頼できると知っているからですよ。何も知らない赤の他人からすれば我々はただの怪物です」

 

「そうかもしれない。でも仮に一人だとしても俺を信じてくれる人がいればその人を信じている人も俺の事を信じるかもしれない、『あの人が信じているのなら私も彼を信じてみよう』って感じにな。そうして信頼の輪が広がっていけばいつかは世界中の人達がアギトを受け入れる。まず俺は、家族から信頼の輪を広げていくんだ!」

 

「その理論はあまりにも稚拙過ぎる・・・!」

 

アナザーアギトはストームハルバードを奪い取りそのままアギトを袈裟切りに振り下ろし怯んだところを切り上げる。宙に巻き上げられたアギトはフレイムセイバーを落としグランドフォームへと戻ってしまう。

 

「綺麗事を吐くなら現実を見てからにしてください、あなたはまだ子供なのですから」

 

「確かにお前からすれば俺は子供だ・・・あんたが知ってて俺が知らないことなんて山ほどあるんだろうな・・・」

 

自虐するような言い方とは裏腹に立ち上がるアギトの姿には強い闘志を兄弟達は感じる。

 

「だが、そんな俺でも一つあんたには知らないことを知っている・・・!」

 

クロスホーンを六つに展開しアギトは拳を握り締める。

 

「綺麗事が一番良いって事だ!!そして俺は絶対にその綺麗事を現実のものとしてみせる!その理想の為に戦う!」

 

「小癪な・・・」

 

アギトとアナザーアギトは同時に駆け出し互いの拳を激突させる。瞬間的な突風を引き下ろすほどの衝撃を持った激突の勝者はアナザーアギトだった。常にクロスホーンを六つに展開し高水準で力を安定させて使い慣れている為、一時的にしか本領を発揮できないアギトに押し勝ったのである。

弾き飛ばされ立ち上がろうとするアギトの胸を踏みつけアナザーアギトは宣言する。彼の意志を再び砕き、我が物とする為に。

 

「ならば今から私はあなたの理想を破壊する為に戦いましょう。あなたを完膚なきまでに叩きのめした後、あなたを信頼している者を皆殺しにします。そうすればあなたを信頼するものはいなくなる。信頼の輪を広げられなくなったあなたは私によってアギトの王にならざるを得なくなりますね・・・」

 

アナザーアギトは踏みつけたまま奪ったストームハルバードでアギトの腕を貫こうとする。

 

「手始めに殺すのはこの場にいるあなた様のご兄弟からにしましょうか・・・」

 

その言葉を聞いたアギトの体は爆裂し衝撃がアナザーアギトに振りかかる。

アナザーアギトはストームハルバードを投げ捨てて飛び上がり衝撃をよけ、目の前のアギトの姿を見据える。

 

「そんな事はさせない!あいつらは俺の大切な家族だ!家族の前で俺は絶対に負けない!!守る為にだ!!」

 

アギトはバーニングフォームへと変身している。その特性を知っているアナザーアギトはアギトに向けて嘲笑する。

 

「暴走するバーニングフォームに変身しておきながら家族を守るなどとよく言えますね・・・」

 

「お前を倒すにはこれぐらいしないと無理そうだからな」

 

「それでも私の差は・・・っ!?」

 

その時、アナザーアギトが驚愕しているのは離れた位置で見ている兄弟達にも明白であった。硬直している隙にアギトは振り返り兄弟達を見る。アナザーアギトが知っているバーニングフォームの性質上、次に起こるのはアギトが吠え兄弟達を敵と誤認し突っ込んでいくはずだ。

 

だがアギトはそんな素振りを見せず兄弟達、正確には先頭に立っている櫻田茜の瞳を見つめる。それを見た茜が頷くとアギトも頷き返し再びこっちを見る。完全に意志を持った行動だ。

 

(どういうことだ・・・意識を持たないはずのバーニングフォームが意味のある言葉を発し、自分の意志で動かしているだと・・・!?)

 

いや、それ以前に家族を守ると公言した時の時点でバーニングフォームになっていたのではないか。アナザーアギトは構えを取るアギトに問い掛ける。挑発とかではない純粋に疑問を解消するためにだ。

 

「まさか・・・バーニングフォームを制御なさっているのですか・・・!?」

 

「ああ、結構きついがコツを掴めば楽勝だなっ!お前をぶん殴った後にコツを教えてやろうか?」

 

冗談交じりに語るアギトの態度にアナザーアギトの無感情な気色が少し崩れた。

 

「ふざけずに本当の事をお答えください。バーニングフォームを制御するなど不可能のはず・・・!?」

 

「嫌だね、言ってもあんたにはふざけていると怒るだろうからな」

 

「なんですと・・・」

 

「とにかくこれで、お前が知らなくて俺が知っていることが増えたな。バーニングフォームは制御できる、だからこの力も人を守ることに使えるってことが!」

 

そう言いアギトは腰を低く落とし走る準備を整える。指で手を潰しそうな勢いで握り締めた拳に火が灯る。家族を脅かす目の前の敵を叩き潰す為に。

 

「さぁ、歯を食いしばれ・・・姉ちゃんに・・・俺に・・・家族に・・・お前がしてきた悪事の分をこの一撃に一つ残らず注ぎ込んで叩き付けてやる・・・!!」

 

アギトは宣言すると同時にアナザーアギトを自らの手で裁く為に走り出す。

 

(落ち着け・・・落ち着くんだ・・・最後に勝つのは冷静な心を保ち続けた者だ、そうして今まで勝利してきたではないか私は・・・)

 

自己暗示を掛けてアナザーアギトは状況分析する。

 

(以前との戦いでバーニングフォームは力に特化しすぎた結果動きが緩慢であることが判明した・・・)

 

確かにアギトは物凄い形相で迫ってきているがその速度はアギトのどの形態よりも遅かった。

 

(あの程度の速さなら避けることなど造作もない、それに避けずとも私は・・・)

 

「何!?」

 

信じられ難い事態にアナザーアギトは思わず声を上げた。

先程まで亀のような速度で走ってきたはずのアギトが自分の目前にまで迫ってきていたのだ。

何故急に速くなったのか、その答えは視線の奥にあった。茜が前へと手を突き出していたのだ。

 

重力制御(グラビティコア)の応用か!?)

 

茜が持つ特殊能力である重力制御は重力を操る。それを応用し、前方の空気に突発的かつ強力な重力負荷をかけ衝撃波を生み出した。

その衝撃波はアギトに命中し吹っ飛ばすことでアナザーアギトに一瞬の内に肉薄することに成功したのだ。

 

(私としたことが警戒を怠っていた・・・昴様の後ろにいる能力者の援護を・・・!?)

 

それは自分の力、アギトの力を絶対視していた樹故に起きた油断だった。

 

(ありがとな茜・・・俺のサインに気付いてくれて・・・)

 

あの時交わした合図に気付いてくれた茜に昴は心の中で感謝する。一方その時茜の考えている事は偶然にも昴への返信ともとれた。この時二人の心は繋がっていた。

 

(あの時言ったでしょ、『昴の手が一歩届かなくなったら私が背中をどこまでも押して行ってあげるよ』って)

 

(ああ、そうだったな。何せお前はスカーレットブルーム。俺と同じ正体を隠して人を救ってきたヒロインだもんな)

 

(そういうこと。じゃあ次はヒーローが良い所を見せる番だね!)

 

(任せろ!最高に格好よく決めてやるよ、俺は仮面ライダーアギト。何度打ちのめされて立ち上がる無敵のヒーローだ!!!)

 

アギトは驚愕するアナザーアギトの顔面を標的に拳を合わせる。

 

「さっき俺が茜と一緒に言ったことを忘れたのか!『今、花と龍が交錯し、悪鬼を滅ぼす剣とならん』・・・それにもう一つ!!『正義の名においてお前を倒す』とな!!!俺は今一人で戦っているわけじゃないんだ!!!!」

 

そしてアギトはアナザーアギトに向けて拳を突き出した!!

 

「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

『バーニングライダーパンチ』がアナザーアギトに激突し、砂塵を吹きあげた。

 

 

 

 

 

 

『バーニングライダーパンチ』を繰り出してから数秒の間、茜ら兄弟達は唾を飲み込んで前の二人を見続けた。

 

二人の様子は対極で一人が超然、もう一人が驚愕の表情を仮面の裏側に浮かべている。

ただし・・・

 

 

 

 

「嘘だろ・・・・・!?」

 

「・・・・・」

 

拳を掴み超然としているのはアナザーアギトで、渾身の一撃を正面から受け止められて驚愕しているのはアギトだった。

拳を掴んだままアナザーアギトは憮然と口を開き始めた。

 

「バーニングフォームをものとしたことによってあなたのアギトとしての能力は私を上回った・・・しかし何故私にあなたの攻撃が通じなかったのかわかりますか?」

 

そう言ってアナザーアギトは視線を下げる。アギトもアナザーアギトの視線の先にあるものを見てもう一度驚愕した。

 

「これはっ!?」

 

拳を掴んでいる方とは逆の腕がアギトの腰にあるオルタリングに触れていたのだ。

つまり理由は以下の通りである。

バーニングライダーパンチが繰り出される瞬間、アナザーアギトはアギトの無防備なオルタリングにパンチを当てる。

力の源であるオルタリングに衝撃が走りアギトはパワーダウンしてしまった。

そしてアナザーアギトは勢いを殺されたアギトの拳を掴み、バーニングライダーパンチを破ったのであった。

 

咄嗟の判断でかつ、触れたことを気付かせない程の力加減と速度で殴る。ただ能力を持っているだけでは決してできない芸当をアナザーアギトは平然とやってのけた。

 

「これが、私の能力に今までの経験が積み重なって培わされた実力です。あなたは素質があるだけで私の足元にも及ばない、あなたを王に仕立て上げようと企てたのも私の方が強く手綱を掴みやすいと思ったからですよ・・・!」

 

その次にアナザーアギトはオルタリングとアギトの拳を掴む力を強めていく。

 

「しかし、おいたが過ぎましたね。少し制裁を与えましょう・・・」

 

アナザーアギトはアギトを掴んだまま上へと持ち上げる。アギトは抵抗するもアナザーアギトは抱え上げた状態で腕を捻るように回し上空へと投げ飛ばされる。

錐揉み状に回され宙に浮くアギトを見上げアナザーアギトはクラッシャーを展開する。牙が剥き出しになるのと同時に地面に緑色の紋章が浮き上がるのを上空で回されながら見下ろすアギトはそれが以前見たアナザーアギトの必殺技の構えだと気付く。

 

(まずい・・・この状態であれを喰らったら・・・)

 

危機感を持つが宙を浮いているアギトは回避行動を取る事ができず、アナザーアギトの両足に紋章が集約されていき、完全に足に収まった状態で地面を蹴り跳ね上がってアギトに狙いを定める。

 

「むうぅん!!」

 

無防備なアギトの胴にアサルトキックが直撃する。アサルトキックが命中した瞬間アギトは下へと吹っ飛び、コンクリートを抉りながら地面へと強制的に戻される。

 

「・・・ぐっ・・・」

 

アギトは一度立ち上がりアナザーアギトを睨むも力なく崩れ落ち動かなくなる。

 

『『昴っ!?』』

 

兄弟達が昴の名前を叫ぶがアギトは動く気配はなく呻き声が聞こえてくるだけだ。

 

「兄弟の事を心配している場合ですかな?次はあなた達の番ですよ・・・」

 

自分達に眼光を向けられたことで兄弟達は無意識の内に恐怖し一歩下がる。一人の例外を除いて。

 

「・・・」

 

「茜?」

 

そう、櫻田茜である。彼女だけは下がらず逆に前へでた。

 

「殺すなら私からにしろ、とでもいうつもりですか?」

 

他の兄弟達も茜はそういうつもりなのではないかと思ったが予想は意外な形で外れる。

 

「違うよ、声を届かせる為に前へ出たんだよ」

 

その言葉の意味が理解できず周りは戸惑っている中茜は倒れているアギトに向かって精一杯叫んだ。

 

「昴!立ち上がって!皆を守るんじゃなかったの!!」

 

その言葉に聞いてアナザーアギトは鼻で笑った。

 

「何事かと思えば死にかけの兄に助けを求めるとは・・・茜様も酷な事を・・・」

 

「うるさい!声が届かなくなるじゃないの!」

 

茜の怒号が響きアナザーアギトは思わず閉口する。その隙に茜はアギトに声を掛け続ける。

 

「このままあんたが倒れたままじゃ皆あいつに殺されちゃうんだよ!それでもいいの!?昴は言ったよね?俺があいつをぶっ飛ばすって!なのに昴は倒れたまま・・・昴は皆に嘘をついていたの?もう家族に偽ったりしないんじゃなかったの!!!」

 

「お黙りください・・・戦いもしないあなた様が戦って敗れた昴様をとやかく言う筋合いなど・・・」

 

 

「茜はとっくに戦っている!!」

 

『『っ!?』』

 

樹の声を遮るように修が大声を挙げた。

 

「わからないのか?茜は昴と一緒にここへやってきた。本来なら昴に任せて安全なところで待っていればいいのにだ。それをしなかったのは何故か?昴と一緒に戦う為だ!!決して逃げずに昴の戦いを直視し自分の声を届ける、これがこいつの戦いだ!それこそお前なんかにとやくいわれる筋合いなんかない!!」

 

そして修は茜の隣に立ち昴に声を掛ける。

 

「おい昴!さっさ立てよ!それともギブアップか?ならそう言え!お前はいつもそうだ、無理して強がって一人だけで傷ついて・・・無理なら無理って言えよ!辛いなら辛いって言え!気持ちを押し込めずに俺に言え!もっと俺を頼れ!お前がアギトであろうとなかろうと俺はお前の兄貴だ!!いつだって力になるって言っただろうが!!!」

 

「修ちゃん・・・?」

 

自分の顔を見上げる妹に兄は笑顔で返した。

 

「俺もあいつらが戦っている間に瞬間移動で逃げることはできた、でもしなかった。だから戦っているってことでいいよな?俺も」

 

「修ちゃん・・・!」

 

歓喜の表情を浮かべる茜とそれを向けられて少し照れる修の背後から声が掛けられる。

 

「それをいうなら『俺達も』でしょ?」

 

「「岬!」」

 

岬も二人の隣に立ち声を張り上げる。

 

「すー兄私覚えてるよ!遊園地で迷子になったときすー兄も怖い気持ちを抑えて私を励まそうとしたことを!『俺がついている』って言ったことを!!それがただの強がりじゃないってことを証明して見せてよ!必殺技でも必殺武器でも出してあいつをやっつけて証明してみせよ!!そういう力がすー兄にはあるんでしょ!!!」

 

「・・・黙りなさい・・・!」

 

アナザーアギトは静かに声を荒げ地面を叩く。衝撃により軽く地面が揺れ一同は声を届けるのを止める。

 

「そんなに便利なものでもありませんよこのアギトの力は、ただ肉体が強化された状態でできることと言えば対象を破壊する事だけで・・・」

 

 

「力は使い方次第よ!!」

 

「っ!?またしても・・・!」

 

次にアナザーアギトの声を遮ったのは奏だ。アナザーアギトが悔しそうに手を握り締めるのを見据えながら彼女もまた茜達の隣に立った。

 

「力は良いようにも悪いようにも使うことができる!私達の能力もそう。妹のスカートと一緒にテレポートするバカ兄がいて、身近な人達の幸せの為に能力を使い奔走する奴もいて、能力を過信し、癒えることの無い傷を心に残したままの奴もいる・・・少なくとも昴はあんたや私よりも自分の力を正しく使っている!!」

 

そして奏は昴に激励というよりも叱責に近い言葉をぶつける。

 

「このバカ昴!!いつまで寝てるのよ!もう昼よ!起きなさい!それともまたそいつにこてんぱんにやられるのが怖くて寝たふりをしてるのかしら!?そんな臆病者が都市伝説のヒーローの正体だなんて聞いて呆れるわ!なによ、文句があるならさっさと立ちなさい!立ってそいつにやられた分やりかえした後私に文句を言いに来なさいよ!!!」

 

前に立って戦う者達の姿を見て他の兄弟達も奮い立たされる。

 

「兄上!姉上!僕達も行きましょう!戦いに!!」

 

輝の提案に遥と光は頷き三人共前に出た。

 

「兄上!あの時仮面ライダーとして僕にくれた言葉は今でも僕の胸の中に強く根付いています!!本当はここに来るのが怖くてたまらなかった・・・でも皆も同じ気持ちなのかもしれないと思ったとき、僕は踏みとどまってここまで来ることができたのです!!仮面ライダーとして、兄として、人として!僕は兄上を尊敬しています!兄上は僕の英雄です!スターです!!ヒーローです!!!」

 

 

「さっき気付いたことなんだ!僕の確率予知で出された兄弟全員で臨めば姉さんを救い出せる確率は95%にまで跳ね上がる!これはただ僕達がここに来るという意味じゃなくてこの場で皆で戦う事で初めて確証される確率だったんだ!!僕も皆と一緒に戦う!だから兄さんももう一度戦ってくれ!!!」

 

 

「アイドルのオーディションの前夜、自信が持てなくなったあたしをすーちゃんは励ましてくれた!成功する姿を想像しろって!だからあたしたくさん想像した!!アイドルとして成功していく姿を想い、それに向かって走りだして気が付けばアイドルはあたしの生きがいになっていた!あたしを変えてくれたのは紛れもなくすーちゃんだよ!勝つ姿を想像して!!そしてそれに向かって走り出せば絶対に勝てる!!!」

 

兄弟が次々と昴に激励していく中、葵は前へと行けずにいた。心の中に迷いが生じていたからだ。

 

(昴は恐れずに本当の自分の力を皆の前で明かして見せた・・・でも未だに私は本当の能力を隠し続けている。もし知ったら皆の私に対する態度が変わってしまうんじゃないかと恐れて・・・そんな私が今戦っている皆と一緒に戦う資格なんて・・・)

 

そう考えている葵の袖を掴む者がいて振り向くと隣に栞がいた。今まで前に行かなかったのは葵の事を心配してのことであった。

 

「栞?」

 

「葵お姉様・・・」

 

すると栞は葵の体をギュッと抱き締めた。

 

「大丈夫、お姉様にも皆と一緒に戦うことはできる。だって戦い方は一つじゃないから」

 

抱擁を解いた栞は葵に向けて手を差し伸べる。生命操作で身長が大きくなっているがそれ以前に葵は栞の広く穏やかな心を感じ取った。

 

「栞・・・しばらく見ない内にこんなに大きくなっちゃって、これじゃどっちがお姉ちゃんかわからないわね・・・」

 

葵は栞の手を繋ぎながら一緒に前に出る。そして二人は沈黙を守ったまま祈り始める。これもまた一つの戦いなのである。

 

(お兄様があの人と同じ仮面ライダーなのなら・・・立ち上がって・・・皆の為に・・・家族の為に・・・そして何よりお兄様自身の為に戦って!!!)

 

 

(昴・・・強い心を手に入れたあなたに私から言えることは少ない・・・でもこれだけは言わせて・・・・・負けないで!!!)

 

 

兄弟達の叱咤激励と祈りは昴の耳と心に届いていた。

 

(思い出した・・・俺は今まであいつらの為に色んなことをやってきた。アイドルを目指す特訓に付き合ったり、悩みを相談したり、傍に居てあげたり・・・!)

 

完璧なようでいて繊細な心を持った葵、恋人や妹や弟の為に奮闘する修、表面は冷たく厳しいが一つ一つの言葉が優しさに溢れている奏、不器用ながらも人の為に手を伸ばすことが出来る岬とそれを陰で支える遥、当初の目的とは違えど掛け替えの無いものを手に入れた光、空回りしても自分の信念に真っ直ぐ向き合う輝、人や動物に無機物と何ものに対しても心優しく接する栞。

そして過去のトラウマから人見知りになりながらもそれを克服するために一生懸命前へと進み続けている双子の妹の茜。

それぞれに強い個性があり、その個性を尊重し合い生きてきたのが自分達櫻田兄弟ではないのか。

 

(今まではあいつらを守る為に無理をしてきたけど・・・これからはあいつらと一緒に戦いたい!!!)

 

 

 

 

 

「目障りですね・・・」

 

痺れを切らしたアナザーアギトはドスの効いた声で呟くがもう兄弟達は怯まない。

 

「茶番はここまで、あなた達には今度こそ死んでもらいます・・・!」

 

アナザーアギトが兄弟達に向かってくる中、茜は誰よりも大きな声で昴を呼んだ。

 

「もう目を覚ましてるんでしょ?だったら立ってよ!今度はあんたが戦う番だよ!!仮面ライダーアギト!!!いや・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

櫻田昴!!!!」

 

その叫びと共に昴は立ち上がった。彼の熱い闘志を示すかのようにバーニングフォームの体は燃え上がり周囲の大気すら焦がし始める。

その姿を見てもアナザーアギトは棒読みのような口調で嘲笑う。

 

「守るべき者達の声援を聞いて立ち上がる・・・まるでヒーローショーを見ている気分ですね・・・だが今のご自分の姿をよく見てください・・・そのような燃え滾った体では声は聞けて触れ合うことなどできやしない・・・正にマグマが人の形となっているのが今のあなたです」

 

「それは違うぜ。俺はマグマなんかじゃない・・・誰よりも熱く、何よりも眩く、その輝きで皆を照らす一筋の光・・・太陽だ!!!!」

 

 

 

 

昴が高らかに叫んだその時、アギトの体に異変が起きる。

パキパキと音を立てて胸の表皮にひびが広がっていくのだ。

 

「ん、これは・・・?」

 

不思議に思い胸の一部分を摩ると表皮が剥がれ落ち、中にもう銀色の肉体が顔を出している事に気付く。

 

「どうなってんだこれ?ってかさっきから眩しいな・・・天井があるのに・・・」

 

そう思い顔を見上げると天井に大きな穴が開いていた。昴と茜が倉庫に突入した際にできた穴だ。

その穴から見える空は雲で薄暗いがその雲の隙間から太陽の光がこちらに向けて差しているではないか。

 

(もしかして・・・太陽の光で・・・?)

 

日を浴びる事に体のひびは広がっていく。ひびが上半身全体にまで達しようとした瞬間、太陽は雲に覆い尽くされひびの進行は止まってしまった。

 

(だけどここまで来れば後は自分で剥がせそうだぜ!!)

 

アギトは手に火を灯し空高く掲げる。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

雄叫びと同時に拳を胸に向けて振り落とし力強く叩いた。

その衝撃で体の表皮は全て弾け飛び、倉庫全体がもの凄い光に覆い尽くされる。

 

「な、なんだこれは!?まるで太陽が目に前にあるみたいだ!?」

 

「っ!?皆昴を見て!!」

 

一同は光に慣れた目をアギトの方に向けると輝きはアギトから発せられていたに気付いた。

 

「なによ・・・あの姿は?」

 

「綺麗・・・」

 

「すごいよすーちゃん!キラキラしてる!!」

 

「あれもアギトの姿の一つなのか?」

 

兄弟達が様々な反応を見せる中アナザーアギトは動揺していた。

 

「そんな馬鹿なことが・・・バーニングフォームがアギトの最終形態では無かったのか?第六の形態だと・・・!?」

 

アナザーアギトは脅えていた。自分の知識にないアギトの未知なる姿、可能性を。

 

「この姿の事はあんたも知らないようだな・・・ってことは名前が無いのか・・・おーい皆~、今俺どんな感じになってんだ~?」

 

間延びした声でアギトは兄弟達に問い掛ける。

 

「うんとねぇ~、さっきすっごいビカーって光り出した思ったら今キッラッキラに輝いているの!」

 

「うんごめんよくわかんねぇ!何かに例えて!」

 

「兄上!今の兄上が放つ輝きは正しく太陽の光そのものです!」

 

「太陽の光・・・ねぇ・・・そうだ!それにしよう!!」

 

アギトはポンと手の平を叩き、自分が変身した未知の姿の名前を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『光輝への目覚め』・・・シャイニングフォームってのはどうだ?」

 

白銀に輝く肉体に赤いクロスホーンを携えた仮面ライダーアギトシャイニングフォームは今この場で誕生しアナザーアギトに向けて構えをとる。

アナザーアギトと睨み合いながら円を描く様にゆっくりと動き丁度互いの横顔が兄弟達の視点から見えるようになった所でアナザーアギトは口を開いた。

 

「驚きましたよ・・・ですが皮が剥けた所で私との実力には到底敵わないことをわからせて差し上げましょう・・・」

 

「どうかな?よく言うだろ?『一皮剥ける』ってな!!」

 

アギトは疾走し拳をアナザーアギトに向けて叩き付ける。アナザーアギトも拳を握りそれを向かい撃ち再び両者の拳が激突し合う。

 

「はぁっ!」

 

「ぬぅっ!?」

 

今度の激突はアギトに軍配が上がりアナザーアギトは腕を弾かれ仰け反った。

体勢を立てなしたアナザーアギトがパンチを繰り出すもアギトのパンチにまたもや押し負ける。

 

「力が強くなってるのか!?」

 

兄弟達はアギトの力が上がっていると考えたが拳がぶつかる瞬間をよく見ていた茜は勝因に気付いていた。

 

「いや、違うよ。あれは何度も連続で殴っていたんだ!」

 

「どういうこと?」

 

「手がぶつかり合った瞬間、もの凄いスピードで手を一度引いた後もう一回拳をぶつけたんだ。それを押し勝つまで何度も繰り返していたんだよ!」

 

解説を受けアギトの動きに凝視する。次はアギトとアナザーアギトのキックが交差する。ぶつかった瞬間アギトの足がブレたと思えばアナザーアギトは押し負けて吹っ飛んでいく。確かに残像でしか見えない程の速さで連続蹴りを放っている。

 

「くっ・・・おのれ・・・」

 

「ドンドン行くぜ!」

 

残像を起こすほどの速度でアギトはローキック、ミドルキック、ハイキックと連続で繰り出し最後に跳び回し蹴りをアナザーアギトに叩き込む。全身に蹴りを受けながらもアナザーアギトは飛び回し蹴りによって背を向けたアギトにチョップを打とうするがアギトは肘打ちをアナザーアギトの腹目掛け打ち込み怯んだところを腕を回しながら裏拳を放ち吹き飛ばす。アギトはアナザーアギトに休みを与える隙も見せず立ち上がった所を二段蹴りで蹴り上げ落下するアナザーアギトに踵落としを振り落として地面に打ち付けた。

先程とは一転、アギトがアナザーアギトを完全に圧倒する。

 

「私の実力はまだ本領を発揮していませんよ・・・!」

 

フラフラとした挙動で立ち上がったアナザーアギトは拳を構えた刹那、消えるようなスピードでアギトの前に現れる。

 

「はぁっ!!」

 

強烈なボディブローがアギトの体に貫通するがアナザーアギトは仰天している。

 

「手ごたえが無い・・・これも残像か・・・!?どこに行ったんだ!?」

 

慌てて辺りを見回すがアギトの姿はどこにもいない。

そしてアナザーアギトの頭部が何者かによって掴まれる。上に何かが居る。

 

(まさか・・・)

 

アナザーアギトは全身から汗が噴き出しているのではないかと思うほど緊迫して固まっていた。アナザーアギトの頭部を掴んでいる者が何処に行ったのかという疑問に答えた。

 

「お前の上だよ!俺が上で!お前が下だ!!」

 

そう、アナザーアギトの頭部を掴んでいる者の正体はアギトであった。アギトはサーカスのパフォーマンスのように頭部を片手で逆立ちして掴み、その状態でアナザーアギトの頭部に衝撃を送り込む。頭を直接攻撃されたことにより脳震盪を起こしアナザーアギトは完全に無防備と化した。ゆっくりと動きを止めたアナザーアギトの前に着地したアギトは左右の拳を力強く握り締め両目でアナザーアギトを捉える。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

アギトの二つの拳が雄叫びと共にアナザーアギトに襲い掛かる。マッハの速度で何度も殴る拳は大量に分裂しているかのようだ。

 

「おりゃぁっ!!!!」

 

アギトはラッシュの締めとしてアッパーを振り上げた。勢いよく吹っ飛ばされたアナザーアギトはMの字を描く様に天井と床の間を交互に叩きつけられる。

 

「何故だ…何故急にこのような力が・・・湧いたのだ・・・?」

 

それでも起き上がったアナザーアギトは何故これほどまでに自分が圧倒され始めたのか理解できずにいる。その答えをアギトは知っている。

 

「答えは簡単だ。ここにこいつらがいるからだ!!」

 

そういいアギトは兄弟達の方へ指を指した。

 

「こいつらは誰一人逃げずに自分の言葉を届けてくれた、祈りを捧げてくれた、その言葉と祈りが俺に体に強く燃え上がっている!俺は今!こいつらと一緒に戦っている!!こいつらが俺にくれた思いを俺が力に変えていく!!俺の体の中には俺を含めて10人の思いが込められている!これでわかったか?お前が戦っているのは『俺』じゃねぇ・・・『俺達』だ!!!大切な人のいない、壊す事だけに力を使うようなお前とは格が違うんだよ!!!!」

 

「大切な人が・・・いないだと・・・!」

 

ゆっくりと樹の仮面が剥がれていくのをアギトは感じ取った。

 

「何がわかるんですあなた様に・・・私の過去があなたに・・・私の信念がわかるはずがない・・・()()に・・・何一つ理解されてたまるか・・・

 

きぃぃぃぃぃぃさぁぁぁぁぁぁぁまぁぁぁぁぁぁぁぁなぁぁぁぁぁんぅぅぞぉぉぉぉぉにぃぃぃぃいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

絶叫の勢いに負け、クラッシャーが弾け飛び、アナザーアギトはフルパワーになる。

 

「もういい!もう貴様を私の計画の駒として利用するのはやめだ!!これから貴様を人間共の前で八つ裂きにした後この国を力で乗っ取る!そうすれば私が国王だ!!私がアギトの頂点に君臨するぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

 

もはやかつての紳士的な振る舞いが消え去った目の前の獣を見据え、アギトは不敵に笑う。

 

「そうか・・・それがお前の底か・・・どんなものかと思えば・・・案外大したことねぇな」

 

「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

アナザーアギトが再びアサルトキックを放つ構えを取り始めたことに連動してアギトも腰を捻りながら落とし必殺技の構えを取る。するとアギトの紋章が地面ではなくアギトの前に浮かび上がった。

 

「「はぁぁぁ・・・・・・・・・・・・・」」

 

しばしの沈黙の後、両者は飛び上がり敵を粉砕するべく足を前に出す。アナザーアギトはそのまま等速で空中を進み続けるが、対するアギトは宙の紋章に入り込んだ瞬間、爆発的に加速し、光速にまで達してアナザーアギトの足に直撃する。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

これがシャイニングフォームの必殺キック『シャイニングライダーキック』だ!!!!

 

「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」

 

シャイニングライダーキックが炸裂し、アナザーアギトは物凄い勢いで吹き飛ばされ倉庫の壁を破り、隣の倉庫の壁すらも破壊して地面に落下し、動きを止めた。

 

アナザーアギトが心身共に砕かれ、アギトの、いや、櫻田兄弟達の完全勝利だ!

 

勝利を確信したアギトは変身を解除し兄弟の元へ駆け寄ろうとする。

兄弟達も昴の元へと駆け寄ろうとした際、遥は自分の能力で弾き出された確率に驚嘆し周りに警告する。

 

「待って皆!まだ終わってない!あいつが倒れていない確率は90%だ!!」

 

『『っ!?』』

 

目を見開きながら昴は振り返ると蜃気楼の如く粉塵の中からアナザーアギトが立っていた。

昴は警戒し、オルタリングを出す準備をするがアナザーアギトの状態を見てそれを止めた。

全身の至る所に傷やひびが出て、力の源であるアンクポイントも割れかけている。最早気力で立っているだけなのかすぐに変身が解除され満身創痍の樹次郎の姿へと変わった。

 

「もう諦めろ。お前の負けだ。大人しく投降しろ、お前をぶっ倒すのが俺達でお前を捌くのはこの国の法だ」

 

「フッ・・・笑止・・・」

 

力のほとんどを失いながらも樹の脳内には投降の選択肢など毛頭無かった。

 

「残念ながらそれは出来ない。今も世界で迫害され続けているアギトの為にも・・・『彼』の無念を晴らす為にも!!」

 

「彼?それは一体誰なんだ!」

 

「それを言う必要はありません。私から言えることはただ一つ・・・私にも信念がある、その為に負けるわけにはいかないんだ!!」

 

激昂した樹はロングコートを脱ぎ捨てる。すると樹の体に大量の爆弾が仕込まれていることが判明する。

 

「お前・・・何を!?」

 

「私はあなた方に負けていない!私を殺すのは私だけだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

そう叫んだ樹は爆弾を起動させる。爆炎に包まれ、爆風が晴れた時にはその姿は完全に消え去っていた。

 

「馬鹿野郎が・・・そんな事をしても、お前が俺達に負けたことは変わらねぇよ・・・」

 

昴の呟きが虚しく静かな倉庫に澄み渡り、事件は意外な形で終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日 櫻田家

 

リビングのテレビでは兄弟達が暴いた事件の真相が語られ、樹が全国に指名手配されることになったのが映されている。

 

「でもあの人ってあの爆発で死んじゃったんだよね?遥が計算した死亡確率も98%だったし・・・」

 

「さぁな・・・まぁ、生きてたとしても俺がまたボッコボコにしてやるさ。何たって俺は無敵の中の無敵、超無敵の仮面ライダーアギトなんだからな!!」

 

「まーた調子に乗っちゃって・・・あの時病院でくよくよしていたのはどこの次男だったっけ?」

 

「う・・・それは・・・」

 

「それに俺が、じゃなくて俺達が、でしょ?」

 

「はいはいすいませんでした!どーせ俺は一人ではなにもできないバカ兄貴ですよ、だからこれからもよろしくお願いします!!」

 

「はい、よくできました♪」

 

「ったく、嫌な妹だぜ・・・ってかお前らいつまで引っ付いてんだ!?」

 

現在昴はソファーに寝転がっているがそれを兄弟達が囲んでペタペタ昴の体を触っていた。

 

「ホント不思議だよね~、急にベルトみたいなのがでたと思えばあっという間にすー兄が変身しちゃうんだからさぁ・・・ベルトが出たのはこの辺だっけ?」

 

「いや・・・もうちょっと上だって・・・って痛っ!?なんで急に叩くんだよ姉貴!?」

 

「今まで兄弟に隠し事をしていた罰よ」

 

「いやだってあんな姿見たら驚いちゃうじゃないかと思って・・・ってイデッ!?だからなんで急に叩くんだよ兄貴!?」

 

「今のは俺達をみくびっていた罰だ。ったく、そんな秘密があったってお前が家族だってことは変わらないだろ・・・ホラ周りをよく見て見ろ」

 

修に言われ周りを見渡すとキラキラした目で昴を見つめている輝と光がいた。

 

「兄上!僕も変身したいです!ぜひ教えてください!!」

 

「ゴメン、俺も何で変身できるかよくわかんねぇんだ」

 

 

「すーちゃんすーちゃん!もう一回あのキラキラらいとフォームになって!ライブの照明に使えばすごい盛り上がると思うんだ!」

 

「何だキラキラらいとフォームって!?シャイニングフォームだよ勝手に改名すんな。ってか照明に使うって俺はミラーボールか何かか!?」

 

そんな中、葵は昴に問い掛けた。

 

「所で昴、あなた樹先生に何かされたようだったけどそれは大丈夫なの?」

 

「ん、ウイルスの事?あれならシャイニングフォームになった時急に吹っ飛んでいったな。今は別に問題ないぜ」

 

『『えぇ・・・』』

 

こいつ本当に人間止めているのではないかと思っている中、栞が昴に近づいてくる。

 

「どうしたんだ栞?」

 

すると栞は昴の手を握り出した。

 

「お兄様、今まで私達を守る為に戦ってくれてありがとう」

 

小さな目で見つめられた昴は思わず顔を赤らめる。

 

「い、いやぁ~平気平気!お前のように可愛い妹を守る為ならいつでもどこでも駆け付けちゃうぜお兄ちゃんは!」

 

明らかに他と違う対応をする昴に兄弟達は冷めた目で見つめる。

 

「お前・・・ちょっと気持ち悪いぞ」

 

「えぇっ!?」

 

「うん、栞にだけデレデレしちゃって・・・あんた前から栞だけ異常にえこ贔屓にしてるわよね」

 

「違いますぅ~、えこ贔屓じゃありません~、正当評価ですぅ~。栞はちゃんと俺の苦労を労ってくれましたぁ~。悔しかったら姉貴も俺に感謝の気持ちを表すんだな」

 

「うん、今まで無駄な努力お疲れ様。これでいいのよね」

 

「いいわけ無いだろそんなぞんざいな!ってかお前らホントに感謝の気持ちってもんがねえな!あんだけ必死こいて樹の野郎と戦った俺の身を案じやがれ!!」

 

『『戦ったのは『俺達』でしょうが!!』』

 

「あ、はい。すいません」

 

兄弟達に反論され、昴は畏縮する。

 

「そもそも感謝の気持ちがないのは兄さんの方じゃないの?」

 

「え!?」

 

「遥の言う通りだね。私達の声援で勝てたようなものなのにすー兄ときたら自分だけが戦ったみたいに・・・」

 

「いや・・・その・・・」

 

「これは一度すーちゃんに家族の大切をわからせてあげた方がいいんじゃないの?体で」

 

「姉上!お供します!」

 

「ちょっと待って!なんで全員で俺をボコる流れになってんの!?」

 

ポキポキと手を鳴らして迫る兄弟に昴は修に助けを求める。

 

「兄貴・・・あの時言ったよね?いつでも力になるって・・・兄貴は俺を助けてくれるよね・・・」

 

「それとこれとは話は別だ。おい皆やっちまえ!この恩知らずのバカに俺達の力を思い知らせるんだ!!」

 

『『おー!』』

 

「いやいやいや!俺これでも怪我人なんだよ!?それを集団でボコるってあんたら鬼か!?悪魔か!?」

 

『『お前の家族だよ!』』

 

「ですよねぇ~・・・ってイダダダダ!?誰だ今辞書の角で叩いた奴!?」

 

騒がしい喧騒を茜と葵と葵の膝に座っている栞は静かにそれを静観している。

 

「もぅ・・・折角皆で一つになれた思ったのに・・・どうして綺麗に終われないのかしら?」

 

「まぁまぁお姉ちゃん、これが一番我が家らしいでしょ?誰も自分の事を偽ったりしないで本当の気持ちをそのままぶつける。勿論喧嘩することもあるけど絶対に互いを嫌いになったりしない。家族ってそういうものでしょ?」

 

「ウフフ、それもそうね」

 

そうこうしていると兄弟達に叩かれ続けていた昴が葵達に助けを求めてきた。

 

「ちょっと姉ちゃん!?何でさっきから笑ってこっちを見てんの!?助けてよ遥が辞書の角で腰を叩いてきてすげぇ痛いんだよ!」

 

「フフッ・・・そうね、栞はどうする?昴を助ける?」

 

長女は膝に座っている末っ子に決断を任せることにした。

 

「お兄様は皆の為に戦ってくれた。でもそれを一人で抱え込んで隠し続けていた・・・そういうのは、あまり好きじゃない」

 

「っ!?」

 

「そうね、昴はずっと嘘を言い続けていた悪い人ね。それじゃあお姉ちゃんと一緒に懲らしめようか」

 

「うん」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?まさかの展開ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 

自分の味方になってくれると思っていた葵と栞が自分の腕を掴んで抑え込み身動きが取れなくなる。後ろには辞書の角やハリセンやピコハンなど様々な武器を持って迫ってくる兄弟達。さらに飼い猫のボルシチも爪を立てて威嚇している。

追い詰められた昴は最後の希望を茜に託す。

 

「あ、茜?お前は助けてくれるよね・・・?だってスカーレットブルームなんだからさ・・・茜?何で黙ってんの・・・?茜さん?」

 

茜はニッコリとした笑顔でとんでもないことを言い放った。

 

「そういえばこの前私のプリンを勝手に食べたよね昴?」

 

「あ・・・・・・」

 

昴の全身から滝のように汗が流れおちていく。

 

「まじかよそれは死刑ものだなオイ」

 

「私が茜ならあんたをぶん殴っていたわね」

 

「略奪は正義に反する行為ですよ!」

 

「いやいやいや!あの後ちゃんと謝ってプリン買い直したよね!?」

 

「違うよ・・・あんたが買ってきたのはコンビニの安物プリンで、あんたが私から奪ったのは私が小遣いを貯めてやっとの思いで買った期間限定のスペシャルプリン・・・お風呂上りの楽しみにしてたのに・・・!」

 

「あの・・・ホントに悪かった、ホントまじで反省してるからさ・・・というかどうして茜さん能力発動してんの?流石に能力込みでの乱暴はしないよね?だって俺達は、かぞ・・・」

 

「それとこれとは話が別よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

茜の強烈なパンチで昴は吹っ飛び壁にめり込んでノックアウトとなった。

 

「ふぅ~、スッキリした!じゃあ皆、お昼ご飯は昴の奢りでピザでも出前取る?」

 

「お・・・おう」

 

「決まりだね!」

 

とにかく今の茜を刺激してはいけないと兄弟達は茜に合わせていると城にいたはずの五月が家に帰ってきた。

 

「あれ?お母さん今日は夜まで城にいるんじゃなかったの?」

 

「ちょっと用事ができたのよ・・・ってどうなってんの昴?」

 

「プリンの報いだよ!」

 

「そう、とりあえず昴を起こしてくれるかしら」

 

五月に頼まれ昴を叩いて無理やり起こした。

 

「あれ?川の向こうでおじいちゃんっぽい人がいたような・・・って母さん帰ってきたの?」

 

「ええ、ところで皆今日はどうしても外せない用事とかあるのかしら?」

 

その問いに兄弟達は否と答えた。

 

「それなら皆今から城へ向かうわよ」

 

『『城へ?』』

 

言葉の意味は理解できた。城とは櫻田城の事。本来なら自分達の家となるはずだったあの巨大な城の事である。しかし何故急に呼ばれたのか理由は検討が付かなかった。

 

「とにかく大事な話があるの。特に昴、あなたにとって最も重要な事よ」

 

「俺に、とっての、重要な事?」

 

首を傾げながらも兄弟達は玄関の前に止められていたリムジンに乗り城へと向かう。

物語は最終局面へと向かいつつあった・・・

 




勝ったッ!第3部完!

ということで第4部の予告に入らせて頂きます。



―シャイニングフォームに覚醒して樹を打ち破った昴達は突然母によって城まで行くこととなった。

―そこで待っていた者とはなんと昴の仲間達であった!

「お前ら・・・なんでここに!?」

「さあな、お前の親父さんに呼ばれたんだよ」

―その場で再会する者達、初めて出会う者達

「あれ?あなたはあの時の・・・」

「お久しぶりであります岬様」

「どこかで見たことがあるような・・・あ!いつもライブで最前列で応援してくれる人だ!!」

「っ!?」

「どうした?私の事を聞かないのか櫻田遥」

「聞かなくても大体察しはつくからね、兄さんの友達でしょ?」

―そこで判明する昴の新たな事実!?

「これからは私達も昴と一緒に戦う。それでいいよね?」

「ああ、頼むぜ皆!」

―だが、樹事件の爪痕よって生じいく不和・・・疑惑・・・葛藤

「どういうことだ!?」

「そのままの意味だ、君にG3-Xを装着する資格はない」

「ところで斗真君もすーちゃんみたいに変身できるの?あたしに見せて」

「えっ!?いや・・・それは・・・(あんなん見せたらなんて言われるか・・・)」

「姉ちゃん?今のは・・・!?」

「そう、これが私の・・・」

―しかし交流の中で少しづつ克服していく

「生きていることを素晴らしいとは言い切れなくても・・・生きていることを素晴らしいと思いたいんです!私の言ってること、おかしいですか弥生さん」

「バカみたいなことだけど俺達は君の歌で人生を救われた・・・君には人を『変える』力がある。だからどんなことがあっても歌って欲しんだ。俺が君を守るからさ・・・」

「姉ちゃんならその力も正しいことに使えると思うから・・・」

―そして現れる最後の・・・

「ヒトガヒトヲコエテハナラナイ」

「アンノウンが喋った!?」


「お前は・・・一体・・・何者だ!!」

「・・・あなた達の言葉で表現するなら・・・






神、と呼ばれる者です」

―敵!

「人よ、諦めるのです。あなた達の未来は私の手の中にあります。それを今壊して見せましょう」

「ふざけるな!人の未来がお前の手の中にあるのなら・・・俺が奪い返す!!・・・変身!!!」

城下町のAGITΩ 完結編

最終部 シャイニング 闇の力編

乞うご期待!!
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